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しおりを挟むその日から本当にモンちゃんは帰ってこなかった。
なんとなく寂しい気持ちにもなりながら、畑を耕す。
兵糧攻めの根本改善のために、もう作ってしまおうと。モンちゃんがいないので、ユーリのとこから野菜をかっぱらうことが難しい為である。
メイド姿は紛れれるが、流石に俺は紛れないし、見咎められる。
タオルで汗をぬぐいながら、雑草を抜いていると、黒い影がさした
「君が新しく入ったバルジアンの付き人だね?」
にこにこと話しかけてきたのは、黒髪の長身美形で第二皇子だ
使用人にも優しいともっぱら評判の
しかし、バルジアンの言葉もあったので少し警戒する
モンちゃんがいなくなって、かなり経つけれどモンちゃんは第二皇子のところに行ったという
本当か気になるところだけど、じろじろと上から下まで見られて、なんとなく笑顔も胡散臭く見えるのは何故だろうか
「私の宮廷にご招待しても?モンもいますよ」
隠すつもりもないのだろう。あっさりそう言うのだが、手の中の草を握りながら、もじもじする
行っても大丈夫だろうか?
「その…バルジアンに許可をもらわないと…」
ぱっと立ち上がると、第二皇子が見下ろしたまま怖い顔をしていた
なんだろう、めっちゃ怖い…
「命令だよ。おいで」
くるっと踵を返した第二皇子に、しぶしぶついていく
まさか殺されたりはしないだろうし…
第二皇子の住む離宮は本殿からかなり離れた森の郊外にあり、馬車に乗せられて連れてこられたけれど、離れ離宮はやはり母親の立場をあらわしているのだろう
ユーリやバルジアンの住む御殿とは全然、違う
素朴な感じが安心だが、手入れが行き届いているように見える
どきどきしながら、第二皇子に付いて離宮に入ると、モンちゃんや他にもメイド達がいた
人は、バルジアンよりも沢山ついているのだな
てことは、やっぱりユーリのやつ…
そんなことを考えていたのだが、俺はある現象に目を見張った
箒が勝手に動き、水の塊が自分で動き回っていたり、炎が勝手に着いたり
他のメイド達がやっているようだが、モンちゃんはやはり手作業をしている
「ええっ、なんですかあれっ」
もの珍しくキョロキョロしていると、モンちゃんと目が合うと気まずそうに逸らされる
「……モンちゃん」
話しかけようとすると、第二皇子に遮られ応接室に通された
インクのにおいがする室内では、ペンが自立してサラサラと書類に文字を書いていき、本が飛んだりするのを見ていると、ソファに座るよう促されて座る
「……まるで魔法のようですね」
魔法なんだろうか?魔法だよね?
「……珍しくもないだろう。ああ、モンは使えないからな」
第二皇子が座ると、ポットが勝手にお茶を注いで、ティーカップがくるんと回って目の前にくる
これ、俺もできないかな?
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