檻の中で

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「何に謝ってるんだ?おい、陽…何について謝っている?」

一条の声が怒りに燃えているかのようだった

ちりちりと髪の毛がやけそうなくらいの、あまりの怒りの空気に、脚から力が抜けていきそうだ


高位アルファの威圧は凄まじく、頭がキンキンと痛みを訴える

「おい、やめろ。オメガが2人もいるのに」

比嘉が一条から再び陽を遮るように前に立ち塞がる

大きな背中を見上げながら、思わず比嘉の制服の裾を握る

一条と賛との現実を遮ってくれる大きな背中が有難く、泣き縋りたかった

ますます強くなっていく威圧に頭が割れそうに痛い

「あ、大丈夫か?おい、正井!!」


焦る比嘉の腕に縋り付く

そうすると一層、一条の怒りが深くなっていくように空気が重たくなっていく

怒っていても、一条は迫力がある美貌を損なわない

鼻の頭に皺を寄せ、口元が開いていく姿はそれでも美しい

やはり一度体を許した相手は、他のアルファに触られるのが嫌なものなのだろうか

一条は長い脚をいらいらと動かしながら、比嘉を睨め付ける

「……陽に触るなっ!!!」

一条の言葉に頭痛が消えていくように意識が遠くなっていく

気を失う前、一条の焦る姿と、辛そうにしてはいたが、賛の勝ち誇ったような顔が見えた


怒りを買った陽よりも自分の方が一条に相応しいと言わんばかりの表情に唇を噛む

しかし、陽は劣性であり、下位のオメガだ

ベータよりもはっきりとアルファやオメガに階級は関係ある

一条の横にいるには、分不相応も不相応

オメガは番になるアルファの階級も関係あるが、執着の度合いでも変わる

陽では一条が相手では、遊ばれて捨てられるのが関の山

現にお見合いの席で、一条は陽を軽蔑しきっていた

いじめられたりもしたけれど、優しくしてくれた時から本当に好きだったのにな

陽の気持ちは届かないだろう

だってもうすでに賛が一条のそばにいるから

昔からどんな場面でも比較されてきた病弱な弟

病弱であるのに全てが陽より優っていて、両親の愛を一身に受けてきた愛情いっぱいに育った弟

誰も陽なんてみてくれなかった

そんな扱いでも仕方ないと思っていた世界で、1人だけ陽を見てくれた

それが一条だったのだ

酷い目に遭わされたけれど、一条がいなければ陽の世界に残るものなんて何一つないのだ

本当にないのだ

両親の愛も、一条の関心も、美しさやオメガの階級の高さも

陽が喉から手が出るくらい欲しいものを全て持っていくのだ

可愛い弟が










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