ヒーリングファクター搭載の最強農民~首斬り猫左が異世界でも狩りまくります~

有角 弾正

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4話 鎖鎌ください

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 俺はなんかとんでもねぇことをやらかした【下手人】みたいに何人もの男達に囲まれ、八方から鋭い槍の先を突き付けられた。

「痛ぇッ!」

 その槍の一本がほんの指の先ほどだが、俺の背中にズッと刺さった。

「うるさいっ!いいから黙って歩け!」

「少しでもおかしな動きを見せやがったら、容赦なくブスリといくぜ!」

 いや、もうちょいときてるから……と言いたかったが、そのままろくに話すことも許されないで、ガキから年寄りまで、妙な格好の村民が怖々と見送る中をしばらく歩かされた。

 くそッ!これじゃいいみせもんじゃねぇか。

 ◇

 そうして、その行進は大きな変な形の木造の建物の前で止まった。

 俺がそれを見上げて立ち止まると、多分槍の【石突き】《持ち手側の先》だろうが、そいつでドンッと背中が突かれた。

「コラッ!止まるな!入れ!!」

「痛ぇっての!んなに乱暴にしなくてもいいんじゃねぇか?俺がなにやったってぇんだ?」

 さすがにムカッときて、文句を言って中に入った。

 そして、そのどう見ても【蔵】とかなんかじゃなく、なんとなく人の住む家らしい物の奥へ奥へと通されると、あるデッカイ部屋に着いた。

 そこには難しい顔の年寄り達が五、六人くらい集まっていて、みんな俺を親の仇(かたき)みてぇに睨んできた。

「ふん。コイツか。勝手に【贄】を祠から連れ出したヤツは」

「はい村長。どうやらこの辺の者じゃないようで、服装も変わったものを着ていますし、言葉にも変な【なまり】があります」

 おいおい、変な着物はお前らだろーが。

「どうしますか村長。この村を含めた地域で【贄】が逃亡したのはこれで三度目です。黒龍騎士団は三度やったらすべての村を焼くと……」

「そうだ!確か五年前にも隣村の【贄】の育て親がつい可哀想になって連れ出したことがあった……あれが二度目だ」


「ふうむ……こいつは参った。これでは五つの村々が明日には滅ぶ……。どうすればいいのだ?」
 一番肥(ふと)った爺様が脂ぎった禿げ頭を抱えた。

 俺は黙って聞いていたが――

「なんだいなんだい。ここ国の男はみんな気が小せぇんだな」

 呆れて言うと、みんながムッとした殺気に満ちた目で刺すように睨んできやがった。

 だが、俺は構わず続けてやった。

「その【黒龍】なんとかいう奴等の兵の数は幾らだ?そんな簡単に村を焼くようなひでぇ悪党なら、俺が片っぱしから狩ってやろうじゃねぇか!」

 俺の【啖呵(たんか)】に爺様達と槍持ち達は一斉に顔を上げ、お互いの顔を見てから真っ赤になって怒鳴り出した。

「だ、黙れ若造ッ!!」

「こんなときに、よくもそんなくだらん冗談が言えるなっ!!?」

「そもそも、すべてはお前の気まぐれで無責任な行動のせいなんだぞっ!!」

「強力な【魔族】の黒龍騎士団をキノコみたいにポコポコ狩れるなら、こんなに苦労せんわッ!!」

「いや、良いかも知れん!コイツの首をはねてから黒龍騎士団に差し出そう!そうすれば幾らか隊長の溜飲が下がるかも知れん!!」

「そうだ!そうだ!やっちまえっ!!」

 おーうるせぇ。そんなに怒鳴り散らす威勢と元気があんなら、黒龍なんとか相手にとっとと戦でもなんでもやれよなー。

「皆、黙らんかっ!!」

 おっ。村長の爺様か。

「コイツはどこか遠い土地から来た放浪の若者で、【リズ】が中で縛られてるのを発見して、つい憐れに思って行動しただけだ」

 へぇ、さすがは村長だ。鶴の一声ってやつか。みーんな黙っちまったぞ。

「それより、【慟哭(どうこく)の祠(ほこら)】の入り口で【贄】の見張りをするべき者が早めに引き上げた方が問題だ」

 見張りだと?
 そんな役のヤツは見てねぇな。あぁ、きっとあのにわか雨のせいだな。

「あのよ、また怒鳴られるかも知んねぇが、ちょいと俺の話も聞いてくれ。そこの村長さんが言ったように、俺にはこれっぽつちも悪気はなかったんだ」

 うへぇっ。みんなスゲェ睨み方だな。

「こう言っても信じちゃもらえねぇだろうが、俺は戦にはちょいと自信があって、そこらの腕自慢の【兵法者(へいほうしゃ)】くらいなら楽に狩ってみせるぜ。そうだな、よく切れる草刈り鎌、それに鎖と分銅が付いてるものがありゃ文句ねぇ、」

「君、少し黙っていなさい……。こうなってしまってはもう、君ひとりが生きる死ぬの問題ではないのだよ……」

 その村長の声は意外なほどに穏やかで優しく、俺はつい黙ってしまった。

「こうなってしまっては、どこまでやれるか分からんが、この老いぼれの命を差し出すつもりで、黒龍騎士団の【ノクターン隊長】に必死で許しを請うてみようと思う……」

「村長っ!」

「や、止めてください!!ノクターンはまともに話の通じる相手じゃありません!」

「そうですよ!もっと、もっとよい解決策があるはずです!!みんなで話し合いましょう!」

「そうじゃ。リズを献上するのはもちろんのこと、来年からは年に二人の【贄】を差し出すことを誓ってみてはどうじゃ?」

 俺は最後の年寄りの言葉に呆れ果て、なんだか急に馬鹿馬鹿しくなって、さっき入ってきた、おかしな開け方をする扉に歩いた。

「村長……。優しいあんたは俺のせいじゃないと言ってくれたが、俺はそうは思わない。くどいようだが、俺がその【のくたーん】とやらの首を狩って、こんな馬鹿げた【人身御供】なんか今年で終いにしてやらぁ」

 後ろで槍持ち達が動く気配がしたが、俺は構わず出ていった。
 うん。確か……さっきはこれを握ってこう捻ってたよな。

 おかしな造りの戸を開けると、あのガキみてぇな女【りず】と、そのおっ母とおっ父みてぇな二人が泣き腫らした顔で突っ立ってた。

 そのリズのおっ母が俺の前に倒れるみてぇに土下座して、ゴツンと床が鳴った。

「あ、あの……ほ、本当に不謹慎で自分勝手なのは承知ですが……。あの……リ、リズを、リズを助けていただいて、あ……あ、ありがとうございましたぁー!!私……この子が帰ってきて……ほ、本当に……ほんとうに……うぐぅうう――」

 リズのおっ母さんよ……もういいぜ。

 確かに俺という人間は、あの殿様が言った通り【野良犬】みてぇで、ろくな志しも【侍魂】もなく、只只、貧しい家族を養う金欲しさに戦に出る【鬼畜外道】だ。

 だが、そんな俺でも【黒龍騎士団】とやらだけは許せねぇ。
 必ず【鏖殺(みなごろし)】にしてやろうと心に決めた。
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