夜の校舎で

komomo

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夜の校舎で

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夏になると思い出す
あの夜のこと…。

高校生初めての夏。
アオハルするぞーって思ってた
そんな夏休み。

小さい頃からあった花火大会
事故があって数年やっていなかったけど
復活すると聞いて絶対行こうと思ってた。
それなのに…。

「あっつい…」
「ほら!サボってんな!最後まで走り切れ」

まさかの校内合宿と丸かぶり…。

「お前ら、今日夜練無しな」
「え、なし?!」
「なんだ、やりたいのか?」

ニヤニヤしながら言う顧問に、暑さのせいにしておこう、ちょっとイラッとした。

「今日花火大会あるだろ、屋上解放してやる」
「やったーーー!」
「体育科の先生たちも来るから」

…それは実は先生達が見たくて、私達をだしにつかったんじゃ…と言いたい言葉を飲み込んだ。
本当は浴衣着て、出店でたこ焼き食べて…はあ。花火がみれるだけでも良しとするか。

そこからの練習はあっという間だった。
いつもならきっつーい走り込みもこなし、夕食も早めに食べて…。

「もう始まっちゃうから先行ってて!
洗濯機まわしてから行く!」
「ごめんね、じゃあ先行ってるね」

1年は洗濯当番があるんですよ。
今まわしておけば、1回は花火見てる間に終わるから、シャワー待ちしてる間にもう1回まわして、少しは早く寝れるかな…
そんなこと考えながらセットしていたら、

ドン…

「あ!始まっちゃった!」

鈍く身体に響く花火の音に慌てた。

合宿所からダッシュで校舎へ行き、昇降口から1番近い階段を屋上までかけあがった。
うちの学校は昇降口すぐと、そのまま真っ直ぐ伸びる長い廊下の奥に階段がある横長の校舎だ。
真っ暗の中、怖いから練習後とは思えないぐらい高速で一気に走った。

「あれ?」

1番上まで上がったのに屋上への扉がない。

「え…なんで」

仕方が無いので、1階まで降りて外からもう一個の階段に近い入口から入るか…入れるのか?
とりあえず、また真っ暗な階段を駆け下り…るつもりだった。

3階の教室に人がいる。
さっきは気づかなかったな。

「あのっ、すみません、1年生でわからなくて…屋上ってどうやって行くんですか?」
「ああ、こっちの階段からは行けないんだよ。
奥の階段からしかダメなんだ」
「ありがとうございます!」

良かった、いい先輩いて。
また猛ダッシュで今度は真っ暗な長い廊下を走った。

「あああああああーーー」

耳を塞ぎながら大きな声で叫びながら。
あの先輩にも聞こえるだろうけど、恥ずかしさより怖さが勝った。

「あ、やっと屋上の扉だ」

ガチャ…

みんなにの顔を見てホッとした。

「きたきた!遅かったね」
「あっちの階段からじゃ行けないってわかんなくてさ、往復しちゃったよ」
「こっちってよくわかったね」
「うん、男の先輩が教室にいて教えてもらった」
「夏休みのこんな時間に3年生がいたの?」

友人のその言葉に一気に冷静になった。

進路のことでわざわざ夏休みに遅くまで学校に来たんだろうか。
もしそうなら、いきなり私に話しかけられて、さぞ驚いたことだろう。
向こうも人がいると思っていなかっただろうから。
でも…一瞬そう思いたかったが、それはないと思い出した。
夏休みのこんな時間に、真っ暗な教室で1人何してたんだろう…"しかも冬服の学ランで"

うちの学校は3年前制服が変わって、学ランからブレザーになっていた…。



今年、今まで中止になっていた花火がまたやるらしく、先生にみんなで遊びに来いと誘われていた。

また、あの先輩に会えるだろうか…。



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