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第29話 能力開示の覚悟
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「少し落ち着いた?」
フリージアの濡れた頬を、指でそっとなぞるファビウスは、優しく澄んだ眼差しでフリージアを見つめる。
「うん。ありがとう…。でも、本当奇跡ね、今日、国王様が私達を呼んでくださらなければ、あなたに会えなかったもの」
「あぁ、それは…演奏会は、実は私が計画したんだ。フリージアが約束の日に現れなかった日から、どうにか会えるための口実をつくろうと考えていてね」
フリージアは一瞬驚いたが、すぐに優しい眼差しでファビウスを見つめる。
「ありがとう。ファビウスが行動してくれなければ、私は一生あの家から出られなかったかもしれない…」
「一生…?」
ファビウスは眉間に皺を寄せ、硬い表情になる。フリージアは暗い表情で俯き、自分の太ももの上にのせた手を、黙ったまま見つめる。
「あの、お2人ともお話中ごめんなさいね。ねぇフリージアさん、私にさっき話してくれたことを、彼にも全て伝える方がいいと思うわ」
マリア夫人が、フリージアの後ろから控えめに声をかける。
「あなたは…」
「マスターの昔からの友人であり、フリージアお嬢さまとも知り合いの、ただのおせっかいな未亡人です」
茶目っ気たっぷりにファビウスにそう答えるマリア夫人に、マスターも楽しそうに笑う。
ファビウスは、マスターとマリア夫人の仲良さ気な雰囲気に和んだが、すぐにフリージアに向き直り真剣な眼差しを向ける。
「…フリージア、話して欲しい。今まで何があったのか。どんなことであっても、私は君への気持ちは変わらない」
フリージアは、ファビウスの言葉に瞳を潤ませ彼を見つめ返すと、大きなファビウスの手を握り、ポツリポツリと話し始めた。
◇◇◇
「——わかった。それなら、これから私と共に城へ戻ろう。今後、シード家に戻る必要はない。今日から、私と城で一緒に暮らせばいい」
「…えっ…でも…国王様や王妃様が私を連れ帰るなど、納得されないのでは…それに…」
フリージアは、ファビウスの耳元に口を近付ける。
「私がシード家にいたくない理由に関係する、この能力のことも話さないと…国王様方にはご納得いただけないのでは…?」
「…君は、話しても構わないのか?」
ファビウスは、フリージアの顔を恍惚の表情で見つめ、手の甲で頬を優しく撫でる。
「…いいわ…。それによって、私自身を非難しようと、罰しようと、私は全てを受け入れるわ。——私は、それだけのことをしてしまったのだから」
(父の指示とはいえ、黙って王族に効果をかけた私を、国王様が黙って見過ごすとは思えない…これを機に、もうファビウスと二度と会えなくなるかもしれない。それでも——)
フリージアは強い眼差しで、ファビウスの目を見つめる。
「——君の決意は分かった。今から城へ戻り、そのまますぐに父上の元へ向かおう」
ファビウスがフリージアの手を掴み、フリージアを椅子からおろすと、互いに手を繋ぎ見つめ合う。
「話すことで、辛い思いをするかもしれない。でも、私はフリージアの味方で、君を絶対に守る。それだけは、信じていて欲しい」
「ありがとう。ファビウスのことを信じてる」
フリージアはファビウスの手をギュッと握りしめ、優しい笑顔を見せると、ファビウスは何も言わずフリージアを抱きしめ、優しく体から離した。
マスターとマリア夫人は、2人の様子を静かに見守っていたが、夫人は椅子からおりるとフリージアの側に、そっと歩み寄る。
「頑張って。きっと国王様も、フリージアさんの話を聞けば、事情を分かってくださるわ。フリージアさんは、とても優しい心の持ち主だから」
「いえ、私は…」
フリージアが首を左右に振ると、マリア夫人は優しくフリージアの手を握った。
「演奏をしてくれた日、去り際に病気の父の手を優しく握ってくれたじゃない。ああいうことができるのは、本当に優しい性格な人だけよ」
マリア夫人の微笑みに、フリージアは涙を浮かべゆっくりと頷く。
ファビウスは、優しい笑顔で2人の様子を見守っていた。
「行こう、フリージア」
真剣な表情になったファビウスがフリージアの腰に腕を伸ばし、フリージアは彼と共に王城へ向かった。
フリージアの濡れた頬を、指でそっとなぞるファビウスは、優しく澄んだ眼差しでフリージアを見つめる。
「うん。ありがとう…。でも、本当奇跡ね、今日、国王様が私達を呼んでくださらなければ、あなたに会えなかったもの」
「あぁ、それは…演奏会は、実は私が計画したんだ。フリージアが約束の日に現れなかった日から、どうにか会えるための口実をつくろうと考えていてね」
フリージアは一瞬驚いたが、すぐに優しい眼差しでファビウスを見つめる。
「ありがとう。ファビウスが行動してくれなければ、私は一生あの家から出られなかったかもしれない…」
「一生…?」
ファビウスは眉間に皺を寄せ、硬い表情になる。フリージアは暗い表情で俯き、自分の太ももの上にのせた手を、黙ったまま見つめる。
「あの、お2人ともお話中ごめんなさいね。ねぇフリージアさん、私にさっき話してくれたことを、彼にも全て伝える方がいいと思うわ」
マリア夫人が、フリージアの後ろから控えめに声をかける。
「あなたは…」
「マスターの昔からの友人であり、フリージアお嬢さまとも知り合いの、ただのおせっかいな未亡人です」
茶目っ気たっぷりにファビウスにそう答えるマリア夫人に、マスターも楽しそうに笑う。
ファビウスは、マスターとマリア夫人の仲良さ気な雰囲気に和んだが、すぐにフリージアに向き直り真剣な眼差しを向ける。
「…フリージア、話して欲しい。今まで何があったのか。どんなことであっても、私は君への気持ちは変わらない」
フリージアは、ファビウスの言葉に瞳を潤ませ彼を見つめ返すと、大きなファビウスの手を握り、ポツリポツリと話し始めた。
◇◇◇
「——わかった。それなら、これから私と共に城へ戻ろう。今後、シード家に戻る必要はない。今日から、私と城で一緒に暮らせばいい」
「…えっ…でも…国王様や王妃様が私を連れ帰るなど、納得されないのでは…それに…」
フリージアは、ファビウスの耳元に口を近付ける。
「私がシード家にいたくない理由に関係する、この能力のことも話さないと…国王様方にはご納得いただけないのでは…?」
「…君は、話しても構わないのか?」
ファビウスは、フリージアの顔を恍惚の表情で見つめ、手の甲で頬を優しく撫でる。
「…いいわ…。それによって、私自身を非難しようと、罰しようと、私は全てを受け入れるわ。——私は、それだけのことをしてしまったのだから」
(父の指示とはいえ、黙って王族に効果をかけた私を、国王様が黙って見過ごすとは思えない…これを機に、もうファビウスと二度と会えなくなるかもしれない。それでも——)
フリージアは強い眼差しで、ファビウスの目を見つめる。
「——君の決意は分かった。今から城へ戻り、そのまますぐに父上の元へ向かおう」
ファビウスがフリージアの手を掴み、フリージアを椅子からおろすと、互いに手を繋ぎ見つめ合う。
「話すことで、辛い思いをするかもしれない。でも、私はフリージアの味方で、君を絶対に守る。それだけは、信じていて欲しい」
「ありがとう。ファビウスのことを信じてる」
フリージアはファビウスの手をギュッと握りしめ、優しい笑顔を見せると、ファビウスは何も言わずフリージアを抱きしめ、優しく体から離した。
マスターとマリア夫人は、2人の様子を静かに見守っていたが、夫人は椅子からおりるとフリージアの側に、そっと歩み寄る。
「頑張って。きっと国王様も、フリージアさんの話を聞けば、事情を分かってくださるわ。フリージアさんは、とても優しい心の持ち主だから」
「いえ、私は…」
フリージアが首を左右に振ると、マリア夫人は優しくフリージアの手を握った。
「演奏をしてくれた日、去り際に病気の父の手を優しく握ってくれたじゃない。ああいうことができるのは、本当に優しい性格な人だけよ」
マリア夫人の微笑みに、フリージアは涙を浮かべゆっくりと頷く。
ファビウスは、優しい笑顔で2人の様子を見守っていた。
「行こう、フリージア」
真剣な表情になったファビウスがフリージアの腰に腕を伸ばし、フリージアは彼と共に王城へ向かった。
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