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第一章 王弟コーディ
担任教師
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「やあ、やあ、君が転入生のメアリ・エインズワースかい?」
翌日、寮の前に待ち構えていた男に、私は声を掛けられた。
「マリちゃん、私は先に行って偵察してくるからね」
(はい、お願いします、リズ)
リズに心の中のみで返事しつつ、私は目の前の、背の高い男に答える。
「はい。はじめまして、メアリ・エインズワースと申します。」
私は挨拶を行いながら考える。おかしいところは幾つもあった。雑に乱した茶髪と分厚い瓶底眼鏡。気の抜けた立ち姿。まて。油断してはいけない。こういうところで出てくるのはたいてい後の超重要キャラだ。
私は油断せず、相手に良いと言われるまで頭を上げない。数秒の対峙の後、男はにっこりと笑みを浮かべた。
「うんうん、礼儀正しいのはいいことだよね! 俺は君の担任を務める、コーディ・グローリア! 先生をつけて呼んでくれればそれでいいよ。なんせ俺は寛大な王弟だからね!」
私は即座に臣下の礼を取った。
「申し訳ありません殿下、未熟な身故殿下のお顔も存じ上げず__」
「ああ、いいよいいよ、君社交デビューまだでしょ? 知らなくても無理ないよね」
ここ、グローリア王国は極度の中央集権国家だ。すべての国民は王家にかしずく。誰よりも何よりも偉いのが国王。次に王太子。そしてその他王子と王弟。つまりこの人は序列第三位だ。……昨日、教師をしている王弟がいるというのは聞いていたが、まさか自分の担任になるとは。
「殿下のご厚情、骨の奥まで染み渡る思いです。この御恩、子孫末代まで語り継ぎます」
「うーん、俺の偉業が受け継がれるってのは悪くないね、でもわかってないのかな。コーディ先生でいいんだけど。あのさ、俺の担当するクラスってさあ、ハイパーエリートクラスなの。わかる?」
……どういうことだろうか。困惑を顔に浮かべたが、私はまだ頭を下げたままであるため何も伝わらない。それに気付いた殿下は、顔上げな、と仰った。
「ハイパーエリートってのは、大抵の場合、選り抜きの坊ちゃん嬢ちゃんで出来てんだよね。遺伝子優秀、小さいころから毎日最高の環境で勉強させる、となれば、そんなの高位貴族にしかできない所業なわけ。つまるところ、君はさあ」
そこまで言うと、殿下は胸ポケットに挿していたペンを抜き、くるりと回す。そして私の首にトン、と当ててこう言った。
「これから毎日、とんでもなく身分の高いやつらと机並べて勉強しなきゃなんないわけ! 大変だよ~? 可哀想にね」
肝に銘じておきな、と殿下は笑った。なるほど、つまり彼はそのままでは大変だから肩の力を抜け、とアドバイスをくれたらしかった。
「ありがとうございます、殿下。貴重なアドバイスを……」
「は? 違うでしょ?」
「えっ」
私が思わず声を上げて驚くと、殿下は私の首に当てたペンを押し込んだ。ぐ、と息が詰まる。
「うるさい。……あのさ、なに、嫌がらせ? 名前に先生をつけて呼べって言ったでしょ? 俺がわざわざアドバイスしてやったってのに、なんでまだそっちで呼ぶわけ? 殿下何人いると思ってるの? 君本当に俺のこと呼んでる? 答えなよ」
それはごめんなさい! でもここにいる殿下はあなたしかいないから殿下って呼んだんですけど! あと喉抑えられると返事できません! そう反論したかったが、予想外に押さえつける殿下の力が強く、てペンを外すことすらできやしない。首を押さえつけるペンを何度も叩く。そうすれば、で……いや、コーディはようやく気付いたようで、すっとペンを外してくれた。
「ごほっ、う、けほ……すみません、コーディ先生」
そう言えば、コーディは目を細めた。
「分かればいいよ、分かれば」
これからは絶対そう呼びなよ、そう言い捨てたあとコーディはまたにっこりと笑った。
「じゃあ、これからよろしくね、メアリ!」
この暴力教師……日本だったら教育委員会に訴えられてるからな、そう思いながら私はにっこりと笑い、はい! と返事した。
翌日、寮の前に待ち構えていた男に、私は声を掛けられた。
「マリちゃん、私は先に行って偵察してくるからね」
(はい、お願いします、リズ)
リズに心の中のみで返事しつつ、私は目の前の、背の高い男に答える。
「はい。はじめまして、メアリ・エインズワースと申します。」
私は挨拶を行いながら考える。おかしいところは幾つもあった。雑に乱した茶髪と分厚い瓶底眼鏡。気の抜けた立ち姿。まて。油断してはいけない。こういうところで出てくるのはたいてい後の超重要キャラだ。
私は油断せず、相手に良いと言われるまで頭を上げない。数秒の対峙の後、男はにっこりと笑みを浮かべた。
「うんうん、礼儀正しいのはいいことだよね! 俺は君の担任を務める、コーディ・グローリア! 先生をつけて呼んでくれればそれでいいよ。なんせ俺は寛大な王弟だからね!」
私は即座に臣下の礼を取った。
「申し訳ありません殿下、未熟な身故殿下のお顔も存じ上げず__」
「ああ、いいよいいよ、君社交デビューまだでしょ? 知らなくても無理ないよね」
ここ、グローリア王国は極度の中央集権国家だ。すべての国民は王家にかしずく。誰よりも何よりも偉いのが国王。次に王太子。そしてその他王子と王弟。つまりこの人は序列第三位だ。……昨日、教師をしている王弟がいるというのは聞いていたが、まさか自分の担任になるとは。
「殿下のご厚情、骨の奥まで染み渡る思いです。この御恩、子孫末代まで語り継ぎます」
「うーん、俺の偉業が受け継がれるってのは悪くないね、でもわかってないのかな。コーディ先生でいいんだけど。あのさ、俺の担当するクラスってさあ、ハイパーエリートクラスなの。わかる?」
……どういうことだろうか。困惑を顔に浮かべたが、私はまだ頭を下げたままであるため何も伝わらない。それに気付いた殿下は、顔上げな、と仰った。
「ハイパーエリートってのは、大抵の場合、選り抜きの坊ちゃん嬢ちゃんで出来てんだよね。遺伝子優秀、小さいころから毎日最高の環境で勉強させる、となれば、そんなの高位貴族にしかできない所業なわけ。つまるところ、君はさあ」
そこまで言うと、殿下は胸ポケットに挿していたペンを抜き、くるりと回す。そして私の首にトン、と当ててこう言った。
「これから毎日、とんでもなく身分の高いやつらと机並べて勉強しなきゃなんないわけ! 大変だよ~? 可哀想にね」
肝に銘じておきな、と殿下は笑った。なるほど、つまり彼はそのままでは大変だから肩の力を抜け、とアドバイスをくれたらしかった。
「ありがとうございます、殿下。貴重なアドバイスを……」
「は? 違うでしょ?」
「えっ」
私が思わず声を上げて驚くと、殿下は私の首に当てたペンを押し込んだ。ぐ、と息が詰まる。
「うるさい。……あのさ、なに、嫌がらせ? 名前に先生をつけて呼べって言ったでしょ? 俺がわざわざアドバイスしてやったってのに、なんでまだそっちで呼ぶわけ? 殿下何人いると思ってるの? 君本当に俺のこと呼んでる? 答えなよ」
それはごめんなさい! でもここにいる殿下はあなたしかいないから殿下って呼んだんですけど! あと喉抑えられると返事できません! そう反論したかったが、予想外に押さえつける殿下の力が強く、てペンを外すことすらできやしない。首を押さえつけるペンを何度も叩く。そうすれば、で……いや、コーディはようやく気付いたようで、すっとペンを外してくれた。
「ごほっ、う、けほ……すみません、コーディ先生」
そう言えば、コーディは目を細めた。
「分かればいいよ、分かれば」
これからは絶対そう呼びなよ、そう言い捨てたあとコーディはまたにっこりと笑った。
「じゃあ、これからよろしくね、メアリ!」
この暴力教師……日本だったら教育委員会に訴えられてるからな、そう思いながら私はにっこりと笑い、はい! と返事した。
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