5 / 24
【ダレス視点】
5.※火遊びの終わり
【Side.弟王子】
「本当に兄上はぼんやりしてるよな」
宰相の息子ノルディックはああ見えて物凄く腹黒でやり手なんだ。
兄と関係を持った翌日にはもう動き出してたんだぞ?
王宮内のことにも異様に詳しいし、政敵の弱みなんてあっという間に握りまくっていた。
斯くいう俺だって…。
「ブラウン殿下。物は相談なんですけど、結婚したら子供を一人養子にもらえませんか?」
ヒラヒラと俺の弱みをひけらかしながらにっこり満面の笑みでそう宣う将来の宰相は悪魔そのもの。
まあ俺としても自分の子が兄の次に王になるなら有りではあるけどさ。
(兄上もとんでもないのに捕まったな)
当時はそんなことを思ったものだ。
でも────兄上が君と別れるつもりっぽいけど大丈夫?とさっき言ってやった時の顔はかなりの見物だったな。
愕然としたあんな彼の表情は想像したこともなかった。
いつも余裕たっぷりの奴がそんな風になるなんてちょっと笑える。
さて、無事に捕まえることはできただろうか?
そんな事を考えながら俺はそっと兄が去って行った方向を見遣ったのだった。
***
【Side.ダレス】
城に帰って弟のところで資金を受け取ったはずなのに、どうして俺は自室でノルに抱かれてるんだろう?
「あ…ぁあっ、んっ!」
もう二度と抱いてもらえないと思っていただけに、こんな風に抱かれたら離れられなくなってしまうじゃないかと泣きたくなった。
「ダリィ…っ」
「あ…ノル、ノルっ!」
これが本当に最後かと思うと切な過ぎてたまらない。
もう最後だし、本当の気持ちをいっそ告げてしまおうか?
それともやっぱり黙って旅に出てしまうのが一番だろうか?
「や…っ!そこ、弱いのにぃ…!」
「こんなに俺で感じるくせに…どうしてっ…!」
そうしてノルは俺の中に注ぎながら吐息さえ貪るように深く口づけ、しっかりと抱きしめてきた。
「あ…ああっ…ノル…っ、好き…好き…だ…っ」
だから思わず気持ちが溢れてしまって、勝手に口からそんな言葉がこぼれ落ちてしまう。
「ダ、ダリィ?」
「うぅ…。今日で終わるんだってわかってるけど…俺、火遊びなんかじゃなく…お前が…本当に…うっ…」
俺達は本来ゲーム内の攻略対象者同士で、こんな風に抱き合う関係なんかじゃないはずだった。
火遊びだから許された関係だったんだと思う。
卒業したらもうゲームなんて関係なくなるだろうし、ノルだって婚約者と結婚するだろう。
だから俺は失恋決定なんだ。
なのに涙は次から次へと溢れて全然止まってくれない。
「ノル…最後に抱いてもらえてよかった」
それでも俺は気持ちを押し殺してそう口にしたのに、何故か次の瞬間ノルから唇を塞がれていた。
「ん…んぅ?」
「ダリィ…ゴメン。でも良かった。嬉しい」
「ん…え?」
「最後になんてさせないし、するつもりもない。何も心配はいらないから」
「ノル?」
ノルがさっきまでのどこか必死さを滲ませた空気を緩和させ、幸せそうに笑いながら俺に言ってくる。
「お前のために政敵の弱みはこの一年半で全部握ったし、外堀だって全部埋めといた。だから、別れるなんて考える必要はない。安心して俺と一緒になってほしい」
「…………え?」
正直言われている意味が全く分からなかった。
「え?でもノル…婚約者は?」
「ミーナ嬢のことか?とっくに婚約は解消して条件のいい男と引き合わせて再婚約させておいたけど?」
サラリとそんなことを言われて俺は戸惑うことしかできない。
「で、でも俺…」
「カトリーヌ嬢の方も手を回して婚約解消手続きは既にしてもらってるから。ただ、何故か本人が話を聞きたがらないってご両親が困っていたな」
しかもそんなことまで言われて思わず首を傾げてしまった。
「…?でも俺、今日帰り際に公衆の面前で彼女から婚約破棄を突きつけられたけど?」
「…………詳しく聞こうか?」
そうしてノルは一度俺から身を離し、腕枕をしてくれながら話の先を促してきたから、俺は帰ってくる直前の出来事について詳細に話してみたんだけど…。
「あり得ないな…」
公衆の面前でダリィに恥をかかせるなんてとノルは怒りの形相でポツリと溢し、何やら思考に耽っていた。
「うん。でも俺、別にショックでもなんでもなかったんだ」
「え?」
「俺、婚約破棄よりノルとの関係が終わることの方がずっと辛くて…早く旅に出ないとって帰ってきたんだけど…」
そのタイミングでノルに捕まったんだよなと思ってたらそのまま引き寄せられて抱きしめられてしまう。
「そうか。悪かった。手放す気が全くなかったからすっかり言い忘れてたんだけど…不安にさせたな」
「ノル…」
「もうこれからはずっと一緒だから。ダリィ、俺と一緒に居てくれるか?」
「ノ、ノル…」
これって夢じゃないよなと思いながらギュッと抱き着くとノルの温もりがじわじわと伝わってくる。
「俺…ノルとずっと一緒に居たい」
「うん」
「ノル…俺が第一王子じゃなくても傍に居てくれるか?」
将来の王と宰相じゃなくなってもノルは俺の傍に居てくれるだろうか?
「ダリィ?」
「俺、ノルと一緒になれるなら、この後すぐにでも王位継承権返上してくる!」
王になったらどうしても後継者が必要になるはずだし、この先結婚しろってうるさく言われるだろうから先手必勝で先に継承権を放棄してしまおう。
そう思って言ったのに、ノルの方はびっくりしたような顔になったかと思うと一気に破顔して何度も俺にキスをしてきてしまった。
「ダリィ。そんなに俺が好きなんて嬉しい!」
そして真っ直ぐに俺を見ながら『愛してる』って言ってくれたんだ。
「本当に兄上はぼんやりしてるよな」
宰相の息子ノルディックはああ見えて物凄く腹黒でやり手なんだ。
兄と関係を持った翌日にはもう動き出してたんだぞ?
王宮内のことにも異様に詳しいし、政敵の弱みなんてあっという間に握りまくっていた。
斯くいう俺だって…。
「ブラウン殿下。物は相談なんですけど、結婚したら子供を一人養子にもらえませんか?」
ヒラヒラと俺の弱みをひけらかしながらにっこり満面の笑みでそう宣う将来の宰相は悪魔そのもの。
まあ俺としても自分の子が兄の次に王になるなら有りではあるけどさ。
(兄上もとんでもないのに捕まったな)
当時はそんなことを思ったものだ。
でも────兄上が君と別れるつもりっぽいけど大丈夫?とさっき言ってやった時の顔はかなりの見物だったな。
愕然としたあんな彼の表情は想像したこともなかった。
いつも余裕たっぷりの奴がそんな風になるなんてちょっと笑える。
さて、無事に捕まえることはできただろうか?
そんな事を考えながら俺はそっと兄が去って行った方向を見遣ったのだった。
***
【Side.ダレス】
城に帰って弟のところで資金を受け取ったはずなのに、どうして俺は自室でノルに抱かれてるんだろう?
「あ…ぁあっ、んっ!」
もう二度と抱いてもらえないと思っていただけに、こんな風に抱かれたら離れられなくなってしまうじゃないかと泣きたくなった。
「ダリィ…っ」
「あ…ノル、ノルっ!」
これが本当に最後かと思うと切な過ぎてたまらない。
もう最後だし、本当の気持ちをいっそ告げてしまおうか?
それともやっぱり黙って旅に出てしまうのが一番だろうか?
「や…っ!そこ、弱いのにぃ…!」
「こんなに俺で感じるくせに…どうしてっ…!」
そうしてノルは俺の中に注ぎながら吐息さえ貪るように深く口づけ、しっかりと抱きしめてきた。
「あ…ああっ…ノル…っ、好き…好き…だ…っ」
だから思わず気持ちが溢れてしまって、勝手に口からそんな言葉がこぼれ落ちてしまう。
「ダ、ダリィ?」
「うぅ…。今日で終わるんだってわかってるけど…俺、火遊びなんかじゃなく…お前が…本当に…うっ…」
俺達は本来ゲーム内の攻略対象者同士で、こんな風に抱き合う関係なんかじゃないはずだった。
火遊びだから許された関係だったんだと思う。
卒業したらもうゲームなんて関係なくなるだろうし、ノルだって婚約者と結婚するだろう。
だから俺は失恋決定なんだ。
なのに涙は次から次へと溢れて全然止まってくれない。
「ノル…最後に抱いてもらえてよかった」
それでも俺は気持ちを押し殺してそう口にしたのに、何故か次の瞬間ノルから唇を塞がれていた。
「ん…んぅ?」
「ダリィ…ゴメン。でも良かった。嬉しい」
「ん…え?」
「最後になんてさせないし、するつもりもない。何も心配はいらないから」
「ノル?」
ノルがさっきまでのどこか必死さを滲ませた空気を緩和させ、幸せそうに笑いながら俺に言ってくる。
「お前のために政敵の弱みはこの一年半で全部握ったし、外堀だって全部埋めといた。だから、別れるなんて考える必要はない。安心して俺と一緒になってほしい」
「…………え?」
正直言われている意味が全く分からなかった。
「え?でもノル…婚約者は?」
「ミーナ嬢のことか?とっくに婚約は解消して条件のいい男と引き合わせて再婚約させておいたけど?」
サラリとそんなことを言われて俺は戸惑うことしかできない。
「で、でも俺…」
「カトリーヌ嬢の方も手を回して婚約解消手続きは既にしてもらってるから。ただ、何故か本人が話を聞きたがらないってご両親が困っていたな」
しかもそんなことまで言われて思わず首を傾げてしまった。
「…?でも俺、今日帰り際に公衆の面前で彼女から婚約破棄を突きつけられたけど?」
「…………詳しく聞こうか?」
そうしてノルは一度俺から身を離し、腕枕をしてくれながら話の先を促してきたから、俺は帰ってくる直前の出来事について詳細に話してみたんだけど…。
「あり得ないな…」
公衆の面前でダリィに恥をかかせるなんてとノルは怒りの形相でポツリと溢し、何やら思考に耽っていた。
「うん。でも俺、別にショックでもなんでもなかったんだ」
「え?」
「俺、婚約破棄よりノルとの関係が終わることの方がずっと辛くて…早く旅に出ないとって帰ってきたんだけど…」
そのタイミングでノルに捕まったんだよなと思ってたらそのまま引き寄せられて抱きしめられてしまう。
「そうか。悪かった。手放す気が全くなかったからすっかり言い忘れてたんだけど…不安にさせたな」
「ノル…」
「もうこれからはずっと一緒だから。ダリィ、俺と一緒に居てくれるか?」
「ノ、ノル…」
これって夢じゃないよなと思いながらギュッと抱き着くとノルの温もりがじわじわと伝わってくる。
「俺…ノルとずっと一緒に居たい」
「うん」
「ノル…俺が第一王子じゃなくても傍に居てくれるか?」
将来の王と宰相じゃなくなってもノルは俺の傍に居てくれるだろうか?
「ダリィ?」
「俺、ノルと一緒になれるなら、この後すぐにでも王位継承権返上してくる!」
王になったらどうしても後継者が必要になるはずだし、この先結婚しろってうるさく言われるだろうから先手必勝で先に継承権を放棄してしまおう。
そう思って言ったのに、ノルの方はびっくりしたような顔になったかと思うと一気に破顔して何度も俺にキスをしてきてしまった。
「ダリィ。そんなに俺が好きなんて嬉しい!」
そして真っ直ぐに俺を見ながら『愛してる』って言ってくれたんだ。
あなたにおすすめの小説
貴族様からイジメられてる孤児院のボッチだって幸せになりたい
極寒の日々
BL
孤児院で暮らすイオはかつて親友だった貴族の子息に嫌がらせを受けていた。
きっかけはイオが勇者をカッコいいと褒めたから。
互いに話し合い離れる事を決めたが、その日以来イオは親友により孤児院で孤立することになる。
そんな日々の中で慰めてくれたのは勇者だった。
ある日魔王の贄としての役目を命じられ、勇者と共に旅に出ることに。
イオは自らの死を覚悟しながらも勇者との旅を喜んだ。
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
【完】姉の仇討ちのハズだったのに(改)全7話
325号室の住人
BL
姉が婚約破棄された。
僕は、姉の仇討ちのつもりで姉の元婚約者に会いに行ったのに……
初出 2021/10/27
2023/12/31 お直し投稿
以前投稿したことのあるBLのお話です。
完結→非公開→公開 のため、以前お気に入り登録していただいた方々がそのままお気に入り登録状態になってしまっております。
紛らわしく、申し訳ありません。
2025/04/22追記↓
☆本文に記載ありませんが、主人公の姉は婚約破棄された時、主人公の学園卒業時に実家の爵位が国に返上されるよう、手続きをしていた…という設定アリ。
平民男子と騎士団長の行く末
きわ
BL
平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。
ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。
好きだという気持ちを隠したまま。
過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。
第十一回BL大賞参加作品です。
勇者に捨てられた俺のヒーラー(♂)が、世界一可愛い
いちみりヒビキ
BL
最弱モブ青年・レンが出会ったのは、銀髪ショートボブの儚げの青年ヒーラー・カオル。
健気で天然、守ってあげたくなるのに色気は凶器級。世話焼きなレンは毎日距離を詰められ、気づけば守護欲MAXのスパダリ化。
星空の下での初キス、密着修行、両片想いのすれ違い――。
だが現れた勇者は、カオルを侮辱し価値を否定する。その瞬間、モブ攻めレンはブチ切れた。
「その言葉、取り消せ」
これは、最弱攻めが愛する美人受けのために勇者をぶっ飛ばし、溺愛覚醒する異世界BL。
ざまぁあり、甘々あり、最後はてえてえのハッピーエンドです。
※完全健全です。安心してお読み頂けます。
◾️AI活用
・表紙(AIイラスト)
・会話テンポの調整と文章校正
・タイトル案、概要案など
◾️各話リスト
1 召喚された美青年
2 世話焼きモブ青年と健気ヒーラー
3 密着イベント連発
4 星空の下、初めてのキス
5 勇者一行、来村
6 モブ、勇者に喧嘩を売る
7 絶望、それでも立て
8 愛でぶっ倒す勇者戦
9 お前しか見えてねえ
10 手を繋いで、世界へ
悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?