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しおりを挟むそう思っていると、背中の非常階段の扉ががんっと開いた
ぶつかった反動で前のめりになり手をつく
「あれ?人がいたのか……正井?どうしたんだ?またいじめられたのか?」
大きな影が非常階段に入ってきたと思うと、陽の前で坐り顔を覗きこむ
「あ、比嘉…怪我、大丈夫だったの?」
元クラスメイトであり、陽がイジメを受けていた時、助けてくれた比嘉だった
そのせいで、下級アルファの比嘉はかなり痛めつけられ、入院までしなければならなかった
陽は罪悪感で比嘉の顔を見れない
「まあ、俺は体、丈夫だから。一応、ほら、アルファだし…、泣いてたのか?」
比嘉の大きな温かい手が陽の髪を撫でる
アルファの求愛行動のようで戸惑うが、比嘉からしたら陽は疫病神に違いない
陽のせいで比嘉は酷い目に遭ったのだから
「大丈夫、いじめられたわけじゃない」
陽の言葉に安心したように、比嘉は陽の横に移動して腰を下ろした
「ね、ずっと言えなかったんだけど…」
陽は比嘉に言わなければならない言葉があった
「助けてくれたのに、助けれなくて、ごめん。体が動かなくて、怖くて…比嘉は助けてくれたのに…」
俯いたままの陽に、比嘉はなんだそんなことというような顔をしていた
意外な反応に陽は下唇を噛んだ
一条たちからいじめられて、助けてくれたのは比嘉だけだった
「大丈夫だよ、それより何であんな目に遭ってたんだ?今は大丈夫なのか?」
比嘉の言葉に頷く
「今は大丈夫…大丈夫なのかな?」
陽の言葉に比嘉が笑う
「なんで疑問形なの?正井は変なやつだなあ…」
大きな身体を揺すり笑う比嘉に、ささくれた心が少しましになったように思う
「それより、あの時なんで助けてくれ……」
陽と比嘉の間に冷たい空気が流れ込んだかのようだった
沈黙が流れ、緊張した空気に怒気が溢れているかのように肌を刺す
振り向かなくても、匂いでそこに一条がいるとわかった
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