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黄金の瞳を持つ者 3
(ナディア視点)
声の主のリリー様にみんなの視線が集中する。
俯いてなにかを考えこんだままぶつぶつと言っていたリリー様は、ふと顔をあげてみんなの視線が集中してることにひどく驚いていた。「もしかして……口に出てました?」と口を押さえて不安げに聞いている。どうやら無意識だったみたい。
「なにか心当たりでもあるのか?」
「いっ、いえっ!」
視線を彷徨わすリリー様にもしかして、と口を開いた。
「リリー様も……先生のことを、皇子のようだと思わていたんですか?」
「え?」
あまりにも驚いた顔のリリー様に、こちらも驚きながら首を傾げた。
「わたしもって、ナディア様はそう思ったってことですか?」
身を乗り出して訊ねてくるリリー様に「えっと……ええ」と曖昧に答えることしかできなかった。いつしかみんなの視線が私へと移っていて、慌てて胸の前で両手を振った。
「あ、でも先生は公爵家の方ですし本気でそう信じてたってわけじゃないんです。先生の瞳はとても綺麗な黄金だから、イメージがピッタリだっただけで……」
「待って!君は、皇子が“黄金の瞳”だと認識していたのかい?!」
真剣な表情で確認してくるダイア様に頷く。
そしてその様子に……密かに気になっていた疑問が解けた。
「アンジェスの王家に連なる男児は“黄金の瞳”を持って生まれる。母がよく口にしてたから私は一般的な認識だと思ってたんですが……あまり知られてなかったんですね。以前のパーティーで、ダイア様がベアトリクス様の瞳の色の宝石を身に着けていらっしゃったのを見て、不思議には思ってたんです」
「それがどうかしたのか?」
「ベアトリクス様の瞳は黄色で、見方を変えれば黄金とも言えます。アンジェスに於いて“黄色系”の宝石は使われません。それは『皇帝』を表す色だからです。唯一持つことを許されたのは王家の男児、皇帝となる方のみ。私がアンジェスの末裔と認識された王家由来の宝飾品にも“黄色”の宝石は一切使われていません。女性の装飾品ですから、たとえ王妃や姫のものでも禁色なんです」
声の主のリリー様にみんなの視線が集中する。
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「いっ、いえっ!」
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「リリー様も……先生のことを、皇子のようだと思わていたんですか?」
「え?」
あまりにも驚いた顔のリリー様に、こちらも驚きながら首を傾げた。
「わたしもって、ナディア様はそう思ったってことですか?」
身を乗り出して訊ねてくるリリー様に「えっと……ええ」と曖昧に答えることしかできなかった。いつしかみんなの視線が私へと移っていて、慌てて胸の前で両手を振った。
「あ、でも先生は公爵家の方ですし本気でそう信じてたってわけじゃないんです。先生の瞳はとても綺麗な黄金だから、イメージがピッタリだっただけで……」
「待って!君は、皇子が“黄金の瞳”だと認識していたのかい?!」
真剣な表情で確認してくるダイア様に頷く。
そしてその様子に……密かに気になっていた疑問が解けた。
「アンジェスの王家に連なる男児は“黄金の瞳”を持って生まれる。母がよく口にしてたから私は一般的な認識だと思ってたんですが……あまり知られてなかったんですね。以前のパーティーで、ダイア様がベアトリクス様の瞳の色の宝石を身に着けていらっしゃったのを見て、不思議には思ってたんです」
「それがどうかしたのか?」
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