4 / 30
第4話 ウィン公爵からの依頼
しおりを挟む
「フリージア~どこに行っていたの。心配したじゃない」
フリージアが屋敷に帰りウィッグを脱いでポールに掛けていると、昼寝から目覚めたのだろうダリアが一目散にフリージアに抱きついてきた。
「ごめん、ごめん。ちょっと気晴らしに街を散歩していたの。何かあったの?」
フリージアの肩に顔を埋めるダリアの頭を、フリージアは優しく触れる。
ダリアの髪の毛は金髪で、そしてストレートでサラサラと綺麗だ。
女性なら、誰でも憧れる髪の毛質だ。
「さっきね、急な依頼があったの。だけど、フリージアがいなかったから、曲の選択とか、そういうのがうまく提案できなくて…」
どうやらフリージアが街へ出ている間に、依頼者が屋敷を訪れ演奏をお願いしてきたらしい。
依頼をする際は、事前に手紙なりまたは従者を送るなどして、まずはアポイントを取りそのあと依頼という流れなのだが、今回は突然やってきてすぐに依頼をしてきたようだ。
そうすると困るのは、ダリアの方だ。
依頼を受ける場合、当日演奏する曲目などは全てフリージアが提案し、依頼者と相談して決めている。
人々の間では、ステージに出て人前で演奏するのはダリア(実際はフリで、本当に弾いているのはフリージアなのだが)で、裏方で準備を進めるのがフリージア、という認識だ。
総じてダリアは音楽にそこまで詳しいわけではないため、急に依頼者が来られると対応できないのだ。
「ごめんなさい。不在にしていて。それで、今回はどんな依頼だったの?」
「隣の領地のウィン公爵からだったんだけれど、今週末が子どもの誕生日らしいの。それで、子どもが健やかに育ちますように、って願いをこめて演奏をお願いしたいって…」
「今週末?そんな急に…。今週末は私達予定は…」
「無かったの。空いていたわ。急だし断ろうと思ったんだけれど、色々と曲のことについて詰めてくるから、私分からないのバレたくなくて…話をすぐに終えるために受けちゃったの。まずは、フリージアと計画してまたご連絡しますって、取り繕って早々に帰すのに精一杯だったわ…」
本来ならば、依頼から当日までは数週間もらう。その間に、依頼者との取り決めや、依頼者側、そしてフリージア、ダリア側の準備、それからピアノの練習、そして他の依頼との並行準備…と、時間が必要なのだ。
しかし、曲が分からないと言えず、ダリアがその場を凌ぐのがどんなに大変だっただろうかと思いはかり、依頼を受けたダリアを責める気にはならなかった。
「分かったわ。そうしたら、明日私がウィン公爵のお屋敷を訪ねてみるわ。曲目や、当日どのようにしたいか、もう一度聞いてみる」
「ありがとう~!私も一緒に行きたいんだけれど、ウィン公爵、今日の私の対応でなんだか訝しがっていて…ごめんね」
「大丈夫よ、1人で行ってくるから私に任せて」
「ありがとうフリージア…大好きっ!」
もう一度ギュッと抱きついてくるダリアの背中を、フリージアは優しく撫でる。
ダリアは美しい見目もそうだが、無邪気さと感情表現が素直なところが魅力で、実際そんなダリアのことを秘かに想っている男性は多い。
(急に忙しくなっちゃったわ。今日演奏を聞いた3人がまたあのお店に来るだろうから、そのときにまた、演奏効果をかけたかったんだけど…)
今日行ったグランドピアノの店に、明日も行こうと考えていたのだが、明日行けるかどうかは分からなくなってしまい、残念な気持ちになってしまう。
(ファビウスさんにも、また演奏するって約束しちゃったのにな…)
「どうしたの?フリージア」
考え込むようなフリージアの顔を見て、ダリアが心配する。
「ううん!なんでもないわ。それより、今日いらしたウィン公爵が話したことを、詳しく教えて」
◇◇◇
翌朝、フリージアは早々に朝食を済ませると、早くウィン公爵家へ出発しようと身なりを整える。
身の回りの支度をしてくれる使用人はいるが、フリージアは幼い頃の習慣で自分でしてしまう。
(うん、いいわね)
依頼内容は子どもの誕生日ということだったので、子どもにも明るく優しい印象にうつるであろう、淡い黄色のドレスを選んだ。
準備も整ったので、馬車に乗るため屋敷を出ようとしたときだった。
「フリージア、待ちなさい」
父親であるシード公爵に、背後から声をかけられた。
「ダリアから聞いたが、ウィン公爵の所へ行くそうだな…。気をつけて行ってきなさい」
「ありがとうございます。お父様」
シード公爵はフリージアを養子縁組しているため実の父親ではなく、仲睦まじい家族のような関係ではないが、フリージアを気にかけてくれているのは確かで、外出する際には声をかけてくれることが多い。ダリアがいなくても、だ。
「ウィン公爵は、私も古くから知っていてな…彼は優秀なやつだったんだが、…彼は昔からこうと決めたことについては譲らない所があってな…。まぁ、そういうブレない資質も彼の良さではあったんだが…」
「そうなのです…ね」
(難しい相手ってことを、伝えたいのかしら)
父親からの話を、フリージアはどう捉えたらいいのか分からなかった。
本当の親子のような関係なら、きっともっとズケズケと思っていることを聞けるのだろう。例えば、ハッキリ言ってください、それじゃ分かりません、とか。何か忠告したいのなら、そう言ってください、とか。
でも、フリージアは言葉を呑み込み、父親の話の続きがあるのかだけを気にして、向かい合い立っていた。
「…急な依頼だそうだが、うまく契約をとってきなさい」
「わかりました」
(なんだ、私のことを心配していたのかと思ったのに、契約の心配か…)
自分のことを心配したのかと思っていたフリージアは、がっかりしてしまった。
「それでは、行ってまいります」
フリージアは父親の顔を見ずに、馬車の方へと急ぐ。
「フリージア~!!」
朝食の途中なのだろう、首元にナフキンをつけたダリアが慌てたように出てきた。
「いってらっしゃい!よろしくねっ!それから、気をつけてね!」
キラキラした笑顔で、手を振るダリア。
ダリアの横に立っていた父親は、そんなダリアを見て大きく口を開けて笑っている。
そんな2人の様子を、フリージアは走り去る馬車の中から見ていた。
◇◇◇
馬車が着いたウィン公爵家は、フリージアの屋敷より広く大きな屋敷だった。
数日後に行う子どもの誕生日会の準備のためだろうか、馬車の窓から見える外の様子は、使用人がせわしなく庭で作業をしていたり、屋敷を出たり入ったりしていた。
馬車のドアが開き、フリージアが降りようとすると、そこには知らない青年が立っていた。
金髪に綺麗な目、だがどこか鋭く知的な雰囲気をまとった人だ。
「シード公爵家からいらした方ですね」
「はい、フリージアと申します。本日はウィン公爵様と、お子様の誕生日会のお打合せをと参りました」
「先日は急に訪問しまして、申し訳ありませんでした。お部屋をご案内します」
(執事の方かしら…?)
フリージアは手を差し伸べる青年の手の上に自分の手をのせ、馬車を降りる。
青年に案内された部屋へ行くと、使用人らしき何人もの人を集め、難しい顔をして指示を出す男性がいた。
おそらく、彼がウィン公爵だ。
彼はフリージアに気付くと、驚いたようにフリージアの顔をしばらく見つめた後、使用人達にこの部屋から出ていくようジェスチャーで示す。
「…これはこれは…。本日は遠くから申し訳ありません。シード公爵はお元気かな?」
「はい、おかげさまで元気にしております。私は娘のフリージアと申します。昨日はせっかくいらしていただいたにも関わらず、計画がその場で立てられず申し訳ありませんでした」
(ウィン公爵は昨日いらしたのに、お父様にはお会いしなかったのかしら?)
不思議に思いながらも、フリージアはドレスの裾をふわりと掴みお辞儀をする。
フリージアが顔をあげると、ウィン公爵は涙を浮かべフリージアを見ていた。
「……?」
ウィン公爵の表情にフリージアがたじろぐと、横にいた青年が口を開く。
「父上、フリージア嬢が困っていますよ」
(えっ…?!父上…?!)
フリージアは驚いて隣に立つ青年を見上げると、青年はフリージアに向けて控えめに微笑む。
「申し遅れました。私はウィン家長男のクラウスといいます」
「あっ…!顔を存じておらず…申し訳ありません…!先ほどは、馬車からこちらまでご丁寧に案内していただきまして、ありがとうございました…!」
フリージアは慌ててお礼をする。
「いえいえ、そんな気にする必要はありませんよ」
困ったように笑うクラウスは、言葉の通り、本当に気にしていないようだった。
「クラウス…お前が直々に出迎えたのか…?執事にでも任せておけばいいものを、うちの格が落ちるだろうが」
「すみません」
「全く、余計なことを…あぁあ、フリージア嬢、ずっと立ったままですみません。こちらで誕生日会当日の話をしましょう」
促されて椅子に座るフリージアだったが、クラウスの顔をチラっと確認する。
父親からあんな風に言われても、クラウスは冷静に表情を崩していなかった。
「あの公爵様、それで…、お子様の誕生日会ということですが、それはこちらのクラウス卿のでしょうか…」
「んん…あっはっはっはっは!…違いますよ。こんないい歳した男の誕生日会など今更しません。違います、下の子の方です。ほら、ロードこちらに来なさい」
ウィン公爵はフリージアの背後に向かって声をかけ手招きすると、5~6歳くらいだろうか小さい男の子が駆け寄ってきた。
「この子の誕生日会ですよ」
そう言うと、ウィン公爵はロードと呼んだ男の子に頬擦りをし抱きしめる。
フリージアは、ウィン公爵のクラウスとロードに対する扱いの違いに、まるで自分とダリアのように感じられた。
自分の横に立つクラウスが気になり、そっと顔を見上げるも、クラウスは動じず2人の様子を眺めているだけだった。
フリージアが屋敷に帰りウィッグを脱いでポールに掛けていると、昼寝から目覚めたのだろうダリアが一目散にフリージアに抱きついてきた。
「ごめん、ごめん。ちょっと気晴らしに街を散歩していたの。何かあったの?」
フリージアの肩に顔を埋めるダリアの頭を、フリージアは優しく触れる。
ダリアの髪の毛は金髪で、そしてストレートでサラサラと綺麗だ。
女性なら、誰でも憧れる髪の毛質だ。
「さっきね、急な依頼があったの。だけど、フリージアがいなかったから、曲の選択とか、そういうのがうまく提案できなくて…」
どうやらフリージアが街へ出ている間に、依頼者が屋敷を訪れ演奏をお願いしてきたらしい。
依頼をする際は、事前に手紙なりまたは従者を送るなどして、まずはアポイントを取りそのあと依頼という流れなのだが、今回は突然やってきてすぐに依頼をしてきたようだ。
そうすると困るのは、ダリアの方だ。
依頼を受ける場合、当日演奏する曲目などは全てフリージアが提案し、依頼者と相談して決めている。
人々の間では、ステージに出て人前で演奏するのはダリア(実際はフリで、本当に弾いているのはフリージアなのだが)で、裏方で準備を進めるのがフリージア、という認識だ。
総じてダリアは音楽にそこまで詳しいわけではないため、急に依頼者が来られると対応できないのだ。
「ごめんなさい。不在にしていて。それで、今回はどんな依頼だったの?」
「隣の領地のウィン公爵からだったんだけれど、今週末が子どもの誕生日らしいの。それで、子どもが健やかに育ちますように、って願いをこめて演奏をお願いしたいって…」
「今週末?そんな急に…。今週末は私達予定は…」
「無かったの。空いていたわ。急だし断ろうと思ったんだけれど、色々と曲のことについて詰めてくるから、私分からないのバレたくなくて…話をすぐに終えるために受けちゃったの。まずは、フリージアと計画してまたご連絡しますって、取り繕って早々に帰すのに精一杯だったわ…」
本来ならば、依頼から当日までは数週間もらう。その間に、依頼者との取り決めや、依頼者側、そしてフリージア、ダリア側の準備、それからピアノの練習、そして他の依頼との並行準備…と、時間が必要なのだ。
しかし、曲が分からないと言えず、ダリアがその場を凌ぐのがどんなに大変だっただろうかと思いはかり、依頼を受けたダリアを責める気にはならなかった。
「分かったわ。そうしたら、明日私がウィン公爵のお屋敷を訪ねてみるわ。曲目や、当日どのようにしたいか、もう一度聞いてみる」
「ありがとう~!私も一緒に行きたいんだけれど、ウィン公爵、今日の私の対応でなんだか訝しがっていて…ごめんね」
「大丈夫よ、1人で行ってくるから私に任せて」
「ありがとうフリージア…大好きっ!」
もう一度ギュッと抱きついてくるダリアの背中を、フリージアは優しく撫でる。
ダリアは美しい見目もそうだが、無邪気さと感情表現が素直なところが魅力で、実際そんなダリアのことを秘かに想っている男性は多い。
(急に忙しくなっちゃったわ。今日演奏を聞いた3人がまたあのお店に来るだろうから、そのときにまた、演奏効果をかけたかったんだけど…)
今日行ったグランドピアノの店に、明日も行こうと考えていたのだが、明日行けるかどうかは分からなくなってしまい、残念な気持ちになってしまう。
(ファビウスさんにも、また演奏するって約束しちゃったのにな…)
「どうしたの?フリージア」
考え込むようなフリージアの顔を見て、ダリアが心配する。
「ううん!なんでもないわ。それより、今日いらしたウィン公爵が話したことを、詳しく教えて」
◇◇◇
翌朝、フリージアは早々に朝食を済ませると、早くウィン公爵家へ出発しようと身なりを整える。
身の回りの支度をしてくれる使用人はいるが、フリージアは幼い頃の習慣で自分でしてしまう。
(うん、いいわね)
依頼内容は子どもの誕生日ということだったので、子どもにも明るく優しい印象にうつるであろう、淡い黄色のドレスを選んだ。
準備も整ったので、馬車に乗るため屋敷を出ようとしたときだった。
「フリージア、待ちなさい」
父親であるシード公爵に、背後から声をかけられた。
「ダリアから聞いたが、ウィン公爵の所へ行くそうだな…。気をつけて行ってきなさい」
「ありがとうございます。お父様」
シード公爵はフリージアを養子縁組しているため実の父親ではなく、仲睦まじい家族のような関係ではないが、フリージアを気にかけてくれているのは確かで、外出する際には声をかけてくれることが多い。ダリアがいなくても、だ。
「ウィン公爵は、私も古くから知っていてな…彼は優秀なやつだったんだが、…彼は昔からこうと決めたことについては譲らない所があってな…。まぁ、そういうブレない資質も彼の良さではあったんだが…」
「そうなのです…ね」
(難しい相手ってことを、伝えたいのかしら)
父親からの話を、フリージアはどう捉えたらいいのか分からなかった。
本当の親子のような関係なら、きっともっとズケズケと思っていることを聞けるのだろう。例えば、ハッキリ言ってください、それじゃ分かりません、とか。何か忠告したいのなら、そう言ってください、とか。
でも、フリージアは言葉を呑み込み、父親の話の続きがあるのかだけを気にして、向かい合い立っていた。
「…急な依頼だそうだが、うまく契約をとってきなさい」
「わかりました」
(なんだ、私のことを心配していたのかと思ったのに、契約の心配か…)
自分のことを心配したのかと思っていたフリージアは、がっかりしてしまった。
「それでは、行ってまいります」
フリージアは父親の顔を見ずに、馬車の方へと急ぐ。
「フリージア~!!」
朝食の途中なのだろう、首元にナフキンをつけたダリアが慌てたように出てきた。
「いってらっしゃい!よろしくねっ!それから、気をつけてね!」
キラキラした笑顔で、手を振るダリア。
ダリアの横に立っていた父親は、そんなダリアを見て大きく口を開けて笑っている。
そんな2人の様子を、フリージアは走り去る馬車の中から見ていた。
◇◇◇
馬車が着いたウィン公爵家は、フリージアの屋敷より広く大きな屋敷だった。
数日後に行う子どもの誕生日会の準備のためだろうか、馬車の窓から見える外の様子は、使用人がせわしなく庭で作業をしていたり、屋敷を出たり入ったりしていた。
馬車のドアが開き、フリージアが降りようとすると、そこには知らない青年が立っていた。
金髪に綺麗な目、だがどこか鋭く知的な雰囲気をまとった人だ。
「シード公爵家からいらした方ですね」
「はい、フリージアと申します。本日はウィン公爵様と、お子様の誕生日会のお打合せをと参りました」
「先日は急に訪問しまして、申し訳ありませんでした。お部屋をご案内します」
(執事の方かしら…?)
フリージアは手を差し伸べる青年の手の上に自分の手をのせ、馬車を降りる。
青年に案内された部屋へ行くと、使用人らしき何人もの人を集め、難しい顔をして指示を出す男性がいた。
おそらく、彼がウィン公爵だ。
彼はフリージアに気付くと、驚いたようにフリージアの顔をしばらく見つめた後、使用人達にこの部屋から出ていくようジェスチャーで示す。
「…これはこれは…。本日は遠くから申し訳ありません。シード公爵はお元気かな?」
「はい、おかげさまで元気にしております。私は娘のフリージアと申します。昨日はせっかくいらしていただいたにも関わらず、計画がその場で立てられず申し訳ありませんでした」
(ウィン公爵は昨日いらしたのに、お父様にはお会いしなかったのかしら?)
不思議に思いながらも、フリージアはドレスの裾をふわりと掴みお辞儀をする。
フリージアが顔をあげると、ウィン公爵は涙を浮かべフリージアを見ていた。
「……?」
ウィン公爵の表情にフリージアがたじろぐと、横にいた青年が口を開く。
「父上、フリージア嬢が困っていますよ」
(えっ…?!父上…?!)
フリージアは驚いて隣に立つ青年を見上げると、青年はフリージアに向けて控えめに微笑む。
「申し遅れました。私はウィン家長男のクラウスといいます」
「あっ…!顔を存じておらず…申し訳ありません…!先ほどは、馬車からこちらまでご丁寧に案内していただきまして、ありがとうございました…!」
フリージアは慌ててお礼をする。
「いえいえ、そんな気にする必要はありませんよ」
困ったように笑うクラウスは、言葉の通り、本当に気にしていないようだった。
「クラウス…お前が直々に出迎えたのか…?執事にでも任せておけばいいものを、うちの格が落ちるだろうが」
「すみません」
「全く、余計なことを…あぁあ、フリージア嬢、ずっと立ったままですみません。こちらで誕生日会当日の話をしましょう」
促されて椅子に座るフリージアだったが、クラウスの顔をチラっと確認する。
父親からあんな風に言われても、クラウスは冷静に表情を崩していなかった。
「あの公爵様、それで…、お子様の誕生日会ということですが、それはこちらのクラウス卿のでしょうか…」
「んん…あっはっはっはっは!…違いますよ。こんないい歳した男の誕生日会など今更しません。違います、下の子の方です。ほら、ロードこちらに来なさい」
ウィン公爵はフリージアの背後に向かって声をかけ手招きすると、5~6歳くらいだろうか小さい男の子が駆け寄ってきた。
「この子の誕生日会ですよ」
そう言うと、ウィン公爵はロードと呼んだ男の子に頬擦りをし抱きしめる。
フリージアは、ウィン公爵のクラウスとロードに対する扱いの違いに、まるで自分とダリアのように感じられた。
自分の横に立つクラウスが気になり、そっと顔を見上げるも、クラウスは動じず2人の様子を眺めているだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました
小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」
二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。
第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。
それから二十年。
第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。
なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。
不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。
これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。
※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた
たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。
女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。
そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。
夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。
だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……?
※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません……
※他サイト様にも掲載始めました!
妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付
唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる