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相談その1
目的の場所
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ーーコツ コツ コツ
グレーのスーツから黒いヒールが覗く。
「(こんなに歩くことになるならヒールでなんて来るんじゃなかったかしら)」
やや急坂になっている道路をため息混じりに歩く。
目的の場所はパーキングからは近いと思っていたが、ジムをサボっていたツケがここへ来て痛感することになるとは思ってもいなかった。
目的の場所は坂を降りた場所にあり、商店街から少し離れた場所にあるここは賑やかな声を遠くに感じつつ、落ち着いた雰囲気がある。目的の場所には可愛らしいポストがあり、ポストには
【HARU】とおしゃれな字体で書かれている。
ざわざわした気持ちがする。
初めて来る場所の所為か、曇り空の所為か...
とりあえず目的を果たすために階段を上る。
一階は車庫になっており、二階に事務所の入り口があるらしい。
目の前の扉を開くと喫茶店のようなベル音が小さく鳴り響く。
ーーチリン
『こんにちは~いらっしゃいませ!』
遠くから低すぎず、高すぎもしない男性の声が聞こえてくる。
声の主は顔を出すと
『どうぞ、お入りください!ソファーに座っててください!何か飲まれますか?』
読んでいた新聞紙を折り畳みながら忙しなく右往左往する人物。
辺りを見渡しながら右肩にかけていたカバンをソファーに置く
「ありがとう、いただくわ。」
自身も座りながらキッチンへ向かった人物を見つめる
『何がいいですかね??紅茶に、烏龍茶、麦茶に...』
適当な飲み物が出てくると思っていたので、焦る。
「えーと...」
『オススメはハーブティーです!』
ニコニコという表現がびったりだ。
「それじゃあ、ハーブティーをお願い」
『は~い!もう少しおまちくださーい!』
なんだか緩いなぁ...思っていた場所と違う。
もう少し緊張感のある場所かと思っていたのに。
ちらっと手元の名刺を見つめる。
【なんでも相談所HARU】
胡散臭い肩書きに手渡された時は眉間に皺が寄ったが、「もう話はしてある」と言われてしまえば行くしかない。
つい溜息がでそうになり、慌てて止める。
『おまたせしました~!すみません、遅くなってしまいまして』
よっこらせ、と言いながら目の前のソファーに腰掛ける。
『では、まずは自己紹介からですね...』
グレーのスーツから黒いヒールが覗く。
「(こんなに歩くことになるならヒールでなんて来るんじゃなかったかしら)」
やや急坂になっている道路をため息混じりに歩く。
目的の場所はパーキングからは近いと思っていたが、ジムをサボっていたツケがここへ来て痛感することになるとは思ってもいなかった。
目的の場所は坂を降りた場所にあり、商店街から少し離れた場所にあるここは賑やかな声を遠くに感じつつ、落ち着いた雰囲気がある。目的の場所には可愛らしいポストがあり、ポストには
【HARU】とおしゃれな字体で書かれている。
ざわざわした気持ちがする。
初めて来る場所の所為か、曇り空の所為か...
とりあえず目的を果たすために階段を上る。
一階は車庫になっており、二階に事務所の入り口があるらしい。
目の前の扉を開くと喫茶店のようなベル音が小さく鳴り響く。
ーーチリン
『こんにちは~いらっしゃいませ!』
遠くから低すぎず、高すぎもしない男性の声が聞こえてくる。
声の主は顔を出すと
『どうぞ、お入りください!ソファーに座っててください!何か飲まれますか?』
読んでいた新聞紙を折り畳みながら忙しなく右往左往する人物。
辺りを見渡しながら右肩にかけていたカバンをソファーに置く
「ありがとう、いただくわ。」
自身も座りながらキッチンへ向かった人物を見つめる
『何がいいですかね??紅茶に、烏龍茶、麦茶に...』
適当な飲み物が出てくると思っていたので、焦る。
「えーと...」
『オススメはハーブティーです!』
ニコニコという表現がびったりだ。
「それじゃあ、ハーブティーをお願い」
『は~い!もう少しおまちくださーい!』
なんだか緩いなぁ...思っていた場所と違う。
もう少し緊張感のある場所かと思っていたのに。
ちらっと手元の名刺を見つめる。
【なんでも相談所HARU】
胡散臭い肩書きに手渡された時は眉間に皺が寄ったが、「もう話はしてある」と言われてしまえば行くしかない。
つい溜息がでそうになり、慌てて止める。
『おまたせしました~!すみません、遅くなってしまいまして』
よっこらせ、と言いながら目の前のソファーに腰掛ける。
『では、まずは自己紹介からですね...』
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