見習い陰陽師の高校生活

風間義介

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再臨譚

24、帰還した使鬼たちからの報

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 その日の夜。
 護のもとに白桜と黄蓮がようやく戻ってきた。

「護」
「今戻った、主」
「……随分、時間がかかったな?」

 安どの表情を浮かべながらも、護は帰ってきた二体に問いかけた。
 その問いかけに、二体はすまなそうに神戸を垂れ。

「あぁ。予想の斜め上をいっていてな」
「我らが見ていることはばれていないとは思うが、果たして本当のところはどうなのか」
「……詳しく聞かせろ」

 一応仮にも、護が飛ばしたこの二体は五色狐たちの中でも一番手と二番手。
 特に、五行思想において土に属する『黄』をその名に関する黄蓮は、五穀豊穣を司る稲荷神の性質に最も近い。
 稲荷の化身は狐とされている。
 護はその身に祖先である神狐、葛ノ葉の力を宿しているため、護と霊的なつながりを持っている黄蓮の力はさらに高いものとなる。

 一方、白桜は五行思想においては金に属する『白』。金は土の中から生まれるとされており、黄蓮ほどではないが、護から受け取る力の影響はほかの五色狐たちよりも強い。
 おまけに、隣には相生関係にある黄蓮がいた。
 互いの力を高め合うことで、護が側にいなかったとしても、それなりに強い力を発揮することができたはずだ。
 
 それなのに調査に時間がかかっただけでなく、まだ見ぬ敵に発見された可能性を示唆している。
 それだけ、自分とこれから相手を使用としている存在の力の差が大きいのか。
 護は二体の報告に身構えていた。

「あの会社、社内には術者らしい人間はいない」
「だが、あの会社に干渉してきている存在はあるようだ」
「干渉している存在?」

 白桜の口から出てきた報告に、護は首を傾げた。
 確かに、登録者数が五桁に届こうとするアプリゲームを提供する会社だ。干渉、といっても何かしらの依頼、あ業務や開発の提携提案などで話し合っているというだけかもしれない。
 あるいは、今後、アプリゲームのアップデートを行う上で追加のシナリオや新規の要素を加えるため、クリエイターと連絡を取っていたのかもしれない。

 だが、それならばわざわざ報告する必要はない。
 こうして報告してくるあたり、その干渉者という存在は、何か霊的な能力を持った存在ということになるのだろう。
 護はそう予測を立てていた。
 端的に言えば、その予測は正しい。だが、白桜の口から出てきた言葉は予測の斜め上どころか

「あぁ、それもこれ以上なく厄介な奴だ」
「厄介な奴?それほどの術者がいたのか?」
「いいや、会社に出入りしていた人間の中に術者はいない。ある程度、霊力を持った人間はいたが、とてもじゃないが術者と呼ぶには力が弱すぎる」
「じゃあ、いったい?」

 黄蓮の言葉に、護は首をかしげた。
 だが、護が考えを巡らせるよりも早く、白桜がその答えを口にした。

「推測に過ぎないが、奴はあやかし。それも、かなり強い力を持ってやがる」
「妖だと?」

 護は白桜の報告に驚愕の声をあげた。
 本来、妖は人間の世界に干渉することがない。あるとしても、それは人間が自分たちの領域を犯したときや、禁忌とされている行動をした場合に限られる。
 基本的に妖が人間を襲う時は、人間の方に過失がある場合が主だ。

 だというのに、今回は妖の方から人間に干渉してきている。
 これは非常にまれなことで、よほど悪意のある存在でなければ行うことがない。
 歴史的に言えば、時の天皇を病で苦しめた鵺。その多くは人を食らう、日本では最も有名な妖である鬼。
 そして、インド、中国、日本と三国にわたり、時の王の寵愛を受け、国の中枢で人々を苦しめようとした妖狐、九尾。
 これらの妖は、人間が自身の領域を犯したから襲撃してきたわけではない。
 ただ己の欲を満たす、あるいは、そういう性質の存在であるがゆえに、人間に危害を加えたという。

 もっとも、鬼に関しては、修験道の祖とも言われる験者、役小角が従えたと言われる前鬼と後鬼。東北地方の一部に伝わる鬼を神として祀った神社。そして、鬼神と呼ばれる、神としての権能を持つものが存在するため、一概に人間に危害を加えるだけの存在とは言い切れないのだが。

「ありえなくはないんだろうが、今の妖たちにそんなことができるか?」
「まず無理だ、と言いたいが、そうとも言い切れん」
「それはどういう?」
「人間の中に紛れ、人間の知識を得て、人間の技術を習得した妖がいてもおかしくないということだ」

 生物というものは、その環境や周囲の状況に適応し、それに準じた行動や体を変化させていくことができる。
 それは妖も同じこと。
 人間の勝手でもともと住んでいた山野が開発され、住む場所を追われた狸たちが、最後には人間に化けて人間の街に溶け込むというシナリオで描かれた映画があるように、妖も出現する場所を変えてその存在を維持し続けることができる。
 そして、人間社会に溶け込むうちに、人間の技術や知識を知らず知らずのうちに身に着けた妖が存在していたとしてもおかしくはない。

「そうなると、ある程度、絞ることはできるが……」
「いや、実のところあたりはついている」
「なんだと?」
「人間と会話できる程度の知性じゃなぇ。使っていた端末越しから、術者でもわかるかわからないかくらいの妖力があふれていやがった」
「知性を持っていて、それでいて遠方からでも声だけで存在を感知できる……そんなやつ、いるのか?」

 霊的な何かが関与していることはわかった。だが、その何かの正体がいまだつかめないことに、不穏な気配を感じずにはいられなかった。
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