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7激甘ネジ
抑えきれない想い side翔③
しおりを挟む千幸と彼は同じホームベース。全く関わり合わないということはない。
だから、千幸も気にしていた。だから、小野寺もその関係性を事前に知らされた。
なら、微塵も入る隙がないことを彼氏として、千幸を愛する者として、自分の気持ちを、関係を、今ここではっきりと自分の言葉で告げなければと衝動に駆られる。
「余裕ないんですね」
ふーんと揶揄するでもなく告げられた言葉に、翔はふっと笑って返した。
「そうですね。過去とかどうでもいいんです。千幸が俺の腕の中にいる今、そしてこれからを大事にしたいので、そのためには見栄とかどうでもいいくらい彼女しか見えないんで。なので、幼馴染み以上の接触は遠慮してくださいね。俺、千幸に対しては嫉妬深いみたいなんで」
言い切ると、翔は千幸を見た。やってしまったが悔いはない。
「ごめん。やっぱり抑えられなかった」
「……うん。でも」
「それもわかってる。千幸は俺が好き。俺は千幸が好き。わかっていても彼には面と向かって言っておきたかった」
「……もう」
「格好悪い?」
顔を下に向けてこっちを見ない千幸の顎を掴み、くいっと上げる。
「千幸?」
言葉もなくいやいやと小さく首を振る千幸。いったい、どうしたんだ?
やっぱり格好悪すぎたか。嫉妬を表に出して、相手を牽制するなんて。
「千幸、ごめん。どうしても止められなくて」
「…………」
「誰にも渡したくない。千幸の隣は俺のものだから」
「…………」
こんなことで彼女の自分に対しての評価が簡単に変わるとは思わないが、マイナス印象は好ましくない。
やってしまったかと、戸惑うようにもう一方の手を頬に添えて顔を固定させようとしたら、横で笑う声。
「……ぶふっ。小野寺さん。そろそろやめてあげてください。すっごく照れてますよ?」
あはははっと軽快な笑い声とともに多田にそう言われ、翔は覗き込むようにじっと千幸を見つめる。
すっと横に視線を逸らされ密かにショックを受けたが、よくよく見るとさっきは気づかなかったが顔が赤くなっているのがわかった。
「千幸? えっ、本当に?」
「本当にって、小野寺さん自分で何を言っていたか自覚ないんですか?」
問いかけると、多田がこれは驚いたとばかりに聞き返してきた。
「自覚? 情けないところ見せたとは思うけど。あとは、普通に気持ちを告げただけだし」
眉根を寄せて告げると、千幸はやはり微妙に視線を逸らすし、多田は笑いで涙をにじませた瞳で翔を見た。
「すみません。少し、本当に少し、彼女のことを気になってはいたので小野寺さんに対して軽く挑発するような感じになってしまいました」
「そうなんですか?」
それならまんまと自分は乗せられたことになる。
面白くないとの気持ちが伝わったのか、多田は続ける。
「でも、小野寺さんが千幸のことをすごく好きだというのはわかりましたし、この様子では千幸もですよね」
「もう、本当勘弁してほしい……」
そこでようやく千幸が声を発した。
カァァァッと顔を赤くさせてちらりと睨んでくるが、うるうるとした瞳でされれば逆効果だ。
「ほら、すごく照れてるでしょ? 俺が知っている彼女は大抵のことは平然としてるんです。こういうことも人前ではしないし見せない人だったんですけど、小野寺さんだから許してるんですね。俺が入る隙がないのはわかったんで、それくらいで勘弁してやってください」
多田は苦笑しながらも、さっきよりは好意的な視線を翔に向けてくる。
彼なりの複雑な心中と気遣いを感じられ、言葉通りでいいのだと受け取ることにした。
「わかりました。先ほどは失礼しました」
「いえ。むしろ、いろいろ知れて嬉しかったので気にしないでください」
好意の中身の違いはあれど、千幸を大事に思う者としての言葉。それがわかり翔は頷いた。
続いて、千幸の頬を両手で包み込み覗き込む。
「千幸」
「……本当、加減してって言ったのに」
「してる」
「これで?」
「ああ。だが、困らせたことは悪かった。だから、この続きは後で」
最後は千幸に聞こえるくらいの声でささやき手を離すと、千幸もしぶしぶ頷いた。
翔の角度からは、ゆっくりと瞳を閉じたその長い睫毛が揺れるのがはっきりと見える。
落ち着こうと小さく深呼吸を繰り返すたびに、薄く開く唇が美味しそうだ。
一瞬、一瞬で視線を奪われ、心を奪われる。
気持ちを切り替えすぐにいつものように落ち着いた千幸は、ちらっと上目遣いで翔を見た。
また睨まれるのだろうかと構えていると、照れたようににこっと笑う。
「翔さんのそれは、慣れないけど慣れましたから」
思い通りにばかりにいかせないからねっ、と挑戦的な瞳が翔だけを映す。
「……っ」
──本当、後で覚えてろ!!
その反応、可愛すぎるだろ。絶対、二人っきりになったらとろとろに甘やかす。
翔は固く固く決意した。
加減しようにも、煽ってくるのは千幸のほうだ。
毎度、毎度、予想外のところで向けられる笑顔に翔はいつも抱きしめたくなる。
蔑まれた眼差しが始めだからか、笑顔を向けられるたびに恋に落ちていると言っても過言ではない。
千幸は無自覚に翔の衝動を刺激する。
今すぐにでも抱きしめて、今目の前にある唇に口づけをしたいところだが、彼女の両親もいるしこれ以上の失態は避けなければならない。
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