【本編完結】敵国の王子は俺に惚れたらしい

オレンジペコ

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本編

7.続・観察する者と追っ手を気にする者

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【Side.ジークフリート】

クロヴィスがチラチラと来た方向を気にしている。
恐らく追手が来ないかを警戒しているんだろう。
今のところこちらに気づいていないようだが、気づいたらきっとすぐさま逃げ出すだろう。
そんな事を考えながら他の乗客達から受け取った串肉にかぶりついた。

(美味い…)

処理したてのワイルドボアだから美味いのか、クロヴィスが処理し調理したから美味いのか、どちらなんだろう?
思ったよりも柔らかくて脂ものっていてとても美味しかった。

「さ、じゃあ夜の番は俺達がするから皆は寝ていてくれ」

Cランク冒険者達がそんな風に声を上げる。
怪我をクロヴィスに治してもらったお陰で夜番くらいはできると言い、クロヴィスには万が一襲われたら起こすから体力を温存しておいてほしいと言っていた。
まあ無難なところだろう。
一番の戦力が寝不足でもしもの時に動けないのが一番危ない。
でもここでクロヴィスが皆寝ても大丈夫だと言い出した。

「結界張っとくから、皆ゆっくり休んで大丈夫だ。何かが結界に当たったら俺もすぐに気づくから起きれるし気にせず休んでくれ」
「え?!」

それを聞いた御者の男が驚いたようにポツリと『A級冒険者…』と呟いた。
きっと馬車の護衛に冒険者を雇うことが多いからクロヴィスのその言葉に実力を察することができたんだろう。

(それにしてもAランクか…)

三年でAランクになったと言うのなら結構な実力者だと思う。
どこで活動していたのかは知らないが、名のある冒険者なのはまず間違いないだろう。
それでも俺の耳に名が届かなかったということを考えるに、活動していたのはローナでも旧ブラッドリアでもないと言うこと。

(ガーナードか?)

ローナ帝国とは別にブラッドリアと隣接している国、ガーナード。
そこなら確かに俺の耳にその名は入ってこないだろうし、潜伏先としても妥当だ。
名も変えて活動していたとしたらまず気づかなかっただろう。
こちらに戻ってきていなかったらずっと気づかないままだったと思う。

(偶然とはいえ出会えてよかった)

そんな事を考えながらそっとクロヴィスに目を向けた。


***


【Side.クロヴィス】

野営が決まったものの夜番は自分達に任せてくれと同行していた冒険者達が言い出した。
でも追われている身からするとそれは非常にリスキーな申し出とも言える。
追っ手が来た途端起こされ引き渡されてしまうのがオチだ。
そうなるくらいなら結界を自分で張って安全を確保する方がずっといい。
だから自分から申し出て追っ手に備えた。

結論から言うと追っ手は来なかった。
だから気にするとしたらこの先にある街での待ち伏せくらいだろうか?

(念の為、警戒しておくか)

そう思いながら朝食を作ってみんなで食べた後、街へと向かった。




街へと辿り着くと皆思い思いに散っていったからきっと食糧なんかを確保しに行ったんだろう。
俺も例に漏れず食糧確保へと動きにかかる。
ついでにスパイスも補充して、念のため薬草の類も買っておいた。
魔法は魔力が切れたら使えなくなるから、いざという時の為に備えておくに越したことはない。

(麻痺になんかなったら最悪だしな)

追われているのに身動きが取れない状況になるのはできるだけ避けたい。
そんな事を考えながら買い物を終え、俺はまた馬車へと戻った。
ちらほらと他にも戻ってきている者もいるけれど、まだそれでも半分にも満たないくらいだ。
そんな中、フードを被った如何にも暗殺者風の男が目に入った。
多分これまでも居たんだろうけど、全然気づかなかったし、多分その職業柄気配をなるべく消していたのだろう。

(これから隣国で仕事ってところか…)

別にその職業を差別する気はないし、馬車に乗ってはいけないと言うルールだってあるわけじゃない。
ただ、珍しいなとは思った。
そういった者達は急ぎで移動するため大抵商人に金を握らせて移動することが多いと聞くからだ。
のんびりこんな馬車に乗ると言うことはもしかしたら特に依頼中という訳ではなく、仕事を求めての移動途中なのかもしれないなと思った。

そんな俺の元に誰かが近づいてくる気配が。

────「見つけた」

その言葉に、俺はどうしようもない震えに襲われたのだった。

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