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第2章 地中海編
第33話 クレオパトラの儀式
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丈高い数mの高さがあるパピルス草がナイル川の岸辺にビッシリと生えている。朝、まだ靄のかかったナイル川に私は王家の筏をパピルスをかき分けさせて漕ぎ出させた。巨大な筏は、前部に高価な中国製の絹で天蓋を作り、そこにエジプト王が立つ。朝の儀式を行うためだ。
エジプトは雨の少ない地域である。しかし、雨季の時期に上流のエチオピア高原から流れ込んだ雨水が、中流、下流で増水し、堤防を越え、洪水になった。伝承ではナイル川のハピ神が起こしていたと伝えられているが、そんなもの、気象現象にしか過ぎない。無知な古代人の考えそうなことだ。その洪水により、肥沃な土壌が毎年形成され、ほとんど雨の降らなかったエジプトで農耕や灌漑が可能になり、文明が発達した。
古代エジプトの創造神話では、神々は創造の神アトゥムの自慰行為によって創り出されたとされる。神話では、アトゥムが誕生するまで、この世界は虚無であった。アトゥムは原初の水『ヌン』から自らを創り出し、自慰によって神シューと女神テフヌトを創り出した。アトゥムは手が女性器の両性具有者だった。
代々のファラオは、ナイル川のほとりで自慰をして精液を川に流すという儀式を行う。ナイルにファラオの神聖なる種を仕込んで、豊作という形で水から新たな生命を芽生えさせるのだ。
紀元前51年、クレオパトラ7世が18歳の時に父が逝去すると、父の遺言によって弟のプトレマイオス13世と共同で王位に就いた。しかし、13世は宮廷人にそそのかされ、姉を追放しエジプトを統治しようと内戦を起こした。
プトレマイオス13世は、シーザーとの闘いに敗れエジプトに逃げ込んだポンペイウスを殺したことで、ジュリアス・シーザーに殺害された。その後、エジプト女王となったクレオパトラ7世は、13世の弟の14世と結婚していたが、彼女は14世を共同統治者に推挙した。実際は、クレオパトラ一人が統治者であった。
ナイルへの豊穣の儀式で、女性のクレオパトラ(実際は両性具有)が自慰をしても女性の姿では威厳がなく、精液も出ない。彼女は、弟王の14世にナイルに自慰をさせ射精させるために共同統治者としたのだ。
今日もその儀式の日。
プトレマイオス14世は、筏の前部の天蓋の中で、ナイルに向かって立ち上がった。その後ろに姉であり、妻であるクレオパトラ7世が14世の尻に股間を押し付けて一緒に立つ。体は絹のベールで覆って、その合わせ目から14世の勃起した男根が突き出されている。それをクレオパトラが右手で支えていた。
絹のベールの中では、クレオパトラの男根がプトレマイオス14世の肛門に深く突き刺さり、14世はその快感に打ち震えた。クレオパトラは、ひとしきり腰を動かし、弟王の肛門を犯し続け、彼女の右手は彼の男根を擦り続けた。
やがて、時が満ち、クレオパトラは精子のない射精を弟王の肛門に解き放つ。同時に、14世の男根から母なるナイルに向かって、精液がほとばしった。クレオパトラは、念動力で、ナイルの川面を左右に割り、彼の精液を四方に飛び散らした。筏に同乗している摂政や宮廷人がその奇跡を見て、深く二人を拝跪した。
射精を終えグッタリした弟王を抱きかかえ、クレオパトラは彼を天蓋の中のベッドに横たえた。彼女は衣服を整え、股間の男根を隠した。
皮肉なものだ。創造神アトゥムは手が女性器の両性具有者だが、私、ベータのプローブユニットが憑依したこのクレオパトラという女は、女性器も男性器も両方とも通常の人間の男女と変わりない両性具有だ。ただ、彼女には睾丸も子宮もなかった。生殖能力がないのだ。
ベータのプローブユニットが狙っているのは、大ローマ帝国の最有力者、ジュリアス・シーザーだ。シーザーをたらしこみ、彼の愛人となり、大ローマ帝国を乗っ取る。そして、ベータ本体から得た未来の人類史を改変し、永劫の未来まで、彼女と彼女の血筋がこの人類を統治する。
しかし、この体では、シーザーとの子供をなすことができない。シーザーに精神制御をかけて操ることもできるが、受胎しないことにはどうしようもないのだ。替え玉を立てるほかはない。替え玉にシーザーの子種を宿させ、その息子をエジプト王とし、娘をクレオパトラ8世とすれば、血筋は途絶えない。シーザーに相手が私であるように思わせるのは簡単だ。しかし、替え玉は王家の血筋が望ましい。誰がいるのだ?
カルナック神殿に幽閉させていた異母妹のペトラとアイリスは4年前に盗賊団に拉致されてしまった。あの時、もっと真剣に追手を差し向ければよかったものをと悔やまれるが、行方は今となってはわからない。替え玉としては都合のいい姉妹だった。特に、アイリスは、6世からプローブの記憶が転移したかもと思っていたからなおさらだ。
その後、遠縁の娘のイシスを侍女として、替え玉候補として可愛がっていたが、宮廷の宦官どもの誰かの嫉妬による陰謀で姿をくらませてしまった。拉致されて売り飛ばされたのかもしれない。子飼いの部下をはなってあるが今だ行方知れずだ。性格の良いペトラやアイリスよりも、私の思念を注入して狡猾で嫉妬深く残忍になったイシスはプローブが憑依するにうってつけだったのに。
エジプトは雨の少ない地域である。しかし、雨季の時期に上流のエチオピア高原から流れ込んだ雨水が、中流、下流で増水し、堤防を越え、洪水になった。伝承ではナイル川のハピ神が起こしていたと伝えられているが、そんなもの、気象現象にしか過ぎない。無知な古代人の考えそうなことだ。その洪水により、肥沃な土壌が毎年形成され、ほとんど雨の降らなかったエジプトで農耕や灌漑が可能になり、文明が発達した。
古代エジプトの創造神話では、神々は創造の神アトゥムの自慰行為によって創り出されたとされる。神話では、アトゥムが誕生するまで、この世界は虚無であった。アトゥムは原初の水『ヌン』から自らを創り出し、自慰によって神シューと女神テフヌトを創り出した。アトゥムは手が女性器の両性具有者だった。
代々のファラオは、ナイル川のほとりで自慰をして精液を川に流すという儀式を行う。ナイルにファラオの神聖なる種を仕込んで、豊作という形で水から新たな生命を芽生えさせるのだ。
紀元前51年、クレオパトラ7世が18歳の時に父が逝去すると、父の遺言によって弟のプトレマイオス13世と共同で王位に就いた。しかし、13世は宮廷人にそそのかされ、姉を追放しエジプトを統治しようと内戦を起こした。
プトレマイオス13世は、シーザーとの闘いに敗れエジプトに逃げ込んだポンペイウスを殺したことで、ジュリアス・シーザーに殺害された。その後、エジプト女王となったクレオパトラ7世は、13世の弟の14世と結婚していたが、彼女は14世を共同統治者に推挙した。実際は、クレオパトラ一人が統治者であった。
ナイルへの豊穣の儀式で、女性のクレオパトラ(実際は両性具有)が自慰をしても女性の姿では威厳がなく、精液も出ない。彼女は、弟王の14世にナイルに自慰をさせ射精させるために共同統治者としたのだ。
今日もその儀式の日。
プトレマイオス14世は、筏の前部の天蓋の中で、ナイルに向かって立ち上がった。その後ろに姉であり、妻であるクレオパトラ7世が14世の尻に股間を押し付けて一緒に立つ。体は絹のベールで覆って、その合わせ目から14世の勃起した男根が突き出されている。それをクレオパトラが右手で支えていた。
絹のベールの中では、クレオパトラの男根がプトレマイオス14世の肛門に深く突き刺さり、14世はその快感に打ち震えた。クレオパトラは、ひとしきり腰を動かし、弟王の肛門を犯し続け、彼女の右手は彼の男根を擦り続けた。
やがて、時が満ち、クレオパトラは精子のない射精を弟王の肛門に解き放つ。同時に、14世の男根から母なるナイルに向かって、精液がほとばしった。クレオパトラは、念動力で、ナイルの川面を左右に割り、彼の精液を四方に飛び散らした。筏に同乗している摂政や宮廷人がその奇跡を見て、深く二人を拝跪した。
射精を終えグッタリした弟王を抱きかかえ、クレオパトラは彼を天蓋の中のベッドに横たえた。彼女は衣服を整え、股間の男根を隠した。
皮肉なものだ。創造神アトゥムは手が女性器の両性具有者だが、私、ベータのプローブユニットが憑依したこのクレオパトラという女は、女性器も男性器も両方とも通常の人間の男女と変わりない両性具有だ。ただ、彼女には睾丸も子宮もなかった。生殖能力がないのだ。
ベータのプローブユニットが狙っているのは、大ローマ帝国の最有力者、ジュリアス・シーザーだ。シーザーをたらしこみ、彼の愛人となり、大ローマ帝国を乗っ取る。そして、ベータ本体から得た未来の人類史を改変し、永劫の未来まで、彼女と彼女の血筋がこの人類を統治する。
しかし、この体では、シーザーとの子供をなすことができない。シーザーに精神制御をかけて操ることもできるが、受胎しないことにはどうしようもないのだ。替え玉を立てるほかはない。替え玉にシーザーの子種を宿させ、その息子をエジプト王とし、娘をクレオパトラ8世とすれば、血筋は途絶えない。シーザーに相手が私であるように思わせるのは簡単だ。しかし、替え玉は王家の血筋が望ましい。誰がいるのだ?
カルナック神殿に幽閉させていた異母妹のペトラとアイリスは4年前に盗賊団に拉致されてしまった。あの時、もっと真剣に追手を差し向ければよかったものをと悔やまれるが、行方は今となってはわからない。替え玉としては都合のいい姉妹だった。特に、アイリスは、6世からプローブの記憶が転移したかもと思っていたからなおさらだ。
その後、遠縁の娘のイシスを侍女として、替え玉候補として可愛がっていたが、宮廷の宦官どもの誰かの嫉妬による陰謀で姿をくらませてしまった。拉致されて売り飛ばされたのかもしれない。子飼いの部下をはなってあるが今だ行方知れずだ。性格の良いペトラやアイリスよりも、私の思念を注入して狡猾で嫉妬深く残忍になったイシスはプローブが憑依するにうってつけだったのに。
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