宇宙最強の三人が異世界で暴れます。

有角 弾正

文字の大きさ
2 / 18

1話 銀の男

しおりを挟む
 銀河を駆け巡り、悪辣な星の支配者達を狩る、大義賊団「シルバーチップ」のアジト。

 その空母内。
大食堂は嬌声と笑い、強烈なビートの音楽に満ちていた。

 雑然とソファが並び、100名ほどの屈強な男達が皆一人に付き、二人は若い女を脇にはべらせている。


 女の香水、シャンパンの薫り、タバコのどギツい臭いが渾然一体。
正しく、狂乱の場と化していた。


 天井の巨大な黄金鏡の照明が眩しく輝き、銃創まみれの壁に弾けている。


 群衆の中央には、階段付きの直径5メートルほどの円形の台座、そこの真ん中に玉座が置かれていた。

 その玉座傍ら、左目が人工的な赤に光る、傷面の男が鉛色の右手を上げると、潮が退くように音楽、群衆が静まった。


 傷男は一息吸い込むと
「よーし!てめぇら!今日はよくやった!
ガルダーのヤツの間抜け顔は最高だったぜ!

 これで俺達シルバーチップの、銀河奴隷商人狩りは、丁度100だぁ!

 てめーら!こーいう時ぁ!ヤッパ、お頭からのお褒めの言葉と、ア レ が欲しいだろ?」

 問いかけに爆発音じみた、男達の叫ぶ声が応える。


 傷面は玉座に一礼する。

 
 深々と座っていた銀髪のロングコートの美男子は、よせよせと軽く手を上げ
「はぁー。お前、ホントそーゆの好きなのな?」

 言いながらウンザリ顔で、よっこらしょっと立ち上がる。

 そして革のハットを押さえ、シャンパングラスを傷面に向ける。

 それは空であった。


 傷面は「すいやせん、気付かねーで。」
そこへ金色のシャンパンを溢れるように注ぐ。


 銀髪は軽くうなずき
「よーし!てめぇら!今日はホントよくやったな!
首100だからって訳じゃねーが、たまにゃーアレ、やっとくか?!」


 また男達は熱狂、雄叫びを上げる。
男100人が、傍らの女達へ耳打ちする。

 えっ?という顔の女は少ない。


 銀髪は首をならし、人差し指を立て
「俺達が許せねえのはー?!」

 男達「悪党!!」

 銀髪「女の熟れ頃はー?!」

 男達「17!!」

 銀髪「宇宙最強の男は誰だー?!」


 男達「ムラマサー!!」


 銀髪のお頭、ムラマサは満足気にうなずき
「よーし!立て!!」

 言われる前に立ち上がる男達。

 女達もお互いに顔を見合わせ、シャンパン片手に、お祭り気分で立ち上がる。


 ムラマサはグラスを掲げ
「よし!飲め!!」


 一斉にシャンパンを飲み干す400人。


 これはパーティーでよくある、ただのイッキ飲み、ではなかった。

 何故か全員がゲップしながら、空のグラスを掲げ続けている。

 そう、400人全員が全員だ。

 そしてグラスを掲げた二の腕と、空いた方の手の指で、それぞれ左右、耳栓をする。

 その大集団の、不思議な立ち姿は異様であった。

 静まり返る大食堂……。


 ムラマサは台座から部下等を見下ろし
「入んねーよーにはするが、一応、目ぇ閉じとけ……。」

 いつの間にか魔法のように、ムラマサの両手には、長大な銀のオートマチック拳銃が握られていた。


 突然、銀髪の美男は何を思ったか、舞うように右回転!
そして何と、両の手の銃を乱射する!

 すわ大量殺戮か?!

 違う。

 何と、その二丁の銀のオートマチックは、部下、女達の手先の400器のシャンパングラスだけを、それだけを精確に撃ち抜いてゆく!

 何という神業か!

 黒いロングコートを翻し、踊るように撃ちまくる銀髪は、ろくに標的も見ていない!
 
 身体を捻り、のけ反り、正に撃ちまくった。
床に跳ねる薬莢の雨。

 金属音が美しい。

 銀の銃身は、瞬く間に先から灼熱し、焼けた鉄の赤に変わる。

 正に炎のバレットダンスである。


 十数秒後、ムラマサは煙が上る拳銃を、片方を天井へ、もう片方を床へと、大見得を切って美しい舞を終了させた。


 何とこの男、無駄な弾は一発も撃っていなかった……。

 恐るべき銃の腕であった。

 しかし、マガジンの交換もなく、400もの弾は、一体どこから……?

 
 シャンパングラスを貫通した弾丸は、壁に飾ってあった、額入りの賞金首ガルダーの絵の額(ひたい)も見事に撃ち抜いていた。

 それがガタン!と傾くや、カーンと床に落ちた。


 それを合図に大義賊団は拍手喝采。
男達は叫び、女達は嬌声を爆発させた。


 ムラマサが黒のハットを押さえ、手を上げると、再び群衆はシンとなる。


 「以上。後は、死ぬまで飲め。」


 また熱狂し、騒ぐ男と女達。

 大食堂には、大音響で新たな曲が流れ、400人の声と合わさり、大きな渦となってゆく。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...