上 下
17 / 179

マリー・アントワネットも吃驚です 3

しおりを挟む

 彼女の心の声は今日も今日とて絶好調。
 大人し気な外見に比例してテンションが高いリリアの心は抑える術もなく俺に筒抜けだ。

 転生者であることはこの妙な能力に目覚める以前から知っている。

 だってこの子時々ベアトリクスを拝みながら

「今日も推しが尊いっ。はぁー倖せっ!」

 とか呟いてたからね。
 言動が確実に転生者だよね。

 だが、ベアトリクスが推しとは中々に見どころがある。
 そんなリリアは奇特な言動も相まって周りからは「ちょっと変な人」と思われてるが本人全く気付いてないっぽい。

 そしてそんなリリアに当然のごとく俺は当初怪しまれていた。

 まぁ当然ちゃ当然。
 ガーネストもベアトリクスもゲームと全然性格違うしね。
 俺を転生者じゃないかと疑った彼女は当初頻繁ひんぱんにカマを掛けてきてました。


「大変、大変~」

 わざとらしく俺へと走り寄って来て。

「カイザー様、大変です。今日のパンを切らしてしまって。パンがないなら?!」

 マイクを向けるように手を突き出し、じっと俺を見つめる茶色の瞳。

「えっと、では何か代わりになるものはあるのかい?それとも急いで誰かに使いを頼もうか」

 素で困惑しながら答えた俺を見て「あれ?」って顔をするリリア。

 もう一度「パンがないなら?」と問うリリアにお互い首を傾げる俺たち。

 何なの?
 そこで俺が「お菓子を食べればいいじゃないっ!」とか言うと思った?!
 言わないよ?!

 素できょとんとしたわ!!

 マリー・アントワネットだってそんな合言葉にされるとは予想外ですよ!
 あの言葉自体がルソーの創作だって説が有力だけど……。

 その後リリアはご立腹のメイド長に襟首掴まれ連行された。

 他にも前世の流行りの歌をこれみよがしに俺の前で歌って反応を窺ってみたり。
「カイザー様の推しって誰ですか?」って唐突に聞いてきたり。

 カマ掛けのレベルが低すぎる。
 誰がそれに引っかかるというのか……。

 アホなの?
 うちのメイド、アホの子なの?

 俺が現状心の声が聴こえるとか抜きにしても、この子の感情が筒抜けすぎる件。
 そんなアホみたいな遣り取りを何度か繰り返す内に、俺の転生者疑惑は晴れたらしい。

 実際はばりばり転生者だけどね!!

 俺の鉄壁の微笑みを舐めるでない。
 これぞ微笑みという名のポーカーフェイス!


 むしろキミはもう少し取り繕うことを覚えてくれ!!


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

浮気の認識の違いが結婚式当日に判明しました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,320pt お気に入り:1,217

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,798pt お気に入り:1,659

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:9,102pt お気に入り:256

婚約破棄?ありがとうございます、ですわー!!!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:958pt お気に入り:169

処理中です...