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第三章 コーリック王国編(只今恋愛堪能中)
60.暗殺者に襲われた俺
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※今回ちょっと急展開です。
ルマンドが危険な目に合っているので、苦手な方は後半サラッと読み流してください。
宜しくお願いします。
****************
「そんなに新しい魔法が載ってたのか」
「うん。特に造血魔法とか万が一の時とかに使えそうだから今度メイビスにも教えるよ」
俺はなんだかんだで今日もメイビスと通信石で寝る前に話をしていた。
内容は勿論今日見た魔法書のこと。
なかなか興味深いから情報を共有したかったんだ。
メイビスは今日も優しく俺の話を聞いてくれる。
でも声だけ聞いてるのもなんだか寂しくて、ちょっとだけ顔を見たいなと思った。
「なあメイビス…」
「ん?」
「今日もそっちに行ったらダメかな?」
「……来てくれたら嬉しいな」
「じゃあ行く」
俺はやったと思いながらすぐにメイビスの元へと転移する。
そしたら転移してすぐに掴まって、ギュッと抱きしめられた。
「ルマンド」
「うわっ…!」
ふわりと湯上りの良い匂いがして気持ちがいい。
「会いたかった」
「え?うん…」
甘い…甘すぎる。声も眼差しも何もかもが甘い。でも何故か全然嫌じゃない。
どうしてだろう?
メイビスがすごく嬉しそうに笑ってくれるからかな?
「こっちに座ってくれ」
そして今日は昨日とは違ってソファで隣に座るよう言ってくる。
距離は近いけど昨日の膝上ほど恥ずかしくないから全然平気。
「酒でも飲むか?」
「ん~…今日はいいや。飲んだら眠くなるし」
今日はもうちょっとメイビスと話したい。
そう思って笑顔で断り、いろんな話をした。
ポーションを作ってみたこと。
リュクスに変な勘違いをされてしまったこと。
新しい魔法を試しに使ってみたけど、流石に全部すぐには使えなかったこと。
そんなことを話しながらメイビスの話も聞く。
こんな時間も楽しいものだ。
気づけば時間はどんどん過ぎていて、結局俺はウトウトしながらメイビスに凭れかかっていた。
「ルマンド。寝たら帰れなくなるぞ?」
「ん~…」
「それとも泊まっていくか?」
「ん?ん~…そうする」
「……?!?!!」
それからすっかり寝入ってしまった俺は結局メイビスのベッドに運ばれて、寄り添うように眠りについた。
「ルマンド…起きてくれ、ルマンド…」
そして朝、ゆさゆさと揺さぶられ、起き抜けにメイビスの顔を見て一気に目が覚めた。
そう言えば昨夜は遅くまで話し過ぎて泊ってしまったのだ。
このままここに居たら部屋を抜け出したのがバレてしまってマズいことになる。
でも慌てて声を出そうとしたところでパッと口を塞がれて、静かにと忠告される。
メイビスとしても俺がここに来ているのは秘密のようなのでただ気まずげに二人で頷き合った。
「まだ早い時間だから、今帰ったら大丈夫だと思う」
「うん」
「また…夜に会おう」
「うん」
でもこんなやり取りがなんだか擽ったい。
そしてちょっと浮かれた気分のまま転移で部屋へと帰った。
***
部屋に入ってホッと息を吐いた時だった。
いつもとは違う気配を感じてすぐさまそちらへと目を向ける。
一瞬部屋を抜け出したのが誰かにバレたのかと思ったからだ。
けれど────。
キィンッ!
咄嗟に懐から取り出した懐剣で飛んできたものを防いだものの、それが短剣だったのを見て動揺してしまう。
「くっ…!」
そこにいたのは明らかに暗殺を目的とした相手───黒一色の衣服を着た冷たい目をした男だった。
男はすぐさま攻撃を開始し、俺を殺そうとしてくる。
そんな相手に懐剣を武器に身を守るが、あまりにも速い相手の剣戟に魔法を唱える隙がない。
かなりの手練れだ。
せめて懐剣ではなくいつも使っている剣だったら上手く間合いを取って魔法を唱える隙もできただろうに────。
(まずい…!)
このままでは碌に反撃ができないままやられてしまう。
依頼人は王妃だろうか?
そう言えば王太子が朝とんでも理論を展開していたなと思い出す。
俺がメイビスと組んで王太子の座を奪おうとしている────そんなあり得ない話だ。
けれどもし…王妃がその可能性が高いと思ってしまったら?
(しまった…!もっと真剣に考えておくべきだった!)
危機感が足りていなかった自分が歯痒い。
俺は何とか相手の隙を作ろうと窓際へと向かい、隙をついて思い切り窓を割った。
ガシャーンッ!!
これで警備の誰かが気付くだろうし、それを嫌がり逃げてくれたらと思っての事だったが相手はどこまでもプロだった。
こちらの一瞬の隙を突き口からフッと毒針が飛んできて、剣を受けていた短剣を使う訳にもいかずその攻撃を受けてしまった。
(ディスペルを…!)
そう思ったものの、あっという間にそのまま意識は遠のいていく。
最後にメイビスの優しい魔力に包まれたような気がしたけれど……気のせいだったのだろうか?
もしこれで死んでしまったとしても…メイビスが悲しまなければいいなと願った。
そして俺はなすすべもなくそのまま意識を手放したのだった。
ルマンドが危険な目に合っているので、苦手な方は後半サラッと読み流してください。
宜しくお願いします。
****************
「そんなに新しい魔法が載ってたのか」
「うん。特に造血魔法とか万が一の時とかに使えそうだから今度メイビスにも教えるよ」
俺はなんだかんだで今日もメイビスと通信石で寝る前に話をしていた。
内容は勿論今日見た魔法書のこと。
なかなか興味深いから情報を共有したかったんだ。
メイビスは今日も優しく俺の話を聞いてくれる。
でも声だけ聞いてるのもなんだか寂しくて、ちょっとだけ顔を見たいなと思った。
「なあメイビス…」
「ん?」
「今日もそっちに行ったらダメかな?」
「……来てくれたら嬉しいな」
「じゃあ行く」
俺はやったと思いながらすぐにメイビスの元へと転移する。
そしたら転移してすぐに掴まって、ギュッと抱きしめられた。
「ルマンド」
「うわっ…!」
ふわりと湯上りの良い匂いがして気持ちがいい。
「会いたかった」
「え?うん…」
甘い…甘すぎる。声も眼差しも何もかもが甘い。でも何故か全然嫌じゃない。
どうしてだろう?
メイビスがすごく嬉しそうに笑ってくれるからかな?
「こっちに座ってくれ」
そして今日は昨日とは違ってソファで隣に座るよう言ってくる。
距離は近いけど昨日の膝上ほど恥ずかしくないから全然平気。
「酒でも飲むか?」
「ん~…今日はいいや。飲んだら眠くなるし」
今日はもうちょっとメイビスと話したい。
そう思って笑顔で断り、いろんな話をした。
ポーションを作ってみたこと。
リュクスに変な勘違いをされてしまったこと。
新しい魔法を試しに使ってみたけど、流石に全部すぐには使えなかったこと。
そんなことを話しながらメイビスの話も聞く。
こんな時間も楽しいものだ。
気づけば時間はどんどん過ぎていて、結局俺はウトウトしながらメイビスに凭れかかっていた。
「ルマンド。寝たら帰れなくなるぞ?」
「ん~…」
「それとも泊まっていくか?」
「ん?ん~…そうする」
「……?!?!!」
それからすっかり寝入ってしまった俺は結局メイビスのベッドに運ばれて、寄り添うように眠りについた。
「ルマンド…起きてくれ、ルマンド…」
そして朝、ゆさゆさと揺さぶられ、起き抜けにメイビスの顔を見て一気に目が覚めた。
そう言えば昨夜は遅くまで話し過ぎて泊ってしまったのだ。
このままここに居たら部屋を抜け出したのがバレてしまってマズいことになる。
でも慌てて声を出そうとしたところでパッと口を塞がれて、静かにと忠告される。
メイビスとしても俺がここに来ているのは秘密のようなのでただ気まずげに二人で頷き合った。
「まだ早い時間だから、今帰ったら大丈夫だと思う」
「うん」
「また…夜に会おう」
「うん」
でもこんなやり取りがなんだか擽ったい。
そしてちょっと浮かれた気分のまま転移で部屋へと帰った。
***
部屋に入ってホッと息を吐いた時だった。
いつもとは違う気配を感じてすぐさまそちらへと目を向ける。
一瞬部屋を抜け出したのが誰かにバレたのかと思ったからだ。
けれど────。
キィンッ!
咄嗟に懐から取り出した懐剣で飛んできたものを防いだものの、それが短剣だったのを見て動揺してしまう。
「くっ…!」
そこにいたのは明らかに暗殺を目的とした相手───黒一色の衣服を着た冷たい目をした男だった。
男はすぐさま攻撃を開始し、俺を殺そうとしてくる。
そんな相手に懐剣を武器に身を守るが、あまりにも速い相手の剣戟に魔法を唱える隙がない。
かなりの手練れだ。
せめて懐剣ではなくいつも使っている剣だったら上手く間合いを取って魔法を唱える隙もできただろうに────。
(まずい…!)
このままでは碌に反撃ができないままやられてしまう。
依頼人は王妃だろうか?
そう言えば王太子が朝とんでも理論を展開していたなと思い出す。
俺がメイビスと組んで王太子の座を奪おうとしている────そんなあり得ない話だ。
けれどもし…王妃がその可能性が高いと思ってしまったら?
(しまった…!もっと真剣に考えておくべきだった!)
危機感が足りていなかった自分が歯痒い。
俺は何とか相手の隙を作ろうと窓際へと向かい、隙をついて思い切り窓を割った。
ガシャーンッ!!
これで警備の誰かが気付くだろうし、それを嫌がり逃げてくれたらと思っての事だったが相手はどこまでもプロだった。
こちらの一瞬の隙を突き口からフッと毒針が飛んできて、剣を受けていた短剣を使う訳にもいかずその攻撃を受けてしまった。
(ディスペルを…!)
そう思ったものの、あっという間にそのまま意識は遠のいていく。
最後にメイビスの優しい魔力に包まれたような気がしたけれど……気のせいだったのだろうか?
もしこれで死んでしまったとしても…メイビスが悲しまなければいいなと願った。
そして俺はなすすべもなくそのまま意識を手放したのだった。
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