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【番外編】
閑話4.ディオンの好きなところ
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王都で皇太子殿下の側近として働き始めてすぐ、イザベラ嬢からワイン会をしましょうと招待を受けた。
言わずもがな、あの時の意見を元に作られたワインだ。
つい最近バローナ領で数種類作られ、フィックス家の商会で売り出されたらしい。
今回はその全種類を協力者達全員で楽しみましょうという趣旨のようだ。
「楽しみ」
笑顔でそう言ったらディオンが絶対についてくると言い張ったんだけど、イザベラ嬢はディオンに怯えていたことを思い出したから、今回は俺だけで言ってくると返した。
「え?!」
「ダメかな?」
「そのワイン会に参加する女性は何人?」
「ええと…12人くらいかな」
「それはあの時イザベラ嬢が連れてきていた全員?」
「そうみたい」
「…………男も来る?」
「カルロ様とイエガー様、あとはヴィクターさんは参加予定みたいだけど」
「じゃあやっぱり俺も参加で!」
「え?」
「ライバルが多すぎる!行って欲しくない!」
ライバル?誰のことだろう?
「そんな人は一人も来ないと思うし大丈夫。それよりディオンにはこっちのフランテーヌ国からの客人の件を任せたいんだ」
「そんなっ!」
「難しいかな?」
頼りにしてるんだけど、ダメだろうか?
そんな気持ちで尋ねたら『ズルい!』と言われたけど、結局引き受けてもらうことができた。
何かをブツブツ言ってたけど、今回来るのはフランテーヌの王族らしいし、出迎え時の案内を是非社交的なディオンに任せたい。
ディオンならフランテ語も話せるし適任だ。
皇太子殿下もすぐ認めてくれるだろう。
「じゃあ宜しく」
そうして俺は当日一人でワイン会へと出掛けることができたのだけど────。
「ラスター様!ようこそいらっしゃいました!」
俺が一人で来たのを見てイザベラ嬢は満面の笑みで出迎えてくれた。
他の面々も満面の笑みだ。
(良かった)
イザベラ嬢はまだしも、他の令嬢令息達はディオンがいた方が良かったりしないだろうかと少しだけ気になっていたからだ。
ディオンはライバルがどうこうと言っていたけど、俺からすれば社交的で誰とでも親しくなるディオンの方がモテるのになという印象があった。
それでもディオンに向かって行く令嬢がいないのは、皇太子殿下とのことが防波堤になっているからだ。
城で働き出してからも皇太子殿下とディオンの噂は山程聞いたし、俺が以前誤解していたのも仕方がないことだったと思えて仕方がない。
ディオンには言わないものの、あからさまに嫌がらせをしてくる者もいるしそれなりに周囲には気を遣う。
まあそこをどう上手く収めるかは自分次第ではあるのだけど、折角イザベラ嬢が楽しい会に誘ってくれたのだから今日ばかりは少しくらい息抜きがしたかった。
「ん。美味しい」
皆でワイワイ話しながら用意されたワインを味わうと芳醇な香りと口当たりの良い甘みが口の中へと広がって思わず頬が綻んだ。
「そちらはバラの産地である彼女の領地から取り寄せたローズシロップを加えた逸品ですのよ」
にこやかにイザベラ嬢が説明をしてくれて、一人の令嬢を笑顔で見遣る。
「ああ、これはシルフォン領の…。とても好みです」
「まあ。嬉しいですわ」
ニコニコと微笑むカレン=シルフォン嬢に惜しみない称賛を送ると、ポッと頬を染められ嬉しそうに他の特産品の話なども教えてもらえた。
幾つか気になったものもあったし、今度シルフォン伯爵の方へ手紙を送らせてもらおう。
そうして順次他のワインへも舌鼓を打ちながら楽しいワイン会を満喫していると、不意に一人の令嬢が話を振ってきた。
「ラスター様。ディオン様とはその後いかがですか?」
「そう言えば浮気されて悲しみから逃げたものの、強引に連れ戻されたとか」
「私は皇太子殿下との仲を応援するため自ら身を引いたと聞きましたわ。今はどうなっておりますの?」
ディオンが一年かけて探し続けたことで皇太子殿下よりも俺への愛の方が深かったと気付いたとかなんとかいう話も出回っているらしく、皆真相や如何にと言った目を俺へと向けてくる。
(真相も何も、ツガイを追いかけて捕まえただけの話なんだけど…)
ツガイの概念がないこの世界で真相を話しても全く分かってもらえないのがわかるだけに、俺が言えることは限られてくる。
「ディオンとは上手くやっているので心配はいらないです」
「ラスター様はディオン様がやっぱりお好きなんですの?」
「ええ。とても」
ここは正直に言おう。大好きだ。
そんな俺にイザベラ嬢が呆れたように言ってくる。
「ラスター様。言わせていただきますが、あの男、中身は鬼畜ですわよ?」
「可愛いと思うけど?」
「外面だけは完璧ですわね」
「ラスター様は騙されているってこと?」
「でもディオン様は鬼畜ではなくお優しい方に見えますけれど…」
「そうですわよね。私も穏やかな方だとずっと思っていましたわ。まあ…二股はちょっといただけませんけれど」
なんだか令嬢達の雲行きが怪しい。
ディオンはそのまま、穏やかで優しくて一途だから!
「ラスター様はディオン様のどこがお好きですの?」
どうしたものかと考えていると、不意にそんなことを聞かれた。
ディオンのどこが好き?
ツガイだから好きというのはもちろんあるけど、それを明かされる前からも好きだった。
「えっと……不器用で可愛いところ、かな?」
誰も気づいていないのは意外だけど、ディオンはああ見えて不器用なところがある。
皇太子殿下と誤解されたのもそこが悪い方に出てしまった結果だろう。
だからこそ自分がしっかりして支えてあげたいと思うのだけど…。
(それを口にすると、ディオンは何故か余計に挽回を目指して頑張ろうとして、更に空回りし始めるんだよな…)
そんなところもまた可愛い。
見てて飽きないし愛おしく感じてしまうのだからどうしようもない。
完璧じゃないところがたまらなく好きだ。
だからそう言ったのに、イザベラ嬢には『りゅ、ラスター様と比較したら誰だって不器用ですし、可愛さだけなら私の方がずっと上ですわ!理由になっておりません!』と訳の分からない対抗心を燃やされてしまった。
聞かれたから答えたのにな…。
「他にはありませんの?」
「他に?」
ディオンの好きなところ?
どこだろう?
全部好きなんだけど。
「甲斐甲斐しく面倒を見てくれるところ、とか?」
「そんなもの(ツガイなら)当り前ですわ!」
まあそれは確かにその通りだから何も言えない。
「話だって合うし、一緒にいて落ち着くし、いつも優しく接してくれるところとか…」
「優しい?それは相手がラスター様だからでしょう。あの方を一年、ヴィクターと一緒に見て参りましたけど、酷かったですわよ?本性は魔王です!」
「そうかな?穏やかなところしか見たことがないけど」
「ラスター様の前だけですわ!ラスター様の前ならきっと誰だって穏やかになれますもの」
プンプンとイザベラ嬢は怒るけど、これは俺に何を言わせたいんだろう?
これ以上周囲にディオンを誤解されたくはないし、困ってしまう。
不満の一つでも溢せば納得してくれるんだろうか?
(そうは言っても…不満なんて思いつかないしな)
ここはやっぱりコレだろうか?
「イザベラ嬢はヴィクターさんに不満でもあるとか?」
「え?ヴィクターにですか?ありませんわ」
「じゃあ一緒だよ。俺もディオンに不満はないから」
きっとイザベラ嬢ならわかってくれるはず。
そう思ったのは正解で、案の定イザベラ嬢は何も言えなくなった。
ツガイにならいくらでも大らかになれるものなのだ。
「……ズルい方ね」
ポツリとそう溢すイザベラ嬢へとクスリと笑い、俺は『お互い様だよ』とだけ返しておいた。
その日、お土産にワインを貰ったから、帰ってからディオンと一緒に二人で飲んだ。
誰かに色仕掛けなんてされなかったかとか、必要以上に触られたりしなかったかとか色々聞かれたけど、そんなことは一切なかったし、何だったらディオンとの惚気話を口にしていたくらいだと正直に言えば、ディオンは驚愕したように目を見開いてて思わず笑ってしまった。
「ラスターが…惚気話?」
「そう。イザベラ嬢がディオンのどこが好きなんだって言ってくるから困ったよ」
「……え?」
「ん?」
どうして蒼白になっているんだろう?
ワイングラスを傾けながら小首を傾げると、ディオンが慌てたように『困るほど俺の好きな点が思いつかなかったとか?!』と訊いてきたから、どうしてそう取るんだろう?と思いつつ『本気で可愛すぎる!』と身悶えそうになった。
こんなに俺はディオンにべた惚れなのに、どうしてそんな考えに至るのかが謎だ。
俺の愛情表現が足りていないのかな?
「ディオン…」
ワイングラスをテーブルへと置いて、俺はそっとディオンへと身を寄せそのままゆったりと唇を合わせる。
「ラスター?」
「こんなにディオンを好きなのに伝わってないなんて悲しいな」
「でも…」
「今日は誰も知らない可愛いディオンを俺だけが知ってるんだって再確認した」
そう言いながらディオンの膝の上へと横向きに座って、ディオンがその気になってくれるように何度も唇を重ねていく。
たまには俺から誘ってもいいかな?
「ディオンに愛される幸せをお裾分けできないのが残念だったな」
溺愛してくれるツガイの良さを上手く伝えられないことがもどかしい。
でもきっとそれでいいのだと思う。
竜人族と人族は似て非なるもの。
価値観だって違うし、そういったものは押し付けるようなものではないんだから。
「ディオン…」
一つ二つと上からシャツのボタンを外していき、鍛えられた胸板へとそっと手を添え、俺は露わになったディオンの胸元へと唇を寄せる。
そしてトクントクンと鳴る鼓動を愛しく思いながら、そっとそこへと唇を落としてそのままチュウッと吸い上げた。
赤く色づく所有の印が嬉しい。
「ディオンの心に、俺の心をあげる」
これはその証だと告げるとそのまま押し倒されて、同じ場所へと強く吸い付いてこられた。
「ん、ぅんっ…!」
「ラスター…俺の心も全部受け取って欲しい」
激しい想いを込めてそう口にしてくる可愛い俺だけのツガイ。
この姿を見るたびに俺が安心しているなんて、きっと考えもしないんだろうな。
ディオンが他の人達へと向けるのは平等な好意。
でも俺にだけ向けられるのは、そんなものが吹き飛ぶほどの強い激情。
これくらい想ってもらえないと、きっと前世含めて長く寂しかった心は満たされなかったと思う。
俺に沢山の愛情をくれるディオンを俺はもう誰にも譲りたくはない。
これは明確な執着────。
「母上にも束縛夫は嫌われるって手紙で言われたけど、ラスターが好き過ぎて離れられないんだ」
「俺に離してもらえないって書いたらいいのに」
「それはない。俺が捕まえてないとラスターはどこかに飛んでいきそうだし、もっと束縛して欲しいくらいだ」
ディオンは拗ねたようにそう言うけど、ディオンが気づいていないだけで俺だってこれ以上ないほど束縛してるんだけどな。
もう離れないと決めたから、俺だけに夢中になってもらえるように、気づかれないように甘く絡めとって、そこから抜け出せないように手を打ってるんだ。
俺のことをわかっているようでわかってない、そんなツガイが本当に微笑ましい。
「やっぱりディオンは可愛い」
チュッと俺からキスをしたのを合図にディオンの愛撫が始まる。
もっともっと俺に夢中になって?
俺は今日も幸せな温もりを感じながら愛しいツガイに身を任せる。
俺だけの可愛い可愛いツガイ。
「今日もいっぱい、愛して?」
そう口にするとディオンは嬉しそうに顔を輝かせて、これでもかと愛してくれる。
ディオンは自分の与える快感に俺が夢中になってると勘違いしているようだけど、それは違うんだっていつ教えてあげようか?
好きな人に愛されて、心が満たされるから余計に感じているんだといつかこっそり教えたい。
「ディオン────」
そして俺は大好きなツガイへと腕を伸ばして、想いを込めて抱き着いた。
****************
※リクエストを受け、上記フランテーヌからの客人編を只今書いていますので、もしお付き合いいただける方がいらっしゃいましたらそちらもよろしくお願いします(^^)
言わずもがな、あの時の意見を元に作られたワインだ。
つい最近バローナ領で数種類作られ、フィックス家の商会で売り出されたらしい。
今回はその全種類を協力者達全員で楽しみましょうという趣旨のようだ。
「楽しみ」
笑顔でそう言ったらディオンが絶対についてくると言い張ったんだけど、イザベラ嬢はディオンに怯えていたことを思い出したから、今回は俺だけで言ってくると返した。
「え?!」
「ダメかな?」
「そのワイン会に参加する女性は何人?」
「ええと…12人くらいかな」
「それはあの時イザベラ嬢が連れてきていた全員?」
「そうみたい」
「…………男も来る?」
「カルロ様とイエガー様、あとはヴィクターさんは参加予定みたいだけど」
「じゃあやっぱり俺も参加で!」
「え?」
「ライバルが多すぎる!行って欲しくない!」
ライバル?誰のことだろう?
「そんな人は一人も来ないと思うし大丈夫。それよりディオンにはこっちのフランテーヌ国からの客人の件を任せたいんだ」
「そんなっ!」
「難しいかな?」
頼りにしてるんだけど、ダメだろうか?
そんな気持ちで尋ねたら『ズルい!』と言われたけど、結局引き受けてもらうことができた。
何かをブツブツ言ってたけど、今回来るのはフランテーヌの王族らしいし、出迎え時の案内を是非社交的なディオンに任せたい。
ディオンならフランテ語も話せるし適任だ。
皇太子殿下もすぐ認めてくれるだろう。
「じゃあ宜しく」
そうして俺は当日一人でワイン会へと出掛けることができたのだけど────。
「ラスター様!ようこそいらっしゃいました!」
俺が一人で来たのを見てイザベラ嬢は満面の笑みで出迎えてくれた。
他の面々も満面の笑みだ。
(良かった)
イザベラ嬢はまだしも、他の令嬢令息達はディオンがいた方が良かったりしないだろうかと少しだけ気になっていたからだ。
ディオンはライバルがどうこうと言っていたけど、俺からすれば社交的で誰とでも親しくなるディオンの方がモテるのになという印象があった。
それでもディオンに向かって行く令嬢がいないのは、皇太子殿下とのことが防波堤になっているからだ。
城で働き出してからも皇太子殿下とディオンの噂は山程聞いたし、俺が以前誤解していたのも仕方がないことだったと思えて仕方がない。
ディオンには言わないものの、あからさまに嫌がらせをしてくる者もいるしそれなりに周囲には気を遣う。
まあそこをどう上手く収めるかは自分次第ではあるのだけど、折角イザベラ嬢が楽しい会に誘ってくれたのだから今日ばかりは少しくらい息抜きがしたかった。
「ん。美味しい」
皆でワイワイ話しながら用意されたワインを味わうと芳醇な香りと口当たりの良い甘みが口の中へと広がって思わず頬が綻んだ。
「そちらはバラの産地である彼女の領地から取り寄せたローズシロップを加えた逸品ですのよ」
にこやかにイザベラ嬢が説明をしてくれて、一人の令嬢を笑顔で見遣る。
「ああ、これはシルフォン領の…。とても好みです」
「まあ。嬉しいですわ」
ニコニコと微笑むカレン=シルフォン嬢に惜しみない称賛を送ると、ポッと頬を染められ嬉しそうに他の特産品の話なども教えてもらえた。
幾つか気になったものもあったし、今度シルフォン伯爵の方へ手紙を送らせてもらおう。
そうして順次他のワインへも舌鼓を打ちながら楽しいワイン会を満喫していると、不意に一人の令嬢が話を振ってきた。
「ラスター様。ディオン様とはその後いかがですか?」
「そう言えば浮気されて悲しみから逃げたものの、強引に連れ戻されたとか」
「私は皇太子殿下との仲を応援するため自ら身を引いたと聞きましたわ。今はどうなっておりますの?」
ディオンが一年かけて探し続けたことで皇太子殿下よりも俺への愛の方が深かったと気付いたとかなんとかいう話も出回っているらしく、皆真相や如何にと言った目を俺へと向けてくる。
(真相も何も、ツガイを追いかけて捕まえただけの話なんだけど…)
ツガイの概念がないこの世界で真相を話しても全く分かってもらえないのがわかるだけに、俺が言えることは限られてくる。
「ディオンとは上手くやっているので心配はいらないです」
「ラスター様はディオン様がやっぱりお好きなんですの?」
「ええ。とても」
ここは正直に言おう。大好きだ。
そんな俺にイザベラ嬢が呆れたように言ってくる。
「ラスター様。言わせていただきますが、あの男、中身は鬼畜ですわよ?」
「可愛いと思うけど?」
「外面だけは完璧ですわね」
「ラスター様は騙されているってこと?」
「でもディオン様は鬼畜ではなくお優しい方に見えますけれど…」
「そうですわよね。私も穏やかな方だとずっと思っていましたわ。まあ…二股はちょっといただけませんけれど」
なんだか令嬢達の雲行きが怪しい。
ディオンはそのまま、穏やかで優しくて一途だから!
「ラスター様はディオン様のどこがお好きですの?」
どうしたものかと考えていると、不意にそんなことを聞かれた。
ディオンのどこが好き?
ツガイだから好きというのはもちろんあるけど、それを明かされる前からも好きだった。
「えっと……不器用で可愛いところ、かな?」
誰も気づいていないのは意外だけど、ディオンはああ見えて不器用なところがある。
皇太子殿下と誤解されたのもそこが悪い方に出てしまった結果だろう。
だからこそ自分がしっかりして支えてあげたいと思うのだけど…。
(それを口にすると、ディオンは何故か余計に挽回を目指して頑張ろうとして、更に空回りし始めるんだよな…)
そんなところもまた可愛い。
見てて飽きないし愛おしく感じてしまうのだからどうしようもない。
完璧じゃないところがたまらなく好きだ。
だからそう言ったのに、イザベラ嬢には『りゅ、ラスター様と比較したら誰だって不器用ですし、可愛さだけなら私の方がずっと上ですわ!理由になっておりません!』と訳の分からない対抗心を燃やされてしまった。
聞かれたから答えたのにな…。
「他にはありませんの?」
「他に?」
ディオンの好きなところ?
どこだろう?
全部好きなんだけど。
「甲斐甲斐しく面倒を見てくれるところ、とか?」
「そんなもの(ツガイなら)当り前ですわ!」
まあそれは確かにその通りだから何も言えない。
「話だって合うし、一緒にいて落ち着くし、いつも優しく接してくれるところとか…」
「優しい?それは相手がラスター様だからでしょう。あの方を一年、ヴィクターと一緒に見て参りましたけど、酷かったですわよ?本性は魔王です!」
「そうかな?穏やかなところしか見たことがないけど」
「ラスター様の前だけですわ!ラスター様の前ならきっと誰だって穏やかになれますもの」
プンプンとイザベラ嬢は怒るけど、これは俺に何を言わせたいんだろう?
これ以上周囲にディオンを誤解されたくはないし、困ってしまう。
不満の一つでも溢せば納得してくれるんだろうか?
(そうは言っても…不満なんて思いつかないしな)
ここはやっぱりコレだろうか?
「イザベラ嬢はヴィクターさんに不満でもあるとか?」
「え?ヴィクターにですか?ありませんわ」
「じゃあ一緒だよ。俺もディオンに不満はないから」
きっとイザベラ嬢ならわかってくれるはず。
そう思ったのは正解で、案の定イザベラ嬢は何も言えなくなった。
ツガイにならいくらでも大らかになれるものなのだ。
「……ズルい方ね」
ポツリとそう溢すイザベラ嬢へとクスリと笑い、俺は『お互い様だよ』とだけ返しておいた。
その日、お土産にワインを貰ったから、帰ってからディオンと一緒に二人で飲んだ。
誰かに色仕掛けなんてされなかったかとか、必要以上に触られたりしなかったかとか色々聞かれたけど、そんなことは一切なかったし、何だったらディオンとの惚気話を口にしていたくらいだと正直に言えば、ディオンは驚愕したように目を見開いてて思わず笑ってしまった。
「ラスターが…惚気話?」
「そう。イザベラ嬢がディオンのどこが好きなんだって言ってくるから困ったよ」
「……え?」
「ん?」
どうして蒼白になっているんだろう?
ワイングラスを傾けながら小首を傾げると、ディオンが慌てたように『困るほど俺の好きな点が思いつかなかったとか?!』と訊いてきたから、どうしてそう取るんだろう?と思いつつ『本気で可愛すぎる!』と身悶えそうになった。
こんなに俺はディオンにべた惚れなのに、どうしてそんな考えに至るのかが謎だ。
俺の愛情表現が足りていないのかな?
「ディオン…」
ワイングラスをテーブルへと置いて、俺はそっとディオンへと身を寄せそのままゆったりと唇を合わせる。
「ラスター?」
「こんなにディオンを好きなのに伝わってないなんて悲しいな」
「でも…」
「今日は誰も知らない可愛いディオンを俺だけが知ってるんだって再確認した」
そう言いながらディオンの膝の上へと横向きに座って、ディオンがその気になってくれるように何度も唇を重ねていく。
たまには俺から誘ってもいいかな?
「ディオンに愛される幸せをお裾分けできないのが残念だったな」
溺愛してくれるツガイの良さを上手く伝えられないことがもどかしい。
でもきっとそれでいいのだと思う。
竜人族と人族は似て非なるもの。
価値観だって違うし、そういったものは押し付けるようなものではないんだから。
「ディオン…」
一つ二つと上からシャツのボタンを外していき、鍛えられた胸板へとそっと手を添え、俺は露わになったディオンの胸元へと唇を寄せる。
そしてトクントクンと鳴る鼓動を愛しく思いながら、そっとそこへと唇を落としてそのままチュウッと吸い上げた。
赤く色づく所有の印が嬉しい。
「ディオンの心に、俺の心をあげる」
これはその証だと告げるとそのまま押し倒されて、同じ場所へと強く吸い付いてこられた。
「ん、ぅんっ…!」
「ラスター…俺の心も全部受け取って欲しい」
激しい想いを込めてそう口にしてくる可愛い俺だけのツガイ。
この姿を見るたびに俺が安心しているなんて、きっと考えもしないんだろうな。
ディオンが他の人達へと向けるのは平等な好意。
でも俺にだけ向けられるのは、そんなものが吹き飛ぶほどの強い激情。
これくらい想ってもらえないと、きっと前世含めて長く寂しかった心は満たされなかったと思う。
俺に沢山の愛情をくれるディオンを俺はもう誰にも譲りたくはない。
これは明確な執着────。
「母上にも束縛夫は嫌われるって手紙で言われたけど、ラスターが好き過ぎて離れられないんだ」
「俺に離してもらえないって書いたらいいのに」
「それはない。俺が捕まえてないとラスターはどこかに飛んでいきそうだし、もっと束縛して欲しいくらいだ」
ディオンは拗ねたようにそう言うけど、ディオンが気づいていないだけで俺だってこれ以上ないほど束縛してるんだけどな。
もう離れないと決めたから、俺だけに夢中になってもらえるように、気づかれないように甘く絡めとって、そこから抜け出せないように手を打ってるんだ。
俺のことをわかっているようでわかってない、そんなツガイが本当に微笑ましい。
「やっぱりディオンは可愛い」
チュッと俺からキスをしたのを合図にディオンの愛撫が始まる。
もっともっと俺に夢中になって?
俺は今日も幸せな温もりを感じながら愛しいツガイに身を任せる。
俺だけの可愛い可愛いツガイ。
「今日もいっぱい、愛して?」
そう口にするとディオンは嬉しそうに顔を輝かせて、これでもかと愛してくれる。
ディオンは自分の与える快感に俺が夢中になってると勘違いしているようだけど、それは違うんだっていつ教えてあげようか?
好きな人に愛されて、心が満たされるから余計に感じているんだといつかこっそり教えたい。
「ディオン────」
そして俺は大好きなツガイへと腕を伸ばして、想いを込めて抱き着いた。
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※リクエストを受け、上記フランテーヌからの客人編を只今書いていますので、もしお付き合いいただける方がいらっしゃいましたらそちらもよろしくお願いします(^^)
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