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第1話 推しの死亡
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「椿、忙しいのに、わざわざ来てくれてありがとね。元気だった?久しぶりだよね」
「うん、元気だよ。それより、ローズこそ…どう…?結婚生活は…」
「うん…まぁ…うん、普通に暮らしてる…よ」
ローズは儚げにニコッと笑う。
嘘だ。
私は知っている。ローズがこの結婚生活に辟易していることを。そして絶望していることも。小説で読んでいるときは、ローズの場面が出てくるたびに、胸が痛んで悲しかったんだから。
◇◇
ある日ネットで、すごくのめり込むよ!ぜひ読んで!ってバズった小説があって、私も流行にのって買ったんだよね。
よくある恋愛ものだったんだけれど、確かに難しくもなくて手軽に読み進められるし、ベッドに寝転がって読んでたの。
だけど、仕事終わりなのもあってか、読んでる途中で時々寝落ちしちゃってて、ハッ!!て起きてまた続き読むんだけどまた寝ちゃって…を繰り返していて。
それで次に目を覚ましたら、よくある異世界転生、私は読んでいた小説の中に転生していたの。
ええっ…本当にこんなことあるんだ…?て思ったのも束の間、そういえば、私はなんのキャラクターに!?と思ったら…
まさかの、椿という令嬢のキャラクターだったの。小説の中では長い黒髪で美人でスタイルも出るところは出て抜群にいいし、性格も良かったし、まあ、そんなことはさておき。
実は、椿になれてラッキー!!!って思ったの。その理由は、私の最推しである令嬢、ローズと椿が親友だってこと!
ローズは優しくて可愛くて、そして謙虚で品があって。
現実にこんな子がいたら、絶対友達になりたいって思ってたら、まさか、ローズと私が、親友の関係になれるなんて…夢みたい…!
私は椿に転生してすっごく嬉しかった理由は、これ。
ローズは、本当にすごくいい子で、小説の中では誰よりも幸せになって欲しかったキャラクターだった。
そう、本当に幸せになって欲しかったんだけど…だけど…。
今、隣で日傘をさして歩いているローズの顔は暗い。
今日は結婚したローズのお宅へ、遊びに行くため、道の途中でローズと待ち合わせをしたのだ。
「…ローズ、珍しいね、馬車に乗らないで歩こうなんて…。私達、昔はよく馬車に乗って移動してたじゃない…?」
「あ…!…うん、そうだよね、ごめんね…。たまには歩きたいな、って思って…もしかして椿、足痛い?大丈夫…?」
ローズが心配そうに私の顔を見つめる。
目を大きく開けてじっとこちらを見つめ、不安そうにしている様子は、本当に心の底から心配しているのが伝わる。
「大丈夫だよ。私、歩くの大好きだから。一緒にのんびり行こう」
私はウィンクしてニコッと笑うと、ローズはホッとしたように微笑む。
(可愛いい…!)
こんな訳ありの空気の中でも、ローズの笑顔にキュンとする私。こんな至近距離で笑顔を見ることができて、胸の中でガッツポーズをする。
でも、私は知っている。
なぜローズが、馬車を使わないのか。
ローズは名だたる中でもかなり有名な公爵家出身で、馬車を使わないなど、絶対的に日常ではありえない、高級な生活をしていた。
そんなローズが、自分の邸宅へ行くのに馬車を使わないと言うなど、おかしな話だ。
だが、小説を読んだので、私は知っている。
夫のいる邸宅に帰るのが嫌だからだ。
馬車を使えば、早く邸宅に着いてしまう。
ローズは夫のいる邸宅に帰るのを、嫌がっていた。話をするのすら、嫌がっていたようだった。
日傘で陰になっているのもあいまってか、邸宅に近づくにつれ、ローズの表情はどんどんと白く気分が悪そうになっているように見える。
(こっちの世界に転生して、やっっと私の推しのローズに会えたっていうのに、こんな顔をさせてるのは寂しいな…)
椿は悲しくなり歩きながら自分の足元に視線を落としていると、ローズかか細い声を出す。
「あ…着いたわ…」
ローズが指差した先には、広くもなく狭くもなく、かといって豪勢でもなくといった、邸宅の中でいえば、ごく普通の邸宅があった。
家の前に着き、ローズが扉を開ける。
「ママー!おかえりなさーい!」
扉を開けるとエントランスで待ち構えてたのか、ローズの可愛い子どもが2人走ってきてローズに抱きつく。
可愛い男の子と女の子。確か、まだ幼かったはず。
「ただいま。2人とも、聞いて。こちらにいるのは、ママの大切なお友達なのよ。椿さんていうの。2人は会うのは初めてでしょう。ちゃんと、こんにちはってご挨拶して」
「こんにちは」
ローズに促されて、少し恥ずかしそうに顔をクシャッとさせて挨拶する2人。
「はい、こんにちは!可愛いーーー!」
推しのローズの美貌を受け継いでいる2人は、幼いながらに既に容姿端麗で可愛すぎる。
椿は子ども2人にお土産に、と持ってきたクッキーを渡していると、奥から男性がきた。
「あっ、椿さん、お久しぶりです。いらっしゃい」
奴だ。
私の推しのローズの不幸の元凶。モーネ男爵。
パッと見、人相の良さそうな顔に大きな目。
だが、見た目の体型はというと、突き出ている腹に、どこもかしこも、ゆるゆると脂肪を蓄えた太った体。
「こんにちは。ご無沙汰しております」
外面よくニコニコしたが、心の中では反吐が出そうな気持ちだった。
そんな私の気持ちなど、つゆほども知らないモーネ男爵は、笑顔で話しかけてくる。
「向こうの客間にコーヒーやお菓子など用意してますので、良かったらローズとどうぞ」
「ありがとうございます」
作り笑いで答えた後、ローズの顔をチラッと見ると、ローズは無理やり口角をあげ、節目がちに下を向き私とモーネ男爵の話を黙って聞いていた。ローズの両手は、しがみ付く子供達に当てられている。
「2人とも、こっちに来なさい。パパと遊ぼう」
モーネ男爵が声をかけると、子供2人とも、はーい、と言い男爵の方へ駆け寄り、3人は奥の階段を上り消えていった。
ローズはそんな3人の姿を、ぼーっと見つめた後、私の方を振り返り、力なく微笑む。
「さぁ、コーヒー飲みに行きましょ」
実は、小説はこの辺りからは寝落ちしてしまって、この先の展開はまだ知らない。
客間に行った私とローズは、たわいも無い話で盛り上がった。先ほどまで沈んでいたローズも、たくさん笑っていて、この時間をとても楽しんでいた。そう、楽しんでいた、楽しんだはず、と私は思っていた。
なのに、その夜、ローズが邸宅から身を投げ死亡したとの電報を受け取ったのは、翌朝のことだった。
「えっ……?今なんて…?ローズが亡くなっ…た…?」
朝起きたばかりの私は、侍女からまさかの話を聞かされ、私はその場で固まる。
私の推しのローズが死亡…?昨日、あんなに楽しそうに話したのに…?嘘でしょ…?
頭が真っ白になり、そのまま体全身の力が抜け、何も考えられなくなった私は、ゆっくりと後ろに倒れていく。
「椿お嬢様!!」
叫ぶ侍女の声を遠くに聞きながら、私はショックに静かに目を閉じる。
「うん、元気だよ。それより、ローズこそ…どう…?結婚生活は…」
「うん…まぁ…うん、普通に暮らしてる…よ」
ローズは儚げにニコッと笑う。
嘘だ。
私は知っている。ローズがこの結婚生活に辟易していることを。そして絶望していることも。小説で読んでいるときは、ローズの場面が出てくるたびに、胸が痛んで悲しかったんだから。
◇◇
ある日ネットで、すごくのめり込むよ!ぜひ読んで!ってバズった小説があって、私も流行にのって買ったんだよね。
よくある恋愛ものだったんだけれど、確かに難しくもなくて手軽に読み進められるし、ベッドに寝転がって読んでたの。
だけど、仕事終わりなのもあってか、読んでる途中で時々寝落ちしちゃってて、ハッ!!て起きてまた続き読むんだけどまた寝ちゃって…を繰り返していて。
それで次に目を覚ましたら、よくある異世界転生、私は読んでいた小説の中に転生していたの。
ええっ…本当にこんなことあるんだ…?て思ったのも束の間、そういえば、私はなんのキャラクターに!?と思ったら…
まさかの、椿という令嬢のキャラクターだったの。小説の中では長い黒髪で美人でスタイルも出るところは出て抜群にいいし、性格も良かったし、まあ、そんなことはさておき。
実は、椿になれてラッキー!!!って思ったの。その理由は、私の最推しである令嬢、ローズと椿が親友だってこと!
ローズは優しくて可愛くて、そして謙虚で品があって。
現実にこんな子がいたら、絶対友達になりたいって思ってたら、まさか、ローズと私が、親友の関係になれるなんて…夢みたい…!
私は椿に転生してすっごく嬉しかった理由は、これ。
ローズは、本当にすごくいい子で、小説の中では誰よりも幸せになって欲しかったキャラクターだった。
そう、本当に幸せになって欲しかったんだけど…だけど…。
今、隣で日傘をさして歩いているローズの顔は暗い。
今日は結婚したローズのお宅へ、遊びに行くため、道の途中でローズと待ち合わせをしたのだ。
「…ローズ、珍しいね、馬車に乗らないで歩こうなんて…。私達、昔はよく馬車に乗って移動してたじゃない…?」
「あ…!…うん、そうだよね、ごめんね…。たまには歩きたいな、って思って…もしかして椿、足痛い?大丈夫…?」
ローズが心配そうに私の顔を見つめる。
目を大きく開けてじっとこちらを見つめ、不安そうにしている様子は、本当に心の底から心配しているのが伝わる。
「大丈夫だよ。私、歩くの大好きだから。一緒にのんびり行こう」
私はウィンクしてニコッと笑うと、ローズはホッとしたように微笑む。
(可愛いい…!)
こんな訳ありの空気の中でも、ローズの笑顔にキュンとする私。こんな至近距離で笑顔を見ることができて、胸の中でガッツポーズをする。
でも、私は知っている。
なぜローズが、馬車を使わないのか。
ローズは名だたる中でもかなり有名な公爵家出身で、馬車を使わないなど、絶対的に日常ではありえない、高級な生活をしていた。
そんなローズが、自分の邸宅へ行くのに馬車を使わないと言うなど、おかしな話だ。
だが、小説を読んだので、私は知っている。
夫のいる邸宅に帰るのが嫌だからだ。
馬車を使えば、早く邸宅に着いてしまう。
ローズは夫のいる邸宅に帰るのを、嫌がっていた。話をするのすら、嫌がっていたようだった。
日傘で陰になっているのもあいまってか、邸宅に近づくにつれ、ローズの表情はどんどんと白く気分が悪そうになっているように見える。
(こっちの世界に転生して、やっっと私の推しのローズに会えたっていうのに、こんな顔をさせてるのは寂しいな…)
椿は悲しくなり歩きながら自分の足元に視線を落としていると、ローズかか細い声を出す。
「あ…着いたわ…」
ローズが指差した先には、広くもなく狭くもなく、かといって豪勢でもなくといった、邸宅の中でいえば、ごく普通の邸宅があった。
家の前に着き、ローズが扉を開ける。
「ママー!おかえりなさーい!」
扉を開けるとエントランスで待ち構えてたのか、ローズの可愛い子どもが2人走ってきてローズに抱きつく。
可愛い男の子と女の子。確か、まだ幼かったはず。
「ただいま。2人とも、聞いて。こちらにいるのは、ママの大切なお友達なのよ。椿さんていうの。2人は会うのは初めてでしょう。ちゃんと、こんにちはってご挨拶して」
「こんにちは」
ローズに促されて、少し恥ずかしそうに顔をクシャッとさせて挨拶する2人。
「はい、こんにちは!可愛いーーー!」
推しのローズの美貌を受け継いでいる2人は、幼いながらに既に容姿端麗で可愛すぎる。
椿は子ども2人にお土産に、と持ってきたクッキーを渡していると、奥から男性がきた。
「あっ、椿さん、お久しぶりです。いらっしゃい」
奴だ。
私の推しのローズの不幸の元凶。モーネ男爵。
パッと見、人相の良さそうな顔に大きな目。
だが、見た目の体型はというと、突き出ている腹に、どこもかしこも、ゆるゆると脂肪を蓄えた太った体。
「こんにちは。ご無沙汰しております」
外面よくニコニコしたが、心の中では反吐が出そうな気持ちだった。
そんな私の気持ちなど、つゆほども知らないモーネ男爵は、笑顔で話しかけてくる。
「向こうの客間にコーヒーやお菓子など用意してますので、良かったらローズとどうぞ」
「ありがとうございます」
作り笑いで答えた後、ローズの顔をチラッと見ると、ローズは無理やり口角をあげ、節目がちに下を向き私とモーネ男爵の話を黙って聞いていた。ローズの両手は、しがみ付く子供達に当てられている。
「2人とも、こっちに来なさい。パパと遊ぼう」
モーネ男爵が声をかけると、子供2人とも、はーい、と言い男爵の方へ駆け寄り、3人は奥の階段を上り消えていった。
ローズはそんな3人の姿を、ぼーっと見つめた後、私の方を振り返り、力なく微笑む。
「さぁ、コーヒー飲みに行きましょ」
実は、小説はこの辺りからは寝落ちしてしまって、この先の展開はまだ知らない。
客間に行った私とローズは、たわいも無い話で盛り上がった。先ほどまで沈んでいたローズも、たくさん笑っていて、この時間をとても楽しんでいた。そう、楽しんでいた、楽しんだはず、と私は思っていた。
なのに、その夜、ローズが邸宅から身を投げ死亡したとの電報を受け取ったのは、翌朝のことだった。
「えっ……?今なんて…?ローズが亡くなっ…た…?」
朝起きたばかりの私は、侍女からまさかの話を聞かされ、私はその場で固まる。
私の推しのローズが死亡…?昨日、あんなに楽しそうに話したのに…?嘘でしょ…?
頭が真っ白になり、そのまま体全身の力が抜け、何も考えられなくなった私は、ゆっくりと後ろに倒れていく。
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