上 下
30 / 38

閑話 アンおばさんの夜

しおりを挟む
ルト村の夜は静かだ…。
暗くなれば出歩くものは居ないし、みんな夕食は家族で団欒する…

まぁ、私は一人だから、団欒は久しくして居ない。昔は家族と暖かい食宅を囲んだものだった。

明かりを消して、寝る支度をして床につくが、目が冴えてちっとも寝付けない。


こんな静かな夜は、昔が思い出されるものだ…


私には、旦那と息子が一人いた。
体が弱くて、背も他の子より小さくて。
でもそれはそれはかわいくて。

親バカって笑われてもいいと思えるくらい…愛してたんだ。

毎日が、幸せだったよ…何の変哲も無い日常が愛おしくて、これからも続いていくと思ってたんだ。

それはある日突然崩れ去った。

子供がまず熱を出したんだ…まだ5つだった…神殿に連れて行こうとした日の朝、旦那まで…。

私は神殿まで走ったよ。走った。
でもろくな布施も持たずに来た女に、
神様は冷たかった。

門さえ開けてはくれなかったんだ。

ニナが来たあの夜…私は、マリアの子に同情しながらも、諦めるしか無いと思っていた。

でもマリアは諦めなくて、すがれるものに全てすがって、ミリィを助けたんだ。

私も、あの時諦めなかったら、何か変わっていたのかね…

もう私のぼうやは戻っちゃこないけど…
同じ思いをみんながしないように。

助け合っていきたいね…。
しおりを挟む

処理中です...