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お城生活編
21.倒れる者と助ける者
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【Side.ジークフリート】
楽しいデートから帰ってきたら妙に庭園が騒がしいことに気が付いた。
今日はアマリリスが茶会をすると言っていたが何かあったんだろうか?
そう思っていたら、いきなり庭園に居た一人の令嬢がクロヴィスに向けて叫んだ。
「貴方でしょう?!犯人は!」
何の根拠があって俺のクロヴィスにいきなり難癖をつけてきたんだろう?
腹立たしいことこの上ない。
楽しい気分が台無しだ。
「誰に向かって言っている」
思わず令嬢を睨みつけてしまったが、言われた方の当のクロヴィスはサッと庭園へと目を向け、カトレア妃が倒れているのを目に入れた途端そちらへと走り出した。
「クロヴィス!」
慌てて止めに入るがクロヴィスは聞いてくれない。
「どいてくれ!」
クロヴィスはサッとカトレア妃の腕を掬い上げ脈を取り、何やら魔法で状態を確認し始めた。
「ちっ…。【ディスペル】!」
どうやら確認した結果何らかの状態異常だったらしく、すぐさまクロヴィスはディスペルの魔法を使った。
それと共にカトレア妃の顔色が改善される。
その後ヒールも掛けていたし、余程容態が悪かったのだろう。
クロヴィスがいてくれて助かった。
「何があった?!」
騒ぎは今まさに起こったばかりだったらしく、騒ぎを聞きつけた兄が慌てたようにやってきて近くにいた令嬢達へと尋ねた。
これで少しは状況が分かるかもしれない。
そう思ったのに、聞かれた方の令嬢はあろうことかクロヴィスに濡れ衣を着せてきた。
よく見ると最初にクロヴィスに叫んだのと同じ令嬢だ。怪しすぎる。
「あの者がカトレア様に毒を盛ったのです!」
「なっ?!」
クロヴィスからすればとんだ災難だ。
どちらかというとカトレア妃を助けた側だというのに。
兄が驚愕の表情でクロヴィスを見るが、当然だが俺がそんな濡れ衣を許すはずがない。
「衛兵!そこに居る令嬢を拘束しろ!」
「「「え?!」」」
この命令には衛兵だけではなく他の令嬢達も驚きに固まってしまう。
「聞こえなかったか?そこにいるメイラ伯爵令嬢を捕らえよ!証拠もなく義姉上を助けた恩人に濡れ衣をかけた不届き者だ!容赦はいらん!」
「はっ!」
「なっ?!放して!痛いっ!」
「申し開きは後程牢でしろ。クロヴィス、義姉上はどんな感じだ?」
俺は引っ立てられる令嬢には目もくれず、すぐさま俺はクロヴィスへと問い掛ける。
「ジーク。それが…」
それから詳しく話を聞くと、どうも【鑑定】で状態を診たところ蓄積型の毒が盛られていたらしい。
そのせいでずっと体調が悪かったのだろうとのこと。
どうやら今回の茶会でそれが限界を迎えて倒れてしまったようだ。
思いがけず判明したが、酷い話だった。
それを聞いて兄はすぐさま王宮医師の身柄を確保するよう指示を出している。
医師がそれを把握していないはずがないと判断したのだろう。
犯人が誰なのかはわからないが、医師が結託して王太子妃の毒殺を目論んだのであれば一大事だ。
すぐさま調査し、確実に犯人達を一網打尽にしてやると兄と一緒に頷き合った。
***
【Side.クロヴィス】
倒れている王太子妃の元に駆け付けると物凄く顔色が悪かった。
呼吸が浅いのを見て取り、慌てて脈をとると物凄く弱い。
このままでは危険だと判断し、すぐさま鑑定で状態を確認すると重度の毒状態だったので急いで状態異常を治すべくディスペルの魔法をかけた。
ついでにヒールも掛ける。
かなりギリギリだったが何とか助けることができた。
本当に間に合ってよかったと思う。
それにしてもここの医者は鑑定もできないのか?
ここまでの毒状態を見過ごすなんて医者にあるまじき行為だ。
そう思っているとジークが王太子妃の容態を聞いてきたからきちんと説明をしておいた。
鑑定魔法で確認したら蓄積型の毒に侵されていたこと。それは長期にわたって身体に蓄積されてそれで具合がどんどん悪くなっていたのではないかということ。
そして今回とうとう限界を迎えたのだろうことも。
それを聞き王太子妃を診断していたはずの医師を怪しんだ王太子はすぐさまかかりつけの医師を拘束するよう指示を出していた。
俺の言葉をどうやら疑うことなく信用してくれたらしい。
有難い。
でもここで鋭い声を上げたのが王女だった。
「今すぐ義姉様から離れなさい!」
敵意がバシバシ感じられるその剣幕に驚かされるが、彼女からしたら俺は敵国の王子。
警戒するに越したことはないんだろう。
まあ旦那である王太子がいるし、ここは素直に離れて後は任せるべきだと判断した。
だからもう部屋に帰っていいか聞こうとジークを見たんだけど、何故かグイッと守るように引き寄せられてしまう。
「……アマリリス?」
「兄様!どうしてその男を庇うのです?!」
「逆に聞こう。お前はどうしてこの件にクロヴィスが関わっていると?」
「べ、別にそんな風には思っていませんわ!」
「そうか?俺にはこの件を利用してクロヴィスを追い詰めようとしているようにしか思えないがな」
「なっ?!それこそ思い過ごしですわ!私はただ信用ならない者に義姉様の傍に居て欲しくなかっただけです!」
「それが助けてくれたクロヴィスに対する愚行だと気づかないか?寧ろ感謝してしかるべきだ」
兄妹で睨み合いが勃発してる。
でも俺が気になったのは別の事だった。
その場にいた一際綺麗な女性が扇子を広げてフッと笑った瞬間を見てしまったからだ。
(誰だろう…?)
何だかものすごく気になった。
だからそのままつい見つめてしまったのだけど、そのせいで向こうから気づかれて────凄絶な笑みを向けられ背筋がゾクッとするのを感じた。
俺の知らない女性ならではのあれこれでもあるのかな?
できれば巻き込まれたくはない。
「うぅ…風呂で温まりたい…」
思わずそう溢したら何故かジークが妹とのやり取りを切り上げ、嬉々として部屋まで連れ去られてしまった。
「ちょっ?!妹との戦いはいいのか?!俺は一人で風呂でも全然いいんだぞ?!」
慌ててそう言ったけど、ジークに「遠慮するな」って言われて結局なし崩し的に一緒に入る羽目になる。
まあ今日は抱かれなかったからいいけど。
「夕餉を食べたら兄上にあの後どうなったかを聞いてくる。もし遅くなったら先に休んでいてくれ」
そう言われてここに来て夕食後初めて一人になれたけど、なんとなく落ち着かなくて俺は仕方なくバルコニーへと足を向けた。
そこに思いがけない来客があるとも思わずに。
楽しいデートから帰ってきたら妙に庭園が騒がしいことに気が付いた。
今日はアマリリスが茶会をすると言っていたが何かあったんだろうか?
そう思っていたら、いきなり庭園に居た一人の令嬢がクロヴィスに向けて叫んだ。
「貴方でしょう?!犯人は!」
何の根拠があって俺のクロヴィスにいきなり難癖をつけてきたんだろう?
腹立たしいことこの上ない。
楽しい気分が台無しだ。
「誰に向かって言っている」
思わず令嬢を睨みつけてしまったが、言われた方の当のクロヴィスはサッと庭園へと目を向け、カトレア妃が倒れているのを目に入れた途端そちらへと走り出した。
「クロヴィス!」
慌てて止めに入るがクロヴィスは聞いてくれない。
「どいてくれ!」
クロヴィスはサッとカトレア妃の腕を掬い上げ脈を取り、何やら魔法で状態を確認し始めた。
「ちっ…。【ディスペル】!」
どうやら確認した結果何らかの状態異常だったらしく、すぐさまクロヴィスはディスペルの魔法を使った。
それと共にカトレア妃の顔色が改善される。
その後ヒールも掛けていたし、余程容態が悪かったのだろう。
クロヴィスがいてくれて助かった。
「何があった?!」
騒ぎは今まさに起こったばかりだったらしく、騒ぎを聞きつけた兄が慌てたようにやってきて近くにいた令嬢達へと尋ねた。
これで少しは状況が分かるかもしれない。
そう思ったのに、聞かれた方の令嬢はあろうことかクロヴィスに濡れ衣を着せてきた。
よく見ると最初にクロヴィスに叫んだのと同じ令嬢だ。怪しすぎる。
「あの者がカトレア様に毒を盛ったのです!」
「なっ?!」
クロヴィスからすればとんだ災難だ。
どちらかというとカトレア妃を助けた側だというのに。
兄が驚愕の表情でクロヴィスを見るが、当然だが俺がそんな濡れ衣を許すはずがない。
「衛兵!そこに居る令嬢を拘束しろ!」
「「「え?!」」」
この命令には衛兵だけではなく他の令嬢達も驚きに固まってしまう。
「聞こえなかったか?そこにいるメイラ伯爵令嬢を捕らえよ!証拠もなく義姉上を助けた恩人に濡れ衣をかけた不届き者だ!容赦はいらん!」
「はっ!」
「なっ?!放して!痛いっ!」
「申し開きは後程牢でしろ。クロヴィス、義姉上はどんな感じだ?」
俺は引っ立てられる令嬢には目もくれず、すぐさま俺はクロヴィスへと問い掛ける。
「ジーク。それが…」
それから詳しく話を聞くと、どうも【鑑定】で状態を診たところ蓄積型の毒が盛られていたらしい。
そのせいでずっと体調が悪かったのだろうとのこと。
どうやら今回の茶会でそれが限界を迎えて倒れてしまったようだ。
思いがけず判明したが、酷い話だった。
それを聞いて兄はすぐさま王宮医師の身柄を確保するよう指示を出している。
医師がそれを把握していないはずがないと判断したのだろう。
犯人が誰なのかはわからないが、医師が結託して王太子妃の毒殺を目論んだのであれば一大事だ。
すぐさま調査し、確実に犯人達を一網打尽にしてやると兄と一緒に頷き合った。
***
【Side.クロヴィス】
倒れている王太子妃の元に駆け付けると物凄く顔色が悪かった。
呼吸が浅いのを見て取り、慌てて脈をとると物凄く弱い。
このままでは危険だと判断し、すぐさま鑑定で状態を確認すると重度の毒状態だったので急いで状態異常を治すべくディスペルの魔法をかけた。
ついでにヒールも掛ける。
かなりギリギリだったが何とか助けることができた。
本当に間に合ってよかったと思う。
それにしてもここの医者は鑑定もできないのか?
ここまでの毒状態を見過ごすなんて医者にあるまじき行為だ。
そう思っているとジークが王太子妃の容態を聞いてきたからきちんと説明をしておいた。
鑑定魔法で確認したら蓄積型の毒に侵されていたこと。それは長期にわたって身体に蓄積されてそれで具合がどんどん悪くなっていたのではないかということ。
そして今回とうとう限界を迎えたのだろうことも。
それを聞き王太子妃を診断していたはずの医師を怪しんだ王太子はすぐさまかかりつけの医師を拘束するよう指示を出していた。
俺の言葉をどうやら疑うことなく信用してくれたらしい。
有難い。
でもここで鋭い声を上げたのが王女だった。
「今すぐ義姉様から離れなさい!」
敵意がバシバシ感じられるその剣幕に驚かされるが、彼女からしたら俺は敵国の王子。
警戒するに越したことはないんだろう。
まあ旦那である王太子がいるし、ここは素直に離れて後は任せるべきだと判断した。
だからもう部屋に帰っていいか聞こうとジークを見たんだけど、何故かグイッと守るように引き寄せられてしまう。
「……アマリリス?」
「兄様!どうしてその男を庇うのです?!」
「逆に聞こう。お前はどうしてこの件にクロヴィスが関わっていると?」
「べ、別にそんな風には思っていませんわ!」
「そうか?俺にはこの件を利用してクロヴィスを追い詰めようとしているようにしか思えないがな」
「なっ?!それこそ思い過ごしですわ!私はただ信用ならない者に義姉様の傍に居て欲しくなかっただけです!」
「それが助けてくれたクロヴィスに対する愚行だと気づかないか?寧ろ感謝してしかるべきだ」
兄妹で睨み合いが勃発してる。
でも俺が気になったのは別の事だった。
その場にいた一際綺麗な女性が扇子を広げてフッと笑った瞬間を見てしまったからだ。
(誰だろう…?)
何だかものすごく気になった。
だからそのままつい見つめてしまったのだけど、そのせいで向こうから気づかれて────凄絶な笑みを向けられ背筋がゾクッとするのを感じた。
俺の知らない女性ならではのあれこれでもあるのかな?
できれば巻き込まれたくはない。
「うぅ…風呂で温まりたい…」
思わずそう溢したら何故かジークが妹とのやり取りを切り上げ、嬉々として部屋まで連れ去られてしまった。
「ちょっ?!妹との戦いはいいのか?!俺は一人で風呂でも全然いいんだぞ?!」
慌ててそう言ったけど、ジークに「遠慮するな」って言われて結局なし崩し的に一緒に入る羽目になる。
まあ今日は抱かれなかったからいいけど。
「夕餉を食べたら兄上にあの後どうなったかを聞いてくる。もし遅くなったら先に休んでいてくれ」
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そこに思いがけない来客があるとも思わずに。
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