【完結】俺はライバルの腕の中で啼く。

オレンジペコ

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20.初恋話

テストで負けて、いよいよ今日抱かれるのかとドキドキしていたら、『無理はしなくていい』と伊集院は言い、俺の初恋話を持ち出して緊張をほぐそうとしてくれた。
その思いやりが嬉しい。
だから聞かれるままに当時の相手の話をして、最後にちょっと懐かしい気持ちで『元気にしてるかな、ハマー』って言ったところで何故か伊集院が固まってしまった。
何かおかしなことを言っただろうか?

「どうかしたか?」
「え?あ、ああ別に。ちょっとどこの学校だったのかと思って」
「言ってもわからないと思うぞ?」
「そうか?案外知り合いだったりするかもしれないぞ?」
「流石にないだろ。海外だし」
「海外…」
「しかもアメリカだぞ?」
「アメリカ…」
「そう」
「そうか。ちなみに相手の名前は?」
「さあ?忘れた。皆からハマーって呼ばれてて俺もそう呼んでたのは覚えてるんだけどな。多分苗字が浜とかだったんじゃないか?」

そう言ったら何故か撃沈された。
別に知り合いの中に心当たりがなくても気にしないのに。

「その…その時の子が、知臣の初恋?」
「そう。でも将来結婚したいって母親に言ったら、男の子同士は結婚できないのよって笑って言われて、友達でいいじゃないって言われたから当時は大泣きしたんだよな」
「…………」
「で、その時に『友達じゃ一生一緒にいられない』って言ってたら、『じゃあライバルになればいいのよ』って言われたから、納得した覚えがある」
「……ここでまさかのライバル」
「そう。だからそれ以来男に惚れたことはないし、俺の恋愛対象は女になったって話」

だからお前に惚れることはないからって言ったのに、伊集院は真面目な顔で俺を見つめてきた。

「知臣」
「なんだ?」
「逆に、そいつが今お前の前に現れたら、お前は惚れたり…いや、付き合いたいと思うか?」
「…え?いや、多分普通に友達になるんじゃないか?その時以来会ってないし、それこそライバル関係になれるかも不明だし。昔話に花が咲くことはあっても付き合うとかにはならないだろ。どう考えても」
「……だよな」

それを聞いた伊集院は何故だかやけに深刻そうな顔になってしまう。

(なんでだ?!)

そんな大昔の相手に嫉妬心でも燃やしてるのか?
流石にそれはないよな?
思わず心配して顔を覗き込んでしまったじゃないか。

とは言え案外復活は早くて、俺を見つめながら『抱いてもいいか?』と訊いてきた。
不意打ちにもほどがある。
でもそうだった。
初恋話はその緊張をほぐすために始まったんだし、ここでそれを持ち出してくるのも当然と言えば当然だった。

「ダメならこれまでみたいにキスして69だけでもいいぞ?」

しかもこいつはこんな風に逃げ道まで用意してくれるんだ。
こんな風に言われたら、しないなんて言えるはずがない。
俺は覚悟を決めて、『じゃあ、取り敢えず69で』と答えた。
勿論その後、抱かれるつもりで────。


***


【Side.伊集院 誉】

(ヤバい…)

有馬の話を聞いて、物凄く動揺してしまった。
どうやら有馬の初恋相手は俺だったらしい。

俺は現地の子が上手くホマレと言えないのをわかってたから、両親にアドバイスをもらって、最初から『ハマーって呼んでくれ』って皆に言ってたんだ。

思い掛けない再会、且つ有馬の初恋が俺だった事自体は凄く嬉しいものの、問題は俺の方だった。
それが何かと言うと────。

(ずっと女の子だと思ってた…)

そうなんだ。皆から有馬は『トモーミ、トモーミ』と呼ばれていたから、てっきりトモミが名前だと思い込んでいたんだ。
まさかトモオミだったなんて…。

今も美形だけど、当時から有馬は綺麗系の顔立ちだったし、笑顔がまた女の子にしか見えないほど愛くるしかった。
しかも兎に角話が合うし、一緒にいて楽しかったから細かいところは全く気にしていなかったんだ。
その上『ハマーとは一緒にいたら凄く楽しいし、このままトモと結婚してくれたらいいのになぁ』なんて可愛いはにかみ笑顔で言われたら勘違いだってする。
本当に大好きで、引っ越して行った時は兎に角悲しくて、トモミの話は自分の前でしないでくれって親に言って結局そのままだった。
よくある苦い初恋だ。
でもまさかここで初恋相手に偶然再会して、再度惚れるなんて思わないじゃないか…!

(しかも性別を勘違いしてたのにまた惚れるって…どれだけ筋金入りなんだ俺は?!)

とは言えここで問題があるとしたらカミングアウトすべきかどうかだろう。
だから本人にそれとなく聞いてみたんだ。
そのカミングアウトがプラスに働くなら、この際性別を間違えていたことは謝罪して、言ってもいいかなと思って。
でも返ってきた答えはあまりよろしくないものでしかなかった。

「…え?いや、多分普通に友達になるんじゃないか?その時以来会ってないし、それこそライバル関係になれるかも不明だし。昔話に花が咲くことはあっても付き合うとかにはならないだろ。どう考えても」

友情エンドまっしぐら間違いなしの返答。

これなら絶対に今の方がチャンスは高い。
取り敢えずライバルは減ったとプラスに考えて、この件は墓場まで持っていこう。
そうだそうしよう。
そんな風に考えをまとめ、改めてポジティブに考え直すことに。

(でもそうか…)

それなら元々俺自身は有馬の好みのタイプというわけだ。
道理で手を出しても抵抗が少ないはず。
ライバルとして意識してくれていたのももしかして…?
いや、流石にこれは穿ち過ぎか。

「誉?」

俺の様子がおかしいと感じ、訝し気に俺の顔を覗き込んでくる有馬。
そうだ。今はそれどころじゃない。
折角有馬を抱けるところまできたんだ。
ちゃんと自分のペースを取り戻そう。

「知臣。抱いてもいいか?」
「……え?」

不意打ちのようにそう訊かれて、有馬はその場で固まってしまう。

「ダメならこれまでみたいにキスして69だけでもいいぞ?」

だからそんな風に逃げ道を作って、良い流れに持ち込んでしまうことに。

「……じゃあ、取り敢えず69で」
「そうか」

当たり前のように返されたその返事にクスリと笑い、俺はそのまま有馬に口づけた。


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