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149話 もう、当たった瞬間ホームランて分かりました
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三名の神官位を持つ乙女達の行使した、かなり高レベルな神聖魔法により、完璧な治療を施され、ズタズタの危うい瀕死状態から救われながらも、そのプライドばかりは復活せず、ガックリと意気消沈してうなだれるザバルダストを残し、光の勇者団と老人は再び先程の宴の間。そのそれぞれの席へと舞い戻った。
「はいはい、ユリアさーん!おっ疲れ様でしたーとっ!
ほらほら、アンタの大好きなアップルジュースのお出ましだよー!」
「ユリア、これを見ろ。お前に上等なロールケーキを切ってきたぞ。
うん、クリームもタップリと乗せてきた。さぁ遠慮するな」
と、つい先ほど、毒竜の大巨人との対決を終えたばかりで、今はアン、ビスと一緒になって無邪気にはしゃぐユリアに、どこかぎこちない労(ねぎら)いの言葉と妙な気遣いを示すマリーナとシャンがあった。
「あえっ?な、何ですか?あぁ、どうもありがとうございますー。
エヘヘ、この林檎ジュースには、ちゃーんとレモンが入ってて、とーっても美味しーですー。
ん?あの……マリーナさんもシャンさんもなんで座らないんですかー?
それに、何だか二人とも、ちょーっと怖い顔になってませんかー?」
ライカンの双子姉妹達に挟まれた席にて、上質なる甘味に舌鼓を打ち、なぜか自分とは微妙な距離をとって、そこで腕を組んで仁王立ちする仲間を見上げた。
「ん?い、いや、なぁんでもないですよー!?
アハッ!ドーンドン召し上がって下さいねーユリアさん!」
と、ちんまりとした唇に付いた生クリームを舐める、怪訝なソバカス顔を見下ろすマリーナは、隣のシャンに目配せをし、ユリアとは少し離れた席へと誘(いざ)うのだった。
(しっかしさ、あのチッコイ体のどっこに、あんなオッソロシー戦闘力が収まってんのかねぇ?アタシャまだ信じらんないよ。
あのさ、ヤッパシさ、この娘には、ちょいと口のきき方を考えなきゃなんないのかもねぇ……)
(フフフ……そうかもな。だが心配するな。飽くまでも我等は仲間だ。
だから、あの小さな死神が酒の類いを口にしないよう気を付けてさえいれば、そうそう我々に害が及ぶ事はあるまい。
それにしても、さっきのユリアが披露した、ほぼ無敵の戦闘術とは、同じ勇者戦士として少し嫉妬してしまう程の冴えだったな。
うん、私達も決して今の自分に慢心することなく、あの小さな悪魔に負けないよう、より高みを目指し邁進(まいしん)・精進しないとな……)
と、背の高い二人の美女等は小声で、ヒソヒソとしたやり取りなどを交わしつつ、少し離れた中央テーブルへと歩み、そこに興された好みの酒を手に取り、それぞれ自分の席へと戻った。
さて、その花と美食美酒の盛られた円卓風の大きな中央テーブルでは、白面の中年バラキエルが、正しく苦悶の形相で唸っていた。
「ううむむむ……。やり直しに次ぐやり直しとなってしまい、誠に申し訳御座いません。
しかし、ドラクロワ様……。あ、貴方という御方は……」
と、艶めくメタリックブラウンの紅(べに)の点(とも)った口元押さえては、自らの目の前にVの字型に並んだ、例のエメラルド色の不思議なカード群を悲痛な表情で睨み、懊悩煩悶(おうのうはんもん)するようにして、独り呻(うめ)くのだった。
それにテーブルを挟んで対峙する魔王は、この館で一番豪奢な玉座風の席に仰け反り、いつもとなんら変わらず泰然自若としてはいるものの、好奇と嗜虐性(サド)が多分に入り混じった、ギラギラとした眼で向かいの奇跡の統計学者を見据えていたのである。
「フフフ……。バラキエルよ、どうした?
この俺とは何者で、そして一体どんな能(チカラ)を秘めておるというのだ?
これで、お前がその札(ふだ)の陣を変えるのは六度目だぞ?」
と、バラキエルの特技である、あの驚異的な統計的診断術の結果を催促するドラクロワの眼は、いよいよ獲物に向かう猛虎のごとくに爛々(らんらん)と輝き、その眼力と威圧感とはバラキエルの精神を散々に追い詰め、その額の脂汗の噴出に拍車をかけていたのである。
だが、その傍(かたわ)らの忠臣カミラーは、この無駄に挑発的な主(あるじ)とは対称的に、何かを危惧するかのような、そんなひどく険しい顔で葡萄酒の瓶を抱いていた。
その何かとは無論、正面のバラキエルがうっかりとドラクロワの正体を露呈してしまわぬのでは、と気が気でなかったのだ。
さて、この尋常ならざる大局面となり、今や蛇に睨まれた蛙となったバラキエルだったが、このつい先ほど、光の勇者団の内でも最も影のある女アサシン、そのシャンに統計的診断を持ちかけたのだが、なぜかそれはすげなく固辞された。
だが、鷹揚自若なる男のバラキエルは特にそれを気にした風もなく、ではでは、と、今度は満を持して、団の筆頭ドラクロワへと照準を合わせ、その前へと得意のカードを配したのだった。
だが……である。
「あ、はぁ……はい……」
と、さも苦し気に言うばかりで、今や彼特有の底知れぬ漲(みなぎ)る自信・余裕のようなモノ等は、すっかりと雲散霧消していたのである。
(こ、これは……なんと不可解で怪事たる結果なのだ?
な、何度やっても、この御方の背負われる星とは、この方が既にこの星の絶対統治者であられることを示している……。
そ、そんなバカなっ!!
確かにこのドラクロワ様とは、類い稀なる存在の伝説の光の勇者であられる。
だがしかし、"勇者"とは単なる冒険者を越えた究極の勇士であられるとも、それは決して統治者を指すものではないっ!
それに、どこからどう見ても、二十歳そこそこにしか見えないこの方が、この世界を統(す)べる者な訳などないではないか!
そ、それに……だ……。こ、この御方の相とはなんなのだ!?
これではまるで……まるで、このドラクロワ様とは、善なる救世主たる勇者などではなく、悪の冥王極星、暗黒魔界の覇王ではないか……。
バ、バカな!!私は気でも違えたのだろうか!!?
今宵、先ほど私に取り憑いた醜い邪神の兵士を確かに滅して下さった、この七大女神様達の第一の使徒であられるドラクロワ様を、事もあろうかこの私は、これぞあの魔王にあり!と同定しようというのか……くっ、狂ってる!!
しかし、未だ未だ統計術に未熟な者であった若い頃の私ならいざ知らず、こうして潤沢に統計を集め揃えた今の私が、その人物鑑定を見誤る事などあり得ない、あり得ないのだ……。
フフフ……フフ……この星の闇を永遠に払う伝説の光の勇者が、あの魔王だと?
フッ……なんという事だ、この世にこんな理不尽、いや、こんなバカげた喜劇が他にあるだろうか?)
こうして図らずとも、余りにも大それた、この星の超絶的機密・秘事に触れてしまい、まさに正気を喪わんばかりのバラキエルの心中などはお構いなしに、お気に入りのよく冷えたエール酒でほろ酔いの上機嫌となったマリーナは、空にしたジョッキの取っ手を長い人指し指で引っ掛けて弄(もてあそ)びつつ
「あーん?ちょっとバラキエルサーン!?アンタどーしちまったんだーい?
さっきからさ、何だかズイブンと顔色が悪いじゃないか。
それに、そーんなにグッショリ汗かいちゃってさ。それじゃせっかくの男前が台無しじゃないかー。
んー……あっ!分かったー!
アンタのそのトーケーとか言う特技ってさー、ぜーんぜん魔法なんかじゃない、とかいってたけどさー、実はそれやんのってー、えと……えー……。
あぁ!そーそー!!シュ、シューチューリョクっての!?そっ!その集中力ってーのをスンゴイ使うんじゃないのかい?
んーんー、そっかそっかー!そんでもってソレってさ、ホントは1日にやれる回数みたいなのが決まってんでしょー?
うんうん、さっきから見てるとね、そこのドラクロワだけで、もう何っ回もやってるんだもんねー!?そーりゃ疲れもするよねぇー。
ねぇねぇドラクロワー!このバラキエルサン、何だかホンット必死んなってて可哀想だよー!
ね、ねっ?もうこの辺でカンベンして上げなよー!」
と、図らずともこの場においての最善とも言える助け船を出したのであった。
これに皆は振り返り、汗にまみれて憔悴仕切ったバラキエルの姿を認め、直ぐに賛同し、一様に唸(うな)り、そしてうなずいた。
だが、その中でも闇の貴公子、ドラクロワだけは不敵な笑みを浮かべ
「フフフ……バラキエルよ。今、このマリーナが申したように、お前は本当にその術で消耗したのか?
ウム。ならば無理はせず、今日のところはそれくらいにしておけ。
フフフ……まぁこの俺は、お前に診断・指導されるまでもなく、これからも全身全霊で以(もっ)て七大女神達により託された、悪の根絶・撤廃という重大なる使命を全うするのみだ(棒読み)」
そう満足そうに宣(のたま)い、仮住まいの館に引き上げようとしたその時。
「はい、御気遣い下さり感謝いたします。
ですが、ですが、不肖私バラキエル!伝説の勇者様に六度もお手間をとらせて、厚かましくもしつこく鑑定を重ねておきながら、それで何もお伝え出来ぬのは余りに惨め!また情けのうございます!
ですから、今宵はせめて、せめてドラクロワ様の背負われておいでの星、それだけでも明らかにさせて下さい!!」
と、正に命を振り絞るようにして嘆願したのだった。
これに皆は「なんで星だけ?」と、この男の何とも不自然な情調と物言いに怪訝な顔となって、次いでドラクロワの白い美貌に目を向けた。
だが、この必死なるバラキエルに応える魔王の言とは
「ウム。苦しうない。では存分に申せ」
という、いつも通りの冷厳とした、極めて端的なる承認許可のみであった。
これにバラキエルは額の汗を拭い
「はっ!では謹んで申し上げます!
ドラクロワ様の星とは……」
ここでなぜか、世にも美しい女児にしか見えない吸血姫が左の腕、そのフリルの袖のボタンを解除し、そこを一気に捲(まく)り上げた。
果たしてバラキエルが答える。
「では、失礼を承知で申し上げます!ドラクロワ様の星とは、冥王の極星!
いえ、天の罰を覚悟で申し上げますれば!正確には"悪の大凶冥王極星"にあられます!!」
そう叫んだ男の顔は、ひどく歪んだ解放感に満ちており、まさに神に叛(そむ)いた大罪者のそれであったという。
「フフフ……フフ……ハハ……フハハハハーッ!!
何だとぉ!?この俺が悪の大凶冥王極星だとー!?
ハハハハハ!!フハハハハー!!アーッハッハッハー!!!
ムホホホー!!これこれバラキエルよ!戯れ言もいい加減にせぬかー!!
フハハハハー!!こ、この伝説の光の勇者たる俺をつかまえて、言うに事欠いて、悪の大凶冥王極星とな!?
フフハハ……フハハハハー!!貴様ぁ気は確かか!?
んーこらこら!寝言は寝て言わぬかー!!全く!戯れにも、そのような罰当たりなことをぬかすでないわぁ!!
フハハハハー!!ウームウムウム。この俺がもう少し頭の固い、狭量生真面目なる性分の男であったならば、とうにお前の首などは飛んでおるぞー!!?
アハハハハー!!アーッハッハッハー!!
これこれ、カミラーよ!お前までなんだ!?
フホホホホッ!!そんなもの、そのように殊更に掲げずともよいわぁ!
フフハハハー!!んあー!お前達ときたら、この俺をどこまで笑わせれば気が済むのだぁ!!?
全く、こんの痴れ者共がぁー!」
と、傍らにて神妙なる顔つきで屹立したカミラー。
その上腕に確かに画かれた、燦然と輝く"大凶冥王極星ドラクロワ様万歳!!"の文字列を見ては指差し、大いに仰け反ったのである。
こうしてこの夜、バラキエルの娼館"フリュース・デュ・マル(悪の華)"から全ての葡萄酒が消えたという。
「はいはい、ユリアさーん!おっ疲れ様でしたーとっ!
ほらほら、アンタの大好きなアップルジュースのお出ましだよー!」
「ユリア、これを見ろ。お前に上等なロールケーキを切ってきたぞ。
うん、クリームもタップリと乗せてきた。さぁ遠慮するな」
と、つい先ほど、毒竜の大巨人との対決を終えたばかりで、今はアン、ビスと一緒になって無邪気にはしゃぐユリアに、どこかぎこちない労(ねぎら)いの言葉と妙な気遣いを示すマリーナとシャンがあった。
「あえっ?な、何ですか?あぁ、どうもありがとうございますー。
エヘヘ、この林檎ジュースには、ちゃーんとレモンが入ってて、とーっても美味しーですー。
ん?あの……マリーナさんもシャンさんもなんで座らないんですかー?
それに、何だか二人とも、ちょーっと怖い顔になってませんかー?」
ライカンの双子姉妹達に挟まれた席にて、上質なる甘味に舌鼓を打ち、なぜか自分とは微妙な距離をとって、そこで腕を組んで仁王立ちする仲間を見上げた。
「ん?い、いや、なぁんでもないですよー!?
アハッ!ドーンドン召し上がって下さいねーユリアさん!」
と、ちんまりとした唇に付いた生クリームを舐める、怪訝なソバカス顔を見下ろすマリーナは、隣のシャンに目配せをし、ユリアとは少し離れた席へと誘(いざ)うのだった。
(しっかしさ、あのチッコイ体のどっこに、あんなオッソロシー戦闘力が収まってんのかねぇ?アタシャまだ信じらんないよ。
あのさ、ヤッパシさ、この娘には、ちょいと口のきき方を考えなきゃなんないのかもねぇ……)
(フフフ……そうかもな。だが心配するな。飽くまでも我等は仲間だ。
だから、あの小さな死神が酒の類いを口にしないよう気を付けてさえいれば、そうそう我々に害が及ぶ事はあるまい。
それにしても、さっきのユリアが披露した、ほぼ無敵の戦闘術とは、同じ勇者戦士として少し嫉妬してしまう程の冴えだったな。
うん、私達も決して今の自分に慢心することなく、あの小さな悪魔に負けないよう、より高みを目指し邁進(まいしん)・精進しないとな……)
と、背の高い二人の美女等は小声で、ヒソヒソとしたやり取りなどを交わしつつ、少し離れた中央テーブルへと歩み、そこに興された好みの酒を手に取り、それぞれ自分の席へと戻った。
さて、その花と美食美酒の盛られた円卓風の大きな中央テーブルでは、白面の中年バラキエルが、正しく苦悶の形相で唸っていた。
「ううむむむ……。やり直しに次ぐやり直しとなってしまい、誠に申し訳御座いません。
しかし、ドラクロワ様……。あ、貴方という御方は……」
と、艶めくメタリックブラウンの紅(べに)の点(とも)った口元押さえては、自らの目の前にVの字型に並んだ、例のエメラルド色の不思議なカード群を悲痛な表情で睨み、懊悩煩悶(おうのうはんもん)するようにして、独り呻(うめ)くのだった。
それにテーブルを挟んで対峙する魔王は、この館で一番豪奢な玉座風の席に仰け反り、いつもとなんら変わらず泰然自若としてはいるものの、好奇と嗜虐性(サド)が多分に入り混じった、ギラギラとした眼で向かいの奇跡の統計学者を見据えていたのである。
「フフフ……。バラキエルよ、どうした?
この俺とは何者で、そして一体どんな能(チカラ)を秘めておるというのだ?
これで、お前がその札(ふだ)の陣を変えるのは六度目だぞ?」
と、バラキエルの特技である、あの驚異的な統計的診断術の結果を催促するドラクロワの眼は、いよいよ獲物に向かう猛虎のごとくに爛々(らんらん)と輝き、その眼力と威圧感とはバラキエルの精神を散々に追い詰め、その額の脂汗の噴出に拍車をかけていたのである。
だが、その傍(かたわ)らの忠臣カミラーは、この無駄に挑発的な主(あるじ)とは対称的に、何かを危惧するかのような、そんなひどく険しい顔で葡萄酒の瓶を抱いていた。
その何かとは無論、正面のバラキエルがうっかりとドラクロワの正体を露呈してしまわぬのでは、と気が気でなかったのだ。
さて、この尋常ならざる大局面となり、今や蛇に睨まれた蛙となったバラキエルだったが、このつい先ほど、光の勇者団の内でも最も影のある女アサシン、そのシャンに統計的診断を持ちかけたのだが、なぜかそれはすげなく固辞された。
だが、鷹揚自若なる男のバラキエルは特にそれを気にした風もなく、ではでは、と、今度は満を持して、団の筆頭ドラクロワへと照準を合わせ、その前へと得意のカードを配したのだった。
だが……である。
「あ、はぁ……はい……」
と、さも苦し気に言うばかりで、今や彼特有の底知れぬ漲(みなぎ)る自信・余裕のようなモノ等は、すっかりと雲散霧消していたのである。
(こ、これは……なんと不可解で怪事たる結果なのだ?
な、何度やっても、この御方の背負われる星とは、この方が既にこの星の絶対統治者であられることを示している……。
そ、そんなバカなっ!!
確かにこのドラクロワ様とは、類い稀なる存在の伝説の光の勇者であられる。
だがしかし、"勇者"とは単なる冒険者を越えた究極の勇士であられるとも、それは決して統治者を指すものではないっ!
それに、どこからどう見ても、二十歳そこそこにしか見えないこの方が、この世界を統(す)べる者な訳などないではないか!
そ、それに……だ……。こ、この御方の相とはなんなのだ!?
これではまるで……まるで、このドラクロワ様とは、善なる救世主たる勇者などではなく、悪の冥王極星、暗黒魔界の覇王ではないか……。
バ、バカな!!私は気でも違えたのだろうか!!?
今宵、先ほど私に取り憑いた醜い邪神の兵士を確かに滅して下さった、この七大女神様達の第一の使徒であられるドラクロワ様を、事もあろうかこの私は、これぞあの魔王にあり!と同定しようというのか……くっ、狂ってる!!
しかし、未だ未だ統計術に未熟な者であった若い頃の私ならいざ知らず、こうして潤沢に統計を集め揃えた今の私が、その人物鑑定を見誤る事などあり得ない、あり得ないのだ……。
フフフ……フフ……この星の闇を永遠に払う伝説の光の勇者が、あの魔王だと?
フッ……なんという事だ、この世にこんな理不尽、いや、こんなバカげた喜劇が他にあるだろうか?)
こうして図らずとも、余りにも大それた、この星の超絶的機密・秘事に触れてしまい、まさに正気を喪わんばかりのバラキエルの心中などはお構いなしに、お気に入りのよく冷えたエール酒でほろ酔いの上機嫌となったマリーナは、空にしたジョッキの取っ手を長い人指し指で引っ掛けて弄(もてあそ)びつつ
「あーん?ちょっとバラキエルサーン!?アンタどーしちまったんだーい?
さっきからさ、何だかズイブンと顔色が悪いじゃないか。
それに、そーんなにグッショリ汗かいちゃってさ。それじゃせっかくの男前が台無しじゃないかー。
んー……あっ!分かったー!
アンタのそのトーケーとか言う特技ってさー、ぜーんぜん魔法なんかじゃない、とかいってたけどさー、実はそれやんのってー、えと……えー……。
あぁ!そーそー!!シュ、シューチューリョクっての!?そっ!その集中力ってーのをスンゴイ使うんじゃないのかい?
んーんー、そっかそっかー!そんでもってソレってさ、ホントは1日にやれる回数みたいなのが決まってんでしょー?
うんうん、さっきから見てるとね、そこのドラクロワだけで、もう何っ回もやってるんだもんねー!?そーりゃ疲れもするよねぇー。
ねぇねぇドラクロワー!このバラキエルサン、何だかホンット必死んなってて可哀想だよー!
ね、ねっ?もうこの辺でカンベンして上げなよー!」
と、図らずともこの場においての最善とも言える助け船を出したのであった。
これに皆は振り返り、汗にまみれて憔悴仕切ったバラキエルの姿を認め、直ぐに賛同し、一様に唸(うな)り、そしてうなずいた。
だが、その中でも闇の貴公子、ドラクロワだけは不敵な笑みを浮かべ
「フフフ……バラキエルよ。今、このマリーナが申したように、お前は本当にその術で消耗したのか?
ウム。ならば無理はせず、今日のところはそれくらいにしておけ。
フフフ……まぁこの俺は、お前に診断・指導されるまでもなく、これからも全身全霊で以(もっ)て七大女神達により託された、悪の根絶・撤廃という重大なる使命を全うするのみだ(棒読み)」
そう満足そうに宣(のたま)い、仮住まいの館に引き上げようとしたその時。
「はい、御気遣い下さり感謝いたします。
ですが、ですが、不肖私バラキエル!伝説の勇者様に六度もお手間をとらせて、厚かましくもしつこく鑑定を重ねておきながら、それで何もお伝え出来ぬのは余りに惨め!また情けのうございます!
ですから、今宵はせめて、せめてドラクロワ様の背負われておいでの星、それだけでも明らかにさせて下さい!!」
と、正に命を振り絞るようにして嘆願したのだった。
これに皆は「なんで星だけ?」と、この男の何とも不自然な情調と物言いに怪訝な顔となって、次いでドラクロワの白い美貌に目を向けた。
だが、この必死なるバラキエルに応える魔王の言とは
「ウム。苦しうない。では存分に申せ」
という、いつも通りの冷厳とした、極めて端的なる承認許可のみであった。
これにバラキエルは額の汗を拭い
「はっ!では謹んで申し上げます!
ドラクロワ様の星とは……」
ここでなぜか、世にも美しい女児にしか見えない吸血姫が左の腕、そのフリルの袖のボタンを解除し、そこを一気に捲(まく)り上げた。
果たしてバラキエルが答える。
「では、失礼を承知で申し上げます!ドラクロワ様の星とは、冥王の極星!
いえ、天の罰を覚悟で申し上げますれば!正確には"悪の大凶冥王極星"にあられます!!」
そう叫んだ男の顔は、ひどく歪んだ解放感に満ちており、まさに神に叛(そむ)いた大罪者のそれであったという。
「フフフ……フフ……ハハ……フハハハハーッ!!
何だとぉ!?この俺が悪の大凶冥王極星だとー!?
ハハハハハ!!フハハハハー!!アーッハッハッハー!!!
ムホホホー!!これこれバラキエルよ!戯れ言もいい加減にせぬかー!!
フハハハハー!!こ、この伝説の光の勇者たる俺をつかまえて、言うに事欠いて、悪の大凶冥王極星とな!?
フフハハ……フハハハハー!!貴様ぁ気は確かか!?
んーこらこら!寝言は寝て言わぬかー!!全く!戯れにも、そのような罰当たりなことをぬかすでないわぁ!!
フハハハハー!!ウームウムウム。この俺がもう少し頭の固い、狭量生真面目なる性分の男であったならば、とうにお前の首などは飛んでおるぞー!!?
アハハハハー!!アーッハッハッハー!!
これこれ、カミラーよ!お前までなんだ!?
フホホホホッ!!そんなもの、そのように殊更に掲げずともよいわぁ!
フフハハハー!!んあー!お前達ときたら、この俺をどこまで笑わせれば気が済むのだぁ!!?
全く、こんの痴れ者共がぁー!」
と、傍らにて神妙なる顔つきで屹立したカミラー。
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しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。
「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」
ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。
その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。
一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。
「ノエル! 戻ってきてくれ!」
「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」
これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
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