堕ちて逝った塊

佐野絹子

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秀一はアルを背負ったまま
ソファーまで行き
アルをソファーに寝かせた

俺も直ぐに
アルの元まで寄った

「アル………」

秀一は無言のまま
俯いているので
表情が伺えない

「彼を連れては行けない…
ここに置いて行きます…
さぁ、行きましょう」

俺は返事はしなかった

本当は連れて行きたかった
けど…それは出来ない

ゆっくり扉に向かって
足の歩みを進めた

扉の前に3人立つと
扉が開いた

俺は振り向き
ソファに横たわっているアルを見た

「ごめんな………さよなら、アル」 

扉の奥に進むと
扉はゆっくりと
静かに閉まった
━━━━━━━━━━━━━━━
扉の奥は
漆黒の闇が
広がっていた

暗過ぎて
周りの様子が伺えない
周りにいた人の
姿も見えない

いきなり何者かに
俺の手を握られた

俺は反射的に
身体がびくっと
動いてしまった

「驚かせてしまってすみません、僕です」

手を握った相手が
秀一だと分かると
少し安心した

「秀一、ここ真っ暗過ぎないか?
何も見えない」

「そうですね、
何があるのか分からないので
恐怖心があります」

「そういえば、芹澤は?」

暗過ぎて
芹澤の確認がとれない
━━━━━━━━━━━━━━━
その瞬間
目の前が 
目が痛くなる程の
眩しい光が広がった

俺は反射的に
目を閉じたが
ゆっくりと目を開けると
芹澤がうつ伏せのまま
倒れていた

「芹澤!!」

俺は芹澤の元に
駆け寄ろうしたが
繋いでた秀一の手に
引き戻された

「太郎さん……駄目です」

「え?」

芹澤はゆっくりと起き上がった

「あぁ~あ、お前さぁ ……
うざいよ、早く死ねよ」
 
貧弱そうな先程の芹澤と違って
冷酷そうな芹澤が 
こちらを睨み付けていた

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