296 / 512
第7章 大人との恋
296 小学生は日々成長している
しおりを挟む
藤城皐月と及川祐希は喫茶店『パピヨン』でモーニングを食べていた。祐希は高校の制服を着ていて、皐月は学校の体操服を着ていた。
「ねえ、皐月の体操服姿の写真、撮ってもいい?」
「いいけどさ……それってショタ写真だよね。俺って一応、小学生だし」
「変な言い方しないでよ。ただ美紅に見せてあげたいだけなのに」
祐希の友人の黒田美紅は皐月のファンだという。
皐月と祐希は同級生の月花博紀と五年生の入屋千智の四人で豊川稲荷で遊んだ時に、全員で写真を撮った。
祐希がその時の写真を学校で友達に見せると評判になり、女子高生の間で皐月派と博紀派ができた。美紅は数少ない皐月派の一人だ。
「写真はいいけどさ、拡散しないように気をつけてくれよ。俺、最近そういうの気にしてるんだから」
「へぇ~。どうしてそんなこと気にするようになったの?」
「うん、理由は後で話す。それよりまずは写真を撮ろうか。俺も祐希のカーディガン姿の写真撮りたいし」
皐月はスマホで祐希の写真を撮り、祐希にも自分を撮影させた。その後は祐希の隣の席に移動して、二人で自撮り写真を撮った。ちょうどその時、今泉俊介が皐月たちのテーブルにやって来た。
「皐月君たち、仲がいいね。二人の写真、僕が撮ってあげるよ」
俊介は皐月のスマホと祐希のスマホでそれぞれ、皐月と祐希が二人並んだ写真を撮った。皐月が対面の席に戻ると祐希が皐月と俊介に声をかけ、二人が並んでいる写真を撮影した。
「二人の写真、撮っちゃった。後で送ってあげるね」
祐希が嬉しそうに皐月と俊介に写真を見せた。そこには自然な表情をした皐月と、はにかんだ顔をした俊介が写っていた。
「そういや俺と俊介って、二人の写真なんか撮ったことなかったよな?」
「そうだっけ? 覚えていないや。そもそも皐月君と写真を撮ろうなんて考えたこともなかったし」
「俺さ、卒業するまでに班の子たちと一緒に写真を撮っておきたいって思ってるんだよね」
「だったら今日にでも撮ればいいじゃん。僕が撮ってあげるよ」
「いや、美香ちゃん家でカラーし直してからの方がいいな」
皐月は土曜日に岩月美香の家の美容室に予約を入れてある。芸妓の満と服を買いに行くまでにカラーをし直したいし、修学旅行へは髪を整えておきたいと思っていたからだ。
俊介の母が皐月たちのモーニングセットを運んできた。祐希はアイスミルクティーを頼んでいた。祐希は家でもあまりコーヒーを飲まない。
「あれっ? 皐月君ってコーヒーなんか飲むの? 今までずっとホットミルクだったじゃん」
「最近、コーヒーの味を覚えたんだよ。いつまでも子供じゃいられねーからな」
「お父さんが言ってたんだけど、真理ちゃんもコーヒーを飲むようになったんだってね。やっぱ六年生になると少しは大人になるのかな?」
俊介は皐月の幼馴染の栗林真理のことをよく知っている。真理は今のマンションに引っ越すまでは栄町に住んでいて、皐月たちと同じ通学班だった。真理は皐月たち男子と一緒に遊んでいた。
引っ越してからは真理がモーニングに来ることはなくなったが、夕食はよくパピヨンに食べに来る。
「大人になるっていうよりも、毎日ちょっとずつ大人に近づくって感じだと思うよ。まあ、そういう感覚は人それぞれだとは思うけど。俊介だって日々成長してんじゃん。それが六年生になると、もう少し加速した感じになるのかな……」
祐希はモーニングセットの写真を撮り終えると、付け合わせのサラダから食べ始めた。あまりのんびりしていると電車に乗り遅れてしまう。
「あっ、美紅からだ。俊介君、かわいいって」
祐希のスマホに親友の美紅からメッセージが届いたようだ。
「祐希、もしかして俺たちの写真、美紅さんに送ったの?」
「送ったけど?」
「さっき拡散しないでってお願いしたじゃん」
「拡散って、美紅にしか送っていないよ? それに美紅にはさっき皐月が言ったこと伝えておいたから、心配しなくてもいいと思う」
イライラしている皐月を横目に、祐希はトーストにかぶりついた。皐月はさっき、どうして拡散してほしくないかの説明を後回しにしたことを後悔した。
「どうしたの?」
俊介が心配げな顔をしている。皐月はブラックでコーヒーを一口飲んだ。
「前に博紀の写真が SNS で広まったことがあったんだ。それがちょっとした事件になってね」
「へぇ~、それは知らなかった」
「博紀がネットで自分の写真を見つけてさ、ちょっとショックを受けちゃってね。それで博紀のファンクラブの女子たちがブチ切れてさ、犯人捜ししたりして大変だったんだ」
祐希は食事をしながらも、皐月の話を真剣に聞いていた。俊介は博紀のことを尊敬しているので、少なからずショックを受けているようだ。
「そのことがあってからは、博紀の写真を撮ったら拡散しないようにっていうルールがファンクラブにできたんだ」
コーヒーとトーストの匂いに我慢できなくなって、皐月はパンの耳にかぶりつき、コーヒーで流し込んだ。
「千智もさ、塾の帰りに知らない男の人から隠し撮りされたことがあってさ、それ以降、塾の行き帰りは帽子をかぶるだけじゃなく、マスクまでするようになったんだって」
皐月は入屋千智が盗撮で悩んでいることを話した。千智が祐希に話していないのなら話すべきではないのかと思ったが、そうも言っていられない。祐希には知っていてもらいたい。
「そうなの? 千智ちゃん、私にはそんな話、してくれなかったな……」
祐希は一言喋り終わると、皐月のようにパンの耳をミルクティーで流し込んだ。俊介が祐希のがさつな食べ方を見て驚いている。
「俺だってこの前、電車の中で女子高生に写真を撮られたんだぞ。自分が実際にやられてみてわかったけど、あれって相当気持ち悪いな」
皐月はもう一度、パンの耳を食べた。バターを塗ったところを後回しに取っておくのが皐月のスタイルだ。
「私も写真撮られたことあるよ。そうだね……確かに気持ち悪いよね。撮った写真が何に使われるかわからないからね」
「だから拡散しないように気をつけてほしい。美紅さんにもこの話をしておいてくれないかな。頼むよ」
「わかった。美紅だけじゃなく、他の子たちにも伝えておく」
祐希が食べるペースを上げ始めた。それを見た俊介が席を立った。
「じゃあ皐月君、また後で。今日は店に来てくれて、ありがとう」
「ここのモーニングは最高だね!」
皐月は取っておいたバターの滲みこんだ食パンの白いところをゆっくりと口に含んだ。パンに対するバターの割合と塩加減がちょうど皐月の好みになり、給食では絶対に叶わない幸せな気持ちになった。
「ねえ、皐月の体操服姿の写真、撮ってもいい?」
「いいけどさ……それってショタ写真だよね。俺って一応、小学生だし」
「変な言い方しないでよ。ただ美紅に見せてあげたいだけなのに」
祐希の友人の黒田美紅は皐月のファンだという。
皐月と祐希は同級生の月花博紀と五年生の入屋千智の四人で豊川稲荷で遊んだ時に、全員で写真を撮った。
祐希がその時の写真を学校で友達に見せると評判になり、女子高生の間で皐月派と博紀派ができた。美紅は数少ない皐月派の一人だ。
「写真はいいけどさ、拡散しないように気をつけてくれよ。俺、最近そういうの気にしてるんだから」
「へぇ~。どうしてそんなこと気にするようになったの?」
「うん、理由は後で話す。それよりまずは写真を撮ろうか。俺も祐希のカーディガン姿の写真撮りたいし」
皐月はスマホで祐希の写真を撮り、祐希にも自分を撮影させた。その後は祐希の隣の席に移動して、二人で自撮り写真を撮った。ちょうどその時、今泉俊介が皐月たちのテーブルにやって来た。
「皐月君たち、仲がいいね。二人の写真、僕が撮ってあげるよ」
俊介は皐月のスマホと祐希のスマホでそれぞれ、皐月と祐希が二人並んだ写真を撮った。皐月が対面の席に戻ると祐希が皐月と俊介に声をかけ、二人が並んでいる写真を撮影した。
「二人の写真、撮っちゃった。後で送ってあげるね」
祐希が嬉しそうに皐月と俊介に写真を見せた。そこには自然な表情をした皐月と、はにかんだ顔をした俊介が写っていた。
「そういや俺と俊介って、二人の写真なんか撮ったことなかったよな?」
「そうだっけ? 覚えていないや。そもそも皐月君と写真を撮ろうなんて考えたこともなかったし」
「俺さ、卒業するまでに班の子たちと一緒に写真を撮っておきたいって思ってるんだよね」
「だったら今日にでも撮ればいいじゃん。僕が撮ってあげるよ」
「いや、美香ちゃん家でカラーし直してからの方がいいな」
皐月は土曜日に岩月美香の家の美容室に予約を入れてある。芸妓の満と服を買いに行くまでにカラーをし直したいし、修学旅行へは髪を整えておきたいと思っていたからだ。
俊介の母が皐月たちのモーニングセットを運んできた。祐希はアイスミルクティーを頼んでいた。祐希は家でもあまりコーヒーを飲まない。
「あれっ? 皐月君ってコーヒーなんか飲むの? 今までずっとホットミルクだったじゃん」
「最近、コーヒーの味を覚えたんだよ。いつまでも子供じゃいられねーからな」
「お父さんが言ってたんだけど、真理ちゃんもコーヒーを飲むようになったんだってね。やっぱ六年生になると少しは大人になるのかな?」
俊介は皐月の幼馴染の栗林真理のことをよく知っている。真理は今のマンションに引っ越すまでは栄町に住んでいて、皐月たちと同じ通学班だった。真理は皐月たち男子と一緒に遊んでいた。
引っ越してからは真理がモーニングに来ることはなくなったが、夕食はよくパピヨンに食べに来る。
「大人になるっていうよりも、毎日ちょっとずつ大人に近づくって感じだと思うよ。まあ、そういう感覚は人それぞれだとは思うけど。俊介だって日々成長してんじゃん。それが六年生になると、もう少し加速した感じになるのかな……」
祐希はモーニングセットの写真を撮り終えると、付け合わせのサラダから食べ始めた。あまりのんびりしていると電車に乗り遅れてしまう。
「あっ、美紅からだ。俊介君、かわいいって」
祐希のスマホに親友の美紅からメッセージが届いたようだ。
「祐希、もしかして俺たちの写真、美紅さんに送ったの?」
「送ったけど?」
「さっき拡散しないでってお願いしたじゃん」
「拡散って、美紅にしか送っていないよ? それに美紅にはさっき皐月が言ったこと伝えておいたから、心配しなくてもいいと思う」
イライラしている皐月を横目に、祐希はトーストにかぶりついた。皐月はさっき、どうして拡散してほしくないかの説明を後回しにしたことを後悔した。
「どうしたの?」
俊介が心配げな顔をしている。皐月はブラックでコーヒーを一口飲んだ。
「前に博紀の写真が SNS で広まったことがあったんだ。それがちょっとした事件になってね」
「へぇ~、それは知らなかった」
「博紀がネットで自分の写真を見つけてさ、ちょっとショックを受けちゃってね。それで博紀のファンクラブの女子たちがブチ切れてさ、犯人捜ししたりして大変だったんだ」
祐希は食事をしながらも、皐月の話を真剣に聞いていた。俊介は博紀のことを尊敬しているので、少なからずショックを受けているようだ。
「そのことがあってからは、博紀の写真を撮ったら拡散しないようにっていうルールがファンクラブにできたんだ」
コーヒーとトーストの匂いに我慢できなくなって、皐月はパンの耳にかぶりつき、コーヒーで流し込んだ。
「千智もさ、塾の帰りに知らない男の人から隠し撮りされたことがあってさ、それ以降、塾の行き帰りは帽子をかぶるだけじゃなく、マスクまでするようになったんだって」
皐月は入屋千智が盗撮で悩んでいることを話した。千智が祐希に話していないのなら話すべきではないのかと思ったが、そうも言っていられない。祐希には知っていてもらいたい。
「そうなの? 千智ちゃん、私にはそんな話、してくれなかったな……」
祐希は一言喋り終わると、皐月のようにパンの耳をミルクティーで流し込んだ。俊介が祐希のがさつな食べ方を見て驚いている。
「俺だってこの前、電車の中で女子高生に写真を撮られたんだぞ。自分が実際にやられてみてわかったけど、あれって相当気持ち悪いな」
皐月はもう一度、パンの耳を食べた。バターを塗ったところを後回しに取っておくのが皐月のスタイルだ。
「私も写真撮られたことあるよ。そうだね……確かに気持ち悪いよね。撮った写真が何に使われるかわからないからね」
「だから拡散しないように気をつけてほしい。美紅さんにもこの話をしておいてくれないかな。頼むよ」
「わかった。美紅だけじゃなく、他の子たちにも伝えておく」
祐希が食べるペースを上げ始めた。それを見た俊介が席を立った。
「じゃあ皐月君、また後で。今日は店に来てくれて、ありがとう」
「ここのモーニングは最高だね!」
皐月は取っておいたバターの滲みこんだ食パンの白いところをゆっくりと口に含んだ。パンに対するバターの割合と塩加減がちょうど皐月の好みになり、給食では絶対に叶わない幸せな気持ちになった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる