【完結】竜王は生まれ変わって恋をする

オレンジペコ

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【本編】

52.ディオンの友人達

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パーティー会場へとやってくると既に多くの貴族達がそこかしこで話題に花を咲かせていた。
中にはウィルラン辺境伯家が平民を養子に迎えたという話をしているところもある。
そう言えば領主様────義父が『ラスターに会いたいと言ってくる輩は全部断ってもいいか?』と訊いてきたことがあった。
もしかしたらその断られた貴族達が話を広めているのかもしれない。

俺もディオンと一緒に給仕からワイングラスを受け取り、そっと口をつける。
今日は皇太子殿下の誕生日パーティーということで先に歓談の時間が取られていて、場がある程度温まったところで皇太子殿下が挨拶をし、ダンスが始まるらしい。
花嫁候補が紹介されて、順番に踊るんだとか。
皇太子殿下も大変だ。
でもそれが始まる前に俺が辺境伯家に迎えられたと紹介したいと言われているから、それまではディオンと一緒にいようと思った。
終わったら予定通りディオンの目が届く範囲でパーティーを楽しむつもりだ。

そうこうしているうちにディオンの友人達がディオンのところへとやってきた。

「ディオン」

まず声を掛けてきたのはバローナ侯爵家の子息、カルロ様。
続いてやってきたのはフィックス伯爵家の子息、イエガー様。

「ディオン様」

そして彼の双子の妹である可愛らしい令嬢、イザベラ様。
その友人、アンジェリカ様とマーガレット様。

以前と同じくグイグイ来て俺をディオンから引き離そうと身を割り込ませてくる。
凄いな。
そう思ったのに、そこでディオンが素早く俺の腰を引き寄せて離れないようギュッと抱き寄せた。

「カルロ、イエガー。紹介する。俺の愛しい運命の人、ラスターだ」
「え?」
「は?」
「後で発表があるが、父上がウィルラン辺境伯家に養子として迎え入れてくれた。これから顔を合わせる機会も増えるだろうし、よろしく」

にこやかに紹介するディオンにその場で固まる二人。
ちなみに令嬢達はディオン的に眼中にないらしい。

「初めてご挨拶させていただきます。ラスターと申します。どうぞお見知りおきください」
「あ、ああ。初めまして。カルロ=バローナだ。よろしく」
「イエガー=フィックスだ。よろしく」
「バローナというとワインの産地でしたね」
「ああ」
「渋みの強いもの以外にも作っていたりするんでしょうか?」
「そうだな。今口当たりの良い女性受けしそうなものを作ろうと頑張っているところだ」

なるほど。それは是非完成したら飲んでみたい。

「それは出来上がるのが楽しみですね」
「そう言ってもらえると嬉しい。その時は一本贈ろう。感想を聞かせてくれ」
「嬉しいです。是非お待ちしております」

そして話に一区切りついたらもう一人にも話を振る。

「フィックス伯爵家は確か手広く商売をなさっているとか」
「ああ。そうだ」

ここでちょっと警戒されてしまったけど、そんなに警戒しなくてもただの世間話なのに。

「実は仕立てたい色合いの服があるんですが、鉱石を砕いて溶かした溶液に浸して染め上げた布なんかは扱っていないでしょうか?確かメルランドの領地の一部でそんな染物をしているという話を聞いたことがあるんですが」
「メルランドの布?……ちょっと聞いてみよう。────イザベラ。ヒューは今日来ていないか?」
「ヒュージャー様ですか?確かあちらの方にいたような…」
「呼んできてくれないか?」
「え?!私がですか?」
「そうだ」
「お兄様が呼んで来たらよろしいじゃありませんか!」
「チッ。気の利かない妹だ」
「まあ!横暴ですわ!お兄様、酷い!」

困った。
イザベラ嬢が泣き出した。
でも多分嘘泣きなんだ。
手の隙間からチラチラとディオンの様子を窺ってるから察してしまう。

「イザベラ嬢。泣かなくていい。俺が直接ラスターと一緒にヒュージャーのところへ行ってくるから」

特に側に行ってまで慰めるでもなく、全く動かないまま笑顔でそう言い、俺に甘やかに微笑んで『行こうか』と促してくるディオン。
基本的に優しいけど徹底してるなと感心してしまった。

「ディオン様、妹が申し訳ない」
「いや」

適度な距離感で話しつつ移動を始めるイエガー様。
カルロ様も興味があるのか一緒についてきた。

「そう言えばメルランドでは蜂蜜も有名でしたね。白ワインに後からそれで甘みを足したら合ったりしないでしょうか?」

確か前世でエルフが好んでいたような気がしたからそう口にしたら、カルロ様が反応した。

「蜂蜜か。面白そうだな」

そこからヒュージャー=メルランド様と話が盛り上がって、なんだかんだで話がトントン拍子に進んだ。
これで布も手に入れられそうだし、例の前世で気に入っていた正装に近いものを仕立ててディオンに見せられるかもしれない。
そう考えると俺は自然に笑みが零れ落ちた。

でもそんな表情を見た近くにいた令嬢が見ていたらしく、こちらを睨むように見て『平民が分かったような顔で貴族の会話に混ざるだなんて…本当に身の程知らずですこと』と言い捨ててきた。

(本当に、嫌われてるな…)

平民蔑視は貴族にはありがちな感情だから特に気にはしないけど、わざわざ口に出さなくてもいいのになと困ってしまう。
そういうことは胸の内にしまっておいたらいいのに、どうして口にしてしまうんだろう?
自分の評価をマイナスにしかねない行為だし、やめた方がいいぞと教えてあげたい気持ちになった。

するとちょうどそのタイミングで皇太子殿下が登場し、笑顔で挨拶をしてから俺達を呼んだ。

「前回他国との親善を図り、その功が認められウィルラン辺境伯家へと養子に迎えられたラスターだ。私としても彼から学ぶことは多い。辺境伯家の代替わりが行われるまでディオンと共に傍で私を支えてほしいと考えている。皆、よろしく頼む!」

いつの間にか皇太子殿下から側近候補にされてしまったようで、そんな風に紹介され困ってしまう。
でも誕生パーティーの主役である皇太子殿下の顔を潰すわけにもいかないし、俺は当たり障りなく笑顔で挨拶をすることに。

「ただいまご紹介に預かりましたラスター=ウィルランです。至らぬ点も多々あるとは存じますが、どうぞ宜しくお願いいたします」

その言葉に比較的男性陣は好意的に拍手をくれる。
女性陣は……うん。微妙だな。
多分ディオンがずっと俺の腰を抱いているからだと思うけど。



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