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第一部 サクセス編(改稿版)
66 ボッサンの秘密
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翌朝俺たちは全員食堂に集まった。
「ねぇ、あたちお腹空いた!」
ちびうさは、昨日の事をもう忘れたのか、朝から元気いっぱいに走り回っており、今はリーチュンの足に抱きつきながらご飯をねだっている。
ちびうさは大分リーチュンに懐いているようだ。
リーチュンもちびうさに抱きつかれて嬉しそうにしてる。
「よし! 朝はアタイが作ってあげる!」
「ヤッタァ! あたち卵食べたい!」
そういうと、リーチュンは勝手に調理場に入り始めた。
いいのか?
まぁいい、ちょっと俺も行って、金を握らせて許してもらおう。
なんだか、あんな話を聞いたせいか、俺もちびうさを甘やかしたくなる。
そんな感じで賑やかな朝食も終わると、早速今日も二手に分かれて情報収集を始めた。
本来なら、今日は俺とリーチュンだったのだが、昨日の話で決まった通り、今日はイーゼと二人で行動する。
リーチュンも、ちびうさと離れたくないのか、何も文句は言わなかった。
「じゃあみんな、頼んだぞ。とりあえず昼に一度宿屋に集まってくれ、途中経過が知りたい。」
俺がそういうと全員頷いた。
「さて、イーゼ。どこから探しに行く?」
「サクセス様が行くところならどこでも。」
早速俺はイーゼに聞くと、イーゼは突然俺の腕に自分の腕を絡めて言った。
「あのなぁ、俺はボッサンが見つかりそうな場所を聞いているんだが? あと、腕組むのはやめてくれ、恥ずかしい。」
「嫌です。今日は私とデートなんですから、腕を組んでくれなければ、どこにいそうか教えません。」
くっ!
俺も嫌なわけではない。
特にこのむにゅッとする感触はやみつきになるくらいだ。
ただ、ちょっと恥ずかしい。
「わかったわかった、じゃあこのままでいいよ。んで、どこ行けばいいんだ?」
「サクセス様はとんでもなく強運なので、適当に歩いていれば見つかるかと。」
「おいおい、んな適当な。そんなに上手くいくはずが……ん? なんか人が集まってるな。」
俺がそんな事を言いながら歩いていると、防具屋の前に人集りができているのが見える。
「ほら、早速ですよサクセス様。ボッサンがどんな方かは知りませんが、多分あの中にいますわ。」
イーゼは適当な事を言っているが、その目は、俺の運を信じて疑わない目だ。
その目で言われると、なんだか俺も本当にそこにボッサンがいるような気がしてくる。
そして、近づくにつれて怒号がハッキリと聞こえた。
どうやら客と店主が言い合いになっているようである。
「なんで昨日は500ゴールドで買い取ったのに、今日は300ゴールドなんだ! ふざけんな、こんインチキ店主!」
「素人が適当な事言ってんじゃねぇよ。値段は毎日変わるもんだ。文句があるなら他に行け!」
二人は掴み合って怒鳴っており、今にも殴り合いの喧嘩が始まりそうだった。
周りの野次馬達は、二人の喧嘩を期待して煽っている。
そして喧嘩をしている男の声は、昨日聞いた声だ。
野次馬をかき分けて見てみると、そこにいたのはやっぱりボッサンだった。
「本当にいやがった……。」
「だから言ったじゃありませんか。早く喧嘩を止めに入りましょう。」
早速俺は、二人の間に割って入ると、喧嘩を止めようとした。
「二人とも落ち着いてくれ、衛兵が来たら面倒だぞ。ボッサン、金は俺が払うから抑えてくれ!」
「あん? いきなりなんだってんだ!……お前は! 昨日のあんちゃん!」
ボッサンは俺に気づくと、店主を掴むのをやめた。
するとボッサンに掴まれていた店主は
「二度とうちの店に来んじゃねぇ!」
と捨て台詞を吐いて店の中に戻る。
周りの野次馬達は、ことの顛末につまらなさそうにして、その場からはけていった。
「チッ! 誰がこんなゴミしか置いてない店に来るかよ! 潰れちまえバカ!」
ボッサンは最後にそれだけ言ってその場から離れて行く。
「待ってくれ、ボッサン。話がある。」
俺は、急いでボッサンを追いかけて行くと、ボッサンは俺に振り返って言った。
「なぁにぃちゃん。まだなんか俺に用があるのか? 何を聞きたいかはわからねぇが、他を当たってくれ。俺は今、腹の虫の居所が悪りぃんだわ。」
「あら、おじさま。そんなにつれないこと言わないでくださらない? 少しでいいのよ。」
するとイーゼは色っぽい仕草でボッサンに近づいて言った。
「お、お、お、おおお。とんでもねぇ美人だなアンタ! んでなんだい? なんでも聞いてくれよ、なんなら落ち着いて話せるところに行こうか?」
ボッサンは、イーゼを見た瞬間に態度がコロッと変わった。
やはり、男はスケベだな。
イーゼの色香に一発で落ちやがった。
「いいわよぉ、でもこの人も一緒じゃなきゃや~よ。」
「お、おう。構わねぇぜって、おい! 兄ちゃん、昨日あれだけいい女連れてて、今度はこんな色っぺぇネェちゃん連れてくるなんて……爆発しろ!」
「たまたまだ。二人とも俺の大事なパーティなだけだ。邪推すんなや。それより、落ち着いた場所行くんだろ? 早く案内してくれ。」
「はぁ……ったく世の中不公平だぜ。」
ボッサンは、そう言いながら落ち着いた雰囲気のカフェに入っていった。
三人は席に座ると、コーヒーと甘い物を注文する。
「んで、にいちゃん。何が聞きてぇんだ。まぁもうわかってると思うが、対価は払ってもらうぜ?」
「あぁ、わかってる。んじゃ早速聞かせてくれ……」
俺がそう言おうとした瞬間、イーゼの人差し指が俺の唇にあたる。
イーゼが俺の言葉を遮った。
「まぁまぁサクセス様。とりあえずコーヒーを飲んでからにしませんか? いきなり聞いても落ち着きませんよ。」
「かぁぁぁ! 本当にいいネェちゃんだな。どうだい? この後俺と……って冗談だって。毎回そんな怖い顔すんなよ。というか、少しは俺にも分けてくれ。」
「あらやだ、サクセス様が嫉妬してくれたわ。もう、可愛いんだから。」
「もう勝手にしてくれ。」
俺は、何も言う気が失せたので、後はイーゼに任せることにした。
「それでネェちゃんは何が聞きたいんだ? 俺は、これでもまだ独身だぜ。」
「あら、それも気にはなりますが、とりあえず先に聞くことがありますの。あなたはなんでちびうさちゃんが見えるんですの?」
「はっはっは、いきなり何を。見えるに決まってるじゃねぇか。俺はまだ老眼じゃねぇぜ。」
ボッサンが笑いながらそういうと、イーゼは鋭い目つきで更に問い詰める。
「そういうのはもういいですわ。そもそも、ちびうさちゃんと言う名前を言って、理解しているだけで、もうその答えは出ていますわ。それと単刀直入に言いますわね。あなた……ギルドマスターでしょう? いえ、正確にいうと元ですかね。」
え?
ボッサンがギルドマスター?
なにそれ? どういうこと?
いや、それもそうだが、確かに俺はちびうさの名前をボッサンに伏せていた。
それで理解しているのだから、やはりこいつは何か隠している。
すると、ボッサンの顔から笑みがが消え、明らかに様子が変わった。
そして、焦った様子でキョロキョロと周囲を窺い始めている。
「ネェちゃん……どこでそれを? アンタどこまで知ってんだい?」
「ふふふ、秘密です。それで赤のオーブは今どこにあるんですの?」
赤のオーブ!?
え?
ちびうさが持ってるんじゃ……
あれ?
でも確かに見たことないな。
「そうか、赤のオーブの事も知ってるか。だが残念、それは俺にも分からん。本当だ。」
「そうですか、わかりましたわ。では質問を変えますわ。三十年前に、あなたはマモルさんに何を頼まれたのかしら? ちびうさちゃんの事も含めて、他の事を頼まれていたはずだわ。それを教えて頂戴。」
えええ!? マジかよイーゼ!
つうか、そこまで話だっけか?
いや、うん。
サラッとだが話してるな。
しかしそれだけで……。
恐るべしイーゼ。
「そうか、遂にこの時が来たんだな。お前達がそうか……。わかった、話そう。ただ、これを聞いたなら、俺とお前達は一蓮托生だ。今後何があっても裏切らないでくれ。」
今までのボッサンと違い、かなり真剣な様子だ。
どうやら、これが本当のこいつらしい。
まぁ、正直何の話なのかちんぷんかんぷんだがね。
とりあえずここは知ったかぶりのポーズで黙ってよう。
「わかりましたわ、約束をします。いいですわね? サクセス様。」
えええ!
ここで振るの!?
何の約束?
あぁ、裏切らないって事か。
「当然だ、約束は守る。」
とりあえず真剣な顔を作って重苦しく言ってみた。
ふぅ、これで大丈夫だよな?
もう俺に振らないでくれよ……。
「という事ですので、話して下さい。」
「わかった、話そう。どこから話せばいいか分からんが、ネェちゃんが言う通り、俺は昔ギルドマスターだった。俺はドワーフだから三十年経っても見た目だけはあまり変わらないが、これでも80歳だ。」
え?
そうなの?
ドワーフって長寿なの?
「わかってましたわ。その体つきを見れば直ぐに気づきましたわ。」
ふむ、流石100超えのイーゼは博識だ。
そういえば、ちょっと前までモーホとか言うドワーフともパーティ組んでいたみたいだし、知ってて当然か。
「まぁエルフのネェちゃんなら直ぐ気づくわな。話を戻すぞ。マモルは……俺の親友だった。あいつは本当にいい奴だったよ。だが
、もうあいつもヌーウもいねぇ。俺は残されたちびうさをマモルから託されていたんだ。」
「そのようですわね、続けて下さい。」
「俺は、ちびうさの面倒を見ることを約束して、ある日マモルの家に行ったんだ。ただ、マモルがそんなに早く城に乗り込んだって知らなくてよ。マモルが死んだ事にも気づかなかった俺は……大分遅れちまったんだ。」
ボッサンは、当時を思い出して悔やみきれない思いなのか、沈痛な面持ちになる。
「そして気付いた時には手遅れだった……。」
「手遅れというのは、マモルさん達の事ですか?」
「いや、それもあるがそうじゃねぇ……俺は、約束を守れなかったんだ。俺がマモルの家に行った時には……もう、ちびうさは死んでいたんだ。多分ずっと何も食べずに父親と母親を待ってたんだろうな……。家は綺麗に片付いていたし、腐り切った飯がテーブルには並べられていた……。」
ボッサンの目には涙が溜まっている。
思い出したのだろう。
しかし、今はそこじゃない!
ちびうさが既に死んでた?
どう言う事だ?
ちびうさは生きてるぞ?
しかし、イーゼの表情は変わらない。
どこか納得をしたような顔をしている。
「それは辛かったですね……。そうですか、そこであなたは見つけたのですね? 赤のオーブを。」
ボッサンはバッと顔上げて驚いた顔をする。
「ネェちゃん、本当に何者なんだい?」
「私はただ、今ある情報から推理していただけですわ。実際に合ってるかどうかは、あなたの口から聞くまではわかりませんわ。」
「そうか、昨日の嬢ちゃんといい、ネェちゃんといい、大したもんだ。なるほどな、そこのにぃちゃんが連れてきた意味がやっとわかったぜ。アンタ大した食わせ者だよ。」
「俺の仲間は優秀だからな。」
うん、俺が言えるのはこれだけだ。
さっきからビックリし過ぎて、頭のネジがぶっ飛びそうだわ。
「それであってるのかしら?」
「あぁ、その通りだ。俺はそこでちびうさが赤のオーブを大事そうに抱えているのを見た。多分、父親と母親に見せたかったんだろうな。ちびうさは幸せそうな顔で……死んでいたよ。だけどな、そこで俺は更に驚いたんだ。突然その赤のオーブが光ると、消えてしまって、なんとちびうさが生き返ったんだ。嘘じゃねぇ、本当だ。」
ふむふむ、つまりちびうさは死んだけど、生き返ったと……。
もう無理。
完全に頭パンクだよ。
「なるほど。わかりましたわ、それでもう一つの約束とはなんですの?」
「あぁ、それはな。真実の姿を現すヌーの鏡というアイテムを見つける事だ。いいか、よく聞け。この国の王はモンスターだ。間違いない。それを暴くために俺はこの三十年間必死に探していたんだ。」
「やはりですか……。それで見つかりましたの?」
「あぁ、最近やっと見つけた。カジノだ。カジノで五万コインと交換できる。それで俺は、コインをあの手この手で集めていたんだ。頼む! 俺にコインを……いや、アンタでもいい。ヌーの鏡を交換してきてくれねぇか? 俺はマモルとの約束を何一つ守れなかった。だからこれだけは守りたいんだ。頼む!」
ボッサンは頭をテーブルにつけて、俺たちに必死に頼んだ。
その姿に嘘偽りは無さそうだった。
しかし、その時予想外の事が起こるのだった……。
「ねぇ、あたちお腹空いた!」
ちびうさは、昨日の事をもう忘れたのか、朝から元気いっぱいに走り回っており、今はリーチュンの足に抱きつきながらご飯をねだっている。
ちびうさは大分リーチュンに懐いているようだ。
リーチュンもちびうさに抱きつかれて嬉しそうにしてる。
「よし! 朝はアタイが作ってあげる!」
「ヤッタァ! あたち卵食べたい!」
そういうと、リーチュンは勝手に調理場に入り始めた。
いいのか?
まぁいい、ちょっと俺も行って、金を握らせて許してもらおう。
なんだか、あんな話を聞いたせいか、俺もちびうさを甘やかしたくなる。
そんな感じで賑やかな朝食も終わると、早速今日も二手に分かれて情報収集を始めた。
本来なら、今日は俺とリーチュンだったのだが、昨日の話で決まった通り、今日はイーゼと二人で行動する。
リーチュンも、ちびうさと離れたくないのか、何も文句は言わなかった。
「じゃあみんな、頼んだぞ。とりあえず昼に一度宿屋に集まってくれ、途中経過が知りたい。」
俺がそういうと全員頷いた。
「さて、イーゼ。どこから探しに行く?」
「サクセス様が行くところならどこでも。」
早速俺はイーゼに聞くと、イーゼは突然俺の腕に自分の腕を絡めて言った。
「あのなぁ、俺はボッサンが見つかりそうな場所を聞いているんだが? あと、腕組むのはやめてくれ、恥ずかしい。」
「嫌です。今日は私とデートなんですから、腕を組んでくれなければ、どこにいそうか教えません。」
くっ!
俺も嫌なわけではない。
特にこのむにゅッとする感触はやみつきになるくらいだ。
ただ、ちょっと恥ずかしい。
「わかったわかった、じゃあこのままでいいよ。んで、どこ行けばいいんだ?」
「サクセス様はとんでもなく強運なので、適当に歩いていれば見つかるかと。」
「おいおい、んな適当な。そんなに上手くいくはずが……ん? なんか人が集まってるな。」
俺がそんな事を言いながら歩いていると、防具屋の前に人集りができているのが見える。
「ほら、早速ですよサクセス様。ボッサンがどんな方かは知りませんが、多分あの中にいますわ。」
イーゼは適当な事を言っているが、その目は、俺の運を信じて疑わない目だ。
その目で言われると、なんだか俺も本当にそこにボッサンがいるような気がしてくる。
そして、近づくにつれて怒号がハッキリと聞こえた。
どうやら客と店主が言い合いになっているようである。
「なんで昨日は500ゴールドで買い取ったのに、今日は300ゴールドなんだ! ふざけんな、こんインチキ店主!」
「素人が適当な事言ってんじゃねぇよ。値段は毎日変わるもんだ。文句があるなら他に行け!」
二人は掴み合って怒鳴っており、今にも殴り合いの喧嘩が始まりそうだった。
周りの野次馬達は、二人の喧嘩を期待して煽っている。
そして喧嘩をしている男の声は、昨日聞いた声だ。
野次馬をかき分けて見てみると、そこにいたのはやっぱりボッサンだった。
「本当にいやがった……。」
「だから言ったじゃありませんか。早く喧嘩を止めに入りましょう。」
早速俺は、二人の間に割って入ると、喧嘩を止めようとした。
「二人とも落ち着いてくれ、衛兵が来たら面倒だぞ。ボッサン、金は俺が払うから抑えてくれ!」
「あん? いきなりなんだってんだ!……お前は! 昨日のあんちゃん!」
ボッサンは俺に気づくと、店主を掴むのをやめた。
するとボッサンに掴まれていた店主は
「二度とうちの店に来んじゃねぇ!」
と捨て台詞を吐いて店の中に戻る。
周りの野次馬達は、ことの顛末につまらなさそうにして、その場からはけていった。
「チッ! 誰がこんなゴミしか置いてない店に来るかよ! 潰れちまえバカ!」
ボッサンは最後にそれだけ言ってその場から離れて行く。
「待ってくれ、ボッサン。話がある。」
俺は、急いでボッサンを追いかけて行くと、ボッサンは俺に振り返って言った。
「なぁにぃちゃん。まだなんか俺に用があるのか? 何を聞きたいかはわからねぇが、他を当たってくれ。俺は今、腹の虫の居所が悪りぃんだわ。」
「あら、おじさま。そんなにつれないこと言わないでくださらない? 少しでいいのよ。」
するとイーゼは色っぽい仕草でボッサンに近づいて言った。
「お、お、お、おおお。とんでもねぇ美人だなアンタ! んでなんだい? なんでも聞いてくれよ、なんなら落ち着いて話せるところに行こうか?」
ボッサンは、イーゼを見た瞬間に態度がコロッと変わった。
やはり、男はスケベだな。
イーゼの色香に一発で落ちやがった。
「いいわよぉ、でもこの人も一緒じゃなきゃや~よ。」
「お、おう。構わねぇぜって、おい! 兄ちゃん、昨日あれだけいい女連れてて、今度はこんな色っぺぇネェちゃん連れてくるなんて……爆発しろ!」
「たまたまだ。二人とも俺の大事なパーティなだけだ。邪推すんなや。それより、落ち着いた場所行くんだろ? 早く案内してくれ。」
「はぁ……ったく世の中不公平だぜ。」
ボッサンは、そう言いながら落ち着いた雰囲気のカフェに入っていった。
三人は席に座ると、コーヒーと甘い物を注文する。
「んで、にいちゃん。何が聞きてぇんだ。まぁもうわかってると思うが、対価は払ってもらうぜ?」
「あぁ、わかってる。んじゃ早速聞かせてくれ……」
俺がそう言おうとした瞬間、イーゼの人差し指が俺の唇にあたる。
イーゼが俺の言葉を遮った。
「まぁまぁサクセス様。とりあえずコーヒーを飲んでからにしませんか? いきなり聞いても落ち着きませんよ。」
「かぁぁぁ! 本当にいいネェちゃんだな。どうだい? この後俺と……って冗談だって。毎回そんな怖い顔すんなよ。というか、少しは俺にも分けてくれ。」
「あらやだ、サクセス様が嫉妬してくれたわ。もう、可愛いんだから。」
「もう勝手にしてくれ。」
俺は、何も言う気が失せたので、後はイーゼに任せることにした。
「それでネェちゃんは何が聞きたいんだ? 俺は、これでもまだ独身だぜ。」
「あら、それも気にはなりますが、とりあえず先に聞くことがありますの。あなたはなんでちびうさちゃんが見えるんですの?」
「はっはっは、いきなり何を。見えるに決まってるじゃねぇか。俺はまだ老眼じゃねぇぜ。」
ボッサンが笑いながらそういうと、イーゼは鋭い目つきで更に問い詰める。
「そういうのはもういいですわ。そもそも、ちびうさちゃんと言う名前を言って、理解しているだけで、もうその答えは出ていますわ。それと単刀直入に言いますわね。あなた……ギルドマスターでしょう? いえ、正確にいうと元ですかね。」
え?
ボッサンがギルドマスター?
なにそれ? どういうこと?
いや、それもそうだが、確かに俺はちびうさの名前をボッサンに伏せていた。
それで理解しているのだから、やはりこいつは何か隠している。
すると、ボッサンの顔から笑みがが消え、明らかに様子が変わった。
そして、焦った様子でキョロキョロと周囲を窺い始めている。
「ネェちゃん……どこでそれを? アンタどこまで知ってんだい?」
「ふふふ、秘密です。それで赤のオーブは今どこにあるんですの?」
赤のオーブ!?
え?
ちびうさが持ってるんじゃ……
あれ?
でも確かに見たことないな。
「そうか、赤のオーブの事も知ってるか。だが残念、それは俺にも分からん。本当だ。」
「そうですか、わかりましたわ。では質問を変えますわ。三十年前に、あなたはマモルさんに何を頼まれたのかしら? ちびうさちゃんの事も含めて、他の事を頼まれていたはずだわ。それを教えて頂戴。」
えええ!? マジかよイーゼ!
つうか、そこまで話だっけか?
いや、うん。
サラッとだが話してるな。
しかしそれだけで……。
恐るべしイーゼ。
「そうか、遂にこの時が来たんだな。お前達がそうか……。わかった、話そう。ただ、これを聞いたなら、俺とお前達は一蓮托生だ。今後何があっても裏切らないでくれ。」
今までのボッサンと違い、かなり真剣な様子だ。
どうやら、これが本当のこいつらしい。
まぁ、正直何の話なのかちんぷんかんぷんだがね。
とりあえずここは知ったかぶりのポーズで黙ってよう。
「わかりましたわ、約束をします。いいですわね? サクセス様。」
えええ!
ここで振るの!?
何の約束?
あぁ、裏切らないって事か。
「当然だ、約束は守る。」
とりあえず真剣な顔を作って重苦しく言ってみた。
ふぅ、これで大丈夫だよな?
もう俺に振らないでくれよ……。
「という事ですので、話して下さい。」
「わかった、話そう。どこから話せばいいか分からんが、ネェちゃんが言う通り、俺は昔ギルドマスターだった。俺はドワーフだから三十年経っても見た目だけはあまり変わらないが、これでも80歳だ。」
え?
そうなの?
ドワーフって長寿なの?
「わかってましたわ。その体つきを見れば直ぐに気づきましたわ。」
ふむ、流石100超えのイーゼは博識だ。
そういえば、ちょっと前までモーホとか言うドワーフともパーティ組んでいたみたいだし、知ってて当然か。
「まぁエルフのネェちゃんなら直ぐ気づくわな。話を戻すぞ。マモルは……俺の親友だった。あいつは本当にいい奴だったよ。だが
、もうあいつもヌーウもいねぇ。俺は残されたちびうさをマモルから託されていたんだ。」
「そのようですわね、続けて下さい。」
「俺は、ちびうさの面倒を見ることを約束して、ある日マモルの家に行ったんだ。ただ、マモルがそんなに早く城に乗り込んだって知らなくてよ。マモルが死んだ事にも気づかなかった俺は……大分遅れちまったんだ。」
ボッサンは、当時を思い出して悔やみきれない思いなのか、沈痛な面持ちになる。
「そして気付いた時には手遅れだった……。」
「手遅れというのは、マモルさん達の事ですか?」
「いや、それもあるがそうじゃねぇ……俺は、約束を守れなかったんだ。俺がマモルの家に行った時には……もう、ちびうさは死んでいたんだ。多分ずっと何も食べずに父親と母親を待ってたんだろうな……。家は綺麗に片付いていたし、腐り切った飯がテーブルには並べられていた……。」
ボッサンの目には涙が溜まっている。
思い出したのだろう。
しかし、今はそこじゃない!
ちびうさが既に死んでた?
どう言う事だ?
ちびうさは生きてるぞ?
しかし、イーゼの表情は変わらない。
どこか納得をしたような顔をしている。
「それは辛かったですね……。そうですか、そこであなたは見つけたのですね? 赤のオーブを。」
ボッサンはバッと顔上げて驚いた顔をする。
「ネェちゃん、本当に何者なんだい?」
「私はただ、今ある情報から推理していただけですわ。実際に合ってるかどうかは、あなたの口から聞くまではわかりませんわ。」
「そうか、昨日の嬢ちゃんといい、ネェちゃんといい、大したもんだ。なるほどな、そこのにぃちゃんが連れてきた意味がやっとわかったぜ。アンタ大した食わせ者だよ。」
「俺の仲間は優秀だからな。」
うん、俺が言えるのはこれだけだ。
さっきからビックリし過ぎて、頭のネジがぶっ飛びそうだわ。
「それであってるのかしら?」
「あぁ、その通りだ。俺はそこでちびうさが赤のオーブを大事そうに抱えているのを見た。多分、父親と母親に見せたかったんだろうな。ちびうさは幸せそうな顔で……死んでいたよ。だけどな、そこで俺は更に驚いたんだ。突然その赤のオーブが光ると、消えてしまって、なんとちびうさが生き返ったんだ。嘘じゃねぇ、本当だ。」
ふむふむ、つまりちびうさは死んだけど、生き返ったと……。
もう無理。
完全に頭パンクだよ。
「なるほど。わかりましたわ、それでもう一つの約束とはなんですの?」
「あぁ、それはな。真実の姿を現すヌーの鏡というアイテムを見つける事だ。いいか、よく聞け。この国の王はモンスターだ。間違いない。それを暴くために俺はこの三十年間必死に探していたんだ。」
「やはりですか……。それで見つかりましたの?」
「あぁ、最近やっと見つけた。カジノだ。カジノで五万コインと交換できる。それで俺は、コインをあの手この手で集めていたんだ。頼む! 俺にコインを……いや、アンタでもいい。ヌーの鏡を交換してきてくれねぇか? 俺はマモルとの約束を何一つ守れなかった。だからこれだけは守りたいんだ。頼む!」
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しかし、その時予想外の事が起こるのだった……。
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ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。
生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。
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