量子の世界 (南少佐シリーズ③)ー アインシュタインなどの大学者を向こうに回して量子力学の深淵に挑む二人

✿モンテ✣クリスト✿

文字の大きさ
9 / 16
独逸編

第5話 欧州の嵐3

しおりを挟む


 社交界での出会いをきっかけに別の貴族と縁が生まれ、千鶴はハインリヒ・フォン・シュレースヴィヒ=ホルシュタイン(1899-1970)、辰麿たつまはエリザベート・フォン・ザクセン(1903-1976)と1926年に結婚した。しかし、物理学に理解のない相手との溝は徐々に広がり、1928年に離婚に至った。

 千鶴とハインリヒの結婚生活は当初、華やかな社交界での共演で彩られていた。しかし、ハインリヒが千鶴の研究に無関心な態度を示し始めた頃から、亀裂が現れ始めた。ある晩、千鶴が「光量子仮説の新論文を書き上げたの」と興奮気味に話すと、ハインリヒはワイングラスを手に持ったまま、「そんな数字遊びより、舞踏会のドレスでも考えなさい」と冷たく言い放った。

 千鶴は目を丸くし、「私の人生を馬鹿にするの?」と声を荒げ、テーブルを叩いた。ハインリヒは「君は貴族の妻なんだ。学者気取りはみっともない」と言い返し、二人は口論が絶えなくなった。溝は深まり、ハインリヒは千鶴の情熱を「女の癖に生意気だ」と嘲笑うようになり、千鶴は「あなたには私の魂が理解できない」と吐き捨てる日々が続いた。

 関係修復を試みたハインリヒは、ある夜、酔った勢いで千鶴を寝室に引きずり込んだ。「君は俺の妻だろ」と荒々しく言い、彼女のドレスを無理やり引き裂いた。千鶴は「やめて!」と叫び、彼の手を振り払おうとしたが、ハインリヒは彼女の腕を押さえつけ、首筋に唇を押し当てた。彼は硬くなった陰茎を彼女の太腿に擦りつけ、力任せに秘部に侵入しようとした。

 千鶴は涙を流し、「こんな愛はいらない」と呻きながら抵抗したが、ハインリヒは「黙れ、義務を果たせ」と吐き捨て、無理やり彼女を貫いた。彼の動きは乱暴で、千鶴の体を支配するだけの行為に終始し、彼女の心は冷え切った。行為が終わり、彼が鼾をかき始めると、千鶴はベッドの端で体を丸め、深い悲しみに沈んだ。彼女の心は「愛も理解もないこの男と、どうして共にいられるの」と慟哭し、1928年、娘・瑠璃るりを連れてハインリヒと別れ、自由と孤独を選んだ。

 一方、辰麿たつまとエリザベートの関係も冷えていく一方だった。結婚当初、エリザベートは辰麿たつまの静かな知性に惹かれていたが、彼が研究所から帰宅しても論文や数式に没頭する姿に苛立ちを募らせた。「あなたは私より黒板の方が大事なのね」と皮肉を言うエリザベートに、辰麿たつまは「研究は僕の生きがいだ」と静かに返すだけだった。

 ある夜、エリザベートが「子供でも作れば、あなたも家庭を顧みるかしら」と提案すると、辰麿たつまは「今は重力場の統一理論に集中したい」と無感情に答え、彼女の顔が凍りついた。会話は減り、寝室も別々に。エリザベートが「私、あなたに愛されてるのかしら」と涙ながらに問うと、辰麿たつまは「君を不幸にしたくないだけだ」と目を逸らした。

 しかし、辰麿たつまは自分の態度が冷たすぎたと反省し、ある夜、エリザベートの涙に心を動かされた。「君を愛してるよ」と呟き、彼女を抱き寄せた。普段慎ましやかなエリザベートがその夜、初めて乱れ、辰麿たつまと淫らな情交を繰り返した。

 彼女は彼のズボンを下ろし、硬くなった陰茎を両手で包み込むと、ためらいがちに舌を這わせ、先端を唇で軽く吸った。辰麿たつまが低く呻くと、エリザベートは大胆になり、彼を喉奥まで咥え込み、熱い液体を飲み干した。辰麿たつまは彼女のドレスを脱がせ、秘部に指を滑り込ませると、ゆっくりと円を描きながら敏感な部分を探り当てた。エリザベートが「そこ…!」と声を上げると、彼は舌でその場所を執拗に愛撫し、彼女を震わせた。

 やがて彼女を仰向けにし、膝を広げてゆっくりと侵入すると、エリザベートは彼の背中に爪を立て、「もっと!」と叫びながら何度も絶頂を迎えた。二人は関係が修復したかに思えたが、貴族生活でまともな教育を受けていなかったエリザベートは、辰麿たつまの研究をやはり理解できなかった。

「物理学以外でも世界は謎に満ちているのよ」と彼女が言うと、辰麿たつまは「僕には物理学しかない」と苦悩し、溝は埋まらなかった。結局、1928年に離婚に至り、息子・悠馬ゆうまの親権と養育を巡って対立したが、最終的にエリザベートが折れ、悠馬ゆうまを手放した。「あなたは物理学、物理学と言うけど、それはお姉様の千鶴の存在もあるからではないかしら?」と彼女に言われ、辰麿たつまは異母姉への感情に気づき、「まさか、僕が千鶴を?」と戸惑った。



 離婚後、千鶴と辰麿たつまはベルリンに居を構え、瑠璃と悠馬を育て始めたが、研究と育児の両立に疲弊した。瑠璃が夜泣きし、悠馬が玩具を投げて騒ぐ中、千鶴は「私たちだけでどうやって育てるの」と嘆き、辰麿たつまは「誰か助けが必要だ」と呟いた。

 二人は日本に手紙を書き、信頼する李秀蘭リー・シューランを呼び寄せることにした。1928年秋、38歳の李秀蘭リー・シューランがベルリンに到着し、再会の日、千鶴は「秀蘭シューラン、やっと会えた」と涙を浮かべ、辰麿たつまは「ありがとう、助かるよ」と静かに握手を交わした。彼女はすぐに子供たちの世話と家事を引き受け、二人の負担を軽減した。

 千鶴と辰麿たつまは、ベルリンの邸宅と研究所を行き来する生活を始めた。朝、千鶴が「光子の論文、今日仕上げるわ」と言い、辰麿たつまが「重力場の計算を進めないと」と呟きながら出かけ、夜遅くに疲れ果てて帰宅する。

 夕食の席では、李秀蘭リー・シューランが煮込み料理を出し、千鶴が「懐かしい味ね」と笑い、辰麿たつまが「日本の味だ」と頷く。李秀蘭リー・シューランは瑠璃にスプーンで食事を与え、悠馬が「おいしい!」と叫ぶと優しく頭を撫でた。彼女は昼間、瑠璃を膝に抱き絵本を読み、悠馬と積み木で遊び、二人が研究に没頭する間、子供たちを温かく見守った。

 1929年のある夜、ベルリンの邸宅で、千鶴と辰麿たつまは禁断の一線を越えた。薄暗い寝室で千鶴は「私たち、似すぎてるよね。誰も分かってくれない」と呟き、辰麿たつまの胸に手を這わせた。彼女の心は、幼い頃からの弟への愛情が、離婚後の孤独とエリザベートとの情交の記憶で揺らぎ、「辰麿たつまは弟じゃない、男だ」と感じ始めた。

 ハインリヒとの冷たい結婚生活の中で抑えていた欲望が、辰麿たつまの静かな瞳に宿る知性を見て燃え上がり、「彼なら私を理解してくれる」と確信した。辰麿たつまはエリザベートの言葉「千鶴の存在もあるから」が頭から離れず、「千鶴への気持ちは尊敬だけじゃないのか?」と自問し続けた。彼女の熱い視線と柔らかな唇が首筋に触れると、「これは許されない」と抵抗しながらも、心の奥で「千鶴を愛してるのかもしれない」と認める自分がいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...