開闢のファルシュ

匿名

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4.異常の発見

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その教室では化け物が恐怖を与え、力を手にした者はそれに乗じ復讐に浸っていた。

「くそ!あんなゴミに構ってる暇ないぞ!化け物を何とかしないと…」
「俺達でやるしかないのか」
「俺もやるぞ!ほかにもやってくれるやつはいないか!?」
「僕も!」「私も!」
皆が協力して化け物を倒そうという雰囲気になっていた。先生は顔を歪めながら化け物にずっと抱き撫でられていた。
「皆バリケードを作ってそこから椅子を投げて倒そう!後ろに引くんだ!」
学級委員長が叫んで穂明以外のクラスメイトは後ろにバリケードを作り始めた。穂明は笑いながらその様子を眺めていた。化け物から歌のような声が聞こえてくる。

「誰か!僕は操られている。皆に被害を与える前に早く気絶させて…」
クラスメイトが後ろで叫んだ。叫んだ彼は驚いた顔をしていたが何かを喋ろうとする前に椅子で頭を殴られ始めた。
穂明だけが気付いていた。今の声は化け物が後ろから発したのだ。

「やっぱこの作戦はダメかもしれない。力自慢の人だけ先に化け物の時間稼ぎをして他の人は作戦続行!」
委員長の声だ。数名の男子が指示を受けた瞬間椅子や文房具や傘を持って前に走る。
「だめだあああああああ」
これも委員長の声だったが届かず化け物へと物が触れた。
化け物は先生を腕から離し彼らの物をすごい速さで全部叩き落とした。それと同時に耳を塞がざるを得ない嫌な音を発する。
更に化け物は彼らの武器を彼らに投げつけ返し彼らはもう動けなくなってしまった。

―――――キーンコーンカーンコーン
学校にチャイムが響いた。誠はトイレに向かう途中で穂明のクラスの前を通る。扉の窓からそのクラスの酷い状況が目についた。すぐに携帯を取り出し、増川賢治と登録した連絡先に連絡をする。
「増川さん!化け物が、隣のクラスに!!」
「分かった。君の高校か?」
「はい!昨日話してた他の能力者ってこれですか?」
「いや、少し違うが何とかしてみる。少し待っててくれ。」
電話が切れる。
他のクラスの人も様子がおかしいとざわざわと集まってきた。
化け物にバリケードの後ろから椅子が投げつけられるが化け物は細くて長い腕で全てをはたき落としていた。
凄い光景が目の前で繰り広げられているのに音が一切教室から出てこないのが不気味だった。

教室内では穂明が叫んでいた。
「さあ!お前ら戦えよ!なあ!」
バリケードの外の床に手を触れた後にバリケードの中に穂明は入った。
「まずは君から行こうか?」
普段いじめをしてきた人に触れるとバリケードの外に引っ張られていく。バリケードは彼が引っ張られているのに当たり崩れる。
「ほら戦え!」
次は化け物の先にある壁に触る。
彼は壁に引っ張られている中でその間にいた化け物に勢いよくぶつかった。化け物は犬のような声を出し彼を抱きかかえ壁へと投げつけた。
「いっ…」
化け物が出てから初めて血が出て壁についた。

「もうやめろ!!!」
誠は叫んで教室の中に飛び込む。教室の外ではみんな怖がって動けなくなっていた。

「うるさいなあ、部外者が。」
穂明は壁もたれ倒れている男に引っ張られるようにし、勢いをつけて誠へと殴りかかった。
誠は横に避けて穂明の攻撃をかわす。

「お前も能力者なのか?」
「も、って僕以外にもいるんだ。」
穂明は会話しながら後ろの壁に触って誠の元へ近付いた。
「うん、他にもいるんだ。」
「へえ、それはあってみたいね。」
化け物は腕を振り上げ穂明に殴りかかるが穂明は壁に引っ張られ避けた。
「それじゃあここで死ぬわけには行かないかな。」

恐怖で声も出なくなっていた一人が叫んだ。
「穂明!本当は虐められているお前を俺達は本当は助けたかったんだ…でも浮くのが怖くて…」
「そうだよ!それにそんなかっこいいやつだって知らなかった…」
「そ、そうそう!仲良くしたかっただけなんだ!だから助けてくれよ…」
「ほーあーき!ほーあーき!」
クラスではコールが起こる。

それをみて誠は口を開く。
「お前がどういう人間なのかも僕は知らないけどまずはこの化け物を何とかしないといけないだろ!」
「…分かった。今は皆を守るよ。だから手伝ってくれ。名前は何て言うの。」
穂明は許せない気持ちを抑えて理性を保っていた。

「神谷誠。よろしく。」
「神谷ね。行くよ。」
誠と穂明は腰の位置でタッチし化け物へと走った。
「神谷はひたすら殴れ!相手の攻撃は俺の能力で避けさせてやる!そして俺も殴りながらこの机や椅子を化け物への射線に流してひたすらぶつける。当たるなよ!」
誠は頷いて殴りに行った。化け物は空気の入っていない風船みたいな触感だった。反撃してくるが不思議と体が後ろへと引っ張られ当たらなかった。

「飛べっ!」
穂明は叫ぶと走りながらその周りを高速で教室の備品が通り過ぎる。
化け物はチャックのような音を出しながらその殆どをはたき落とした。だが2つくらいは化け物の体に当たった。化け物は赤ちゃんのような悲鳴を上げる。

「うるさいなあ。黙れよ。」
両手ははたき落とすのに使っていたので穂明は空いた胴体をひたすら殴った。化け物は殴られるたびに愉快なサーカスみたいな音を出した。反撃が来るが後ろに体を引っ張りかわす。

「うおおおおおお穂明がんばれ!!」
クラスはすっかり朝までいじめていた穂明を応援していた。
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