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第3章 異世界からの侵略者
41話 英雄【ヒーロー】なんて
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『標的狙撃』。それがアルケナが持つ有効魔法の能力だ。能力の効果は説明した通りである。
口や鼻、頭から血を流しながら微笑み、そう自分の能力について説明したアルケナ。彼女はさらに続けて、
「けど…さすがはアクセル…ハァ…私の奥の手も通用しないなんて…ハァ…。」
自分の能力を、自分の奥の手をあっさりと突破されたのに、特に残念な表情を見せないアルケナ。しかし、本当は残念だし、悔しくもある。
ただ、もう表情を面に出す力さえもアルケナには残っていないのだ。遠のく意識をなんとか保ち、軋む頭の痛みをなんとか我慢して、アルケナはまだ反撃できるのではないかと伺っている。
「──チッ」と、アクセルが舌打ちしたと思うと、アクセルは足を肩幅に開いて、
「ふざけてんじャねェぞ!!クソガキがァ!!!!」
そう吠え、激昴する。アクセルは憤りを露わにし、アルケナの方へ向かっていく。
もちろん、アルケナは逃げるための体力など残っていないためその場に倒れているだけ。
アクセルはアルケナの下に歩み寄り、アルケナをボールを蹴り飛ばすかのような勢いで蹴った。
打ち上げられたアルケナは先ほど同様、受け身を取れずに地面に叩き付けられる。
「こんなことしたくもねェのによォ!!不良に喧嘩売られるわこんなクソガキに喧嘩売られるわでタダでさえ苛立ってるのによォ!!それでも正々堂々相手してやッてるッてのにその喧嘩売ッてきた奴が暗殺を企むのかァ!!ふざけんじャねェぞォ!!!!」
怒りを露わにし、アルケナを見下しそう言う。確かにアルケナの戦法は卑怯だったかもしれない。しかし、そうでもしないとこの異様なオーラを放つ男には勝てないだろう。
誰も抗うことができないほどの圧倒的な能力を持つ男。一体どういう力が働いているのか。あるいは何属性の魔法を使っているのか。もしくはそういう有効魔法なのか。
これ程にまでボロボロにされているのに、まだこの青年の力の正体が分からない。
「おい。何か言ッたらどうだァ?」
アクセルはアルケナをボールのように蹴り転がしている。
声を出そうと口を開くと出てくるのは血だけ。否、血すらも出ない程にアルケナの体は血が激減していた。
アルケナが装っている純白のローブや、アルケナの可愛らしい顔、アルケナの小さくも美しい手は血と泥で汚れている。
自分という存在の儚さ、自分の無力さ、自分の脆さ、愚かさ、情けなさ。そんな自分に対する悔しさや、恨み、悲しみや、怒り。広がるばかりのキズの痛み、体中から血が無くなる苦しさ。
そんな色んな感情がアルケナの心の中でごちゃ混ぜになっている。
気づけばアルケナの瞳には涙が溢れている。アルケナが今感じている感情が全て詰まった雫が頬を伝う。
その雫は皮膚が焼けるかのように熱かった。
「あァ?何泣いてんだ?そんなに痛かッたかァ?」
確かに痛かった。だが、アクセルによる攻撃が痛かった訳ではない。
自分がこうしてこんな強敵と相対することで初めて気づいた自分の弱さが痛かった。
でも、そんな思いも全部涙にして洗い出したから。アルケナは希望を、奇跡を望む。
しかし、今のアルケナには、声を出して助けを求める声も、アクセルに向ける武器も、魔法を使うための体力も無い。
「もういい、楽にしてやるよ。」
アクセルは自分の足を腰の高さまで上げる。
どんなに蹴っても動かず、抗うことも、声を出すこともしないアルケナに呆れたのだろうか。こんな戦いに飽きたのだろうか。どういう心情でその言葉を放ったのか、アルケナにはわからなかった。そんなことを考える思考力すら無かった。
「そうだ、遺言でも言ッとくかァ?」
もしも、ここに通りすがりの人が現れて、警察に通報してくれるなら。もし、ケフェウス聖騎士団の団員が来てくれるなら。もし、今地球に隕石でも降ってきて、世界が滅んでしまうなら。
もし、英雄がいるのなら。
そんなこと起こるはずがないというのはわかっている。バカバカしい考えだということだって自分が一番わかっている。
だけど、何か一つ言葉を残せるのなら。
アルケナは残っている力を精一杯振り絞り、こう言葉を放つ。
「───たすけて……。」
「お前!?アルケナに何やってるんだぁ!!!?」
ある1人の青年の声が、アルケナとアクセルの鼓膜を刺激した。
口や鼻、頭から血を流しながら微笑み、そう自分の能力について説明したアルケナ。彼女はさらに続けて、
「けど…さすがはアクセル…ハァ…私の奥の手も通用しないなんて…ハァ…。」
自分の能力を、自分の奥の手をあっさりと突破されたのに、特に残念な表情を見せないアルケナ。しかし、本当は残念だし、悔しくもある。
ただ、もう表情を面に出す力さえもアルケナには残っていないのだ。遠のく意識をなんとか保ち、軋む頭の痛みをなんとか我慢して、アルケナはまだ反撃できるのではないかと伺っている。
「──チッ」と、アクセルが舌打ちしたと思うと、アクセルは足を肩幅に開いて、
「ふざけてんじャねェぞ!!クソガキがァ!!!!」
そう吠え、激昴する。アクセルは憤りを露わにし、アルケナの方へ向かっていく。
もちろん、アルケナは逃げるための体力など残っていないためその場に倒れているだけ。
アクセルはアルケナの下に歩み寄り、アルケナをボールを蹴り飛ばすかのような勢いで蹴った。
打ち上げられたアルケナは先ほど同様、受け身を取れずに地面に叩き付けられる。
「こんなことしたくもねェのによォ!!不良に喧嘩売られるわこんなクソガキに喧嘩売られるわでタダでさえ苛立ってるのによォ!!それでも正々堂々相手してやッてるッてのにその喧嘩売ッてきた奴が暗殺を企むのかァ!!ふざけんじャねェぞォ!!!!」
怒りを露わにし、アルケナを見下しそう言う。確かにアルケナの戦法は卑怯だったかもしれない。しかし、そうでもしないとこの異様なオーラを放つ男には勝てないだろう。
誰も抗うことができないほどの圧倒的な能力を持つ男。一体どういう力が働いているのか。あるいは何属性の魔法を使っているのか。もしくはそういう有効魔法なのか。
これ程にまでボロボロにされているのに、まだこの青年の力の正体が分からない。
「おい。何か言ッたらどうだァ?」
アクセルはアルケナをボールのように蹴り転がしている。
声を出そうと口を開くと出てくるのは血だけ。否、血すらも出ない程にアルケナの体は血が激減していた。
アルケナが装っている純白のローブや、アルケナの可愛らしい顔、アルケナの小さくも美しい手は血と泥で汚れている。
自分という存在の儚さ、自分の無力さ、自分の脆さ、愚かさ、情けなさ。そんな自分に対する悔しさや、恨み、悲しみや、怒り。広がるばかりのキズの痛み、体中から血が無くなる苦しさ。
そんな色んな感情がアルケナの心の中でごちゃ混ぜになっている。
気づけばアルケナの瞳には涙が溢れている。アルケナが今感じている感情が全て詰まった雫が頬を伝う。
その雫は皮膚が焼けるかのように熱かった。
「あァ?何泣いてんだ?そんなに痛かッたかァ?」
確かに痛かった。だが、アクセルによる攻撃が痛かった訳ではない。
自分がこうしてこんな強敵と相対することで初めて気づいた自分の弱さが痛かった。
でも、そんな思いも全部涙にして洗い出したから。アルケナは希望を、奇跡を望む。
しかし、今のアルケナには、声を出して助けを求める声も、アクセルに向ける武器も、魔法を使うための体力も無い。
「もういい、楽にしてやるよ。」
アクセルは自分の足を腰の高さまで上げる。
どんなに蹴っても動かず、抗うことも、声を出すこともしないアルケナに呆れたのだろうか。こんな戦いに飽きたのだろうか。どういう心情でその言葉を放ったのか、アルケナにはわからなかった。そんなことを考える思考力すら無かった。
「そうだ、遺言でも言ッとくかァ?」
もしも、ここに通りすがりの人が現れて、警察に通報してくれるなら。もし、ケフェウス聖騎士団の団員が来てくれるなら。もし、今地球に隕石でも降ってきて、世界が滅んでしまうなら。
もし、英雄がいるのなら。
そんなこと起こるはずがないというのはわかっている。バカバカしい考えだということだって自分が一番わかっている。
だけど、何か一つ言葉を残せるのなら。
アルケナは残っている力を精一杯振り絞り、こう言葉を放つ。
「───たすけて……。」
「お前!?アルケナに何やってるんだぁ!!!?」
ある1人の青年の声が、アルケナとアクセルの鼓膜を刺激した。
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