83 / 178
第Li章:多くの美しい自然遺産を持つ異世界で何故観光産業が発展しないのか
アリストテレスとメンデレーエフ/1:所謂原作レイプというものをしても許されてしまう監督が日本には少なくとも2人いる
しおりを挟む
スウェーデンはストックホルム、アーランダ空港。姉達と同じ日本の科学者達に少し遅れて、シズクとリクが入国審査の列に並んでいた。この時のためにサングラスを調達し、しっかりとイメージトレーニングを積んだシズクは入国審査官にパスポートを渡す。
「sightseeing?」(観光ですか?)
「No」(いいえ)
軽く一言でそう否定し、サングラスを外し。
「Com……」(戦……)
「あー! すみませんすみません! 先にたくさん日本人いましたよね! あれと同じ! はい! そうそう! Nobel Prize!(ノーベル賞!) YES!(はい!) YES!(そうそう!) Bye!(じゃぁね!)」
リクに体を押される形で無事スウェーデン国内に入国したシズクは、全力で頬を膨らませて不機嫌さをアピールした。
「この時のため、映画のあのシーン何回も見直したのに。外国まで来て方舟攻略に挑むんだから、絶対やるしかなかったのに。リク君の、ばか」
そういってシズクの手刀がリクを襲うが、その一撃はリクの体には触れなかった。それもそうである。シズクの腕は伸びない。こういうところまで無駄な再現が完璧である。
「バカはお前だ! 頼むから世界情勢にもう少し目を配れ! 洒落にならねえんだよ!」
世界は未だロシアとウクライナの戦争中。そんな中でニューヨーク市警の真似をして入国目的にコンバットなんて宣言した日には、しばらく別室から出られないことは間違いない。
「まったく……」
「いや、ちょっとまって。なんか匂わない?」
すんすんと鼻を鳴らすシズクの様子に思わず心臓が跳ねるリク。まさか、ガスが? 自分たちは日本ですっかり平和ボケしているが、今の御時世、複雑怪奇な欧州ではテロが起きても不思議ではない。咄嗟に新型感染症用のマスクで口を覆い、改めてあたりを見渡す。
「いや……俺は特に……」
「そう。何の匂いもしないの」
「は?」
「成田空港ならもう醤油の香りがしているはず。なのに、ここではあれだけ練習したシュールストレミングの匂いが全くしない」
「お前やっぱり俺のセーター弁償しろよ!」
かくして、憧れのヨーロッパ、スカンジナビアの地においてもシズクはマイペースを崩さなかった。
「ここがノーベル賞受賞式典の行われるコンサートホールかぁ」
大英帝国首都の霧の街ロンドン、自由平等そして革命のフランス首都花の都パリ、そして、世界一小さい国であり世界一世界遺産の密度が濃い街バチカン。そういった名だたるヨーロッパ各国の首都と並べれば、確かにスウェーデン首都ストックホルムは観光求心力に欠けている。しかし、それはあくまで比較論。1926年落成のロイヤルストックホルムフィルハーモニー管弦楽団本拠地にして、毎年ノーベル賞の授賞式が行われる歴史的建造物となるこのコンサートホールをはじめ、宮殿、市庁舎、大聖堂、そして、一部で人気の市立図書館と、ストックホルム市内には観光名所がずらりと並ぶ。念願の大英博物館には劣るにしても、世界初の野外博物館スカンセンはなかなかのボリュームであり、その巨大で雄々しい角を頭に載せたヘラジカが歩く姿にはシズクも興奮を隠しきれないでいた。
そんなこんなでスウェーデン初日。シズクは大満足で宿に戻る。他の日本人科学者と同じホテルでの夕食は、少しだけ身構えていたリクの不安をよそにシュールストレミングが提供されることなどあろうはずもなく、日本のホテルとそれほど変わらないビュッフェスタイルのバイキングだった。本場のシュールストレミングを期待していたシズクは、少しだけ残念そうな顔をしながらビュッフェの一番端の銀皿に並ぶたこ焼きをピックしていた。
「どうだった? シズク」
「お姉ちゃん!」
後ろから聞き慣れた声をかけられたシズクは、満面の笑みで振り返った。その手が支えるトレーには、たこ焼きとハンバーグとポテトフライが山盛りである。姉のシズカは少しだけ苦笑いを浮かべつつも、いつもと変わらぬ妹の姿に安堵した。
「今日はどこを回ったの?」
「ストックホルム市内をひととおり! 野外博物館にも行ったよ! ヘラジカ、大迫力だった! お姉ちゃんも行った?」
「いえ、私は明日行くつもりで。よかったらいっしょにって声をかけたんだけど、それならごめんなさい」
「あ……ごめんね。事前に予定合わせるべきだった。リク君と二人で予定たてちゃってて……」
「そう、あの子と。いえ、いいのよ、気にしないで。それで、明日以降は?」
「明日は一日カヌー漕ぎに行くよ!」
「あらあら、もう寒い時期なんだから、風邪ひかないようにね」
「それはもちろん! それで明後日から授賞式前日まではフィンランドの方まで列車の旅! お姉ちゃんの授賞式に顔出した後は、みんなと別れてスヴァールバル世界種子貯蔵庫の見学に行くの!」
「スヴァールバル……?」
ぴくりと眉が上がるシズカ。期待に胸を高鳴らせる無垢な笑顔を前に、残念そうにため息をついた。
「sightseeing?」(観光ですか?)
「No」(いいえ)
軽く一言でそう否定し、サングラスを外し。
「Com……」(戦……)
「あー! すみませんすみません! 先にたくさん日本人いましたよね! あれと同じ! はい! そうそう! Nobel Prize!(ノーベル賞!) YES!(はい!) YES!(そうそう!) Bye!(じゃぁね!)」
リクに体を押される形で無事スウェーデン国内に入国したシズクは、全力で頬を膨らませて不機嫌さをアピールした。
「この時のため、映画のあのシーン何回も見直したのに。外国まで来て方舟攻略に挑むんだから、絶対やるしかなかったのに。リク君の、ばか」
そういってシズクの手刀がリクを襲うが、その一撃はリクの体には触れなかった。それもそうである。シズクの腕は伸びない。こういうところまで無駄な再現が完璧である。
「バカはお前だ! 頼むから世界情勢にもう少し目を配れ! 洒落にならねえんだよ!」
世界は未だロシアとウクライナの戦争中。そんな中でニューヨーク市警の真似をして入国目的にコンバットなんて宣言した日には、しばらく別室から出られないことは間違いない。
「まったく……」
「いや、ちょっとまって。なんか匂わない?」
すんすんと鼻を鳴らすシズクの様子に思わず心臓が跳ねるリク。まさか、ガスが? 自分たちは日本ですっかり平和ボケしているが、今の御時世、複雑怪奇な欧州ではテロが起きても不思議ではない。咄嗟に新型感染症用のマスクで口を覆い、改めてあたりを見渡す。
「いや……俺は特に……」
「そう。何の匂いもしないの」
「は?」
「成田空港ならもう醤油の香りがしているはず。なのに、ここではあれだけ練習したシュールストレミングの匂いが全くしない」
「お前やっぱり俺のセーター弁償しろよ!」
かくして、憧れのヨーロッパ、スカンジナビアの地においてもシズクはマイペースを崩さなかった。
「ここがノーベル賞受賞式典の行われるコンサートホールかぁ」
大英帝国首都の霧の街ロンドン、自由平等そして革命のフランス首都花の都パリ、そして、世界一小さい国であり世界一世界遺産の密度が濃い街バチカン。そういった名だたるヨーロッパ各国の首都と並べれば、確かにスウェーデン首都ストックホルムは観光求心力に欠けている。しかし、それはあくまで比較論。1926年落成のロイヤルストックホルムフィルハーモニー管弦楽団本拠地にして、毎年ノーベル賞の授賞式が行われる歴史的建造物となるこのコンサートホールをはじめ、宮殿、市庁舎、大聖堂、そして、一部で人気の市立図書館と、ストックホルム市内には観光名所がずらりと並ぶ。念願の大英博物館には劣るにしても、世界初の野外博物館スカンセンはなかなかのボリュームであり、その巨大で雄々しい角を頭に載せたヘラジカが歩く姿にはシズクも興奮を隠しきれないでいた。
そんなこんなでスウェーデン初日。シズクは大満足で宿に戻る。他の日本人科学者と同じホテルでの夕食は、少しだけ身構えていたリクの不安をよそにシュールストレミングが提供されることなどあろうはずもなく、日本のホテルとそれほど変わらないビュッフェスタイルのバイキングだった。本場のシュールストレミングを期待していたシズクは、少しだけ残念そうな顔をしながらビュッフェの一番端の銀皿に並ぶたこ焼きをピックしていた。
「どうだった? シズク」
「お姉ちゃん!」
後ろから聞き慣れた声をかけられたシズクは、満面の笑みで振り返った。その手が支えるトレーには、たこ焼きとハンバーグとポテトフライが山盛りである。姉のシズカは少しだけ苦笑いを浮かべつつも、いつもと変わらぬ妹の姿に安堵した。
「今日はどこを回ったの?」
「ストックホルム市内をひととおり! 野外博物館にも行ったよ! ヘラジカ、大迫力だった! お姉ちゃんも行った?」
「いえ、私は明日行くつもりで。よかったらいっしょにって声をかけたんだけど、それならごめんなさい」
「あ……ごめんね。事前に予定合わせるべきだった。リク君と二人で予定たてちゃってて……」
「そう、あの子と。いえ、いいのよ、気にしないで。それで、明日以降は?」
「明日は一日カヌー漕ぎに行くよ!」
「あらあら、もう寒い時期なんだから、風邪ひかないようにね」
「それはもちろん! それで明後日から授賞式前日まではフィンランドの方まで列車の旅! お姉ちゃんの授賞式に顔出した後は、みんなと別れてスヴァールバル世界種子貯蔵庫の見学に行くの!」
「スヴァールバル……?」
ぴくりと眉が上がるシズカ。期待に胸を高鳴らせる無垢な笑顔を前に、残念そうにため息をついた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる