【本編完結】公爵令息は逃亡しました。

オレンジペコ

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31.あまりにも酷い

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「ア、アリスト殿下────!!お帰りなさいませ!無事のご帰還に安堵いたしました!」

城に戻った俺達はあちらこちらからかけられるそんな言葉と共にあっという間に取り囲まれてしまう。
正直予想以上の歓迎ぶりだ。
一体どれくらい仕事が大変だったんだろう?
ちょっと怖くなる。
そうしているうちに宰相が俺達のところへふらふらしながらやってきて、長旅で疲れただろうからどうぞご休憩くださいと言ってくれた。
でもどこからどう見ても宰相は俺達より疲れてるよなと思ったから、可哀想になって『回復魔法をかけましょうか?』と言ったんだけど、寝たら大丈夫だからその分を温存してこれから大変になるアリストの手伝いをしてあげて欲しいと言われてしまった。
とは言え見るからにぶっ倒れる寸前って感じだし、本気で過労死したら大変だから後でこっそり癒してあげようと思う。
でもそんなやり取りをしていたところで、王太子がアリストを呼んでいると遣いがやってきた。
宰相は行く必要はないと言ってくれたけど、流石にそういうわけにはいかないだろう。
王が倒れているのなら現在トップに立って仕事を回しているのは王太子のはずだし、これから何を優先させるのかとか詳しく話は聞くべきだと思って、同じ判断をしたアリストと共に王太子の元へと向かったのだけど…。

「遅いぞ、アリスト!どこをほっつき歩いていた?!」

いきなりの怒声。

「ただでさえ仕事が遅い役立たずなのだ!もっと早く帰ってこい!」

俺の兄に輪をかけて理不尽なことを言う王太子。
本当にこの人も酷い人だと思う。
うちの兄は遅いとかもっと早くやれとかそう言ったことは言ってくるけど、少なくともある程度能力的には認めてくれていると思う。
それに対して王太子はあからさまに上から目線で何一つ認めず全部馬鹿にしてくる感じ?
どっちも酷いけど、兄の方がまだマシかなと俺は常々思っている。

「お前が長く城を開け自分の仕事を放り出していたせいで皆迷惑しているんだ!ただでさえジオラルドのせいで仕事があっちもこっちも滞って大変なことになっているのに余計な手間をかけさせるなど言語道断!恥を知れ!」
「…………」
「なんだその顔は。文句でもあるのか?あるはずがないな。遊んでいる暇があったら時間を無駄にせず今すぐ仕事に取り掛かれ!取り敢えずお前の仕事が大量に混ざりこんでいる俺の部屋から速やかに片付けるんだ!今日からは寝ている暇など一切ないぞ?!わかったな!」

スゴイ。
宰相と違って全く気遣いひとつない言葉の数々に最早溜息しかない。
まあ…知ってたけど。
この人は昔からこういう人だ。

ただ宰相は基本的に王の側で仕事をしていたから、きっと知らなかったんだろう。
あまりにもあんまりな言い分に最初呆気に取られ、段々と顔を真っ赤にし始めて、最終的に怒りmaxって感じで王太子を睨みつけ、徐ろに王太子の後頭部を掴んだかと思うとそのまま無理矢理アリストの前で頭を下げさせた。
物凄い力技だ。

「なっ、何をする!無礼だぞ!この手を離せ!」
「……王太子殿下」
「なんだ?!」
「アリスト殿下だけでなく、私にまで仕事を放棄させたくないのなら、今すぐ、アリスト殿下にお謝りください」

淡々と告げられる言葉の数々には一つ一つ怒りが込められている。
どうやらかなりお怒りなご様子。
きっと限界値を振り切ってしまったんだろう。
ここで謝らなければ多分本当に宰相は全部放り出しそうな気がした。
そんな宰相の鬼気迫る空気を感じたのか、流石の王太子も珍しく反論することなく小さく言葉を口にしてくる。

「ど、どうやら少し言い過ぎたようだな。その…少しくらいなら寝てもいいぞ?その方が頭も多少は回るようになるだろうしな」

王太子なりの妥協。
でも宰相はそれでは許してくれなかった。

「オーフェン王太子殿下?私はアリスト殿下に謝罪をと申しております」
「む。だから謝っただろう?聞いていなかったのか?」

どうやらあれで王太子は謝ったつもりだったらしい。

(全く謝ってないから!)

そう思ったのは当然その場にいた全員だ。

「アリスト殿下。お疲れのところ大変申し訳ございませんでした。後程私の方から現状のご報告をさせていただきますので、一先ずお部屋でお寛ぎください」

これ以上はこちらを不快にさせるだけだと思ったのか宰相はそう言いながらアリストへと頭を下げ、王太子の頭を掴んだままその場を去っていった。
お説教でもしてくれるんだろうか?
無理して血管切れないといいんだけど…。




それから暫くして宰相が疲れた顔でアリストの部屋へとやってきたから、すぐに回復魔法をかけてあげた。
本当はこのまま少し横になった方がいいとは思うけど、話だけは聞いておきたい。

「宰相。疲れているところ申し訳ないが、現状と、俺一人で何とかなるのかを聞きたい」
「お気遣いありがとうございます。正直城内はかなりの混乱状態となっております。仕事の合間にジオラルド殿の政略を私なりに精査もしてみましたが、理解できる部分とできない部分があり正直何をどうすれば一番スムーズに事が運ぶのか判断はつかないことも多く、それと連動してあちこちで仕事が停滞する始末。王も王太子も怒りを露わにするだけで全く役には立ってくれず、解決の糸口すら見つけられない状況です。アリスト殿下に丸投げする気はありません。ですがどうか最低限仕事が回るようお力添えいただけないでしょうか?」

泣ける!
宰相もある意味理不尽な相手に振り回されている仲間だな。
そう思い、俺はアリストと共に宰相に協力して書類を確認していったのだけど、これがまたやってもやっても終わらない。
一体どれだけ城内の仕事は滞っているのだろう?
気が遠くなりそうだ。

王太子だけの仕事だけなら何とかなっただろうけど、国そのものの仕事となるともうお手上げだった。

「…………宰相。大変申し訳ないのですが、国外追放された兄を連れてきてもよろしいでしょうか?」

兄のやったことが混乱をきたした要因だし、流石にここまで酷いと兄を呼び寄せないと収拾がつかないような気がしてきた。
だからダメ元で言ったのだけど、宰相はこの際自分が責任を取るので、是非呼んできてもらえないかと言ってきた。
王太子の方は宰相の部下が軟禁して後でまとめて大量のサインという名の仕事をさせるからとも。
それなら余計な叱責も受けなくて済みそうだ。

でも何事も楽観視はできない。
それに兄のところに行って連れてくる必要があるのなら最低限やっておかなければならないこともある。
考えなしに兄のところに行ったら追い返されるのが関の山。
絶対に頷いてはもらえないだろうから、俺は現状を纏めつつ、どの部署のどこがどう滞っていて何が問題なのかを宰相に確認を取りながら報告書へと急いでまとめあげた。
兎に角兄の説得材料は少しでも揃えておいて、何を質問されてもできる限り明確に答えられるようにしてから迎えに行かないと。
その上で帰るのがダメならダメでこの報告書だけでも見てもらってアドバイスをもらって来よう。

「では暫く席を外します」

そして俺は再度サザナードへと転移する羽目になったのだった。


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