【完結】佐渡ヶ島のエレーナ少佐 (近未来戦記①)

✿モンテ✣クリスト✿

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第2章 ロシア軍停戦、北朝鮮のミサイル攻撃

第19話 羽生とアニー、レールガン車輌

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「こちら、レールガン、羽生!」
「羽生さん!」鈴木が助かった!と思って叫ぶ。
「こっちもBMDにリンクしている。状況は把握、座標確認済み。HGV軌道データ更新!佐渡の電力グリッド、市内への送電停止!南禅二佐、変電所は?」
「羽生二佐、系統確認。充電電位OK!発電所、フルパワーだ!いったれ!」南禅がレーダーサイト変電所でレールガンへの給電を開始して。
「キャパシター充電中!・・・充電率上昇!」充電率のメーターを見つめてワクワクする羽生。
「たのんますよ!羽生さん!」と鈴木。

「アデルマン大尉、エレーナ少佐、こちら、レールガンのアナスタシア少尉、HGV軌道がブレてます!追尾は大丈夫!・・・神様!」
「アニー、もう、盛大に神でも仏でもお祈りしてちょうだい!」エレーナもお祈りを始めた。
「了解!羽生二佐、頑張って!」
「任せておけ!エネルギー充填120%!耐ショック、耐閃光防御!うちぃ~かた、はじめぇ~!・・・これ、一回、やってみたかったんだよ!」
「・・・羽生さん、ライブ中継中です!音声が入りますよ!」とアニー。
「・・・おっと、すまん・・・」

「羽生二佐、H-2が近いです!」
「よし!レールガン、投射、間隔10秒」

 低音のブーンという唸りとともに、バシュッと砲身を通過して砲弾が射出された。砲弾は長さ70センチの円錐形で尾翼がついている。HVP(Hyper Velocity Projectile)と呼ばれる。発射時には外装パーツでおおわれていて、発射後外装パーツは外れる。
 
 火薬は搭載していない。理論上、マッハ7.3、秒速2,500メートルを超えれば、ほとんどの金属構造物を気化させることができるからだ。砲弾は自動装填。

「羽生二佐、うまくいくといいですね」とアニー。
「遠距離だから時間差が有る。射程550キロで標準、第一弾。初速4キロで、約130秒、その間に向こうがマッハ5だとすると、204キロ進んでいるから、着弾位置は約300キロ地点。直線で対峙した場合はね。同じ初期値で10秒後に第二弾。距離530キロ。約125秒、向こうは221キロ進んで、着弾位置は約280キロ地点。これを繰り返して、12発」

「12発目の最後の弾で相手は200キロ。ここまでに2分で到達。後は、12発のデータで初期値を修正、乱れ打ちだ。向こうがこっちに弾着して我々が一巻の終わりになるか、何発目かで撃墜できるか。550キロ地点から5分間の勝負。初弾を発射後、AIが補正できるのが75秒後だ。既にその段階で、初期値の状態で7発撃っている」

「羽生、こちら南禅。変電所からレーダー管制室に移動した。初弾弾着まで5、4、3、2、1、外した。AI補正開始。二弾目も外れ。惜しい!三弾目、四弾目、五弾目・・・よし!八弾目、撃墜!やったぞ!『ちょうかい』に向かっていたH-2、撃墜!次、ここに向かっているH-6、行くぞ!」

「こちらアナスタシア、H-6、データ願います」とレーダーサイトに指示するアニー。「よし!追尾中!」
「データ、AI補正中。よし、データ、送った!今度も当たれ!」
「砲身回頭、誤差修正、射出角よし、投射・・・投射・・・投射・・・投射・・・投射・・・投射・・・」

「羽生二佐、砲身温度、650℃、700℃、まだ上がります!」アニーが叫ぶ。
「イカン!冷却システムが・・・さすがに試作品だとうまくいかんな」
「750℃、800℃、850℃、900℃、1000℃・・・オーバーヒートです!」
「南禅、どうだ?」
「・・・初弾・・・二弾目、三弾目、四弾目、五弾目・・・十二弾目・・・ダ、ダメだ!全弾、外した!」
「こっちもダメだ!砲身が焼き付いちまった!もう、撃てん!」

「エレーナ、滑空弾が一発、撃墜できないで残っちまった」
「レールガンはもう撃てないの?」
「砲身が焼き切れちまったと羽生中佐が言っている」

「三佐!」とアデルマン大尉が叫んだ。「ジャンプ軌道予想地点まで後二分であります」
「そうか。これで終わりか・・・」
「ヒロシ、あなた、もうダメね」
「そのようだな、エレーナ・・・」
「短い間だったけど、幸せだったわ。私に幸せをくれてありがとう。愛してる、ヒロシ」
「何か、打つ手が・・・もう、なさそうだ・・・エレーナ、愛してるよ」
「秋葉原とディズニーランドに行きたかったんだけど・・・」
「天国にもあるだろう、秋葉原ぐらい」

 管制室のみんなは、二分が数時間に思えてきた。「・・・あれ?少佐!三佐!滑空弾の軌道が変化してます」とアデルマン大尉。
「何?」
「ぐるっと、大回りでUターンしています。そんなバカな!」
「え?どういうことなの?」



「これで一巻の終わりか」と羽生がつぶやく。「あと残り1発なのになあ。砲身が焼け切れるなんて・・・」
「羽生中佐、まだ手はあるはずです」とアナスタシア少尉。
「何が考えられるんだね?」

 アニー、考えろ。考えろ。何か忘れているぞ。考えろ、と自分の頭を叩いた。ロシアの滑空ミサイルYu-71をパクった中国のWu-14のコピーがこの北朝鮮の滑空ミサイルだとすると・・・もしかすると・・・

 アニーは、砲身が焼け切れたレールガン車輌から駆けだした。「アニー、どこに行くんだ?」と羽生が怒鳴る。「S-400を管制する指揮通信車です!1号車です!まだ手があるかもしれません!」「なんだと?」と羽生もアニーを追いかける。

 アニーは通信車の電源を入れた。パソコンを立ち上げる。中佐も通信車のモニターを調整した。滑空ミサイルがモニターにプロップされた。
 
「ロシアの滑空ミサイルYu-71をパクった中国のWu-14のコピーがこの北朝鮮の滑空ミサイルだとすると、もしかすると・・・」
「もしか?」
「羽生二佐、管制誘導プロトコルを中国がいじっていないで、北朝鮮もそのままだとすると・・・このS-400の指揮通信車のPCの中に、確か、私、Yu-71の管制誘導プロトコルをコピーしていたんですよ」
「よく、そんなものをコピーしてたな」
「プロトコルの改良ができないかな?って思いまして・・・どのフォルダーだったけかな?・・・あった、これだ。ミサイルの指令誘導(Command Guidance)の周波数は・・・10.298GHz・・・ID?・・・ミサイルのID?」

 アニーがPCの画面を見て首を捻っていると「アニー、これじゃないか?」と羽生が指揮通信車の画面のミサイルの表示にDF-ZF-3559とあるのを指さした。

「え~、そんなところになんで表示されているの?おまけに『DF-ZF』って人民解放軍のものじゃないの?」
「同じシステムだから、検知したのかも・・・もう、これを使うしかないだろ?」
「ラジャ、DF-ZF-3559・・・ダメ!」
「ハイフンを除いて入力したら?」
「え?そんなことで?DFZF3559・・・あ!ハックできた!」
「おおお!アニーすごいぞ!」
「目標変更・・・できる?・・・二佐、目標変更可能!」
「で?」
「緯度経度を入力!どこだ?どこにする?・・・頭が回んない!・・・えっと、北の誘導電波の発信源は?・・・N39°00'59.9"、E125°50'52"?、ここね。コピペして、もう、これ入力しちゃえ・・・よし、スラスター噴射開始・・・戻ったわ・・・」

「回避できたのか?アニー?・・・本当だ。こっちのモニターに出てる。反転してるぞ!」
「やった!」
「でも、どこに?」
「とっさに、誘導電波の出ている緯度経度データを打ち込んだんですが・・・N39°00' 59.9"、E125°50' 52"ってどこ?ええっと、ええっと、どこ?・・・あ!・・・ぴょ、平壌の美林《ミリム》空軍基地・・・です」
「平壌?平壌にUターンさせちゃったの?」
「平壌の市街地近傍に向かいます。え~、美林ミリム空軍基地は、平壌中央駅から・・・10キロの地点です」
「目標を解除して、無人地帯に向かわせられないか?」
「あの・・・ロック済み・・・解除不能であります!」
「平壌の人口は・・・三百万人!」
「二佐、まずいですね?私、大量虐殺をしてしまうのでありますか?」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「エレーナ少佐、全弾撃ち尽くして要員が退去したS-4001号車の指揮通信車が稼働しております」
「なんだって?通信をつなげ!S-4001号指揮通信車!こちら、レーダー管制室、誰かいるのか?何をしている?応答せよ!」
「こちら、1号指揮通信車、アナスタシア少尉であります」
「アニー、何かしたのか?」
「北の最後の滑空ミサイルをハックいたしました」
「貴官がか?!どうやって?」
「ロシアのYu-71の管制誘導プロトコルを使用いたしました」
「でかしたぞ、アニー」

「それがですね」とアニーが説明しようとすると、横から羽生が「エレーナ少佐、羽生だ。アニーと一緒にいる。それがだね、目標変更の緯度経度座標をとっさのことで、北の誘導電波の出ている美林《ミリム》空軍基地、平壌中央駅から10キロ地点を入力してしまって、今、滑空弾は平壌に向かって反転しているんだ」とアニーにウィンクして説明した。

「え?平壌でありますか?」驚くエレーナ。
「そう、平壌なんだよ」
「それじゃあ、もしも、戦術核を搭載していたら・・・」
「平壌上空で爆発してしまって、市民三百万人が犠牲になる」
「解除信号は?」
「やってみたが、解除できん」

「エレーナ少佐、鈴木三佐、滑空弾が朝鮮半島西岸から200キロです」
「あと、3分じゃないか?」
「あ!速度が落ちてきました!」
「どういうことだ?」
「燃料切れ・・・じゃないですか?」
「やった!」
「急激に高度が落ちてます。水面まであと30秒・・・20秒・・・10秒・・・着水・・・爆発は・・・なしです」

「聞いたか?アニー、ラッキーだったな。うまくやったよ。キミは英雄だ!」と羽生がアニーの肩をポンポン叩いた。
「中佐、幸運でありました。もうちょっとで、歴史に残る大量虐殺者になるところでした」
「まあ、北も佐渡ヶ島住民をレーダー基地もろとも大量虐殺しようとしたんだ。撃ち落とした弾道ミサイル、滑空ミサイルだって、目標は東京首都圏はじめ、関西圏、自衛隊基地、在日米軍基地だ。やつらは大量虐殺を目論んだんだ。正当防衛と言えたと思うよ。ま、その時は私が緯度経度を入力したと言い逃れできたと思うぞ」
「そんな・・・事実を話してますよ、その時は。でも、平壌に命中していたら寝覚めが悪かったと思いますわ」
「だから、ラッキーだよ」

「・・・ああ、興奮してしまって・・・」
「うん?どうした?」
「・・・誰かに抱かれたいです!」
「そうか。死の瀬戸際を味わえばそうなるかもしれん。待ってろ」とトランシーバーを取り出した。

「こちら、羽生、変電所の小野寺三尉、どうぞ」
「小野寺であります。何が起こっているんでしょうか?」
「ああ、一件落着だ。今、アナスタシア少尉をそっちに送るから、彼女に聞け!」
「ハ、ハイ!」
「それで、仮眠室かどこかで、彼女を介抱してやれ!」
「アナスタシア少尉は負傷したのですか?」
「負傷したとも言える。小野寺、少尉といつもしていることを今度は時間をかけてやってやれ」
「ハ、ハイィ?」
「少尉が誰かに抱かれたいと言っているんだ!抱いてやれ!私が許可する」
「・・・」
「返事は?」
「りょ、了解であります」
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