ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

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色々、解せぬ… 5

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 カップを空にし終えたところで、さてと腰をあげる。
 元々騎士団へ向かう前に寄っただけだ。長居は出来ない。

「えー、もう行っちゃうの?」

 俺を見て、同じく立ち上がったサスケにリオが思わずといった感じで声をあげた。

「サスケ、君はもう少しここに居ていいよ」

 今は急ぎで頼む仕事もないしと告げれば「ですが…」と困惑を伝えてくる瞳。表情は相も変わらず無表情なんだが。

「持ってきたお菓子も一人じゃ消化できないだろうしね。それにリオも退屈を持て余してるみたいだ。少しだけ付き合ってあげて」

 サスケを引き留めたのは何もリオの恋の応援だけじゃない。

 働き過ぎだと思うんだよね、サスケ。

 これがソラなら「休んでていいよ」って言ったら「よっしゃ!」ってなるけど、真面目な彼は空いた時間も鍛錬とかしてるしな。
 真面目なのはいいことだが息抜きも大事だ。

 ぱたん、と閉じた扉を背に騎士団の詰め所へと足を向ける。

 因みにソラは解散だ。

 昔の仕事もあってか騎士や権力者に顔を覚えられるのを嫌うのはいつものことなので特に気にしない。

 面倒事は御免だというその精神はぶっちゃけ、嫌いじゃない。
 モブとしては非常に共感できるのだ。

 俺だって、乙女ゲームの知識だのベアトリクスの破滅フラグだのなければきっと無難にひっそり生きることを選んでいた筈だ。

 ……なのになんでこんなことになってんだろ?

 ひっそり生きるどころかいつのまにやら隠しキャラ扱いやら果てには魔王扱いされてる現状に、若干遠い目をしながら俺は騎士団の詰め所へと向かった。


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