量子の世界 (南少佐シリーズ③)ー アインシュタインなどの大学者を向こうに回して量子力学の深淵に挑む二人

✿モンテ✣クリスト✿

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欧州編

第1話 欧州の暗闘1

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 1904年2月8日、日本海軍が仁川沖でロシア艦隊に奇襲を仕掛け、日露戦争の火蓋が切られた。この戦争は、三国干渉後の満洲と朝鮮半島の支配権を巡る争いが根底にあり、極東の覇権を賭けた両国の衝突だった。陸では遼東半島や奉天が血に染まり、海では日本近海で艦隊同士が砲火を交えた。しかし、戦場は極東に留まらず、ロシア帝国の心臓部である欧州にも及んでいた。

 ストックホルムの中立的な空の下、明石元二郎大佐は開戦直後の1904年2月10日に駐ロシア公使館の業務を引き継ぎ、スウェーデンを拠点とした秘密工作に着手した。彼の背後には参謀本部次長・児玉源太郎の信頼があり、開戦前日の1月には「ペテルブルク、モスクワ、オデッサに非ロシア人の情報提供者を2名ずつ配置せよ」との指令電報が届いていた。さらに、ストックホルム到着時には児玉からの激励が響いた。「お前を信じているぞ」その言葉が、明石大佐の胸に重く刻まれた。

 明石大佐の任務は明確だった。ロシア帝国の後方を撹乱し、反政府勢力や民族独立運動を支援することで、極東戦線への兵力集中を阻む。彼はフィンランドの革命家コンニ・シリヤクスやポーランドの民族主義者ロマン・ドモフスキ、社会革命党のエヴノ・アゼフらと接触し、資金と武器を渡した。1904年3月15日、ストックホルムの薄暗いカフェでシリヤクスと会った明石大佐は、木製のテーブルに地図を広げた。「フィンランドの鉄道を破壊し、デモを先鋭化させろ。ロシア軍の足を止めれば、日本軍の負担が減る」シリヤクスは目を輝かせ、「我々の自由と貴国の勝利が重なるなら、喜んで協力する」と応じた。その夜、明石大佐は1000ルーブルの札束と拳銃数丁を渡し、フィンランドでのサボタージュを命じた。



 一方、南辰之助少佐は1904年5月1日、参謀本部からの新たな指令を受け、上海の租界を後にした。「パリへ赴任し、明石大佐を補佐してロシアの後方撹乱を進めよ」彼は正妻クララ、養女であり実は第二婦人であるヘレナ、二歳になった千鶴と辰麿たつま、そしてメイドの李秀蘭リー・シューランを連れて欧州へ向かった。上海での諜報活動で培った鋭い洞察力を携え、南少佐一行は5月10日、パリのサンジェルマン地区に到着した。彼は家族のために瀟洒な三階建ての邸宅を借り、クララとヘレナに子供たちの世話を託し、李秀蘭リー・シューランに家事を任せた。クララは窓辺に立ち、「旦那様、パリは美しいけれど、心が落ち着かないわ」と呟いたが、南少佐は静かに手を握り、「任務が終われば、また家族で穏やかな日々が戻る」と約束した。

 南少佐の最初の仕事は、明石大佐との合流だった。1904年5月11日、パリの邸宅を訪れた明石大佐は、南少佐を暖かく迎え入れ、「君の上海での働きは聞いている。ロシアを内側から崩すには、君のような男が必要だ」と握手を交わした。南少佐は静かに頷き、「大佐の指示に従い、全力を尽くします」と答えた。応接室では、ヘレナが優雅に紅茶を運び、「お仕事なら私も手伝いたいわ」と笑顔を見せた。明石大佐は目を細めて、「君の魅力は別の場面で活きるよ」と冗談めかした。南少佐は家族を背に、任務への決意を新たにしたが、この時、クララの瞳には別の炎が宿っていた。

 クララの心には、1902年にエジプトのポート・サイドで受けた深い傷が刻まれていた。その年、彼女はロシア人諜報員イワン・ペトロフ中尉に拉致され、郊外の倉庫で凌辱を受けた。貞節で控えめな彼女にとって、それは魂を踏みにじる屈辱だった。ロシア帝国への恨みは、彼女の敬虔な信仰さえも揺るがすほど深く、以来、ロシア人を前にすると静かな怒りが湧き上がった。この日、明石大佐のロシア撹乱計画を耳にしたクララは、ある大胆な提案を口にした。

 「旦那様、明石大佐、私に一案があります」クララは琥珀色の髪を背に流し、淡いグリーンの瞳を明石大佐に向けた。「ロシア貴族を直接籠絡し、機密を奪うのです。私とヘレナがパリ社交界にデビューし、ロシア帝国陸軍の大佐とその婦人を誘惑します。李秀蘭リー・シューランに彼らを絡め取らせれば、満洲での戦闘計画が手に入るはずです」彼女の声は震えつつも決然としていた。明石大佐は一瞬驚き、続けて笑みを浮かべた。「クララ夫人、それは大胆だ。しかし、効果的かもしれない」南少佐は眉をひそめたが、クララの瞳に宿る復讐の意志を見て口を閉ざした。

《《クララの葛藤と李秀蘭リー・シューランへの命令》》

 その夜、クララは自室で一人、膝をついて祈りを捧げた。「主よ、私の罪をお許しください。復讐は貴方の教えに反するけれど、ロシアの悪を許すことはできません」彼女の信仰は貞節を重んじ、肉欲を遠ざけるものだった。しかし、ロシアへの憎悪はそれを超え、彼女を大胆な策へと駆り立てた。クララは李秀蘭リー・シューランを呼び、静かに告げた。「秀蘭、ロシア貴族を籠絡するのに、あなたの体が必要なの。ニコライ・ムラヴィヨフ大佐を誘惑し、彼を庭園で絡め取ってほしい」彼女の声は震え、心の中で「私がこんな汚れた道を選ぶなんて」と自らを責めた。だが、復讐の炎がその罪悪感を焼き尽くした。

 李秀蘭リー・シューランは目を伏せ、しばらく黙った。彼女は南少佐への秘めた想いを抱きつつ、彼を誘惑した過去を悔いていた。しかし、クララの瞳に宿る苦悩と決意を見て、彼女は小さく頷いた。「奥様の復讐が叶うなら、私の体を差し出します。南少佐のためにも、ロシアを倒す一助になりたい」彼女の声は静かだが力強く、クララの手を握って約束した。クララは涙をこらえ、「ありがとう、秀蘭。あなたの犠牲を忘れない」と呟いた。

 明石大佐は巨額の資金をクララに渡し、パリ社交界へのデビューを約束した。1904年5月15日、彼はフランス貴族に書簡を送り、クララとヘレナを「南アフリカから来た富農の令嬢、クララ・ヴァン・デル・メルウェとヘレナ・ヴァン・デル・メルウェ」として紹介する手配を整えた。南アフリカ出身という設定は、英露間の緊張を背景に、ロシア貴族に異国情緒と中立的な印象を与え、疑いを薄れさせる策だった。クララは妖艶で浮ついた上流階級婦人を演じ、ヘレナはその蓮っ葉な本性を活かし、李秀蘭リー・シューランはクララの命令を受け入れた。標的は、パリ駐在のロシア帝国陸軍大佐、ニコライ・ムラヴィヨフとその妻エカテリーナ・ムラヴィヨフに定められた。



 1904年5月25日、パリのオペラ座近くの豪華なサロンで、クララとヘレナはデビューを果たした。クララは深紅のドレスに身を包み、豊満な胸元を強調しつつ、扇を手に妖艶に微笑んだ。ヘレナは碧眼を輝かせ、薄緑のドレスで軽快に振る舞い、貴族たちの視線を集めた。ニコライ・ムラヴィヨフ大佐は、50代半ばの厳つい顔立ちに軍服を纏い、妻エカテリーナを連れて現れた。エカテリーナは40代の美貌を保ち、金髪を高く結い、白いドレスで気品を漂わせていた。

 クララはニコライに近づき、「大佐閣下、パリは退屈でして。ロシアの勇壮な話でも聞かせていただければ」と囁いた。ニコライは彼女の色香に目を奪われ、「南アフリカの富農の娘か。英国の友人も多いのだろうな」と笑った。クララは「ええ、少しだけ」と曖昧に答え、彼の関心を引いた。一方、ヘレナはエカテリーナに絡みつき、「奥様、パリの夜は私と一緒に楽しみましょう」と誘い、彼女の手を軽く握った。計画は順調に進み、李秀蘭リー・シューランはメイドとして控え、機会を窺った。

 数日後の6月1日、ムラヴィヨフ夫妻を南家の邸宅に招いた晩餐会が開かれた。クララはニコライにワインを勧め、ヘレナはエカテリーナとダンスを踊り、雰囲気を和やかに保った。食後、クララはニコライに、「大佐、庭園の夜景が素晴らしいんです。少しお散歩でもいかがですか」と提案した。ニコライは「美しい令嬢と二人なら喜んで」と応じ、クララに促されて庭へ向かった。しかし、クララは「少し用事を思い出したわ。メイドがご案内します」と言い、李秀蘭リー・シューランを呼び出した。ニコライは一瞬戸惑ったが、クララが「彼女は私の信頼する者です」と微笑むと、安心して頷いた。

 李秀蘭リー・シューランはニコライを庭園に導くため、慎重に言葉を選んだ。邸宅の裏口を出たところで、彼女は「閣下、庭の噴水はパリでも評判なんです。私が道案内します」と柔らかく言った。ニコライが「ほう、それは楽しみだ」と興味を示すと、彼女は一歩先を歩き、彼を誘導した。庭園の小道を進む中、李秀蘭リー・シューランは「閣下、こんな静かな夜は珍しいですね」と話題を続け、ニコライの警戒心を解いた。薄暗い噴水の近くに着くと、水音が静かに響き、湿った空気が二人の肌を包んだ。



 李秀蘭リー・シューランはニコライのそばに立ち、「閣下、パリの夜は冷えますね。少し温まりませんか」と微笑んだ。ニコライは彼女の黒い髪と細い指先に目を奪われ、「君のような美女がそばにいれば寒さも忘れる」と低く笑った。彼女は彼の軍服の襟にそっと触れ、「大佐のような立派な方に褒められると嬉しいです」と囁き、距離を縮めた。ニコライは酒の勢いもあり、彼女の腰に手を回し、薄いドレス越しに臀部を軽く撫でた。李秀蘭リー・シューランは目を伏せ、「閣下、少し大胆ですね」と小さく笑い、彼の気分を高揚させた。

 ニコライの手がドレスの裾に伸びると、李秀蘭リー・シューランは「ここでは人目が…」と呟きつつも抵抗せず、彼の動きに合わせた。彼は「誰も来ないさ」と唸り、ズボンの前を緩めた。硬くなった陰茎が現れると、彼女は跪き、熱い舌で先端を優しく舐めた。ニコライが「うっ…」と呻き、彼女の髪を掴んで顔を押しつけると、李秀蘭リー・シューランは喉奥まで咥え込み、唾液が滴って地面に落ちた。舌が陰茎を這い回り、淫靡な音が庭に響いた。ニコライは快感に目を閉じ、「もっとだ…」とせがんだ。

 その時、エカテリーナが庭に近づき、茂みから二人の姿を盗み見た。夫が南少佐の黄色人種のメイドと絡まる光景に激怒しつつ、彼女の体は熱く疼いた。晩餐会でのヘレナとの親密な会話やワインの影響で心が乱れ、「ニコライ…!」と叫びそうになった瞬間、嫉妬と欲望が混じり合い、理性を失った。エカテリーナはドレスをたくし上げ、李秀蘭リー・シューランの背後に跪いた。彼女の手が李秀蘭リー・シューランの秘部に伸び、濡れたそこを指で弄ぶと、李秀蘭リー・シューランが「あぁ…!」と喘いだ。ニコライは妻の乱入に驚きつつも興奮し、李秀蘭リー・シューランの口から陰茎を引き抜いてエカテリーナに迫った。

 エカテリーナは夫の陰茎を握り、「私を無視するなんて許さない」と恨みがましく呟き、それを自らの秘部に導いた。ニコライが妻を芝生に押し倒し、激しく突き上げると、彼女の白い太腿が震え、愛液が草を濡らした。李秀蘭リー・シューランは二人の交合に目を奪われつつ、ニコライの背に手を這わせ、彼の動きに合わせて喘ぎを漏らした。エカテリーナが「もっと…!」と叫び、夫とメイドの間で絶頂に達すると、ニコライもまた彼女の中で果て、汗と吐息が庭に漂った。
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