La Vie en Rose【カリー編】

キミちゃん

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エピローグ

9 錯乱

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 そして下に降りて行ったカリーは、その目を疑った。

 そこには四つん這いになって泣いているバンバーラがいたからである。
 そんな姿は初めて見た為、流石のカリーも驚いた。

 しかし、それ以上に驚いたのはバンバーラだった。

 降りてくる足音を聞き、まさかと思って目を向けると、やはり降りてきたのがカリーだったからである。
 あれだけ何を言っても反応が無かったカリーが自分の意思で降りてきたのだ、驚くのも無理はない。


「カリー!! あんた……。」


 突然バンバーラは立ち上がると、カリーを強く抱きしめた。


 これにはカリーも驚く。
 あんな風にショックを受けていた姉さんが、何故か自分に気付くと更に涙を目に溢れさせて抱き着いてきたのだ。


 それほどまでに酷い事を言われたのだろうか?


 そう疑問に思ったカリーは、いつものように優しく姉に声を掛けた。


「どうしたんだい、姉さん? なんかあいつに嫌な事でも言われたの?」


 その優しい声を聞き、バンバーラは大きく目を開くと、胸のモヤモヤがすぅっと晴れていく。
 

(よかった!! よかったよぅぅ……。カリーが、カリーが元に戻った!!)


「ううん! なんでもないの! そんな事よりカリー、体はもう平気なの? ご飯食べてないでしょ?」


 嬉しさを隠しきれないバンバーラは、直ぐに笑顔になってカリーの体調を心配した。


 ……しかし。


「いや、ごめん。なんか食欲がないんだ。帰ってきたら食べるよ。それより、さっきまでそこにローズがいたんだ。多分今頃俺を探していると思う。だからちょっと出てくるわ。帰りはローズも一緒かもしれないから、ローズの分も食事があると嬉しい。」


「え? ちょっ!? カリー? どういうこと? ねぇ、ちょっと!!」


 その言葉に戸惑うバンバーラ。
 カリーが何を言っているのかわからない。


 そしてカリーは、バンバーラを離すとゆっくりと玄関に向かって歩いていく。


「姉さんさ、もうちょっと男を見る目を養った方がいいぜ。女を泣かせるような男とは一緒にいない方がいい。」


 カリーはそれだけ言うと、家を出てしまった。


 再び混乱するバンバーラ。
 正気に戻ったと思ったカリーは、全く正気に戻っていなかった。


 このまま外に出したらまずいのではないか?
 いやむしろ、外に出て現実を目にした方がいいのかもしれない。
 でも現実を見て更に頭がおかしくなったらどうしよう……。
 しかし引き留めたところで、元の状態に戻るだけだし……。

 
 その状況に頭を悩ませるバンバーラだが、もう既にキャパシティはオーバーしていた。
 結局答えが見つからなくなった彼女は、再びその場で立ち尽くしてしまうのであった。
 
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