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第二章 成長して花となる
花は移ろう
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時が経つのも早いもので、陽菜は最上級生、俺は中等部に上がった。
ずっと変わらない感じで仲良くしてきたと思う。俺が卒業する時は泣き叫んでたけど。
それも落ち着いて、一人でも通えるようになった。俺も今後の為に勉強を頑張るようになった。
二人の関係は変わってないようでも周りの関係や環境はどんどん変わっていくわけで…。
そんな陽菜でも些細な変化はある。
「お兄ちゃん、起きて」
前みたいに上に乗っからなくなった。今は優しく起こしてくれる。
「ああ、おはよう、陽菜」
「わたし今日早いから先に行くね」
「そっか、行ってらっしゃい」
自分の事を陽菜と言わなくなった。そして一人でも行動するようになった。
俺が卒業して当たり前なんだけど、前はもっとギリギリまで一緒に居たような気がする。
全体的に落ち着いた印象になった。お淑やかって言うのかな。
まぁそれでも頑固だったりするのは変わってないけど…。
一方、俺は早朝の新聞配達を始めてる。朝は早く起きて、帰ってきたら二度寝して陽菜に起こしてもらう。
そして学園でも帰っても勉強をする。もちろん、将来の為に。いつまでもこのままって訳にもいかないしな。
他の人に少し壁があるのはあんまり変わってないけど。
相変わらず、陽菜には甘く、他人には自分を含めて厳しい厄介な奴だ。
少し前に陽菜とこんな話をした。
「ねぇ、お兄ちゃん、そんなに勉強してどうしたの?」
「んー、寮のある学園に入りたいなって」
「え、やだよ、一緒に暮らせなくなるの?」
既に陽菜は泣きそうな顔をしていた。
「ずっとこのままって訳にはいかないだろ、それに陽菜も頑張ってここに入ればすぐ会えるよ」
「えー!やだやだ!お兄ちゃんと少しも離れたくないよ」
「俺が卒業した時もそんな感じだったけど直ぐ慣れただろ?すぐ会えるよ、その時はもう離れなくて良いと思うし」
陽菜は納得してないって顔をしているけど、直ぐに表情を崩した。
「そうだよね、ずっとここでお世話になるわけじゃないし、わたしも頑張ろうかな」
「一緒に居るのが嫌なわけじゃないから、まだ関係ないと思うけどこれパンフレット」
「え、千歳学園?えー、わたし入れるかな…」
「まだ十分時間あるから平気だ、なんなら教えられるしね」
陽菜はパンフレットをじっと見て中身を確認していく。興味津々みたいだ。
食堂のメニューとかをまじまじと見つめてる。
「お兄ちゃん!わたし頑張るね!」
食堂で決めたんじゃないだろうな?と思いつつも、心の中で応援をする。
思えばこの辺りから一人で行動する事が増えた気がする。陽菜なりに俺の見えない所で努力してるんだろうな。
俺に頑張ってるところあまり見せたくない感じだし…。残念ながら陽菜よ、お見通しだ。
そんな事を考えながら俺は改めて朝の準備をした。
そして学園に向かい、教室に着く。
「あ、佐倉君、おはよー」
「鈴川さん、おはよう」
クラスメイトの女の子に挨拶される。挨拶って素晴らしいな…。ここに入学してきてしみじみ思う…。
「ね、数学の課題やってきた?ごめん!良かったら見せてほしいんだけど!」
鈴川さん、もしかしてそれ目当てで挨拶を…?と思いつつも
「はい、どうぞ」
「ありがとう!今度お礼するから!」
何も言えないチキンな俺。鈴川さんのお礼、どんだけ溜まってるんだろ。いつか放出される時がくるんだろうか。
そんな事を考えながら数学のノートとお別れをする。よし、授業まで参考書でも見てるか。
そして今日も滞りなく一日が終わる…はずだった。
放課後になり、帰り支度を始めた。早く帰って勉強でもするか。
鞄を持ち、椅子から立ち上がると、声を掛けられる。
「よ、佐倉君、いつも課題ありがとうね!私頭悪くてさぁ」
「数学なんて仕組みを理解すれば後は組み立てていくだけだろうに」
「あーあー、聞こえなーい」
鈴川さんは手を耳に当てて聞こえないふりをする。まぁ頭の良し悪し以前に本人のやる気が無いのが一番の問題だよな…。
「でだ、佐倉君、そろそろお礼をしようと思うんだけど、どうかな?」
「どうかなって、お礼って何するの?」
「何処か遊びに行こう、私が奢るから!」
遊びにか、帰って勉強するだけだし、それは構わないけど。
よく考えたら俺陽菜以外と遊びに行った事あるか?いやない。
「良いけど、俺遊びに行った事なんて妹としかないや」
「へぇ、佐倉君、妹さん居たんだ、意外だね」
鈴川さんが関心したように呟く。
「え、意外?そうかな…」
「だって佐倉君、いっつも難しい顔してるし、妹さんにも厳しいの?」
「あー、多分甘いって言われる」
「ますます意外だよ、佐倉君が人に優しいとこ見てみたいなぁ」
陽菜以外に優しくなんて考えた事無かったな。陽菜がいればそれだけで良いと思ってるし。
「とりあえず、どっか行こうよ、支払いは任せて!」
そうやって俺の腕をひっぱり、隣に連れ歩かせる。
自信ないけど、他の人と遊んでみるか…?
街に繰り出して暫く、俺は後悔していた。もしかしてこれってデートって奴じゃないだろうか。
色んな店を見て回ったり…。
陽菜と同じ感覚で遊びに来ては見たものの、改めて異性と出掛けるのは初めてだ。
俺が押し黙っていると鈴川さんが話しかけてくる。
「ねぇ、あたしと居るとつまんないかな?」
そう言って手を握ってくる。俺の手はガチガチに緊張してしまい、手汗もひどい。
「あれ、なあんだ、緊張してたんだね、すっごい、緊張してるの伝わってるよ?」
「ば、ばか、緊張なんてしてない…」
「声も震えちゃってるっ、佐倉君、可愛いとこあるんだね」
「か、かわ・・・!?」
俺が可愛いだと…?やめてくれ!こういう辱めは駄目だ…。
「ねぇ、佐倉君って好きな子居ないの?」
「好きな子?妹かな」
「もう、それは家族でしょ?異性の女の子として好きな子だよ。佐倉君ってホントにシスコンなんだね」
異性として…。陽菜以外にまるで異性と関わりがなかった俺が居るはずもない。
「居ないな、遊びに行くのも妹以外だとこれが初めてだし」
「ふーん、そっかぁ」
突然、鈴川さんが歩みを止める。そして俺の前に出て目線を合わせる。
「じゃあ、あたしと付き合ってみない?」
「…へ?」
「実はちょっと佐倉君の事気になってたんだぁ、彼氏とかにも興味あったしさ」
一瞬、思考が止まる。俺は今何を言われてるんだろう。告白されてる…?
そう思ったら顔が赤くなり、身体が熱くなる。告白されちゃってる。
「いや、でもさ、俺鈴川さんの事良く知らないし…」
「そういうのは付き合ってから知れば良いんじゃないかな?あたしだって気になる程度だしさ」
そ、そんな気持ちで付き合う…?俺は思わず鈴川さんの両肩を掴んだ。
「そんな軽い気持ちで付き合っちゃ駄目だ!」
「え…」
「本気で好きになった人じゃないと付き合っちゃ駄目だ!」
「は、はい…」
軽い気持ちで付き合って、結婚して、子供を産んで…そんなの不幸になるだけじゃないか。
それでも途中で本気になるかもしれない、でも初めから遊びだなんてそんなの…駄目だ…。
冷静になると鈴川さんも赤くなって俯いていた。しまった、俺変な奴だと思われてる…。
「あ、あの、佐倉君、これ恥ずかしいよ…」
「あ、ご、ごめん…」
俺は慌てて手を離す。よく見たらキスするみたいな姿勢になってた。こんなの知り合いに見られたら…。
「佐倉君って凄く真面目なんだね、真剣な表情でさ、キスされるんじゃないかと思ってドキドキしたよ」
「いや、あの、もうからかわないで欲しい、ごめん」
「ううん、佐倉君の言う通り、本気で好きな人しか付き合わないようにするね」
「お、おう…そうしてくれると俺も嬉しい」
なんだか気恥ずかしくなって顔を背けてしまう。なんだこの展開は…。
「ね、佐倉君、私にも勉強教えてくれないかな?」
「いや、鈴川さん勉強嫌いだろう、大丈夫なのか…?」
「うん、あたしにも本気になれそうな事が出来たからさ」
「それなら喜んで、俺も良い復習になるしな」
鈴川さんが何故やる気になったのかは分からないけど、人の為になるならそれはとても喜ばしい事だ。
そう考えていた。
ずっと変わらない感じで仲良くしてきたと思う。俺が卒業する時は泣き叫んでたけど。
それも落ち着いて、一人でも通えるようになった。俺も今後の為に勉強を頑張るようになった。
二人の関係は変わってないようでも周りの関係や環境はどんどん変わっていくわけで…。
そんな陽菜でも些細な変化はある。
「お兄ちゃん、起きて」
前みたいに上に乗っからなくなった。今は優しく起こしてくれる。
「ああ、おはよう、陽菜」
「わたし今日早いから先に行くね」
「そっか、行ってらっしゃい」
自分の事を陽菜と言わなくなった。そして一人でも行動するようになった。
俺が卒業して当たり前なんだけど、前はもっとギリギリまで一緒に居たような気がする。
全体的に落ち着いた印象になった。お淑やかって言うのかな。
まぁそれでも頑固だったりするのは変わってないけど…。
一方、俺は早朝の新聞配達を始めてる。朝は早く起きて、帰ってきたら二度寝して陽菜に起こしてもらう。
そして学園でも帰っても勉強をする。もちろん、将来の為に。いつまでもこのままって訳にもいかないしな。
他の人に少し壁があるのはあんまり変わってないけど。
相変わらず、陽菜には甘く、他人には自分を含めて厳しい厄介な奴だ。
少し前に陽菜とこんな話をした。
「ねぇ、お兄ちゃん、そんなに勉強してどうしたの?」
「んー、寮のある学園に入りたいなって」
「え、やだよ、一緒に暮らせなくなるの?」
既に陽菜は泣きそうな顔をしていた。
「ずっとこのままって訳にはいかないだろ、それに陽菜も頑張ってここに入ればすぐ会えるよ」
「えー!やだやだ!お兄ちゃんと少しも離れたくないよ」
「俺が卒業した時もそんな感じだったけど直ぐ慣れただろ?すぐ会えるよ、その時はもう離れなくて良いと思うし」
陽菜は納得してないって顔をしているけど、直ぐに表情を崩した。
「そうだよね、ずっとここでお世話になるわけじゃないし、わたしも頑張ろうかな」
「一緒に居るのが嫌なわけじゃないから、まだ関係ないと思うけどこれパンフレット」
「え、千歳学園?えー、わたし入れるかな…」
「まだ十分時間あるから平気だ、なんなら教えられるしね」
陽菜はパンフレットをじっと見て中身を確認していく。興味津々みたいだ。
食堂のメニューとかをまじまじと見つめてる。
「お兄ちゃん!わたし頑張るね!」
食堂で決めたんじゃないだろうな?と思いつつも、心の中で応援をする。
思えばこの辺りから一人で行動する事が増えた気がする。陽菜なりに俺の見えない所で努力してるんだろうな。
俺に頑張ってるところあまり見せたくない感じだし…。残念ながら陽菜よ、お見通しだ。
そんな事を考えながら俺は改めて朝の準備をした。
そして学園に向かい、教室に着く。
「あ、佐倉君、おはよー」
「鈴川さん、おはよう」
クラスメイトの女の子に挨拶される。挨拶って素晴らしいな…。ここに入学してきてしみじみ思う…。
「ね、数学の課題やってきた?ごめん!良かったら見せてほしいんだけど!」
鈴川さん、もしかしてそれ目当てで挨拶を…?と思いつつも
「はい、どうぞ」
「ありがとう!今度お礼するから!」
何も言えないチキンな俺。鈴川さんのお礼、どんだけ溜まってるんだろ。いつか放出される時がくるんだろうか。
そんな事を考えながら数学のノートとお別れをする。よし、授業まで参考書でも見てるか。
そして今日も滞りなく一日が終わる…はずだった。
放課後になり、帰り支度を始めた。早く帰って勉強でもするか。
鞄を持ち、椅子から立ち上がると、声を掛けられる。
「よ、佐倉君、いつも課題ありがとうね!私頭悪くてさぁ」
「数学なんて仕組みを理解すれば後は組み立てていくだけだろうに」
「あーあー、聞こえなーい」
鈴川さんは手を耳に当てて聞こえないふりをする。まぁ頭の良し悪し以前に本人のやる気が無いのが一番の問題だよな…。
「でだ、佐倉君、そろそろお礼をしようと思うんだけど、どうかな?」
「どうかなって、お礼って何するの?」
「何処か遊びに行こう、私が奢るから!」
遊びにか、帰って勉強するだけだし、それは構わないけど。
よく考えたら俺陽菜以外と遊びに行った事あるか?いやない。
「良いけど、俺遊びに行った事なんて妹としかないや」
「へぇ、佐倉君、妹さん居たんだ、意外だね」
鈴川さんが関心したように呟く。
「え、意外?そうかな…」
「だって佐倉君、いっつも難しい顔してるし、妹さんにも厳しいの?」
「あー、多分甘いって言われる」
「ますます意外だよ、佐倉君が人に優しいとこ見てみたいなぁ」
陽菜以外に優しくなんて考えた事無かったな。陽菜がいればそれだけで良いと思ってるし。
「とりあえず、どっか行こうよ、支払いは任せて!」
そうやって俺の腕をひっぱり、隣に連れ歩かせる。
自信ないけど、他の人と遊んでみるか…?
街に繰り出して暫く、俺は後悔していた。もしかしてこれってデートって奴じゃないだろうか。
色んな店を見て回ったり…。
陽菜と同じ感覚で遊びに来ては見たものの、改めて異性と出掛けるのは初めてだ。
俺が押し黙っていると鈴川さんが話しかけてくる。
「ねぇ、あたしと居るとつまんないかな?」
そう言って手を握ってくる。俺の手はガチガチに緊張してしまい、手汗もひどい。
「あれ、なあんだ、緊張してたんだね、すっごい、緊張してるの伝わってるよ?」
「ば、ばか、緊張なんてしてない…」
「声も震えちゃってるっ、佐倉君、可愛いとこあるんだね」
「か、かわ・・・!?」
俺が可愛いだと…?やめてくれ!こういう辱めは駄目だ…。
「ねぇ、佐倉君って好きな子居ないの?」
「好きな子?妹かな」
「もう、それは家族でしょ?異性の女の子として好きな子だよ。佐倉君ってホントにシスコンなんだね」
異性として…。陽菜以外にまるで異性と関わりがなかった俺が居るはずもない。
「居ないな、遊びに行くのも妹以外だとこれが初めてだし」
「ふーん、そっかぁ」
突然、鈴川さんが歩みを止める。そして俺の前に出て目線を合わせる。
「じゃあ、あたしと付き合ってみない?」
「…へ?」
「実はちょっと佐倉君の事気になってたんだぁ、彼氏とかにも興味あったしさ」
一瞬、思考が止まる。俺は今何を言われてるんだろう。告白されてる…?
そう思ったら顔が赤くなり、身体が熱くなる。告白されちゃってる。
「いや、でもさ、俺鈴川さんの事良く知らないし…」
「そういうのは付き合ってから知れば良いんじゃないかな?あたしだって気になる程度だしさ」
そ、そんな気持ちで付き合う…?俺は思わず鈴川さんの両肩を掴んだ。
「そんな軽い気持ちで付き合っちゃ駄目だ!」
「え…」
「本気で好きになった人じゃないと付き合っちゃ駄目だ!」
「は、はい…」
軽い気持ちで付き合って、結婚して、子供を産んで…そんなの不幸になるだけじゃないか。
それでも途中で本気になるかもしれない、でも初めから遊びだなんてそんなの…駄目だ…。
冷静になると鈴川さんも赤くなって俯いていた。しまった、俺変な奴だと思われてる…。
「あ、あの、佐倉君、これ恥ずかしいよ…」
「あ、ご、ごめん…」
俺は慌てて手を離す。よく見たらキスするみたいな姿勢になってた。こんなの知り合いに見られたら…。
「佐倉君って凄く真面目なんだね、真剣な表情でさ、キスされるんじゃないかと思ってドキドキしたよ」
「いや、あの、もうからかわないで欲しい、ごめん」
「ううん、佐倉君の言う通り、本気で好きな人しか付き合わないようにするね」
「お、おう…そうしてくれると俺も嬉しい」
なんだか気恥ずかしくなって顔を背けてしまう。なんだこの展開は…。
「ね、佐倉君、私にも勉強教えてくれないかな?」
「いや、鈴川さん勉強嫌いだろう、大丈夫なのか…?」
「うん、あたしにも本気になれそうな事が出来たからさ」
「それなら喜んで、俺も良い復習になるしな」
鈴川さんが何故やる気になったのかは分からないけど、人の為になるならそれはとても喜ばしい事だ。
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