言えなかった想い

美蘭

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言えなかった想い

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☆☆彼との出会い

私(楓)には大好きな人がいます
彼との出会いは去年の夏
バイト先の先輩で年は3つ上の21歳
私がバイトで大きなミスをして
泣いている時に初めて話しかけられた。

「あー疲れた。楓ちゃんも疲れたやろ」
と言って缶コーヒーを渡してくれた
『すみません』
「気にすんなよ」
『コーヒー飲めないんです』
「え?そっち?笑」
『はい…でもいただきます』
「無理しなくていーよ。俺が2本飲む」
『郁斗くん今休憩ですか?』
「ううん。楓ちゃんと同じでサボり~」
『私はサボりじゃ…』
「冗談っ!んなら行くか」
『はい。ありがとうございます』

これが私たちの最初の出会いだった

それから私は郁斗くんは仲良くなった

「ラッキー今日楓ちゃんと一緒~」
『郁斗くん彼女いるじゃないですか』
「うん。いるよ」
キラキラ光る指輪を見せてきた
私の片思いもここでおわりかな

☆精一杯の告白

夏休みにバイトメンバーで
海に行ったり花火をした
郁斗くんはいつも私の隣にくる
「楓ちゃん花火めっちゃ綺麗。
楓ちゃんみたいやな。笑」
(はぁー…私の気持ちも知らないくせに)
『ロケット花火郁斗くんみたいですね!』
「なにそれ?笑」
『なんでもないです』
「ふーん。好きなの?」顔を近づけてきた
私の心臓は今にも飛び出しそうな音を立てている。そして必死に出した
『え?』
「ん?ロケット花火」
『あー…好きですよ。郁斗くんみたいで』
これが私の精一杯の告白。
「俺も好きだよ」
『え?』
「花火」
と言いながらいつもの笑顔で
指輪をキラキラさせている
郁斗くんには彼女がいる
何を期待してるんだろう
私は本当にばかだ。
でもやっぱり諦められない
片思い歴8ヶ月…
学校の子に告白されても
好きな人がいる。と断ってきた
郁斗くんがシフトに入っている時は
いつもより化粧をまめにして
服装だってジャージじゃ行けない

☆私じゃだめ?

そんなある日バイトの時間になっても
郁斗くんがくる様子がない
サボる時はいつも連絡がくるのに
今日は携帯がならない
心配になってバイトなんて全然できない
彼と出会ったあの場所に向かった
『サボる時は連絡してくださいよ!』
どれだけ話しかけても
郁斗くんは何も言わない
『ねぇーってばー』
「…せ」
『え?』
「うるせーよ」
『郁斗くん…?』
「…」
『顔あげてください』
「見んなって」
『…郁斗くんどうしたんですか?』
「…れた」
『え?』
「別れたんだよ!振られた
あー俺馬鹿みてぇ。こんなものいらねー」
ボト…
郁斗くんはいつもキラキラさせてた
あの指輪を川に投げた
「何してんだよ」
『指輪探してるんですよ』
「なんでお前が必死になるんだよ
俺のことすきなくに。前の女の指輪なんてほっとけよ」
『今の郁斗くんは好きじゃない。ふられて泣いて、やけになってカッコ悪すぎ。そんな郁斗くんと付き合ってた彼女がかわいそう』
「お前に何がわかんだよ」
『何もわからないですよ…だからちゃんとその彼女と話してください』
「なんで?」
『好きだからですよ。
好きな人に幸せになってほしいから』

『郁斗くん!ありました!ほら!』
「お、おう。サンキューな」
『本当は私じゃだめですか?って言いたいです。でも郁斗くんが彼女と話しして納得する別れをして私のことを好きになってくれるまで待ちます。8ヶ月も待ったんですよ?もうどれぐらいでも待てますよ』
「もしかしたら彼女と戻っちゃうかもよ?」
『それならそれでいいんです』
「なにそれ」
『郁斗くんが一番幸せになれるなら私じゃなくてもいいんですよ。私サボりばれそうなので戻りますね。郁斗くんのことは私が上手く言っておきますから』
私はその場を後にした
そんなの本心じゃない。ただの綺麗事
私の中の私が言う
わかってる。でも仕方ないよ。あんな辛そうな郁斗くん見たくない
誰かと話をしているわけではなく
私の中の私と会話をした

『私なにカッコつけてんだろ…』
バイトのまかないをたべながら
仲良しの葉月と話をしていた
「あんた、本当にばかだね。もしかしたらそのまま郁斗くんのこと奪えたかも知れないのに」
『葉月~わかってるから言わないでー。でも私には奪えないよ。郁斗くんが幸せだったの知ってるし、今の郁斗くん笑ってないもん』
「お人好しというかなんというか…」
『とりあえず!私はもういいんだよ。言いたいことは言ったし…あとは郁斗くん次第』

~♩~♩~♩
「郁斗くんじゃない?」
『え。本当だ。ちょっとごめん』
《はい。楓です。あ…そうなんですか。いえ。全然。私は大丈夫です。それではまた明日。失礼します》
「郁斗くんなんだって?」
『…葉月~郁斗くんが…』
「泣いてたらわかんないでしょ!どした?」
『彼女とより戻したって…』
「楓…」
『なんで葉月が泣いてんのよー』
「だって楓が頑張ってたの知ってるし…
郁斗くん最低じゃん…」
『最低とか言わないで…』
「明日シフト変わろっか?」
『ごめん。お願いします』
「いいよ。郁斗くんと一緒だもんね…店長には私から上手く言っとくから」
『ありがとう…』
そのまま葉月と別れて帰った

「おかえり!楓どうしたの?」
『疲れたから寝る』
「ご飯は?」
『いらない』
私の家はお父さん、お母さん、お姉ちゃん、妹の5人家族。
お姉ちゃんはもう家を出ていないんだけどね。
妹は中学2年のクソガキ。
空気が読めず土足で踏み込んでくる
「お姉~CDかして」
『ちょっと。勝手に入ってこないで』
「げ。きっしょい顔。目腫れすぎ。なんかあったん?」
『あんたには関係ないでしよ』
「人がせっかく心配してやってんのに…」
「あ、私別れたから」
『え?また?今度は何日?』
「んー。6日?いや7日かな?長い方でしょ?」
『う、うん』
「あ、これこれ!んじゃ」
あの子は本当に好きな人の大切さがわかってないんだよね…
彼氏もいない私に言う筋合いはないか…

☆優しい嘘

~♩~♩~♩
郁斗くんの着信音?
『はい』
「大丈夫か?葉月ちゃんから楓ちゃんが
事故ったって聞いて…お前電話繋がらねーし、バイトも来ねーし、メールも返信ねえし…」
『すみません。寝てました』
「え?事故は?」
『多分葉月の嘘です』
「嘘?なんだよ~。本当よかった…」
『郁斗くん?』
「あ、ごめんごめん。明日はバイト来いよ!じゃあな」
プープープー
携帯を見ると不在12件メール7件
全部郁斗くんだった
メールは「大丈夫か?」「何時でもいいから連絡してくれ」私を心配した内容ばっかり

次の日学校に行ってすぐに葉月を問い詰めた
『誰が事故ったってー?』
「ごめんごめん。言いすぎた。郁斗くんの気持ち確かめようと思ってさ」
『確かめる?』
「うん。彼女とよりを戻したってことは楓より彼女を選んだってこと。事故ったって聞いたらどんな反応するかなと思って」
『どんなって…普通だったでしょ?』
「うーん。聞きたい?」
『別に…』
「わかったー」
『嘘です。教えてください。葉月様~』
「本当楓は素直じゃないんだから」
『ごめんー。どんな反応?』
「私もびっくりしたよ。バイト中に言ったらすぐ出て行って走り回って店長が「仕事中だぞ!どこいくんだ」「大事な人のとこ!クビにするならしてくれていいから」
ってすごい勢いで出て行ったよ」
『え。郁斗くんクビになったの?』
「いや、私からも店長に言っといた」
『よかった。ありがとう』
「ありがとう。じゃないよ!それだけ?」
『それだけ…って何が?』
「郁斗くんの反応聞いてた?あれは何かあるね…」
『何かって?』
「それは楓が自分で聞かないとね」

キーンコーンカーンコーン

「あ、1時間目終わっちゃった」
『朝から話し込みすぎたね』
「2時間目から出ますか」
『そうですね。また帰りね!』
私は授業中ずっと上の空だった
ただ葉月の「何かあるね」て言葉だけが
頭の中をぐるぐる回っていた

キーンコーンカーンコーン

「楓!今日カラオケ行かない?」
『ごめん!今日バイトー』
「了解!いってらっしゃい」
『ありがとう!バイバイー』
いつもより綺麗めに化粧してバイト先へ向かった
「よ!昨日はまじやられたわー」
『あ、郁斗くん。心配かけてごめんなさい』
「まあ、無事でよかった。クビになるとこだったわ」
『何かしたんですか?』
「サボりすぎてんのばれた。お前もサボりすぎんなよ!」
なんでクビになりそうだったか本当は知ってるんだよ
でもあなたは優しい嘘をついた
それからあなたの嘘が怖くなった
あなたは私のためにたくさん嘘をついた
私が傷つかないための優しい嘘を
「聞くのは楓」葉月に言われて気になった私はバイト上がりに聞くことにした
「今日は1回もサボんなかったから疲れた」
『郁斗くん。私聞きたいことがあります』
「ん?なに?」
『彼女と何かありましたか?』
「…なんだよ急に。あ、俺がより戻したこと怒ってんだろ?」
『違いますよ。ただ…』
「ただなんだよ」
『郁斗くん幸せそうじゃないから』
「なんでお前にはばれんだよ」
『それと葉月に聞きました。私のこと聞いて飛び出したって…郁斗くん…私』
「やめろ。それ以上言うな」
『私郁斗くんが好きです』
「おれもお前が…お、俺には彼女がいる
。あいつは俺がいないとダメなんだ。俺が側にいてやらないと。あいつには俺しかいないから…」
『郁斗くん?どういう意味ですか?』
「…なんでもねえよ!早く帰れよ!んじゃ」
今日の郁斗くんはなんだか違う
すごく寂しそうに見えた
辛そうに見えた
どうして私に話してくれないんだろう
それから郁斗くんとは
バイトが全然被らなくなっていた
葉月に聞いたら
「俺は楓を幸せにできねえから」
店長に言って
私の休みの日に出勤してるらしい
幸せにできない?どういうこと?
私は郁斗くんが好きなだけなのに
バイトが被らなくなって1ヶ月がたった
こんなことならあの時告白なんてするんじゃなかった

☆言えなかった想い

私はおじいちゃんのお見舞いで
病院に来ていた
エレベーターに乗ろうとした時
かすかに香水の匂いがした
この匂いって…
振り返ると郁斗くんがいた
彼は私には気づいていない様子
あとをつけた
[守山 璃子]
と書いてある病室に入って行った
会話が聞こえる

「璃子。大丈夫か?」
『郁斗?ごめんね。ごめんね。私のせいで』
「ばか。なに謝ってんだよ」
『だってあの日郁斗が別れよう。て言ってたのに私があんなことしたから』
「璃子は悪くねえよ。
俺が側にいるから。大丈夫。側にいるから」
『郁斗…大好き。ずっと側にいてね』
「うん。側にいるから」

え。どういうこと?なにがあったの?
あんなことってなに?
なにが郁斗くんを苦しめてるの?
でも私は振られた。
私に聞く権利なんてあるのかな
病室の前でぼーっと立っていると
看護師さんたちの会話が聞こえて来た

「彼氏毎日来てるね。すごいよね。私もあんな風に愛されたい」
『違うよ。守山さん別れようって言われて自殺未遂したらしい。俺のせいだって毎日病室を出てから泣いてた』
「えー振られて自殺未遂?こわ」
『彼氏バイト先に好きな子ができたらしくて
告げたら最初は別れるなら死ぬ。ってそれを彼氏が全力で止めてそしたら今度はその子を殺してやるとか言って…彼氏は何でも言うこと聞くからやめろって言ったら…』
「え?なになに?なんて言ったの?」
『じゃあ死ぬまで私の側にいてね。だって』
「えー怖い怖い。女こわ。」
『だよね。だから彼氏は毎日来てるのよ』
「若い子の恋愛は大変ね…」

ん?どういうこと?
もう何が何だかわからない
私が告白した時郁斗くんは
何を言おうとしていたの?
郁斗くんの本当の気持ちは?

バイトが全然被らないから
休みの日にバイト先に行った
「いらっしゃいませ」
『郁斗くん…』
「え。楓?今日休みじゃ…」
『郁斗くんに話があって』
「俺バイト中だから」
『休憩になったらあの場所に来て下さい』
「休憩何時かわかんないから。帰って」
『何時でもいいんで待ってます』
私はあの場所に向かった
郁斗くんと出会った大切な場所
郁斗くんの大好きなコーヒーを買って
2時間がたった。郁斗くんは来ない
私はいつの間にか眠ってしまっていた
目が覚めると暖かい。服がかかっていた
そこから香水の匂いがした
郁斗くんの匂い
私は急いで店に戻った
『店長!郁斗くんは?』
「郁斗なら1時間くらい前に上がったぞ
待ってる人がいるからってまかないも食わずに走って行った」
郁斗くん。あの場所で1時間も待ってくれてたんだ
『ありがとうございます。お疲れ様です』
私はもう一度あの場所に走った
そこには愛おしい後ろ姿が見えた
『郁斗くん?』
「起きたか?コーヒー買いに行って戻ったらいねえし帰ったのかと思った」
『来てくれたんですね』
「楓が何時でも待ってるとかいうからだろ。
実際3時間こんな寒い中…寝てるし。」
『あー!寝てたのは本当すみません』
「別にいいよ。こんなもの撮れたし」
『ちょっとー!すぐ削除!削除!』
「だーめ。こんな可愛いのに」
携帯を奪い合いながら久しぶりの時間
2人で笑い合いながら幸せな時間
でも郁斗くんの様子が変わっていく
「楓」
今にも泣き出しそうな声で私の名前を呼ぶ
「ごめん。最後だから」
そう言って私を抱きしめて来た
『最後?…』
「もう楓には会わない」
『どうしてですか?私があんなこと言ったからですか…』
「俺にはお前を幸せにできねえ」
まただ。葉月から聞いた言葉
『私は郁斗くんと会えるだけで幸せです』

『郁斗くんが辛い時は頼って下さい
悲しいなら側で支えます
嫌ならもう好きなんて言いません。だから
もう会わないなんて言わないで下さい…』
「楓…俺もお前が好きだよ。誰よりも。
ごめんな。幸せになれよ」
そう言って郁斗くんは走り去って行った
すぐに追いかけたけど郁斗くんはもう見えなくなってしまった
店長からバイトを辞めたと聞いた。
もうそれから郁斗くんに会うことはなかった
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