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今は前より後ろを見てほしい 4
しおりを挟むそれにそもそも、先の展開を知ってることが異例で未来なんて本来はわからなくて当たり前なんだよね。
誰かに幻想や憧れを重ねてその人を正しく見れないことも、自分を演じることも誰だってある。
まぁ、程度の度合いはあるだろうけど……。
ああ、でも。
本棚に凭れ掛かる一人と一匹を思い出して自然に表情が綻んだ。
「貴方に嘘はないと思う」
「えっ?」
「隠してるところや取り繕ってるところはあっても貴方自身には嘘がないと思う。以前、友人が私に言ってくれた言葉です」
あっちが友人と思ってくれてるかは謎だけどね……。
「私もそう思いますよ。リリー嬢が周囲に見せるその姿が全てはないとしても、それでも貴女自身に嘘はないと」
「リリー嬢は感情の起伏が分かり易い素直な方ですし」と茶目っ気を混ぜて付け加えればボフンっ!と顔が真っ赤に染まった。
「あのっ、その……私の気持ちって筒抜け、ですか?」
「わりと」
『いやぁぁぁぁぁ~~~!!やっぱりっ!!』
苦笑いと共に一言返せば涙目なリリー嬢は両手で顔を覆った。
はるか後方では状況のわからないアレクサンドラがずるずると前に進もうとしてシリウスに押さえつけられている。
通りがかった使用人が見ちゃいけないものを見た顔してますよー。
気付いてねぇな。
「でも本人はわかってないみたいですよ。「避けられてる」「嫌われた」って嘆いてましたし」
「なんでっ?!」
「割と露骨に逃げてましたしね」
「あ、あれは恥ずかしくてっ!!」
ガバッと顔を上げたリリー嬢は叫んで、次いで言い訳をするが俺に言われても。
それは後ろでオモシロ行動してる余裕のない王子サマに説明してあげてください。
同じ悩みを抱いた転生者としてお節介はしたけど、恋愛事にまで口出す気はないんでー。
「現実が見えてなかった。そうリリー嬢は言ったでしょう?現実を見るっていうのは、今と向き合うことですよ。結局、私たちに出来るのはそれだけです。何かから逃げるにしろ受け入れるにしろ、抗うにしろ、今と向き合って出来ることをする。何を選ぶかは貴女次第です」
「……はい」
小さく頷いて、噛みしめるようにもう一度「はい」と頷いた菫色の瞳は真っ直ぐに前を向いていた。
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