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第一章 セレン国編(只今傷心旅行中)
32.寝耳に水の話 Side.メイビス
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その日は忘れ物を取りに戻った関係でいつもよりほんの少しだけギルドに行くのが遅れてしまった。
だからルマンドの方が珍しく先にギルドの扉をくぐっていたのだ。
入ってすぐに目に飛び込んできたのは、ルマンドに言い寄る女の姿だった。
見た限りパーティーに入れて欲しいと交渉しているようだ。
ここがお役所的場所だからと油断した。
魔法使いが魔法剣士と組んでレベルを上げたがるのはよくある話だと従者達からも聞いて知っていたのに……。
ルマンドがここ最近活躍していたことで魔法使いに目をつけられてしまったらしい。
ソロに魔法使いが声を掛けるのはマナー違反と聞くけれど、ここ最近ルマンドがソロではなくケイン達や俺と組んでいるからいけると思われたのだろう。
受付に提出する討伐部位や売却素材を見れば大体レベルやランクはわかるものだし、あれだけ強い魔法剣士とならいくらでも組みたい輩はいるはずだ。
それはわかる。わかるんだが……それよりも何よりも、その女の目が気に入らなかった。
媚びたような目でルマンドを見、あわよくば近づきたいと匂わせるその姿は国で自分に近づいてきた女達と何ら変わらない。
あの目でルマンドを見つめないで欲しい。
ただでさえルマンドは女性の方が恋愛対象なのだ。
失恋して間もないからと言って次の恋に落ちないとは限らない。
ルマンドに振り向いてもらいたくて一緒にいるのに、横から掻っ攫われてはたまらない。
だから────牽制した。
「悪いが…こいつが組むのは俺だけだから」
後ろからルマンドを抱き込み、俺のものだと主張する。
ルマンドからは見えなかっただろうが、きっちりと「盗るな」と目で語ることも忘れない。
魔法使いはその目に込められた意味にきちんと気づいたようで、フルリと震え固まっていた。
殺気が混じっていた?きっと気のせいだ。
ただ、これには流石に鈍いルマンドでも思うことがあったらしく、自分達がデキてるんじゃないかと誤解されたのではと気にしているようだった。
別にそれならそれで願ったり叶ったり。何も困ることなど無いから、こちらとしては大歓迎なのだけど…。
でもそれを口にするとルマンドに警戒される可能性もあるから、「女性はちょっと…」と思わせぶりに伝えておいた。
そうしたら勝手に納得してくれたようで…どうやら俺が国で大変だった話をしておいたのが功を奏したらしい。
要するに女性嫌いだから似たようなことが起きないように牽制したのだなと思ってくれたようなのだ。
本当はルマンドに女性を近づかせたくないだけなんだけど……。
これでこの件は問題なく終わったし、今後煩わされることはないだろうとホッと安堵した時の事だった。
ルマンドがそう言えばと口を開き、昨夜父王と話した時のことを話してくれた。
それはまさに寝耳に水の話で────。
(ルマンドが結婚?!しかも失恋相手と?!)
「いきなりルルと結婚しろって言われてさ、断りたかったけど変に断ったら別の相手を宛がわれるだけだと思ったから、つい…その、気になる相手がいるから帰りたくないんだ~って少しだけお前のことを話したんだよ。あ、もちろん成長が楽しみな親友とか冒険仲間って意味で俺は言ったんだけど!それで…ちょっと言い方が悪かったというか何と言うか…父が変に誤解しちゃって……」
「え……」
もうどこから突っ込んだらいいのかわからない。
これは何だ?ご褒美か?それとも罠か?都合が良過ぎる展開に頭がついていかない。
「本当にゴメン。誤解は帰ったらすぐ解くから」
(解かなくていい!)
思わずそう叫ばなかった自分は偉いと思った。
兎に角落ち着かなければ。
まず、ルマンドは俺を使って上手く結婚を回避したと…そういう事だな。
その際に具体的にどう言ったのかは知らないが、父王にルマンドの好きな相手=俺と思われてしまった…と。
帰るまではこの誤解は積極的には解かないけど、帰ったら解くよと…そういうことだな。よし。わかった。
全力でこのシチュエーションを利用しよう。
「大丈夫だ。そういう事なら俺も父に言っておくから心配しなくていい」
ルマンドが心配するような国際問題にさえならなければ何も問題はないだろう。
父には早速今日にでも話を通しておいて、向こうにそれとなく話をしておいてもらうとしよう。
俺からも手紙を用意して、コーリック王に対して誠意を示し誤解のないようにしておかないと。
「本当に?」
「ああ。そうだ!折角だしルマンドがコーリックに帰る前にフォルクナーに寄っていかないか?」
「フォルクナーに?」
「折角の旅行だし、帰る前に色々見て回りたいだろう?それに、そうしておけば国に帰ってからでもいつでも俺とすぐに会えるようになるし。どうだろう?」
いつもより少々饒舌になってしまったが、この機会を逃す手はない。
「心配なら俺の父にも直にお願いできるし。どうせここからコーリックに帰るのにも転移魔法を使うんだろう?」
いい機会だしこの流れでルマンドをフォルクナーへと早いうちに連れて行ってしまおう。
ルマンドは恋愛対象として俺を見てはくれていなくても親友としては見てくれているからこの話は断らないはず。
その思惑は的中したようで、ルマンドは乗り気になって二つ返事でOKをくれた。
とは言え例の二人はやはりどうしてもついてくることにはなるだろう。
そこは許容しつつ、これからさらに距離を近づけていきたいと思う。
後は自分の腕次第だ────。
だからルマンドの方が珍しく先にギルドの扉をくぐっていたのだ。
入ってすぐに目に飛び込んできたのは、ルマンドに言い寄る女の姿だった。
見た限りパーティーに入れて欲しいと交渉しているようだ。
ここがお役所的場所だからと油断した。
魔法使いが魔法剣士と組んでレベルを上げたがるのはよくある話だと従者達からも聞いて知っていたのに……。
ルマンドがここ最近活躍していたことで魔法使いに目をつけられてしまったらしい。
ソロに魔法使いが声を掛けるのはマナー違反と聞くけれど、ここ最近ルマンドがソロではなくケイン達や俺と組んでいるからいけると思われたのだろう。
受付に提出する討伐部位や売却素材を見れば大体レベルやランクはわかるものだし、あれだけ強い魔法剣士とならいくらでも組みたい輩はいるはずだ。
それはわかる。わかるんだが……それよりも何よりも、その女の目が気に入らなかった。
媚びたような目でルマンドを見、あわよくば近づきたいと匂わせるその姿は国で自分に近づいてきた女達と何ら変わらない。
あの目でルマンドを見つめないで欲しい。
ただでさえルマンドは女性の方が恋愛対象なのだ。
失恋して間もないからと言って次の恋に落ちないとは限らない。
ルマンドに振り向いてもらいたくて一緒にいるのに、横から掻っ攫われてはたまらない。
だから────牽制した。
「悪いが…こいつが組むのは俺だけだから」
後ろからルマンドを抱き込み、俺のものだと主張する。
ルマンドからは見えなかっただろうが、きっちりと「盗るな」と目で語ることも忘れない。
魔法使いはその目に込められた意味にきちんと気づいたようで、フルリと震え固まっていた。
殺気が混じっていた?きっと気のせいだ。
ただ、これには流石に鈍いルマンドでも思うことがあったらしく、自分達がデキてるんじゃないかと誤解されたのではと気にしているようだった。
別にそれならそれで願ったり叶ったり。何も困ることなど無いから、こちらとしては大歓迎なのだけど…。
でもそれを口にするとルマンドに警戒される可能性もあるから、「女性はちょっと…」と思わせぶりに伝えておいた。
そうしたら勝手に納得してくれたようで…どうやら俺が国で大変だった話をしておいたのが功を奏したらしい。
要するに女性嫌いだから似たようなことが起きないように牽制したのだなと思ってくれたようなのだ。
本当はルマンドに女性を近づかせたくないだけなんだけど……。
これでこの件は問題なく終わったし、今後煩わされることはないだろうとホッと安堵した時の事だった。
ルマンドがそう言えばと口を開き、昨夜父王と話した時のことを話してくれた。
それはまさに寝耳に水の話で────。
(ルマンドが結婚?!しかも失恋相手と?!)
「いきなりルルと結婚しろって言われてさ、断りたかったけど変に断ったら別の相手を宛がわれるだけだと思ったから、つい…その、気になる相手がいるから帰りたくないんだ~って少しだけお前のことを話したんだよ。あ、もちろん成長が楽しみな親友とか冒険仲間って意味で俺は言ったんだけど!それで…ちょっと言い方が悪かったというか何と言うか…父が変に誤解しちゃって……」
「え……」
もうどこから突っ込んだらいいのかわからない。
これは何だ?ご褒美か?それとも罠か?都合が良過ぎる展開に頭がついていかない。
「本当にゴメン。誤解は帰ったらすぐ解くから」
(解かなくていい!)
思わずそう叫ばなかった自分は偉いと思った。
兎に角落ち着かなければ。
まず、ルマンドは俺を使って上手く結婚を回避したと…そういう事だな。
その際に具体的にどう言ったのかは知らないが、父王にルマンドの好きな相手=俺と思われてしまった…と。
帰るまではこの誤解は積極的には解かないけど、帰ったら解くよと…そういうことだな。よし。わかった。
全力でこのシチュエーションを利用しよう。
「大丈夫だ。そういう事なら俺も父に言っておくから心配しなくていい」
ルマンドが心配するような国際問題にさえならなければ何も問題はないだろう。
父には早速今日にでも話を通しておいて、向こうにそれとなく話をしておいてもらうとしよう。
俺からも手紙を用意して、コーリック王に対して誠意を示し誤解のないようにしておかないと。
「本当に?」
「ああ。そうだ!折角だしルマンドがコーリックに帰る前にフォルクナーに寄っていかないか?」
「フォルクナーに?」
「折角の旅行だし、帰る前に色々見て回りたいだろう?それに、そうしておけば国に帰ってからでもいつでも俺とすぐに会えるようになるし。どうだろう?」
いつもより少々饒舌になってしまったが、この機会を逃す手はない。
「心配なら俺の父にも直にお願いできるし。どうせここからコーリックに帰るのにも転移魔法を使うんだろう?」
いい機会だしこの流れでルマンドをフォルクナーへと早いうちに連れて行ってしまおう。
ルマンドは恋愛対象として俺を見てはくれていなくても親友としては見てくれているからこの話は断らないはず。
その思惑は的中したようで、ルマンドは乗り気になって二つ返事でOKをくれた。
とは言え例の二人はやはりどうしてもついてくることにはなるだろう。
そこは許容しつつ、これからさらに距離を近づけていきたいと思う。
後は自分の腕次第だ────。
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