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第Li章:多くの美しい自然遺産を持つ異世界で何故観光産業が発展しないのか

meat or fish/2:どうにも入りきらなそうなのでポケットを四次元に拡張しよう

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 深夜、ニンニク共和国首都ニューパルマ。ニンニクパレスの城壁の上から侵入者の監視を行っていた騎士は庭先を走る影を発見し、緊急を知らせる笛を吹き鳴らした。これに続いて内部にプロペラを備えた笛が至る所でサイレンのような大音量を上げ、数十個の球体の鉄の器の中に火が灯される。その器には内部に装着された鏡によって火の灯りを直線的に集中させる機能があり、現代人にとってみればまるでサーチライトのように見えることだろう。そんなサーチライトが侵入者の姿を探すように庭園内を舐め回し、やがて一人の少女を壁際に追い込んだ。

「ちぃ……」
「今日という今日は逃しませんぞ、大統領!」
「なにが大統領よ、民主的な言葉使って。私がいつ出馬表明したっていうの?」
「そのようなこと、国民すべてがあなたを大統領と認めている時点でどうでも良いこと。大人しく公務に就いていただきます」
「絶対に嫌。こんな臭い名前の国の大統領執務室の椅子に座るくらいなら、シュールストレミングの白い液体を全身にぶっかけられる方がマシ。とにかく、今日もいただくものはいただいた。あばよ、タヌ◯チのとっつぁん」
「逃がすな! 追え! 追えーっ!」

 しかし、今日もシズクは逃げおおせる。一方的にワープポータルを使用できる上、毎回逃走経路の確保は完璧。広大である故に街中にいくつもワープポータルが完備されていることが仇となっていた。

「逃げられました!」
「まったく……困ったものですな。しかし、毎日毎日、あの方は何故わざわざ庭園に侵入を? 何かを盗んでいるような口ぶりですが、なにか被害は?」
「いえ、まったく確認できず……」
「むぅ……相変わらず、何を考えているのかさっぱり理解できん……まっこと、科学とはわけのわからないものですね」

 タヌ◯チには何もわからない。何故うじ虫工場内で平然と生活していた彼女がこの国を臭いと言うのか、何故毎日何故庭園に侵入を繰り返すのか、何故彼女が緑のジャケットを着込んでいるのか、それらのすべてが。
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