藤城皐月物語

音彌

文字の大きさ
298 / 512
第7章 大人との恋

298 恋愛モード、遊びモード

しおりを挟む
 今週は藤城皐月ふじしろさつきたちの班が給食当番だ。給食が終わり、みんなで給食室に食器を返しに行くと、その帰りに皐月は栗林真理くりばやしまりに呼び止められた。
「ねえ、皐月が買ったっていう服、もしかして明日美あすみ姐さんが選んだの?」
「そうだよ。なんで知ってんだよ?」
「お母さんが言ってた。明日美姐さんが皐月の服を選ぶって張り切ってたって」
 明日美が小百合に皐月の服の話を持ち掛けた時、凛子りんこがそばにいたのだろう。それなら真理がこの話を母の凛子から聞いていてもおかしくはない。
みちる姐さんにも服、選んでもらったんだよね」
「満姉ちゃんはまだ。今度の日曜日に選んでもらうことになってる。二人ともせっかくの休みなのに、俺の服選びに付き合わせちゃって、悪いなって思う」
 本当は満と買い物に出かけることを楽しみにしているが、皐月は真理に悟られないように負の感情を強調した。
「別にいいんじゃない? 姐さんたちだって若い男の子と一緒に出かけられるんだから、悪いことないでしょ。いつも酔っ払いのおじさんの相手ばかりしてるんだし」
「へ~、真理って寛大だな。てっきりヤキモチでも焼くのかと思った」
「なんで私がヤキモチ焼くの? 相手は芸妓だよ?」
「まあ、そりゃそうか。相手は大人だもんな」

 真理が明日美に嫉妬していないことがわかったのは収穫だった。真理は皐月が小さいころから明日美にかわいがられているところを見てきた。明日美が皐月の恋愛の相手だとは思いもよらないのだろう。
「それに皐月のやることにいちいち嫉妬してたら身が持たないよ。今朝だって松井さんたちと仲良くしてたでしょ?」
「なんだ、見てたのか」
「皐月が誰と仲良くしようが構わないけどさ、私と二人でいるときだけは他の女のこと考えないでほしいな」
「真理、お前……そんなこと考えてたのか?」
「お母さんの影響かな……。これって愛人の発想だよね」
 真理はなんともない顔をしながら悲しいことを言う。真理は凛子に恋人がいることを嫌っていて、凛子が恋人に会う日は情緒が不安定になる。そんな時、真理は皐月にすがるようになった。
「今日、学校が終わったら真理んに行こうか?」
「大丈夫。最近は勉強が調子いいから、精神的に安定している」
「そうか」
「うん。それに皐月と会うと、その後勉強したくなくなっちゃうから」

 教材室の前を歩いていると、真理が無造作に引き戸を開けた。周囲を確認すると、皐月の手を引いて教材室にもぐり込んだ。
「どうしたんだよ」
 真理が皐月の首に腕をまわしてきて、キスをしてきた。真理はいきなり舌を入れてきた。さっき給食で食べたナポリタンの匂いがした。
「どうしよう……。家に来てほしくなっちゃった」
「行こうか?」
「いい。受験が終わるまでは勉強に集中しなきゃ」
「そうか……偉いな」
 今度は皐月から優しく口づけをした。
「さすがに学校はヤバいから、もう行こう。俺、先に出るから」
「うん」
「いつでも会いに行くから」
「ありがとう」
 皐月と真理は自然と抱き合い、お互いに腕を背中にまわして唇を重ねた。放課後、二人は会わないことになったので、真理の家でする前戯のようなディープキスにエスカレートした。

 真理を教材室に残し、皐月は慌てて玄関へ向かった。5時間目の体育の授業の準備をしなくてすむように、皐月は体操服で登校して来た。少しでも昼休みに遊ぶ時間を長く取りたいと思って準備していたのに、予定が狂った。
 靴箱で皐月は口元を手でぬぐい、臍の下のチェックをした。靴に履き替えていても皐月はまだ真理のことを考えていた。
 本当はドッヂボールなんかしないで、昼休みはずっと真理と二人でいたかった。真理の家に会いに行くことを断られたのは寂しかったが、そのおかげで皐月の体の変化が元に戻った。
 走って校庭に出て、太陽の光を浴びると興奮が冷めてきた。明日美のことを思い出して罪悪感に襲われたが、走る足を速めて息が上がると、考える余裕がなくなってくる。グランドでみんなの姿を見つけると、皐月の気持ちは自然と遊びモードに切り替わっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...