22 / 38
────1・可視交線────
21注目
しおりを挟むだが、あまりにも注目され過ぎて、えっ、と蒼依の口から戸惑いの声が漏れる。
──見過ぎ!? すっごく見られてるっ!!
確実に自分たちは目立っていた。
明らかに関心を示すいくつもの視線は居心地が悪くて、蒼依は若干視線を下げた。
昨日からちらほら向けられるもの以上のこれは、完全に自分の前を歩く翠のせいでもあるだろう。
高等部の紺と中等部の緑のブレザー。それでいて、翠は中等部会長である。そんな相手と外部生の組み合わせは好奇心をくすぐるようだ。
しかも、ここにきて早々自分はやらかしてしまったし、先ほど全校生徒の前でスピーチをしたばかり。ある意味、注目は仕方がない。
廊下ですれ違ったり出会う度に、皆一度足を止めてこちらを見る視線は完全に好奇心。
ひそひそと、「どうしてあの二人が」とか単純な疑問であったり、「例の抱っこの」とか、耳聡く拾ってしまう。
たまに、「まさかこのカード」、「氷の女王との絡み、美味しすぎる」とか。こっちを見て話す内容にしては意味不明のものも含まれている。
なんだか不安になって、しれっと翠の横に移動する。
翠はどう思っているのだろうとそっと表情をうかがうと、綺麗な顔は真っ直ぐに前を向いており、気にしていなさそうだ。
──まあ、これだけ容姿が整っていたらね。
この学園の風潮を思えばさもありなん。翠からしたら、もう慣れたものなのかもしれない。
蒼依は諦めの苦笑を漏らした。
気にしたら負け、なのだろう。
人の噂は七十五日。そのうち、違うことに興味を持って行かれ刈り取られるものだ。英語圏では『A wonder lasts but nine days』といい、不思議がるのも九日間だけという。
そう思うと短いし、悪意があるわけでもないので放っておくのが一番だ。
「どうしたんですか?」
「ううん」
嘆息したことに気づいた翠が蒼依を見て軽く眉を上げたが、ここで言うようなことでもないので小さく首を振る。
すると、訝しげに蒼依を見ていた翠はそこですっと目を細め、周囲へとちらりと視線をやった。
その際に、ザワッと周囲が更に騒ついたが、そのまま何事もなかったかのように淡々と告げる。
「気にしすぎないように。ただし、あまり無警戒なのも問題ですが」
そこで、翠はわずかに身を屈め見極めるように蒼依と視線を合わせると、「おいおいですね」と勝手に話を終わらせ、いつの間にか辿り着いていたエレベーターのボタンを押した。
「人が多そうなので、エレベーターでいきます。こちらは役員と一部の者しか基本使えません。役員は部屋が最上階であることと、仕事も多いからというのが理由です」
「えっ、なら」
「同乗する分には問題ありません。全員使えるとなると同じリズムで動くので人数的にキリがないだけなので。あとは、荷物が多いときとか。怪我で上り下りが辛い者とか。そういった時に使われます」
「へえ」
昨日は南条と普通に乗っていたが、そんな説明はなかった。
その考えが表情に出ていたのだろう、翠がちょっと苦笑した。
「南条先輩は結構大雑把ですから」
「ああ、なるほど」
蒼依は昨日の案内と今朝方のことを思い出し、ひどく納得した。
一通り蒼依を案内した南条は、わからなかったらわからなかった時に聞いてくれと言っていたが、エレベーターの件などは事前に教えていて欲しかった事柄だ。
この分では他にもありそうだと、小さく嘆息する。
下にあったエレベーターが上ってくるのを待っていると、さっきまでざわざわとしていた気配が一気に静かになった。
急な変化を疑問に思うも間もなく、誰かが翠を呼ぶ。
「如月じゃないか。こっちまで来るなんて珍しいな」
二人同時に振り向くと、少し離れたところからひらひらと手を振る男と、もう一人。
翠に声をかけた方は手を振っている方で、黒髪を少し伸ばし襟足を緑に染めた生徒会の会計である桐生先輩だ。低く伸びる声は、静かになった廊下でよく響く。
彼の横には、クラスメイトにプラチナ王子と呼ばれていた見目麗しい生徒会書記の西園寺先輩。
この学園において、生徒会役員は尊敬と憧れの対象だ。それを半日で嫌という程理解した。
通りで周囲が静かになるはずだ。きっと、会話に耳をそばだてているのだろう。
意図せず更なる注目材料の投下に、蒼依は遠い目をした。
3
あなたにおすすめの小説
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
先輩たちの心の声に翻弄されています!
七瀬
BL
人と関わるのが少し苦手な高校1年生・綾瀬遙真(あやせとうま)。
ある日、食堂へ向かう人混みの中で先輩にぶつかった瞬間──彼は「触れた相手の心の声」が聞こえるようになった。
最初に声を拾ってしまったのは、対照的な二人の先輩。
乱暴そうな俺様ヤンキー・不破春樹(ふわはるき)と、爽やかで優しい王子様・橘司(たちばなつかさ)。
見せる顔と心の声の落差に戸惑う遙真。けれど、彼らはなぜか遙真に強い関心を示しはじめる。
****
三作目の投稿になります。三角関係の学園BLですが、なるべくみんなを幸せにして終わりますのでご安心ください。
ご感想・ご指摘など気軽にコメントいただけると嬉しいです‼️
マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー
夏目碧央
BL
強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。
一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる