堕ちて逝った塊

佐野絹子

文字の大きさ
上 下
60 / 75
死 参

06 ⅩⅣ

しおりを挟む
【ドンドン!!バンバン!!】

僕達は太郎ちゃんの部屋で
眠っていると
部屋のドアが
激しく叩かれた

「たっ…助けて……下さい!!」

ドアの向こうから
例の女の声が聞こえた

ドアを開ける音が聞こえる
 
「どうしましたか!?」

眼鏡くんが
例の女に声を掛けた

駄目だ……その女は

「り…利子さ…んが…」

例の女が
部屋の中に入って来た……

「アルくん!!起きてください!!」

皆が僕を起こし始めた
  
僕は女と
関わりたくない一心で
眠ってるふりをした

「起きろ、アル」

起きたくない
目を覚ましたくない
けど………

「…………どうしたの…………?」

起きないわけにはいかない
深い眠りから 
目を覚めたふりをした

「僕達は
佐藤さんの部屋に
行ってきます
申し訳ないですが
芹澤さんを
お願いします」

「え?」

その言葉を僕に言うと
2人は部屋を出て行った
━━━━━━━━━━━━━━━
長い沈黙が流れた

僕は恐ろしくて
強く目を瞑っていた

「やっと2人きりになれたね」

例の女の声が聞こえた
僕は反射的に
目を開けてしまった

「っ!?」
 
目を開けて驚いた

目の前に
笑顔を見せた
例の女が
僕の顔を覗見込む
見詰めている

顔の距離は
目と鼻の先

「うーん……取り敢えず………」

例の女は
こめかみに指を当て
考える素振りをした

【死のうか?】

例の女は
満面の笑みを
僕に向けた
しおりを挟む

処理中です...