その勇者はバス停から異世界に旅立つ 〜休日から始まった異世界冒険譚〜

たや

文字の大きさ
35 / 72

3人目の仲間

しおりを挟む

「んで、なーんでこーんなもんクナイ持ってあそこにいたんだ?」

裏山に現れた魔獣を問題なく駆除し、その場所にいた転校生の中切綾音を日向家、凛斗の部屋(今はスノウの部屋)連行して事情を問う。

「ねぇ、一般の人に魔獣とか魔法を見られたらどうしてるの?」

ふと感じた疑問をスノウは凛斗に尋ねる。

「じいちゃん達の知り合いが記憶消したり揉み消してるみたいだけどらしい。俺は知らんけど」

というか、俺が剣投げた後金属がぶつかった音したよな
まさかこのクナイで弾いた?
でもこいつはただの女子だぞ…

「スノウちゃんと日向くん…ううん。凛斗くんがどんな関係か気になって」

「でもどうやって俺達が裏山にいるって分かったんだ?」

「カラオケの帰り道からずーーーーっと着いてきてたよ。お庭の木の上から凛斗くんのこと見てたし」

「え?」
「ひっ」

しれっと怖い事を口にした。

「ちょっとリント。この子かなり変よ」

綾音に聴かれないようにスノウは口元をリントの耳に持ってきてこそこそと話す。

「あぁ。俺も流石に背筋凍った」

よかったぁ
変なことしてなくて本当によかったぁ

「待てよ、それだったらなんで裏山で魔力を感じたんだ?そんな近くにいたなら俺も分かるはずなのに」

「ちゃんと隠せてたんだけど…見たらテンション上がっちゃって」

「その言いぶりだとアヤネは魔力や魔獣に対しての知識があるのかしら」

「そんなわけないだろ。だってハーモラルに関係する知識は日向家と東雲家、今はないけど霧雨家しか知らないんだぜ」

そして綾音の名字は中切、このうちの誰でもない一般家庭であろう人間だ。

「実は…私の本当の名字、東雲なんだ」
「え?」
「あら」

想定外の返事があっさり返ってきた。

「え、どーゆーこと?」

「おじいちゃんまでは東雲を名乗ってたんだけどね。だけどおじいちゃんは急に東雲の性を捨てておばあちゃんの名字に変わったの」

「えーとつまり…中切の元々は東雲で…俺達と同じでハーモラルに関係ある人間ってことか?」

「うん、そーだよ。私はハーモラル行ったことないから知らないけどね」

「じゃ、じゃあ今回や今聞いたことは誰にも言うなよ。バレたらヤバいらしいから」

「どーしよっかなぁー。凛斗くん私のこと覚えてなかったしー」

「いや思い出しただろ!」

「でもあのは?」

「いやそれは…本当に記憶にない…」

「ふーーーん。私にしたのに覚えてないんだー?」

「どんなこと!?」

あ、なんか背中が物理的に冷たい
すんごいヒヤヒヤしてる今

「じゃあ私のお願い聞いてくれるならいいよ。お口にチャックして普通の可愛い美人転校生になるからさ」

「それなら…いいよ。言ってみ」

凛斗が半ば投げやりに提案を飲む。

「私もハーモラルに連れてってよ!」

「「え?」」

すると綾音はおもちゃを前にした子供のような顔をして声を大きく言った。

「昔ね、おじいちゃんの書庫でハーモラルの冒険日記見つけたんだ。小さい頃から何回もそれを読み返したりしてたらどんどん私の心が熱くなってきて…」

「それでハーモラルに行きたいと」

「とーぜんじゃん!あんな面白そうな世界知ったら地球なんて退屈も退屈!それに8年前、凛斗くんが話してくれたハーモラルでの思い出を聴いたらもう!魔法に魔獣、冒険にギルド…絶対楽しいじゃん!」

綾音の興奮は収まらず凛斗とスノウに迫りながら自らの思いを喋りまくる。

「俺は別にいいけど…スノウは?」

「私も構わないわ」

「やったー!」

「ただ」

浮かれる綾音に釘を刺すようにスノウは言った。

「足手まといはいらないの。地球でのお友達としてならアヤネと一緒に過ごしたいわ。だけど私たちの旅は命懸けなの。実際、昨日もリントは死にかけてたし私だって危なかった」

「そう言われればそうだな。忘れてた、俺死にかけてたわ」
「忘れんな!!」

茶番の様な2人のやり取りを見た。
おそらくかなり親密な仲になっているのだろう。
凛斗が過去の約束を完全に忘れているのもあってかなり胸に刺さるものがある。

「私、こう見えても結構出来ると思うよ」

、ここで胸と見栄を張る。

「そう、なら表に出なさい。私が確かめてあげるわ」

「スノウ!?何もそこまで__」
「昔馴染みだからって甘くなってない?力の無い人が増えても私たちの負担が増えるだけよ」

「ぐっ…それは否定できないカモ」

「私たちの旅の目的は何?地球に魔獣が出る原因を探すのはあくまでも異界管理局から私たちへの命。だけどの目的は両親を見つけることでしょ。その2つを成し遂げるなら私たち2人以上に強かったりアレタみたいな何かに秀でた人がいるのよ。楽しそうだからで着いてこられても迷惑」

「うっ…」

ここで凛斗が10年振りにハーモラルに向かった際の心情を思い出そう。

言えねぇ…俺もハーモラルで何したかった聞かれたらスノウと再開して旅してぇ、あとじいちゃんが鍛えた俺どんだけ通用するかも知りたかったとかしか考えてなかったの…言えねぇ…

そう、スノウと再開する事をかなりの楽しみにしており、そんなに大層な気持ちなど最初は無かったのだ。

「分かったよスノウちゃん。私の力みせたげる」

綾音も異論はないようで自らの力を証明する気でいる。

「できれば静かに頼むぜ。この辺に住んでるご近所さんに迷惑だか…っていない!」



日向家の庭はかなり広い。
というのも日向家を始めとした東雲家、霧雨家はかなりの大地主であり土地貸しなどで収入は安定して舞い込んでくる。

そして鍛錬の為に庭を広く作り、多少の魔法であれば使用してもまずバレない。

何故か祖父母の姿が見当たらなかったので縁側に一人で腰を掛ける。
睨み合う女子2人に開戦の合図を示す。

「じゃあ俺がカウントした後にこの石投げっから落ちたら開始で」

「それでいいわ」
「おっけー!」

「はーい。3…2…1…ゴー!」

凜斗が持ち上げた小石を軽く投げ、地面に落ちると開戦の合図として受け取った二人の戦いが幕を開ける。

「ふっ!」

二人の距離はざっと5メートル。
先んじて走り出した綾音は制服の袖から隠していた二本のクナイを手に持つ。
だが走り出したと言っても速度はハーモラルにいる時の凜斗には及ばず、たかが知れている。

あくまで、普通の地球人の範囲を出ないのであれば焦ることなどない。

「【氷の枷アイスシャックル】」

走る綾音の足元に薄い氷が張ると動いていた足が止まった。
やがてその氷は足元を覆う。

「動けないのなら…終わりだけど?」

「どーかな?」

手にしているクナイをスノウに投げるが突如現れた氷の壁がそれを阻んだ。

「うっそぉ!?」

「くだらない策ね。【踊るつららアイスクロウ】」

背後には魔法陣が現れる。
普段の戦闘とは違い小さな魔法陣だがそれでも20本のつららは今にも綾音に向かわんとしている。

「降参なら今がチャンスよ。少なくとも怪我はさせるから」

「あっははは、スノウちゃん面白いねぇ…やってみなよ」

「あっそ」

それでもなお引かない綾音と見限ったかのようなスノウ。

手を綾音に向けると背後で待機していたつららが一斉に動くと同時に再度クナイを制服の裾から取り出して足元の氷に突き立てて割る。

身体の自由を取り戻した綾音は襲い来るつららに自ら立ち向かい、的確にクナイで弾いて捌く。
そしてスノウとの距離は残り50cmに。

「…驚いたわ」

その顔、制服に一切の傷はない。
やりきったぞと顔に出ている。

「これで認めてくれる?」

右手のクナイをしっかりと握り、スノウの首に向かって進んでいる。

「でも覚えておきなさい。は立派な敗因になるわ」

その忠告を聞くと、一瞬だけ思考と動きが乱れた。
瞬間、綾音の頬の薄皮を空から降ってきた一本のつららが切る。

「見込みはあるわ。臆せずにつららに立ち向かったのは紛れもない戦う者としての素質。だけど自分と相手の力の差を把握できていないのならもう少し慎重になるべきね」

薄皮を切ったつららが地面に刺さると綾音の動きも止まった。
忠告がなければつららは間違いなく自分の頭部に直撃していただろう。
それが意味することは、実践の経験がないであろう綾音でも理解は容易だ。

「不合格?」

「…にそこまで求めてないわ。精々学びなさい」

背を向けて家の中へと戻っていったスノウと、サムズアップをして自分なりの祝福をしている凜斗。

「…やったぁぁぁぁ!!」

ハーモラルで共に旅をする3人目の仲間は、奇妙にも地球で見つかったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チート魔力のせいで神レベルの連中に狙われましたが、守銭奴なので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
――自由を手に入れるために、なにがあっても金は稼ぎます―― 金さえあれば人生はどうにでもなる―― そう信じている守銭奴、鏡谷知里(28)。 交通事故で死んだはずの彼が目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。 しかもなぜか、規格外のチート魔力を手に入れていた。 だがその力は、本来存在してはいけないものだった。 知里の魔力は、封印されていた伝説の冒険者の魔力と重なったことで生まれた世界のバランスを崩す力。 その異常な魔力に目を付けたのは、この世界を裏から支配する存在―― 「世界を束ねる管理者」 神にも等しい力を持つ彼らは、知里を危険視し始める。 巻き込まれたくない。 戦いたくもない。 知里が望むのはただ一つ。 金を稼いで楽して生きること。 しかし純粋すぎる仲間に振り回され、事件に巻き込まれ、気付けば世界の管理者と敵対する羽目に――。 守銭奴のチート魔力持ち冒険者 VS 世界を支配する管理者。 金のために生きる男が、望まぬまま世界の頂点と戦うことになる 巻き込まれ系異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

戦えない魔法で追放された俺、家電の知識で異世界の生存率を塗り替える

遊鷹太
ファンタジー
安全を無視したコスト削減に反対した結果、 家電メーカーの開発エンジニア・三浦恒一は「価値がない」と切り捨てられた。 降格先の倉庫で事故に巻き込まれ、彼が辿り着いたのは――魔法がすべてを決める異世界だった。 この世界では、魔法は一人一つが常識。 そんな中で恒一が与えられたのは、 元の世界の“家電”しか召喚できない外れ魔法〈異界家電召喚〉。 戦えない。派手じゃない。評価もされない。 だが、召喚した家電に応じて発現する魔法は、 戦闘ではなく「生き延びるための正しい使い方」に特化していた。 保存、浄化、環境制御―― 誰も見向きもしなかった力は、やがて人々の生活と命を静かに支え始める。 理解されず、切り捨てられてきた男が選ぶのは、 英雄になることではない。 事故を起こさず、仲間を死なせず、 “必要とされる仕事”を積み上げること。 これは、 才能ではなく使い方で世界を変える男の、 静かな成り上がりの物語。

処理中です...