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第一章(謎解きのはじまり)
ゴメンナサイ。(⚠R18)
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間宮の家の周辺には、コンビニも公園も見当たらないので、僕は仕方なく、少し離れた家の塀の前でスマホを見ながら時間を潰すことにした。スマホってなんて便利なのでしょうか!
身体のどこかがムズムズとして、たまに無意識に間宮の部屋に当たるであろう窓を、ついつい見上げてしまう。
今、あの部屋の中で行われていることを、通行人の誰一人として知らなくて、僕だけが知っているのだと思うと、申し訳ないけれども少し興奮した。
10分ほど経過しても、僕は、念のため、念のためと、心の中で呟きながら、なかなかどうして間宮の家に行けずにいた。やっぱりいっそ、このまま帰ろうかとまで考えたが、これ以上、勇気の使い道を間違えても仕方がないしなと、ようやく腹をくくったのだった。
間宮の家のインターホンに人差し指を置いたまま、一度、深く空気を吸い込む。そして吐き出すと同時に、ボタンを奥までゆっくりと押し込んだ。
ピンポーーン……
ドア越しに、間延びした玄関チャイムの音が、間宮の家の中に響いていくのが聞こえた。落ち着かない気持ちで鼻をゴシゴシと擦る。耳を澄まして、間宮が階段を降りてくる足音を待った。だけど、しばらく待ってみたが、間宮が玄関に現れることは無かった。僕は、急激に不安が喉元までせり上がってくるのを感じた。
間宮はショックのあまり、身動きできない状態にいるんじゃないだろうか。
やはりさっき僕は、間宮を1人部屋に残して帰るべきではなかったのではないだろうか。
考えれば考えるほど、次々によくない想像が膨らんでいく。
僕は、思わず玄関ノブを回していた。予想通り、まだ玄関に鍵は掛かっていなかった。もし、このまま間宮が部屋で1人落ち込んでいるのだとしたら、無用心すぎる。慌てて靴を脱いで、僕は階段を足早に上がっていった。
最初、自分の足音で気づかなかったが、ふと間宮の声が聞こえた気がして思わず立ち止まった。誰かと電話しているのかもしれない。さっき帰るときに、僕はドアを完全に締めるのが忍びなくて、中途半端に開けたままでいたのだ。そのドアの隙間から部屋の明かりが廊下に差し込んでいるのが見える。
電話の邪魔にならないよう、僕はゆっくりと階段を登りきると、ドアをノックして間宮に戻ってきたことを伝えようとした。そのときだった。
「……アッ、……あんっ……」
ノックをするために握られた僕の右手は、空中で一時停止していた。え? もしかして、まだ終わっていないんですか?
「ハァ……ハァ……んっ、あっ……ん」
僕は咄嗟に空いてる方の手で口を塞いでいた。どうしよう……引き返した方がいい。頭では、そう分かっているはずなのに、身体が思うように動いてくれない。僕は、呼吸を忘れたせいで溜まった唾液を、ゆっくりと飲み込んだ。
さっき僕が、間宮の部屋を出ていってから、なんだかんだ、もうかれこれ30分近く経過しているはずだ。自慰行為って、こんなに時間がかかるものなのだろうか? 自分しか基準にできないから全く正解が分からない。それに、なにより……。
僕は、もう一度、ゴクリと喉を鳴らした。
オナニーって、こんなに喘ぎ声が出るものなのか?
誰か、誰か教えてください……。
こんなに近くにいるのに、全くこちらの存在に気づかない間宮の様子からして、僕はこのまま、何も聞かなかったことにして、この場を立ち去ることだって、もちろん出来た。
でも、残念ながら僕は、この好奇心をみすみす手放すだなんてことは、するつもり、サラサラなかった。自分が、こんな最低な人間だったなんて、思いもしなかった。身体から飛び出ちゃうんじゃないかってくらいに高鳴る心臓は、これから僕がしようとしていることを咎めるために鳴るのか、それとも単なる興奮によるものなのか。
僕は、ドアの隙間を覗き込んだ。
身体のどこかがムズムズとして、たまに無意識に間宮の部屋に当たるであろう窓を、ついつい見上げてしまう。
今、あの部屋の中で行われていることを、通行人の誰一人として知らなくて、僕だけが知っているのだと思うと、申し訳ないけれども少し興奮した。
10分ほど経過しても、僕は、念のため、念のためと、心の中で呟きながら、なかなかどうして間宮の家に行けずにいた。やっぱりいっそ、このまま帰ろうかとまで考えたが、これ以上、勇気の使い道を間違えても仕方がないしなと、ようやく腹をくくったのだった。
間宮の家のインターホンに人差し指を置いたまま、一度、深く空気を吸い込む。そして吐き出すと同時に、ボタンを奥までゆっくりと押し込んだ。
ピンポーーン……
ドア越しに、間延びした玄関チャイムの音が、間宮の家の中に響いていくのが聞こえた。落ち着かない気持ちで鼻をゴシゴシと擦る。耳を澄まして、間宮が階段を降りてくる足音を待った。だけど、しばらく待ってみたが、間宮が玄関に現れることは無かった。僕は、急激に不安が喉元までせり上がってくるのを感じた。
間宮はショックのあまり、身動きできない状態にいるんじゃないだろうか。
やはりさっき僕は、間宮を1人部屋に残して帰るべきではなかったのではないだろうか。
考えれば考えるほど、次々によくない想像が膨らんでいく。
僕は、思わず玄関ノブを回していた。予想通り、まだ玄関に鍵は掛かっていなかった。もし、このまま間宮が部屋で1人落ち込んでいるのだとしたら、無用心すぎる。慌てて靴を脱いで、僕は階段を足早に上がっていった。
最初、自分の足音で気づかなかったが、ふと間宮の声が聞こえた気がして思わず立ち止まった。誰かと電話しているのかもしれない。さっき帰るときに、僕はドアを完全に締めるのが忍びなくて、中途半端に開けたままでいたのだ。そのドアの隙間から部屋の明かりが廊下に差し込んでいるのが見える。
電話の邪魔にならないよう、僕はゆっくりと階段を登りきると、ドアをノックして間宮に戻ってきたことを伝えようとした。そのときだった。
「……アッ、……あんっ……」
ノックをするために握られた僕の右手は、空中で一時停止していた。え? もしかして、まだ終わっていないんですか?
「ハァ……ハァ……んっ、あっ……ん」
僕は咄嗟に空いてる方の手で口を塞いでいた。どうしよう……引き返した方がいい。頭では、そう分かっているはずなのに、身体が思うように動いてくれない。僕は、呼吸を忘れたせいで溜まった唾液を、ゆっくりと飲み込んだ。
さっき僕が、間宮の部屋を出ていってから、なんだかんだ、もうかれこれ30分近く経過しているはずだ。自慰行為って、こんなに時間がかかるものなのだろうか? 自分しか基準にできないから全く正解が分からない。それに、なにより……。
僕は、もう一度、ゴクリと喉を鳴らした。
オナニーって、こんなに喘ぎ声が出るものなのか?
誰か、誰か教えてください……。
こんなに近くにいるのに、全くこちらの存在に気づかない間宮の様子からして、僕はこのまま、何も聞かなかったことにして、この場を立ち去ることだって、もちろん出来た。
でも、残念ながら僕は、この好奇心をみすみす手放すだなんてことは、するつもり、サラサラなかった。自分が、こんな最低な人間だったなんて、思いもしなかった。身体から飛び出ちゃうんじゃないかってくらいに高鳴る心臓は、これから僕がしようとしていることを咎めるために鳴るのか、それとも単なる興奮によるものなのか。
僕は、ドアの隙間を覗き込んだ。
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