「≪最悪の迷宮≫? いいえ、≪至高の楽園≫です!!」~元皇女は引き籠り生活を満喫しつつ、無自覚ざまぁもしていたようです。~

文字の大きさ
42 / 46
愚か者たちの末路

皇帝

しおりを挟む


何故、こんなことになった?


薄汚れた壁に手を付き、ふらつく身体を支える。
えた臭いが鼻をついた。

薄暗い路地には幾つものゴミが散乱していた。
陽の差さないそこには昼夜を問わず淀んだ空気が充満し、目に映る何もかもが汚らわしい。

ゴミを漁り、食す子供。
半裸に近い恰好で男たちの手を引く娼婦。
飢えた野犬の目をした男や、ぽっかりと空いた闇のように濁った目をした男たち。

そして、
者達。

飢餓に薬、果ては暴力の末に人であることを失った屍が蹲り、救いを求めるように手を伸ばしこと切れて虫に纏わりつかれている。

そんな、地獄絵図の様な世界。

そんな中に自分は居た。


暴れ、叫んでもどうにもならなかった。

卑しい女との間に生まれた汚らわしいあの男が厚顔にも玉座に腰かけ、城の重鎮も兵も誰も私を助けようとしない。そんな狂った世界で与えられた選択肢。

他国の誰かに引き渡される?そんなものは論外だ。

私は皇帝で、国も、民も全ては私の所有物モノ
誰よりも尊く、偉大な私が所有物モノになるなどあっていいはずがない。

牢の中で生涯を過ごすなど……考えられる筈もなかった。

苦渋の末、選んだ選択。

腹立たしいことこの上なかったが、仕方がなかった。
高貴な私が下賤な者達の暮らしに紛れるなど考えただけで身の毛がよだったが、それでも他の二つよりもマシだと思った。
多少の苦労はするだろうが、自由に勝るものはない。

それに、時間が過ぎればわかるだろう。
私の存在の偉大さに気づき、自らの犯した過ちを恥じてきっと私を呼び戻す筈。

豪華とは言い難い馬車で何日も揺られ、供の1人も付けずに放り出された小さな国。

私財を持ち出すことも許されず、小さなナイフと僅かな小銭だけを残し無情にも馬車は去って行った。

街を彷徨い、無礼な下民どもに紹介された宿は部屋が二間しかなく質素なベットと椅子に机しかない小汚い部屋。夜になっても部屋に食事が運ばれることすらなく、自ら出向いた階下で出されたのはパンとスープとチキンを焼いただけの犬のエサのような粗末な食事。

だが、そんな生活さえ三日と持ちはしなかった。

「金がないなら野宿でもしな」

侮蔑的な言葉に無礼者に殴り掛かれば、いつの間にか殴られていたのは私の方だった。
高貴な私の血が流れているというのに、誰も助けないどころか「先に手をだした」と取り調べを受ける始末。

「私は皇帝だ!!」

何度も叫んだその言葉に、ついには「頭がイカレてる」と放り出された。


全てが狂ってる。

何もかもが、狂い果てている。

あれから、どれだけたったのか。

ズキズキと痛みを訴える身体。
足が、身体が、引きずるように重くて堪らない。

漂う異臭が自分から放たれる臭いだと気づいた瞬間の衝撃。

手も足も顔も、何もかもが汚れ果ててドス黒く、ざんばらになった髪は汗と皮脂でところどころよくわからない塊のようになり果てている。

立ち止まった道端、配水管が壊れて出来た水溜りに映った自分の姿に息を呑んだ。

汚らわしい、みすぼらしい。
これは ダレだ?

頬を伝った雫が真っ黒な顔に一筋の道筋を描いた。


「ああ……きっと、全部夢だ」


はは、は、はと歪な声が喉をついた。
引き攣れるように、叫ぶように、笑いが込み上げて腹を掲げて笑い転げ、腕を広げて空を見上げる。

路地の隙間から僅かに見えた空は、切り取られたかのように晴れ渡る青い空。


ほら、全部が可笑しい。
何もかも、 狂ってる。


笑って、笑って、笑い続け、疲れ果てて壁に背を預けた。

ズルズルと沈む背に任せ、路地裏に手足を投げ出して座り込む。


「全部全部悪い夢に違いない」


だからもう 目を閉じよう。

目覚めたらきっと 正しい世界が戻ってるに違いないから________。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地! 恋に仕事に事件に忙しい! カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...