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────1・可視交線────
16再会①
しおりを挟むふぅぅ~と、大きな息を吐き出し蒼依は眼鏡を机の上に置くと、そのままボスンとベッドへと前から倒れこんだ。
「疲れたーっ」
溜まったものを吐き出すようにうりうりと額を擦り付けると、柔らかな髪がその度にふわふわっと揺れる。
それに気にすることなく、しばらく気持ちのまま枕に顔を埋めた。
くふぶぅっ、と籠った空気が口から漏れた。
一人になった途端、なにやらこみ上げるものを抑えきれない。こうしていないと落ち着かないとばかりに、ぐりぐり、うりうりと額を擦り付け続ける。
この学園本当どうなってるの? 偏差値高いはずだよね? 有名資産家の息子とかわんさかいるんだよね? なのにあの感じ?
個性的な面々に、熱気。独自の規則。思春期においての圧倒的なパワーは、おおっと尻込みさせるものだ。
──わかるような、わからないような。
蒼依は今度は仰向けになると、うーんと両手両足を放り投げた。
失神者が出たり、通り名のような名前を呼んだりと、不思議な世界に迷い込んでしまったようで、いまだにこれからここで生活することの実感が沸きにくい。
それに、と蒼衣は自分の部屋の扉を見た。
扉の向こう側には、簡易キッチンやシャワールームなどの共同スペースがあり、挟んで反対側にある部屋の主はまだ姿を見せない。
ネームプレートの類もないから、名前もわからない。気になって寮長の南条に聞いてみたが、内緒だって笑って結局教えてもらえなかった。
「何が内緒なんだか……」
楽しそうなあの顔は、余計に不安を煽る。
同室者は昨日から帰ってこないままで、もしかしたら始業式も出ていないのかもしれない。
どんな人か知りたいが勝手に部屋を覗くわけにもいかないし、ただただ不安が募る。
これから一年一緒に過ごす相手だ。
できるなら波長が合う人がいいなぁとは思っているのだけど、いまだに姿を現さないところをみるとその願いは叶わないかもしれない。
何か理由があってなのか。ただのサボりか。それに対して、どこまで関わるのがいいのか……。
人となりを知らなければどうすることもできず、方針も決められず落ち着かない。
「正直、同室者って重要だしすごく気になる」
個性的すぎる面々を目の当たりにして、昨日より心配になってきた。
蒼依はんん~と唇を軽く尖らせ天井をじっと見つめ、深々と息を吐き出した。
ここに来てから感じる気配。
──ずっと、あんまりいい予感がしないんだよね。意思をもって観察されているというか。
そこで蒼依は眉を寄せた。
大雑把でおっとりしているといっても、そこまで鈍くないつもりだ。むしろ、特異な体質のせいで普段と異なった一定以上含ものには敏感だと言っていい。
一歩、部屋の外に出ると感じる視線。
それはいくつもあり、昨日のことも含め、今朝は全校生徒の前で高等部一年首席として代表の挨拶をすれば、視線は集まるもの。
ただの興味か、目的を持っての観察か。
あまりにも多い視線は雑多とし判断はつかず、これといったものがあるわけでもないから動きようもない。
「ま、なるようにしかならないか」
少し考えて、この時間が無駄だと思ったら切り替えるのもいつものこと。
わからぬことを考えるよりも、現実を。
今日は午前中だけで、明日から授業が本格的に始まる。なので、本日の昼からは自由時間。そして、そろそろ昼の栄養補給。
それを意識した途端、くぅぅぅ~と小さくお腹がなる。
「お腹すいた~」
自炊するか、寮の食堂へ行くか、悩むところだ。
自炊するにしても、寮内にあるコンビニで食料調達する必要があり、買い出しから献立を考えるとか今は面倒くさい。
どうせ部屋を出るなら昼は食堂で、そのあとに食料調達をしようと決め、ベッドから降りてカードキーを掴む。
このカードキーは便利で、学園内の食堂やらの支払いも全て行える優れものだ。しかも、特待だとほとんどが無料か安価で購入できる。
ここで生活する上で大事なアイテムのひとつだ。
無くしたら部屋に入れないし、せっかくの待遇も正規の値段となれば懐が痛すぎる。少しでも、負担を減らしたい。
時計を見れば、1時前。混雑のピークは過ぎているだろうと、もう一度眼鏡を掛け直し部屋を出ようとしたその時だった。
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