婚約破棄された私が、再度プロポーズされた訳

ゆきな

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「さて……」

リアンはなんだか嬉しそうに笑いながら、ベンチに腰かけると、まっすぐにアリシアを見上げた。

「今日は、この前とは打って変わって、随分素敵なドレス姿だね」
「……ありがとうございます」
「まあ僕としては、この前の服装だって、とても良いと思ってるけどね」

と、屈託のない笑顔を見せながら、彼は付け足した。

「あ、べつに皮肉じゃないよ。
宝石を身につけていなければ美しくない、なんてことはないだろう?」

いったい彼は何を言いたいのだろう。
いぶかしげな目で、アリシアが彼を見返すと、リアンは

「そんなに怖い目で睨まないでよ」

と言ってから、

「ね、ジェニファー」

と、付け足した。

やっぱり問い詰める気なんだ、と思うと、アリシアは気が重かった。
でも、ここでさらに嘘を塗り重ねても、状況はますます悪くなることは分かり切っている。
焦っていては、上手い言い逃れの文句も思い浮かびそうにない。

だったらいっそ、とばかりにアリシアは開き直ると、背筋を伸ばして切り出した。

「嘘をついたりして、申し訳ございませんでした。
私は、本当はアリシア・タルボットと申します」
「アリシアか。素敵な名前じゃないか。
ジェニファーより余程良い」

リアンはクスクス笑っていたが、やがて何か思いついたとみえて、顔を上げた。

「そうか、アリシア。
ということは、きみがビクター伯爵令息と婚約を解消したとかいう……?」
「ええ、そうです」
「え、でも、この前一緒にいたのは、そのビクター様だっただろう?」
「ええ……まあ……」

アリシアは話したくはなかったのだが、ここで話を切り上げても、リアンが素直に引き下がるとは到底思えなかった。
案の定、彼はわくわくした顔をして、話の続きを待っているのである。

仕方なく彼女は、ビクターが、平民の姿をしたアリシアを別人のジェニファーだと信じ切って、改めてプロポーズしてきたことを説明した。

「へえ、それは大変だ!」

話を聞き終わったリアンの顔は、嬉しそうに輝いていた。
一方でアリシアの表情はますます冴えなくなっていく。

「それで?いったい、そんな格好をして何をしていたのさ」
「それは、その……気晴らしです。
いつも窮屈なドレスを着て、堅苦しい礼儀作法に苦しめられているんですもの。
結婚も迫っていましたので、残された時間を、少しくらい自由に過ごしたかったんです」

ここまでくれば、もうこれ以上隠すことはない。
アリシアは俯きつつも、淡々と説明すると、リアンはさも楽しそうに笑い声を上げた。

「こんなに可愛い顔をして、なんてお転婆なお嬢さんだ!」

と、黙り込んだアリシアに遠慮することなく、いつまででも一人で笑っている。
そして、アリシアがもっとも恐れていたことを言い始めた。

「それにしても、変装なんかして遊んでいるのが知れ渡ったら、まずいんじゃないの?」
「そ、それは……」

アリシアは言葉に詰まった。
まったくもって、彼の言う通りだったからである。

だから、嫌ではあったが、

「まずい……です。お願いですから、どうか他の人には言わないでください」

と、おとなしく頭を下げた。

「でも、僕が言わなくても、あんな変装すぐにバレるでしょう」
「そこは、恐らく大丈夫です。
貴族の方々で村に来る人は、まず、いません。
それに皆さん……見かけでしか判断していませんもの。
ドレスを着てなければ気づきませんわ。
現に、元婚約者だったはずのビクター様でさえ、面と向かっても気づかなかったんですもの。
今まで気づいたのは……」

アリシアは一度言葉を切ると、リアンの目をまっすぐに見返して、続けた。

「あなただけですわ」

すると、彼の表情が、ふっと緩んだ。

「まあ、黙っていてもいいんだけどね」
「本当ですか!ありがとうござい……」
「でも」

喜ぶアリシアの言葉を遮って、リアンは言った。

「条件がある」
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