【完結】俺はライバルの腕の中で啼く。

オレンジペコ

文字の大きさ
20 / 41

20.初恋話

しおりを挟む
テストで負けて、いよいよ今日抱かれるのかとドキドキしていたら、『無理はしなくていい』と伊集院は言い、俺の初恋話を持ち出して緊張をほぐそうとしてくれた。
その思いやりが嬉しい。
だから聞かれるままに当時の相手の話をして、最後にちょっと懐かしい気持ちで『元気にしてるかな、ハマー』って言ったところで何故か伊集院が固まってしまった。
何かおかしなことを言っただろうか?

「どうかしたか?」
「え?あ、ああ別に。ちょっとどこの学校だったのかと思って」
「言ってもわからないと思うぞ?」
「そうか?案外知り合いだったりするかもしれないぞ?」
「流石にないだろ。海外だし」
「海外…」
「しかもアメリカだぞ?」
「アメリカ…」
「そう」
「そうか。ちなみに相手の名前は?」
「さあ?忘れた。皆からハマーって呼ばれてて俺もそう呼んでたのは覚えてるんだけどな。多分苗字が浜とかだったんじゃないか?」

そう言ったら何故か撃沈された。
別に知り合いの中に心当たりがなくても気にしないのに。

「その…その時の子が、知臣の初恋?」
「そう。でも将来結婚したいって母親に言ったら、男の子同士は結婚できないのよって笑って言われて、友達でいいじゃないって言われたから当時は大泣きしたんだよな」
「…………」
「で、その時に『友達じゃ一生一緒にいられない』って言ってたら、『じゃあライバルになればいいのよ』って言われたから、納得した覚えがある」
「……ここでまさかのライバル」
「そう。だからそれ以来男に惚れたことはないし、俺の恋愛対象は女になったって話」

だからお前に惚れることはないからって言ったのに、伊集院は真面目な顔で俺を見つめてきた。

「知臣」
「なんだ?」
「逆に、そいつが今お前の前に現れたら、お前は惚れたり…いや、付き合いたいと思うか?」
「…え?いや、多分普通に友達になるんじゃないか?その時以来会ってないし、それこそライバル関係になれるかも不明だし。昔話に花が咲くことはあっても付き合うとかにはならないだろ。どう考えても」
「……だよな」

それを聞いた伊集院は何故だかやけに深刻そうな顔になってしまう。

(なんでだ?!)

そんな大昔の相手に嫉妬心でも燃やしてるのか?
流石にそれはないよな?
思わず心配して顔を覗き込んでしまったじゃないか。

とは言え案外復活は早くて、俺を見つめながら『抱いてもいいか?』と訊いてきた。
不意打ちにもほどがある。
でもそうだった。
初恋話はその緊張をほぐすために始まったんだし、ここでそれを持ち出してくるのも当然と言えば当然だった。

「ダメならこれまでみたいにキスして69だけでもいいぞ?」

しかもこいつはこんな風に逃げ道まで用意してくれるんだ。
こんな風に言われたら、しないなんて言えるはずがない。
俺は覚悟を決めて、『じゃあ、取り敢えず69で』と答えた。
勿論その後、抱かれるつもりで────。


***


【Side.伊集院 誉】

(ヤバい…)

有馬の話を聞いて、物凄く動揺してしまった。
どうやら有馬の初恋相手は俺だったらしい。

俺は現地の子が上手くホマレと言えないのをわかってたから、両親にアドバイスをもらって、最初から『ハマーって呼んでくれ』って皆に言ってたんだ。

思い掛けない再会、且つ有馬の初恋が俺だった事自体は凄く嬉しいものの、問題は俺の方だった。
それが何かと言うと────。

(ずっと女の子だと思ってた…)

そうなんだ。皆から有馬は『トモーミ、トモーミ』と呼ばれていたから、てっきりトモミが名前だと思い込んでいたんだ。
まさかトモオミだったなんて…。

今も美形だけど、当時から有馬は綺麗系の顔立ちだったし、笑顔がまた女の子にしか見えないほど愛くるしかった。
しかも兎に角話が合うし、一緒にいて楽しかったから細かいところは全く気にしていなかったんだ。
その上『ハマーとは一緒にいたら凄く楽しいし、このままトモと結婚してくれたらいいのになぁ』なんて可愛いはにかみ笑顔で言われたら勘違いだってする。
本当に大好きで、引っ越して行った時は兎に角悲しくて、トモミの話は自分の前でしないでくれって親に言って結局そのままだった。
よくある苦い初恋だ。
でもまさかここで初恋相手に偶然再会して、再度惚れるなんて思わないじゃないか…!

(しかも性別を勘違いしてたのにまた惚れるって…どれだけ筋金入りなんだ俺は?!)

とは言えここで問題があるとしたらカミングアウトすべきかどうかだろう。
だから本人にそれとなく聞いてみたんだ。
そのカミングアウトがプラスに働くなら、この際性別を間違えていたことは謝罪して、言ってもいいかなと思って。
でも返ってきた答えはあまりよろしくないものでしかなかった。

「…え?いや、多分普通に友達になるんじゃないか?その時以来会ってないし、それこそライバル関係になれるかも不明だし。昔話に花が咲くことはあっても付き合うとかにはならないだろ。どう考えても」

友情エンドまっしぐら間違いなしの返答。

これなら絶対に今の方がチャンスは高い。
取り敢えずライバルは減ったとプラスに考えて、この件は墓場まで持っていこう。
そうだそうしよう。
そんな風に考えをまとめ、改めてポジティブに考え直すことに。

(でもそうか…)

それなら元々俺自身は有馬の好みのタイプというわけだ。
道理で手を出しても抵抗が少ないはず。
ライバルとして意識してくれていたのももしかして…?
いや、流石にこれは穿ち過ぎか。

「誉?」

俺の様子がおかしいと感じ、訝し気に俺の顔を覗き込んでくる有馬。
そうだ。今はそれどころじゃない。
折角有馬を抱けるところまできたんだ。
ちゃんと自分のペースを取り戻そう。

「知臣。抱いてもいいか?」
「……え?」

不意打ちのようにそう訊かれて、有馬はその場で固まってしまう。

「ダメならこれまでみたいにキスして69だけでもいいぞ?」

だからそんな風に逃げ道を作って、良い流れに持ち込んでしまうことに。

「……じゃあ、取り敢えず69で」
「そうか」

当たり前のように返されたその返事にクスリと笑い、俺はそのまま有馬に口づけた。


しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

【完結】恋人になりたかった

ivy
BL
初めてのキスは、 すべてが始まった合図だと思っていた。 優しい大地と過ごす時間は、 律にとって特別で、 手放したくないものになっていく。 けれど……

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

姉の男友達に恋をした僕(番外編更新)

turarin
BL
侯爵家嫡男のポールは姉のユリアが大好き。身体が弱くて小さかったポールは、文武両道で、美しくて優しい一つ年上の姉に、ずっと憧れている。 徐々に体も丈夫になり、少しずつ自分に自信を持てるようになった頃、姉が同級生を家に連れて来た。公爵家の次男マークである。 彼も姉同様、何でも出来て、その上性格までいい、美しい男だ。 一目彼を見た時からポールは彼に惹かれた。初恋だった。 ただマークの傍にいたくて、勉強も頑張り、生徒会に入った。一緒にいる時間が増える。マークもまんざらでもない様子で、ポールを構い倒す。ポールは嬉しくてしかたない。 その様子を苛立たし気に見ているのがポールと同級の親友アンドルー。学力でも剣でも実力が拮抗する2人は一緒に行動することが多い。 そんなある日、転入して来た男爵令嬢にアンドルーがしつこくつきまとわれる。その姿がポールの心に激しい怒りを巻き起こす。自分の心に沸き上がる激しい気持に驚くポール。 時が経ち、マークは遂にユリアにプロポーズをする。ユリアの答えは? ポールが気になって仕方ないアンドルー。実は、ユリアにもポールにも両方に気持が向いているマーク。初恋のマークと、いつも傍にいてくれるアンドルー。ポールが本当に幸せになるにはどちらを選ぶ? 読んでくださった方ありがとうございます😊 ♥もすごく嬉しいです。 不定期ですが番外編更新していきます!

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

処理中です...