どけ!私が白馬の王子様だ!〜百戦錬磨の乙女ゲーマーがお姫様(男)を全員攻略していく話〜

すいか

文字の大きさ
14 / 32
第一章 王弟コーディ

担任教師

しおりを挟む
「やあ、やあ、君が転入生のメアリ・エインズワースかい?」

 翌日、寮の前に待ち構えていた男に、私は声を掛けられた。

「マリちゃん、私は先に行って偵察してくるからね」

(はい、お願いします、リズ)

 リズに心の中のみで返事しつつ、私は目の前の、背の高い男に答える。

「はい。はじめまして、メアリ・エインズワースと申します。」

 私は挨拶を行いながら考える。おかしいところは幾つもあった。雑に乱した茶髪と分厚い瓶底眼鏡。気の抜けた立ち姿。まて。油断してはいけない。こういうところで出てくるのはたいてい後の超重要キャラだ。
 私は油断せず、相手に良いと言われるまで頭を上げない。数秒の対峙の後、男はにっこりと笑みを浮かべた。

「うんうん、礼儀正しいのはいいことだよね! 俺は君の担任を務める、コーディ・グローリア! 先生をつけて呼んでくれればそれでいいよ。なんせ俺は寛大な王弟だからね!」

 私は即座に臣下の礼を取った。

「申し訳ありません殿下、未熟な身故殿下のお顔も存じ上げず__」

「ああ、いいよいいよ、君社交デビューまだでしょ? 知らなくても無理ないよね」

 ここ、グローリア王国は極度の中央集権国家だ。すべての国民は王家にかしずく。誰よりも何よりも偉いのが国王。次に王太子。そしてその他王子と王弟。つまりこの人は序列第三位だ。……昨日、教師をしている王弟がいるというのは聞いていたが、まさか自分の担任になるとは。

「殿下のご厚情、骨の奥まで染み渡る思いです。この御恩、子孫末代まで語り継ぎます」

「うーん、俺の偉業が受け継がれるってのは悪くないね、でもわかってないのかな。コーディ先生でいいんだけど。あのさ、俺の担当するクラスってさあ、ハイパーエリートクラスなの。わかる?」

 ……どういうことだろうか。困惑を顔に浮かべたが、私はまだ頭を下げたままであるため何も伝わらない。それに気付いた殿下は、顔上げな、と仰った。

「ハイパーエリートってのは、大抵の場合、選り抜きの坊ちゃん嬢ちゃんで出来てんだよね。遺伝子優秀、小さいころから毎日最高の環境で勉強させる、となれば、そんなの高位貴族にしかできない所業なわけ。つまるところ、君はさあ」

 そこまで言うと、殿下は胸ポケットに挿していたペンを抜き、くるりと回す。そして私の首にトン、と当ててこう言った。

「これから毎日、とんでもなく身分の高いやつらと机並べて勉強しなきゃなんないわけ! 大変だよ~? 可哀想にね」

 肝に銘じておきな、と殿下は笑った。なるほど、つまり彼はそのままでは大変だから肩の力を抜け、とアドバイスをくれたらしかった。

「ありがとうございます、殿下。貴重なアドバイスを……」

「は? 違うでしょ?」

「えっ」

 私が思わず声を上げて驚くと、殿下は私の首に当てたペンを押し込んだ。ぐ、と息が詰まる。

「うるさい。……あのさ、なに、嫌がらせ? 名前に先生をつけて呼べって言ったでしょ? 俺がわざわざアドバイスしてやったってのに、なんでまだそっちで呼ぶわけ? 殿下何人いると思ってるの? 君本当に俺のこと呼んでる? 答えなよ」

 それはごめんなさい! でもここにいる殿下はあなたしかいないから殿下って呼んだんですけど! あと喉抑えられると返事できません! そう反論したかったが、予想外に押さえつける殿下の力が強く、てペンを外すことすらできやしない。首を押さえつけるペンを何度も叩く。そうすれば、で……いや、コーディはようやく気付いたようで、すっとペンを外してくれた。

「ごほっ、う、けほ……すみません、コーディ先生」

 そう言えば、コーディは目を細めた。

「分かればいいよ、分かれば」

 これからは絶対そう呼びなよ、そう言い捨てたあとコーディはまたにっこりと笑った。

「じゃあ、これからよろしくね、メアリ!」

 この暴力教師……日本だったら教育委員会に訴えられてるからな、そう思いながら私はにっこりと笑い、はい! と返事した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

能天気な私は今日も愛される

具なっしー
恋愛
日本でJKライフを謳歌していた凪紗は遅刻しそうになって全力疾走してたらトラックとバコーン衝突して死んじゃったー。そんで、神様とお話しして、目が覚めたら男女比50:1の世界に転生してたー!この世界では女性は宝物のように扱われ猿のようにやりたい放題の女性ばっかり!?そんな中、凪紗ことポピーは日本の常識があるから、天使だ!天使だ!と溺愛されている。この世界と日本のギャップに苦しみながらも、楽観的で能天気な性格で周りに心配される女の子のおはなし。 はじめて小説を書くので誤字とか色々拙いところが多いと思いますが優しく見てくれたら嬉しいです。自分で読みたいのをかいてみます。残酷な描写とかシリアスが苦手なのでかかないです。定番な展開が続きます。飽き性なので褒めてくれたら続くと思いますよろしくお願いします。 ※表紙はAI画像です

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

黒騎士団の娼婦

星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

処理中です...